週刊ダイヤモンドが「電子書籍と出版業界」(仮題)という特集を経営からの圧力で中止した

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書店・取次の顔を立ててモラルハザードを生んだ週刊ダイヤの自主規制

すでに池田信夫氏のブログをはじめTwitter上の注目を集めているが、これは日本の出版界の今後を予測する上で重要な要素を含んでいるので、元社員としてまた株主として感じたことをメモにしておく。

●鹿谷社長は“フタをする”のが上手な元銀行広報マン

ダイヤモンドの鹿谷社長は出版のプロパーではない。入社以前は銀行の広報マンだった。
広報マンは問題が発生したとき、問題が拡大しないように関係者の間を動くのが本質的な仕事。
問題の本質を見抜き、問題を解決する仕事ではない。問題にフタをする仕事だ。
マスコミとは、情報の貸し借りのなかでいざ問題が発生した時にできるだけ穏便にすませる関係を構築することを目的に付き合っていた人物だ。

優秀な銀行広報マンから出版社に転職した鹿谷君は長らく書店・取次を対象とする出版営業畑を歩んできた。
人当たりもよく、ゴルフもシングルの腕前。書店・取次との関係を上手に取りまとめてきた。

●出版社のステークホルダーは書店・取次だけではない

鹿谷君が出版社の経営者として大きな間違いを起こしたと思うのは、社内的に十分な議論を持たずに自主規制を決めた点だ。
その判断は、取次・書店の顔色だけを見て一番大切な読者の視点を考慮していない。
また出版社の最大の資源である企画を創造し具体化する編集者の意欲を打ち砕いたことだ。
彼らが構築している外的人脈や情報源を傷つけたことだ。

出版社のステークホルダー(利害関係者)は、大きく読者、書店・取次、広告主、社員、株主とある。
書店・取次は一部であり、すべてではない。
鹿谷君は出版社経営者としてバランスを考える必要があったにもかかわらず、そこを間違えたとしか言いようがない。

●モラルハザードは読者の期待を裏切ることからはじまる

鹿谷社長の編集部への圧力は、私が知る限り今回が2度目である。
在日朝鮮人問題の特集を潰されたという後輩編集者のぼやきを聞いたことがある。まさに、“問題になる前にフタ”路線だ。
鹿谷君以前の社長で編集部の企画を直接潰したという話しは聞いたことがない。

経営者が圧力をかけて企画をつぶした時、その社会的反応はすでにTwitterに見る通りだ。
つぶやきは、読みたかったのに、知りたかったのにという読者のがっかり感にあふれている。
週刊ダイヤモンドの編集部員や他部門の社員も、こうした声を知るにつけ挫折感を味わうことになるだろう。
怖いのは社会の問題と正面から向き合う社員の意欲を失うことだ。
アパシーが生まれることだ。

●Twitterで特集復活運動を展開してみたら

後輩の社員に聞いたところによると今、編集部は沈み返っているという。
鹿谷君の自主規制を受け入れてしまった編集長は編集部内で孤立状態だそうだ。

鹿谷君はほんとうに馬鹿な判断をしたもんだ。

社長の暴走を止められなくなっている経営陣のガバナンス能力も相当問題だ。

いっそうのことTwitterで特集復活運動でもして鹿谷君に現実を教えてあげたら?

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