舛添氏説得 首相が引導 直接電話、語気強め

東京都の舛添要一知事が6月議会会期末の15日、辞職願を提出した。最後まで辞職を拒み続けた舛添氏に、都議会だけでなく参院選への影響に危機感を抱いた与党の国会議員らは激しい説得工作を繰り広げた。舛添氏が急転直下、15日朝に辞意を固めるまでの舞台裏を追った。

都議会本会議で退任のあいさつを終え一礼する舛添知事(15日夜、東京都新宿区)

 15日朝、都内ホテルに自民党都連の石原伸晃会長や都議の内田茂幹事長ら幹部が集まった。

 「このままだと議会が解散される可能性が高い」。舛添氏が辞職せずに解散し、真夏の都議選を迎えたときの対応策まで話し合われた。内田氏の携帯電話が鳴ったのは協議が1時間ほどたったころ。舛添氏が辞職願を出すとの情報だった。

 「口約束ではないだろうな」「本人の署名入りの書面じゃないと信じないぞ」。この数日間、舛添氏の説得に疲れた都議らは信じられないとばかりに騒然となった。

 1週間ほど前。「舛添降ろし」は、東京・新宿の都庁から5キロほど離れた東京・永田町の首相官邸で静かに動き出した。

 都議会で舛添氏の政治資金流用疑惑などを巡る追及が始まった7日夕、安倍晋三首相を森喜朗元首相が訪ねた。

 2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長を務める森氏が、数日前にスイス・ローザンヌで開いた国際オリンピック委員会(IOC)理事会にテレビ会議で参加したことを一通り報告すると、話題は舛添氏の疑惑に移った。首相は「私も早く自ら辞めてもらいたいと思っているのですが」と語った。

 首相は日に日に厳しさを増す舛添氏への世論の批判が、22日の公示が迫る参院選で与党批判につながることを懸念していた。森氏との会談後、東京都選出の萩生田光一官房副長官を通じ、都議会をめぐる情報収集と事態の早期収拾の可能性を探るよう指示した。

 参院選への影響はじわじわと広がっていた。「2人目の候補者の支持が伸び悩んでいる」。自民党選挙対策担当者は、7日に発表した東京選挙区の2人目の候補者に世論があまり良い反応をしていないことを不安視していた。状況はすぐに首相にも伝えられた。

 一方、舛添氏の周囲ではリオデジャネイロ五輪・パラリンピックを花道に、9月議会で辞職する案がささやかれていた。閉会日のセレモニーでリオ市長から五輪旗を受け取る。舛添氏もそのシナリオに沿って自身の進退を考えていたようだ。

 それまで辞職を引き延ばして批判のほとぼりを冷ましたい舛添氏、4年後の都知事選を東京五輪閉会後にしようと9月まで舛添氏の続投を認めようとした都議会自民党。両者の思惑は、首相の指示で狂い始めた。

 舛添氏の早期辞職へカジを切った都議会自民党は、不信任決議案の提出前に自発的に辞職するよう水面下で再三促したが、舛添氏は拒み続けた。

 それどころか舛添氏は14日夕、都議会の議会運営委員会理事会で「知事選か都議選がリオ五輪と重なれば都政の混乱を招く」と発言。都議会を解散する可能性をちらつかせ始め、都議に動揺が広がった。「迎え撃つしかない。ガチンコだ」。反発の声が上がった。

 「俺が説得しようか」。首相に舛添氏への説得役を買って出たのはやはり森氏だったが、しばらくして返ってきたのは「説得しきれなかった」という返事だった。

 自民党都議らによる舛添氏への説得は15日未明まで続いた。舛添氏に「辞職する考えさえ示してくれれば、すぐに辞職に追い込むことはしない」などと、辞職願に日付を入れず、都議会議長預かりとする落としどころを探ったが、調整は不調に終わった。

 「むしろ混乱は深まっている。最後は政治家として自ら退く判断をしてほしい」。自民党都連が会合を開いた15日朝、首相は舛添氏に電話で自ら辞職するよう伝えた。なおしぶる舛添氏に「いま退けばまだ再起の芽はあるかもしれないから」と語気を強めた。

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