広告会社は変われるか

広告会社は変われるか―マスメディア依存体質からの脱却シナリオ
藤原治(2007)
□スペースブローカーの限界・・・中身はテナント任せであったから、肝心の売るノウハウが蓄積されていないという現実
□電通の商売のドメインは、単なるスペースではなく、「味付けられたスペース」であったが、スペースを売るというDNAは変わらなかった
□広告は販売促進の手法であって、企業目的である利益極大化をはかる手段である。その広告の定義は・・・「利益極大化を目指す販売促進の一手段で、企業が消費者に届けたい情報を、マスメディアを通じて流す方策」・・・その定義から、広告の構成要素・・・は、(1)広告の送り手/広告主、(2)広告の受け手/消費者、(3)広告媒体/マスメディア、(4)広告/物/クリエイティブ表現も含む、である
□「大衆の反逆」の中でオルティガ・イ・ガセットは、大衆を次のように定義している。「大衆とは、善い意味でも悪い意味でも、自分自身に特殊な価値を認めようとはせず、自分は「すべての人」と同じであると感じ、そのことに苦痛を覚えるどころか、他の人々と同一であることに喜びを見出しているすべての人のことである」
□広告を支えている大衆は、無知・貧乏・付和雷同、であるのが一番都合がいい。手に届かぬと思えた新商品を、「キミの買いたいモノはこれです」と告知し、「周りの人ももっているのだから君も買わなくちゃあ」と誘引する。しかもマスメディアを使って一方的に情報を流すだけでよいので効率的だ。そこに広告の妙味がある。
□Fragile(脆弱性)‐それが最近の個へのメッセージだ
□1993年にノースカロライナ大学のローターボーン教授は従来の4P理論を批判し、4C理論を打ち出した・・・
●Product(製品)からConsumer(顧客)へ・・・売れるか売れないかわからない見込み生産から消費者ニーズ・ウォンツを把握した生産へ
●Price(プライス)からCost(コスト)へ・・・生産コストだけではなく、消費者の購入コストや時間コストも勘案する
●Place(場所)からConvenience(便利さ)へ・・・販促の要点は売る場所の重視から、消費者の購買利便性に移る
●Promotion(販売促進)からCommunication(対話)へ・・・「売りつける」から「買いたい」へ
□これまで、媒体にボトルネックがあるという前提の下に、どの産業よりも消費者に近いと豪語していた広告代理店は正念場を迎える。媒体のボトルネックが解消したいま、媒体社との友好関係を武器に戦術展開することは時代遅れとなり、消費者を知り尽くせるかという課題が、広告会社のレゾンデートルとして新たに突きつけられるだろう。そして、これまで広告会社の独断場であった消費者情報をグーグルは、検索という手法の見返りとして獲得しようとしている。広告会社は・・・どうすればいいのだろうか。その解を握るキーワードはCRMである
□CRM(Cstomer Relationship Management)とは、顧客との関係を確立し、そこで得られる顧客の属性を企業経営に活用する手法である。この意味のCRM概念はそんなに新しいものではない・・・しかし本来のCRMはインターネットの申し子である・・・この意味で従来から行われているCRMに対して「eCRM」という概念が強調されることがある
□CRMの成否は次の二つの要因によって左右される。一つ目の要因は量である。まず顧客情報が量的に蓄積されていなければ、マネジメントに役立つだけの有意な情報は得られない・・・二つ目の要因は質。・・・その質につなげる作業が・・・情報の因果関係から新たな顧客の属性を見つけることができる・・・データマイニングである
□現場での・・・優秀な人材を確保するにはどうしたらいいのか。それはまず採用であろう。既存のビジネス・スキームに固執することから離れて自由な発想で環境の変化に対応できる新しい人材の維持である。これが最も重要である・・・次に重要なのが、既存のビジネス・スキームに浸かりながらも自由な発想で環境の変化に対応できる新しい人材の確保である。それは・・・教育である
□グーグルに勝てるか・・・グーグルは決してしないこととして「コンテンツを創り出すことと、それを保存すること」(iNTERNET magazine)としている・・・管理者は、eプラットフォームと消費者の間に介在するが、スペースを押さえるのではなく、そこを通過しなければならないような仕組みをつくれるかによって規定される。つまりR&D(研究開発)戦略の結果が管理者になれるか否かの分かれ道となる
□広告会社は製造会社ではない。しかも、受注型産業である。従って、通常の会社に比べれば、R&Dの位置づけが低いのもむべなるかなとも言える。しかし今後はこのスタンスでは生き残れまい・・・グーグルの研究開発費は以下の通り急速に伸びている
2003年・・・9123万ドル
2004年・・・2億2563万ドル
2005年・・・4億8398万ドル
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