フラット化する世界(下)

フラット化する世界(下)
トーマス・フリードマン(2006)
□「グローバリゼーションは産業のグローバル化から個人のグローバル化に移った」(ビベク・ポール)
□無敵の民とは、「自分の仕事が、アウトソーシング、デジタル化、オートメーション化されることがない人」を意味する
□フラットな世界には「代替可能な仕事と代替不可能な仕事の二つしかない」(ナンダン・ニレカニ)
□アウトソーシングされにくいのは、どんな仕事なのだろう?
…第一は、「かけがえのない、もしくは特化した」人々だ
…第二は、「地元に密着」して、「錨を下ろしている」人々だ
□「一緒に成長しないと、ばらばらになってしまう」(ジーン・スパーリング)
□新ミドルクラスでは、誰もが臨時雇いなのだ
□「〔デルの〕付加価値は、誰にも負けない合成能力にある。消費者の需要を中心に合成するのが、成功の秘訣だ」(S・クリス・ゴパラクリシュナン)
□「CIOという言葉は残るだろうが、そのIは情報(インフォメーション)ではなく統合(インテグレーション)を意味する略語になる。ITはビジネスのあらゆる領域に浸透しているはずだから、もはやテクノロジーの分野ではなくビジネスプロセス統合の分野に移行する」
□異種のものをまとめる優秀な合成役が増えると、管理者、ライター、教師、プロデューサー、エディターが必要になる
□複雑なものを見て、わかりやすく説明する
□座って自分の仕事をするよりも、人に何かを説明するほうがはるかに重要なのだ、とマーシアは「説明」した
□複雑なことをうまく説明できたら、ビジネスチャンスは確実に広がる
□コンピュータが精一杯やれることと、人間が精一杯やれることを組み合わせる
□IT産業には特化した社員よりも、適応能力が高い多芸多才な社員を求める傾向が強くなっている
□なんでも屋(バーサタイリスト)
□「未来はつねに新しいことが待ち受けているから、たえず勉強するしかないというのが結論だった。そのとき、自分は<マーシア個人商店>だということを悟った。〔学びつづける〕責任は自分一人が負っている。資源は手に入る。あとは自分がそっせんしてやるかどうかだと。でもその前に信用を打ち立てる必要があると思った」
□「グローバルのローカル化」…「グローバルな能力を身につけることを学んで、現地のコミュニティのニーズに適合させる中小企業向けのビジネスは今後、膨大に増えるだろう……これがグローバルのローカル化で、われわれはまだその入口にいるにすぎない。今後、大量の仕事を創出する可能性を秘めている」(ジョエル・コーリー)
□「いい質問をすることで、私は科学者になった」(イシドル・I・ラビ)
□理想の才能(ライト・スタッフ)とは何か?
□フラットな世界でのばすことができる最初の、そして最も重要な能力は「学ぶ方法を学ぶ」という能力だ
□フラットな世界では、IQ(知能指数)も重要だが、CQ(好奇心指数)とPQ(熱意指数)がもっと大きな意味を持つ
□教師を雇う目安はしごく単純だと語った。「子供が好きかどうかです」(ヒラリー・ルーニー)
□人を好きにならなければならない…仕事の世界では、人あしらいが上手なのは大事な資質だが、フラットな世界ではなおさらそれが需要になる
□データが氾濫し、選択肢が山ほどある世界では、芸術的手腕、感情移入、大局的なものの見方、学識を超えたものの追求といった、右脳の特性に近い、精神的なものが最も重要な能力になる
□「コンピュータやロボットがもっと速くやることができない仕事や、優秀な外国人が安い賃金でやることができないような仕事」を身につけることだ(ダニエル・ピンク)
□「たとえば、取引をするよりも人間関係を強め、ありきたりの問題を解決するよりは、新規な難問に取り組み、たった一つのことを分析するのではなく全体像をまとめあげる」(ダニエル・ピンク)
□「外国人が左脳の仕事を安くできるというなら、われわれアメリカ人は右脳の仕事をもっとたくみにやろう」(ダニエル・ピンク)
□右脳のスキルをどうやって磨けばよいのか? 右脳を育てるには自分が好きなことをやるといい‐せめてやりたいことを
□「いま最も重要な能力のたぐいは、たまたまその人間が初めからやりたいと思っている事柄である場合が多い」(ダニエル・ピンク)
□「信念の堅さを示さないといけない‐そうなると心から信じなければだめだ」(ナンダン・ニレカニ)
□「信頼がなかったらリスクを負うことができない、リスクを負えないと、イノベーションはない…イノベーションを行うのに必要なリスクを負う人間を増やそうと思ったら、その場にもっと信頼を持ち込めばいい」(ドブ・シードマン)信頼の低い社会では、持続的なイノベーションは生まれない
□接続し、共同作業を行う相手によって、付加価値がどんどん生まれ、複雑な問題が次々と解決されるフラットな世界では、高度な信頼のある社会がいっそう有利になる。「共同作業の世界では、信頼があり余るほどなければならない」シードマンはなおもいう。「なぜなら、お互いか、もしくは指導者を信頼する人間が増えれば増えるほど、一緒に働こうとするようになるから」
