無料ゲームはなぜ成り立つか? (さくらインターネット創業日記) @kunihirotanaka

最近、携帯無料ゲーム(ソーシャルゲーム)の宣伝を見ない日はありません
このソーシャルゲームですが、よく知人から「なぜ無料でできるの?本当に無料なの?」と聞かれます
そういう時には、「課金を承諾しない限り、ソーシャルゲームは永遠に無料で遊べる」と回答しています

Venture Now に掲載されていた「ソーシャルメディア利用動向、女性ユーザーが積極的
GREE課金は男性の倍
」によると、このプラットフォーム会社の課金ユーザ比率は男性の11.8%、女性は21.2%で、平均すると16.8%しか課金されていません
つまり6人のうち5人はお金を払わずに楽しんでいるわけです
(女性比率が多いというところも気になりますが、今回は華麗にスルーします)
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出典: Venture Now

それではなぜ無料が成り立つのでしょうか?
今更感もある話ですが、改めて原価と売上という2つの観点から見てみたいと思います

まず原価の観点から
ソーシャルゲームの原価は何があると思いますか?
ざっくりというと、広告宣伝費、開発費、インターネットインフラ費(サーバ費用)、課金手数料、サポート費用です
このうち、ユーザの数と関係なくかかるのが広告宣伝費と開発費で、ユーザの数に連動するのはサーバ費用と課金手数料、サポート費用です
無料の場合は課金手数料はかかりませんので、実質的にユーザの増加によって増えるのはサーバ費用とサポート費用です
それではサーバ費用やサポート費用はいくらかかるのでしょうか?
これは正確に出せるものではありませんが、何とか計算してみましょう

まずサーバ費用ですが、潜在ユーザも含めて1ユーザがひと月に平均1000ページビューのアクセスをするとして計算します
ひと月に1000万ページビューまでさばけるサーバのコストが月々3万円だとすると、30,000円×1000PV÷10,000,000PV=3円/月程度となります
サポート費用ですが、2,000万人のユーザを200人でサポート、管理すると仮定して計算します
実際にはもっと少ない人数だと思います
1人月を60万円だとすると、60万円×200÷2,000万人=6円/月程度となります

ここで出てきた合計9円/ユーザ/月という数字について、それ自体には意味はありませんが、言いたいのはユーザーが1人増えようが、コスト増が「無視できるほどに小さい」ということです
このように、携帯無料ゲームにおける1ユーザあたりの原価は驚くほどに安いので、無料ユーザが増えたところで原価はそれほど多くはありません
ちなみに、旧来型のゲームの場合は、カードリッジを作ったり、販売店にマージンを払ったりしなければなりませんから、無料で提供するということは出来ませんが、ソーシャルゲームの端末はいつもの携帯ですし、ゲーム自体もオンラインで提供するため、前出のようなコストを掛けなくて済むというのも大きいでしょう

次に売上の観点から
携帯無料ゲームの売上は、大きく分けるとアイテムと広告の2つからもたらされますが、ほとんどはアイテムからもたらされます
ということで、上記の例で言うと6人に1人だけが売上をもたらしてくれます
それでは、6人のうち5人は邪魔なユーザなのでしょうか?
いえいえそれは違います
結論から言うと、有料ユーザが楽しくプレイできるよう、無料ユーザが「無償の労働」を行なってくれているのです
ここでいう無償の労働とは「フリー」(クリス・アンダーソン著、NHK出版)によって述べられているもので、無料のものを手に入れる代償として労働力をタダで提供する行為のことです
ソーシャルゲームで言うなら、がんばって釣りをしたり、街を作ったりといった作業を通じて、ゲームの活性化のために奉仕を行っているということです

釣りゲームにおいても、みんなが釣れるようでは面白くありません
すぐに折れてしまう釣竿でゲームをする無料ユーザがいるからこそ、よく釣れる折れない釣竿の価値が上がり、有料ユーザとして「お金を払おう」という気を起こさせるわけです
直接の売上こそ有料会員からもたらされるものですが、有料会員が楽しくゲームが出来るのは、無料ユーザのおかげなのです
もちろん、無料ユーザも楽しんでいるわけですし、無料ユーザ同士であればフェアな戦いがされることになります
そもそも会員の多くは無料ユーザなわけですから、恐らく大部分ではフェアなゲームが行われているということです

ここで、提供者と、ユーザのベネフィットを整理してみます

提供者・・・有料会員は売上をもたらし、無料会員は報酬を渡さずともゲームを盛り上げてくれる
有料ユーザ・・・自分が強い世界でゲームを楽しめる(特権者≒貴族?になれる)
無料ユーザ・・・タダでゲームを楽しめる

このように、無料ユーザと有料ユーザの絶妙な関係性と、ユーザあたりのコストが非常に安いことから、多くのユーザが無料だったとしてもビジネスが成り立つわけですし、むしろ無料ユーザがいないとビジネスが成り立たないと言ってもいいのかもしれません
ちなみに、2,000万人会員がいたとして6人に1人、すなわち330万人が1,000円払ったとすると月々33億円、年間では400億円の売上が上がることになります
多くのユーザが無料とはいえ、いかに大きな売上が上がるかがおわかり頂けるでしょう

ただし、このビジネスモデルを成り立たせるために必要なことが1つだけあります
それは会員数です
上記の原価の計算の際に示した数字は、あくまでも数千万人単位のユーザがいることを前提にしました
サーバについても、サポート体制についても、最低かかるコストはありますし、上記の例でいうとユーザが1人だけだったとしても60万円/月のサポートコストを負担しなければなりません

また、先ほどの例では言及しなかった開発費や広告宣伝費についても、大量のユーザで割るからこそ無視できる存在になっています
よく「釣竿なんてコンピュータ上だけのもんなんやから、原価0円やろ」という声を聞きますが、これは当たってるとも言え、しかし外れているともいえます
釣竿というアイテムを投入するに当たって、ゲームバランスや顧客満足などを検討したり、それを開発したりとい

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