「釣りスタ」11のソーシャル・アクション @gamificationjp

1.飽きさせないゲーム進行

1つは、初心者を中級者に、中級者を上級者に引っ張り上げていく要素としてのソーシャルアクションである
仲間と何かをする、という活動を設けることで自分だけで楽しむということではなく仲間のために、チームのためにプレイをするという発想が出てくる
これは以前に投稿した「モチベーション3.0」とgamificationでいうところの「目的」に相当する
通常のゲームは、「一人で楽しむ」ことが目的になるのだが、ソーシャルの要素を織り込むことで「チームで楽しむ」「チームが勝つ」ことを目的にすることが出来る
また、チームへの貢献をどのようにするのかということは基本的にユーザ各自の行動に任されており、そこにはゲームやあるいはチームリーダーからの強制性の要素はない
あくまで貢献が大きかったユーザが受け取る報酬が大きい、という要素が用意されているだけである
「自律性」が確保されていることが分かる
また、チーム内での貢献度合いや他チームとの競争状況も数値化されすぐにわかるようになっている
大きな成果を上げれば、ランキング向上はもちろん写真、勲章、魚拓あるいは特殊なアバターアイテムを得ることになり、それは釣り日誌に表示されるため、いやらしくない形で自慢することが出来る
これは「上達感・達成感」につながっていく
またこの感覚が次のイベントやチーム対抗戦に参加する意欲になっていく

このように、モチベーション向上のポジティブなスパイラルを形成する上で各ソーシャルアクションがうまく機能していることがわかる
これは、ゲーミフィケーションサミット2日目ワークショップのレポートgamification summit2日目(1)design over timeにて説明されている”Player Journey”、ゲーム進行とユーザの成熟度についての実践例ということで参考になる
このワークショップにおいては、ユーザをうまく上級者まで引っ張り上げるためのデザインとしてはコンテンツ、ユーザナビゲーション、熟練者向けの特別な活動、というような要素で説明がされていた
釣りスタでももちろんソーシャルアクション以外の部分でユーザを初心者から上級者まで引っ張り上げていくようなデザインはされているが、ソーシャルアクションがそこを大きく支えていることも見えてくる
特に、ゲームプレイのそもそもの目的を変える「チーム」という要素は強力だ

2.「自己表現」として釣り日誌

以前のレポートgamification summit 2日目(2) design for socialを思いだしてみよう
このワークショップで説明されていた、ソーシャルをデザインする上で考えるべき要素としては「競争、協力、自己表現」の3種類であった
釣りスタにおけるソーシャルアクションを見ても、この3つにそれぞれ相当していることが見て取れる

サミットワークショップでの説明では競争や協力の要素は比較的想像がしやすいが、「自己表現」の要素はややわかりにくかった
「自己表現」の例として紹介されていたのはユーザの自由度がかなり高く作り込めるようなハコニワ系の事例であったが、ゲームデザインによってはこの水準での自己表現が可能な要素が用意されていない場合もある
現実の使われ方を見ていると、自己表現とは自律性の表現という側面と、間接的な自慢という側面の2つを意味していることが見えてくる
これは釣りスタのようなゲームであればゲームの成果、あるいはアバターといった点で表現されることになる

3.プレイヤータイプ別のソーシャルアクション

同じく、gamification summit 2日目(2) design for socialにて触れているBartle’s Player Types(バートルのプレイヤータイプ)を思いだしてみよう
バートルによると、プレイヤーのタイプには、キラー、ソーシャライザー、アチーバー、エクスプローラー、の4種類が存在する
キラーはプレイヤーキラー、他のユーザに攻撃的な態度を取ることを好む
ソーシャライザーは他のユーザと有効的な関わりを持つことを好む
アチーバーは、高い得点を稼いだりアイテムをコンプするような結果に出ることを好む
エクスプローラーは冒険そのもの、新しい領域を開拓するようなプロセスを好む

3つ目の観点は、このプレイヤータイプごとにどのソーシャルアクションが向いているのかという点だ
釣りスタにおいてはキラーが好むようなソーシャルアクションは基本的に用意されていない
チームを作ってそれを維持するという役割はソーシャライザーに向いている
アチーバーは得点稼ぎ、仲間とのアイテム集めやチーム戦での大会で活躍するだろう
エクスプローラーはミッションクリア型のアドベンチャーでのみんなでコンプで力を発揮しそうだ

このように、キラーを除く各プレイヤータイプそれぞれが活躍できるような要素がソーシャルアクションとしても用意されていることがわかる
また、一説にはグリーユーザは互いにコミュニティ意識が強くお互いに戦うような攻撃的な態度を好まない傾向があるとも聞く
キラー向けの要素がないのはこうしたことを考慮した結果なのかもしれない
もちろん、アチーバーやエクスプローラータイプのユーザはソーシャルアクション以外の一人プレイの要素でも楽しむことが出来る
魚の種類の収集、新しい釣り場の開拓といった点でもそうしたタイプのユーザを満足させられるような工夫がされている


以上、釣りスタにフォーカスを当ててソーシャルアクションの実際を眺めてみた
結果的にみると、非常にバランスよくなおかつ効果的にゲームの中でソーシャル性が盛り込まれていることが見て取れる
最初から狙ったというよりは様々な試行錯誤を経てこの領域に至ったのだろうと推測するが、ゲーミフィケーションを考える上でも参考になるところが多い
3つの観点を整理すると、

  1. チーム戦の導入で、ゲームの目的を途中から変えることが出来、継続性をより高めることが出来る
  2. 自身の成果を他ユーザから見えるようにすることで「自己表現」欲を満たすことが出来る
  3. 各プレイヤータイプそれぞれが活躍できるような要素を用意することで幅広いユーザを引き付けることが出来る

ということになろう
特にチームという概念は強力だ
チーム同士で競争をするという要素を盛り込むことで、ゲーム自体の目的が「チームで勝つ」ことに切り替わる
これは達成状況が明確に可視化出来る目的でありながら、同時に終わりがない目的でもある
釣りスタは長期間遊ばれているゲームだが、チームの導入により一定規模のコミュニティが構築され、そのコミュニティに新規のユーザを誘因するインセンティブが既存チームメンバーから働き続ける間はその規模が維持され続けることになる
ゲーミフィケーションにおいてもうまくこのチームという要素を取り込むことが出来れば同様に非常に強力な要素となる可能性がある
チームを実際にゲーム以外の領域でどのように盛り込んでいくのかという点は、まだ正解がある領域ではないが、サービスごとに様々なアイデアが考えられそうだ
やはり、人気のあるソーシャルゲームにはそれなりの理由があり、学ぶところも多い

ゲーミフィケーションの実際:「釣りスタ」のソーシャルアクション | gamification.jp

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