□フラット化時代の富は、次の基本的な三つの事柄を手に入れる国に転がり込む傾向が強くなっている。一つ目は、フラットな世界のプラットホームにできるだけ効果的に、そして迅速に接続できるインフラ。二つ目は、国民がそのプラットホームでイノベーションを行って付加価値の高い労働ができるような理想の教育プログラムと知識スキル。そして最後の三つ目は、適切なガバナンス-具体的にいえば、適切な税制、投資・商取引に関する適切な法律、研究に対する適切な支援、知的財産権にまつわる法律の整備、そして何よりも国民にいい意味の刺激をあたえるリーダーシップ-によって、フラットな世界の流れを勢いづけ、なおかつ管理すること
□自国がフラットであるほど‐つまり天然資源が少ないほど、その国の人はフラットな世界で成功するという
□フラットな世界における理想の国は天然資源をまったく持なのだ。なぜなら、そうした国はたいがい内面を掘り起こそうとする。エネルギー資源ではなく、国民‐男も女も‐のエネルギー、企業家精神、想像力、知能を掘り起こそうとする
□「掛け算ができなくてソフトウエアが作れるなどという人間にあったことはない…秩序立てて物事を理解していないと、それより進んだ物事を作ることはできない」(ビル・ゲイツ)
□「アメリカの経済の未来を確実なものにする」
□「女房がよく言うんだが…歴史を勉強すると、あらゆる文明は勃興しては滅びる。残る記念物はたった一つ‐首都のどまんなかの大きな競技場だ」(クレイグ・バレット)
□「危機は逃すことこそ恐ろしい」(ポール・ローマー)
□「企業の変革は危機感と切迫感から始まる」(ルー・ガースナー)
□「状況がひどくなり、生き残るためにはこれまでと違ったことをやらなければならないと思い知るまで、組織というものは根本的に変わろうとはしない」(ルー・ガースナー)
□「雇用される能力(エンプロイアビリティ)…IBMが雇用を保証するのではなく、社員自身が“自分には雇用されるだけの能力がある”ことを証明しなければならなくなった」(ルー・ガースナー)
□終身雇用はフラットな世界にとってもはや維持することができない脂肪組織だ
□労働者に一番必要な筋肉は、職場などを変わっても持ち運び(移動継続)できる社会保障制度と、生涯学習の機会だ
□すべての労働者は賃金の対象となる「一般スキルと特定スキル」を有している
□敗者や遅れている者の面倒をみてやらなければいけない。フラット主義者になる方法はただ一つ、思いやりのあるフラット主義者になることだ
□汚い言葉をしゃべっていたら、医者にはなれない
□「まともな戦いをしよう…競技場を均そう…酔っ払いにそれはできないし、無学な者にもできない」(ジャクソン)
□「われわれは今も自転車競走の銭湯を走っていて、あとをついてくる選手の空気抵抗を減らしてやっている」(サミュエルソン)
□インドと中国にしてみれば、未来ははっきり見えている。未来に何をしなければならないかを、明確に知っている。「アメリカがいまやっていることをやる…アメリカの任務は、未来を創ることだ」(ジェリー・ラオ)
□いまの生活水準の向上を続けるには、未来を創りつづける人間を生み出すような社会を築くほかに手はない。…知識はぐんぐん進歩しているから、未来を創るのはいよいよもって難しくなる…教育、インフラ、成功願望、リーダーシップ、子育てといったすべてを理想に近づけなければならない
□「黒い猫でも白い猫でも、ネズミをとる猫はいい猫だ」(鄧小平)
□混乱から簡潔を見つける
不調和から調和を見つける
困難のさなかに好機がある(アインシュタイン)
□「頭を使う人間を多く雇い、テクノロジーが必要なことはアウトソーシングしている」(ケン・グリーア)
□「文句なしの一番に、最も独創的な考え方ができる人間にならないといけない」(ケン・グリーア)
□インターネットをはじめとするフラットな世界の全ツールが、すべての消費者に値段、エクスペリエンス(従来はなかった新奇な体験や訴求力の強いプロセス)、サービスを望みどおりにカスタマイズする手段をもたらした結果、「自分で決める消費者」が目の前で誕生している
□じつは企業はデジタル・ビュッフェをつくっただけで、消費者はそこで自分にサービスしているに過ぎない
□「われわれはいま、非常に高度な専門技術の交流がからむ、次の階層のイノベーションを目の当たりにしている…価値ある新しい飛躍的進歩をもたらすには、ますます細分化するそういう専門分野を、もっと結びつけないといけない。そのためには共同作業がきわめて重要になる」(ジョエル・コーリー)
□「現在の事業で中核となる競争力は、協力関係だ」(サー・ジョン・ローズ)
□<世界の医療水準向上を目指すグランドチャレンジ>…「このプロジェクトの狙いは二つ…一つは、科学的思考に倫理を加味するように訴えることだ…二つ目は、財団の資源で実際に何ができるかを試すことだ」(リック・クラウスナー)
□「村人たちが共有テレビで石鹸やシャンプーのCFを見るとき、目に留まるのは、石鹸やシャンプーではなく、それを使っている人々の暮らし、つまり乗っているバイクや着ている服や住んでいる家です」(ナヤン・チャンダ)
□テロリズムは金銭的欠乏から生まれるのではない…テロリズムは自尊心の欠乏からうまれる
