けなす技術

けなす技術
山本一郎(2005)
いいたいことが伝わらない。議論がなかなか成立しない、そういったもどかしさ・・・を解決する方法はシンプルだ。たくさん他人の意見を読み込むこと、それを踏まえて自分の意見を書いていくこと
何に価値がないのかを知ることができなければ、何が価値かを想定することはできない・・・自分のどこに価値があるのか、あるいはないのかということを知るプロセスそのものが、語る、論じるという行為の最大の収穫なのである
人間の記憶というものは関心と行動とに密接に結びついている
酷評もまた評価、悪名もまた名である・・・話題にならないことほど商品の寿命や売上にとって有害なものはない。ぜんぶ酷評というのは考えものだが、少なくとも賛否両論、悪いと良いの評価が両立している商品は決して売れないわけではないということ
読み手は動いているサイトを見たいのであり、読者を集めたいと考える書き手は、どのような内容であっても必ず毎日かそれに近い頻度で更新することが必須であると言える。逆に言えば、どんなに優れた内容であっ他としても、更新されないブログはなかなか訪問してもらえない
関心を持たない層に対するリーチというのが重要な役割を占める・・・いわゆる読者離れというのはブログに限らず顧客回転のことを意味し、顧客が流出しないサービスはない・・・それ以上に流入して初めて成長するわけであるから意見形成をするにあたって議論すべき裾野を広げるという作業が別途必要となってくる
人が持つ関心の受動性/能動性・・・その上でどの属性について「関心がないか」に注目・・・価値ある議論とは関心を持たないものについての判断によって成立する。私たち日本人の問題点とは関心を持たない誰かに関心を持ってもらうための議論を、どう成立させるかという方法論を持っていないことにほかならない
スキャンダル・・・読み手の強い負の感情に訴えかけることの有効さを示すもの・・・人間や社会が美徳とする愛情や謙譲、功績といったものよりも、嫉妬や軽蔑、嫌悪といったもののエネルギーを一時的に借り受けて・・・負の感情を正当化するためのロジックを組み立ててあげる作業にほかならない・・・一見破壊的に見えて、実は最も共通項のない人たちを糾合する手段を提供するものである。人を雇うより低コストで、何かを褒め上げるより刺激的で、何よりおよそ問題のない分野などなく話題に事欠かないという点で高機能なのである
あなたに対して何らかの批判的な言動をとる人間を大事にするべきである。それが精神的に、あるいは感情的に嫌悪するべきものであったとしても、さらにそれが嫉妬などの悪意によるものだったとしても、彼らは無料であなたに行動のマイナス面を教授してくれるからである。あなたが関心を払わない重要な問題や、本質に迫る負の側面について余すところなく論述してくれるこれらの批判者を門前払いする必要はどこにも存在しない
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