「否定された検察捜査、根拠なき筋書き 自滅」判決2日後、日経の良記事、前田恒彦の存在を暗示 @nikkeionline

郵便不正事件で虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた元厚生労働省局長に無罪を言い渡した10日の大阪地裁判決
全面的に検察の捜査を否定した判決が問いかける捜査の課題とその波紋を追う

判決公判に臨む検察側(左)
この後、村木元局長に無罪が言い渡された(10日、大阪地裁)

「証明書は女性職員にもらった」「中年の色白美人」

昨年4月下旬、障害者団体向け郵便料金割引制度を悪用したとして大阪地検特捜部が逮捕した元国会議員秘書で自称障害者団体「凜(りん)の会」設立者、倉沢邦夫被告(74)はこう口にした
職員名鑑から該当しそうな女性職員の写真を示した副検事に倉沢被告がうなずいた
当時の村木厚子雇用均等・児童家庭局長(54)だった

何度も声荒らげ

それが国会議員の口添えによる「議員案件」として厚労省が組織的に証明書を偽造したという筋書きができる発端だった、と地検幹部は明かす
しかし、作り上げた筋書きは「砂上の楼閣」だった

倉沢被告は今、「村木元局長は会ったことがあった
『(元局長から)もらってるんだろう』と言われ、記憶はあいまいだと答えたが、そう決めつけられた」と弁明する
ただ、当時の捜査は、この砂上の楼閣に沿って突き進んでいった

「うそをつくな」「調書にサインしさえすればいいんだ」
昨年6月初め、男性検事の取り調べを受けた凜の会元幹部は「何度も怒鳴られるうちに、記憶なんてどうでもよくなった」
用意された供述調書に署名した

元局長の部下だった元同省係長、上村勉被告(41)=公判中=は強引な取り調べの様子を拘置所内で書き留めていた
「検察が作文している」「冤罪(えんざい)はこうして始まるのか」

複数の関係者の供述で幾重にも固めたはずが、公判に入って関係者が次々と供述を覆し、国会議員が口添えしたとする日の“アリバイ”も浮上
大阪地裁判決は「調書の内容に客観的証拠に照らして不合理な点がある場合には、信用性は大きく低下する」と述べ、検察が描いた構図は瓦解した

上層部も止めず

証拠全体を見渡し、捜査現場が描いた事件の構図に矛盾がないか見極めるのは、上司である地検幹部や高検、最高検の役割だ
だが今回の事件で上層部が捜査に待ったをかけることはなかった
検察首脳の一人も「客観的な証拠に基づいていなければならない筋書きが、今回はおかしかった」と現時点では認める

描いたストーリーに沿って自白を迫る捜査は、郵便不正事件に限らない
ある現職検事は、別の事件の捜査で「資料も証拠もなく、ただ『政治家にカネを持ってったんだろう』とばかり聞くよう上司に指示された」と打ち明ける

検察内部では、どんな被疑者も自供に導く検事を「割り屋」と称して評価する風潮も強い
今回の事件を担当した「割り屋」の一人は、東京地検の応援にかり出され、小沢一郎・前民主党幹事長の資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件の捜査にも携わっている

検察の組織運営の問題点も指摘される
裁判員制度の開始で公判担当に人材を厚く投入した結果、「捜査を担当する検事の育成に力を注がなかったツケが来た」と幹部の一人は捜査能力の衰えを嘆く
かつては特捜部在籍は通常2~3年だったが、今は公平になるよう1年程度での異動が多く、「職人芸が継承されなくなった」(特捜部OB)ともいわれる

村木元局長は判決言い渡し後の記者会見で「検察は大きな権限を持った特殊な機関
なぜこんなことが起きたのかは検察自身にしか分からないと思う」と話した
検察内部から聞こえる自己批判は、この答えになるのだろうか

(否定された検察捜査 厚労省元局長 無罪判決)(上) 根拠なき筋書き 自滅 :日本経済新聞