□環境を破壊しない資源の利用の継続を考えるうえで重要なのは、地球に住んでいる人間の数ではなく、その生活様式が環境に与える影響である(「文明崩壊」ジャレド・ダイアモンド)
□「頭のいい修繕の鉄則は、破片をすべてとっておくことだ」(アルド・レオポルド)
□「ローカルのグローバル化」
□「アジアでのグローバリゼーションは英語化が進むかと思いきや、まったく逆です。国外移住者の市場とは、移住者の国の言語の国際新聞、国際テレビ・ラジオ局なのです。これをローカルのグローバリゼーションと呼ぶことにしています。グローバルがやってきてわれわれを包み込むのではなく、ローカルのほうがグローバルに広がります」(インドラジト・バネルジー)
□ローカルな文化、芸術形式、様式、料理、文学、映像、主張のグローバル化が促進され、ローカルなコンテンツがグローバル化する
□ごくわずかな量のダイナマイトで、はるかに多くの不安を伝えることができる
□「ビン・ラディンは顔を見せることはできないが、インターネットのおかげで世界中のどの家にも入り込める」(マイケル・マンデルバーム)
□ビンラディンは、地域を支配することはできないが、多くの人々の想像力をつかむことができる
□「イマジネーションは知識よりも大事である」(アインシュタイン)
□「インターネットなら、犬だっていうのがばれないよ」(ピーター・スタイナー)
□人間のイマジネーションが大切ではなかった時代など、これまで一度もなかった…いまほどイマジネーションが大切である時代も一度もなかった…フラットな世界では、共同作業のさまざまなツールが、誰にでも手に入る日用品(コモデティ)になっているからだ…けっしてコモデティ化されないものが、たった一つある。イマジネーション‐どういうコンテンツをつくろうかと創造することだ
□事件を頭の中で再生するのがイマジネーションであってはならない。新しい脚本を書くことがイマジネーションでなければならない
□「過去の業績がよかったことばかり話すようだと、その企業は苦境に陥っているとわかる。国でも同じだ、自分のアイデンティティを大切にするのはいい。14世紀には世界を制していたというのは結構なことだ。しかし、それは昔のことで大切なのは現在だ。思い出が夢をしのぐようでは、終わりは近い。ほんとうに栄えている組織の特質は、それを栄えさせたものを捨てて、新たに始める意欲があることだ」(マイケル・ハマー)
□夢よりも思い出の多い社会では…人々が日々過去ばかりに目を向けている。尊厳や自己肯定や自尊心を現在から探すのではなく、過去にこだわって得ようとする。それもたいがい真実の過去ではなく、想像と憧れから派生した過去である場合が多い
□「何が変わったかではなく、何が変わらなかったかを認識することが、われわれに答えを与えてくれる。なぜなら、これを認識して初めて、本当に重要な問題に集中できるからだ」(デビット・ラスコフ)
□これまでずっと大切に思ってきたもの-恐怖ではなく希望を輸出するアメリカ-を奪われたと、人々は感じているのだ
□「正体を明かしたくないのであれば、意見を言うべきではない」(メグ・ホイットマン)
□「ルールは最小限にして、きちんと守らせる。人々が自分の可能性を実現できる環境を創る。品物を打ったり買ったりするよりも大事なものが、そこにあります」(メグ・ホイットマン)
□大人になる道しるべがあるときには、その道しるべをたどって夢を実現しようと努力するようになる。道しるべがないと、怒りばかりに目が向き、思い出をはぐくむようになる
□「もっといい方法がありますよといわれても、人間は変わらない。ほかに方法がないという結論に行き着いたときに初めて変わる」(マイケル・マンデルバーム)
□「人間は人に教えられるのではなく、自分の目で確かめた結果として変わる」(マイケル・マンデルバーム)
□「一つの好事例は1000の理論に匹敵する」(スタンレー・フィッシャー)
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通信技術が進化(インターネット、光ファイバー通信網、パソコン、携帯電話)した
標準化ソフトウエアが普及(マイクロソフトワード、エクセル、パワーポイント)した
地球上のあらゆる人間(アメリカがインド)との共同作業が可能になった
海外へのアウトソーシングが始まった=先進国から後進国へ仕事が流出し始めた
(アメリカのコールセンター業務や会計業務がインドへ、
 マイクロソフトの次世代OS基幹部分設計が中国へ)
アウトソーシングは、製造業での単純労働に限らず、税務処理、医療サービス、
ソフトウェア開発、さらにはジャーナリズムといった知識労働にまで、及ぶ
仕事が低コストの後進国(中国やインド)へ移りつつある現在、先進国の課題は
アウトソーシングされない「新ミドルクラス」を創出すること
新ミドルクラスの仕事ができるよう、国民の能力を強化すること
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鍵となるのは教育である
短期には今あるツールの習得と活用、長期には科学教育の充実や人材の育成である
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