訪日の超富裕層は一体、何を求めているのか | GQ JAPAN | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

フォーシーズンズと同じ体験を機内でも再現。シックな外装も気分を盛り上げてくれる
日本政府観光局によると、昨年12月までの訪日外客数が1973万人(推計値)に達し、過去最高を記録した。増え続けるインバウンド需要のなかで、シー・ユー・チェンが富裕者層の嗜好について考察した。

外国人旅行者をどう取り込むか考えている

当記事は「GQ JAPAN」(コンデナスト・ジャパン)の提供記事です
いま、日本中の観光地がインバウンドの外国人旅行者をどう取り込むか、以前にもまして真剣に考えている。これからはさらにアッパーな中間層や富裕な人々が来日すると予想されているからだ。現在、その7割がアジア人とされる訪日旅行客は年間3.7兆円以上の巨額を日本に落としていく。

しかし、フランスでは外国人旅行客の消費額は年間20兆円とされており、それと比較するとまだまだほんの5分の1にすぎない。美術館や歴史的な建造物、美しい都市景観、さらにはファッション、グルメ、ワインなど、フランスに行かなければ味わうことのできない体験価値を、フランスはいろいろなレベルで提供していることが強みで、お金があってもなくても旅行者はそれぞれのレベルでフランス体験を満喫できる。

リッチならリッチなりに贅沢の限りを尽くせるし、さほどリッチでなくても、たとえばパリであれば、ルーヴルやオルセーの美術館で日がな一日過ごしたり、セーヌ川を遊覧したり、たんにパリのあちこちを散策したりしてロマンティックな情緒にひたることができる。

さて、富裕層といってもいろいろである。多少、粗いくくりになってしまうが、いままで手にしていなかった富を急に手に入れてしまったアジアの富裕層と、歴史的な文化的価値を幾世代にもわたって尊重してきた欧米人富裕層とでは、おなじものを見ても見方がまったく異なるということはあり得る。モノを買うといった形而下の快楽を追い求める者もいれば、モノよりもむしろ形而上学的な精神文化を享受することに重きを置く人もいる。そして、一般論としていえば、欧米の富裕層と比較してアジアの富裕層は、いまのところはどうしても、自己顕示的消費に走りがちである、といえるだろう。

そのいい例がある。昨年、中国人の億万長者Lin Jinyuan氏は、従業員6400名を引き連れてパリとコートダジュールを訪れ、パリ市内の140軒のホテルとニース、カンヌとモナコのホテル4760室を借りて、自分の会社の設立20周年を祝った。パリからニースへの移動には147台のバスを手配し、ギネスレコードとしてヒューマンチェーン(大勢の人が手をつないで人垣を築くこと)ならぬ“バスチェーン”記録に登録しさえした。このLin氏一行の“爆遊”によるフランスへの経済効果は、なんと3300万ユーロ(約44億円)に達したそうだ。これはまさしく自己顕示的消費そのものである。

では、Lin氏さまご一行を、日本はどうもてなすのだろうか? フランスにはパリやニース、カンヌがあり、そのとなりにモンテカルロがあるとすれば、日本には東京、箱根、富士山、京都、大阪があり、北海道のスキー・リゾートも常夏の沖縄もある。日本の場合はアジアの富裕層が中心だから、かれらにこうした日本の文化的、歴史的資産を活用してどんな体験価値を提供できるか、ということが問題になる。

富裕者層が求めることを知らなければならない

しかし、多くの観光地は、点の訴求である景勝地、歴史的資産、文化施設、グルメ、高級ホテルなどのリスティング以上のことはなかなかできないでいる。訪れた観光客に対して、さまざまな旅行体験価値をシームレスに継続させて提供するプログラムやノウハウに乏しいのが現状だ。しかし、そうしたプログラムを提供するには、今日の富裕者層が求めていることを知らなければならない。そのヒントになる例がここにある。

それは、24日間世界一周を12万ドルで提案するフォーシーズンズ・ホテルによるパーソナルなプライベート・ジェット・ツアーである。もっとも際だった特徴は、ふつうなら生じる“待ち”の時間をすべて徹底的にカットするサービスにある。スタッフは、読みかけの本にブックマークのしおりすら挟んでくれるし、いつでも気を利かせてシャンペンやコーヒー、チョコレートやローカルのスナックなどなどを持ってきてくれる。プライベート・ジェットを使うから空港での混雑にも遭遇しない。

目的地や経路にしても、イスタンブールからサンクトペテルブルクに向かったあとにはマラケシュ、そしてニューヨークへと、自由に選ぶことができる。待ち時間なしにさまざまな体験を、シームレスにつなぐことができるのだ。荷物だって夜、ドアの外に出しておきさえすれば、次の国に到着したときには、その国の宿に届いている。出国および入国の手続きもスタッフがすべて整えてくれて、サインするだけである。ジェットに乗り込むときは機体のタラップに高級車をつけるし、降機すれば、むろんハイヤーが迎えに出ている。

そして、到着した国では、スタッフが現地でお土産を買える分の現地の通貨が入った封筒を手渡してくれるし、通常は長時間並ばなければ入れない美術館にも、誰もいない時間帯に入ることができたりする。また、ロシアの宮殿ではバレエとオペラを鑑賞しながらディナーをエンジョイでき、万里の長城の上にテーブルセッティングして饗宴に興じることもできるのである。1日で3大陸を訪れることも不可能ではないし、毎朝、いろいろなオプションから好きな目的地を自由に選定することができる。ちょっとつかれたから中休みにモルディブのプライベートビーチでなにもせずに過ごそうと思ったら、すぐにでもそれが実現できる。

というようなことをヒントにして、日本にやってくる富裕層向けのサービスを考えるとしたら、どんなことができるだろうか。それが私の提案である。

(Text: Sy Chen )

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