月別アーカイブ: 2016年12月

テレビが「ステマ手法」! 視聴者への裏切りでは?


テレビ局の”ステマ手法”を暴いた「週刊新潮」16年12月22日号

「週刊新潮」の見事なスクープだった。
16年12月15日(木)に発売された「週刊新潮」(16年12月22日号)には、疑惑のテレビ番組についての記事が載った。

テレビでも「ステマ」が横行していた、という事実を伝える記事だ。

残念なことにテレビ局やテレビ番組への不信を募らせるようなセンセーショナルな見出しが並ぶ。

「ステマ番組」「テレビ局の裏金」
筆者はテレビ放送について研究している人間である。

この記事に関連して、「週刊新潮」側から相談を受けて取材に協力し、関係資料や当該番組を視聴した。

その上で、この記事が行った「ステマ」の問題提起は決して小さくはないと感じている。「ステマ」は視聴者を裏切る行為だ。

テレビ不信が広がり、テレビ離れが進行する現状に歯止めをかけるためにも、放送業界はこうした悪弊を断ち切らねばならないと強い危機感を抱いている。

記事によると、問題の番組はTBS系列のIBC岩手放送が制作し、15年9月に岩手県を含む東北6県で放送した『宮下・谷澤の東北すごい人探し旅~外国人の健康法教えちゃいます!?』。宮下純一、谷澤英里香のタレント2人が岩手県内に住む外国人のところを訪ねて歩き、健康法を聞いていく、というもので実際に地元ではそれなりに知られた外国人を紹介する。だが、その中で誰が見ても唐突で不自然な場面が目につく。

実際に岩手で撮影した映像ばかりが流れていたと思ったら、唐突に東京の順天堂大学免疫学講座の奥村康・特任教授が登場し、「温泉は免疫力を上げます」などと語り出す。

さらにナレーションで「忙しい現代社会でも手軽に免疫力を高める食べ物がある」として「それがR-1と名前がついている乳酸菌です」と強引にこの食品についてのPRめいた説明が登場する。

しかも佐賀県有田町などでR-1が入ったヨーグルトを住民に飲んでもらったら風邪やインフルエンザの罹患率が下がったなどの実験データがグラフで紹介される。「R-1乳酸菌を取っておくと免疫の下りが少ない」と奥村特任教授が専門家としてお墨付きを与える場面も出てくる。

このあたりの場面が、いかにも「ショッピング番組」風で宣伝臭がとても強いのだ。

「R-1の入ったヨーグルト」と言えば、株式会社・明治の「R-1乳酸菌」の赤いパッケージを思い浮かべる人は少なくないだろう。

実際、日本国内で商品化されているものは明治の製品しか存在しない。

この番組では商品名は伏せていたものの、事実上、明治の商品を露骨に宣伝する場面が不自然な形で挿入された。

この番組はIBC岩手放送の番組審議会でも「問題」になった。
番組審議会、通称「番審」は、それぞれの放送局に設置された外部有識者によるお目付機関であり、放送法で設置が義務づけられている。

ただ実態はかなり形骸化していて、どの局でも「番審」は通常月に1度、局の側が指定した番組を視聴してもらって「ご意見」を拝聴するというスタイルだ。ところが、この番組については番組審議委員の一人がたまたま放送を見ていてこの番組が対象になった。15年11月のことだ。

審議会の議事録を読むと、委員たちが「あざとい」「視聴者をバカにしている」などと次々に違和感を表明している。通常は「ガス抜き」で終わることが多い番組審議会の中ではきわめてまれな出来事でこれほど紛糾した番審の議事録は読んだことがない。

番組審議会では、外部の委員の意見に対しては局の責任者が出席して説明することになっている。

その中で、IBC岩手放送は以下のように説明した。

「番組はR-1乳酸菌の情報を取り込み、(明治から)タイアップ料金をいただくことで成り立ちました」

「しかし、(明治の)スポンサー提供表示はしない。それを(明治も)理解しています」

「(番組で用いられた)素材も、メーカー(=明治)から提供いただいたそのものです」 

つまりIBC岩手放送は、明治から「タイアップ料金」を受け取りながら、番組提供などとは表示せず、しかも映像素材も明治からもらって番組の中に使用していた。

ネットニュースのサイトなどで問題になった「ステマ」=ステルス・マーケティングをテレビでもやっていたとテレビ局が告白したのだ。
実態はコマーシャルなのに通常の番組のように見せかける。

これはやってはいけないことだ。

番組放送のルールである「放送法」では、12条にこう規定されている。

第十二条  放送事業者は、対価を得て広告放送を行う場合には、その放送を受信する者がその放送が広告放送であることを明らかに識別することができるようにしなければならない。

要するに、放送法は「ステマ」は法律違反だと明確に宣言している。

問題の番組は、放送法に違反する疑いがある。

岩手放送側は、番組審議会で以下のように弁明している。

・番組は、岩手放送の営業と番組を下請けした東京の制作会社、広告代理店、明治の宣伝担当者との間の「コミュニケーション」で成立した。

・CM枠ではなく、番組内でR-1の情報が盛り込まれることを条件に、明治が番組に「料金」を出す。

・番組内で流れる「提供」の会社の中には明治を入れない「ノンクレジットタイアップ方式」を取った。

・番組に登場する医師(=奥村康・順天堂大学特任教授)やデータは明治が提供したそのものを使った。

番組内のR-1に関連する部分は事実上、明治の広告なのに、それを視聴者に隠して放送していたことになる。
視聴者を裏切る、許されない行為であることは明確だ。

では、「ステマ」は岩手放送で発覚したものだけなのか。他の局でも存在するのか?

「週刊新潮」が調べていくと、岩手放送と同様に不自然な形で「Rー1乳酸菌」の効果をPRする宣伝臭の強い場面が挿入された番組がキー局でも見つかったという。筆者もそのすべてを視聴したが、程度の差こそあっても番組の流れが「不自然」だったり、「唐突感」や「違和感」がある形で「R-1乳酸菌」や、他の明治の製品で使われる「PA-3乳酸菌」「LG21乳酸菌」の効果を強調するものばかりだった。

以下、疑惑の番組群だ。

「30XX年まで生き残れ 衝撃!世界のマル秘健康法SP」(TBS)

「あなたの体の悩みを2週間でスッキリ!!」(テレビ朝日)

「ソレダメ!~新常識満載!食生活改善SP」(テレビ東京)

「駆け込みドクター」(TBS)

「ヒデ&ジュニアのニッポン超安全サミット」(フジテレビ)

「FOOT×BRAIN」(テレビ東京)

「つなげリオへ!噂にアタックNO.1」(フジテレビ)

「直撃!コロシアム!!ズバッとTV」(TBS)

「プロから学ぶ生活術ダメ出し!アドバイザー」(テレビ朝日)

キー局では日本テレビをのぞく全ての局で放送されている。

岩手放送と同様、R-1乳酸菌の免疫力を強調し、風邪やインフルエンザ予防に効果があるなどの説明がなされているが、番組内で「明治」の名前はまったく出てこない。赤い容器にボカシがかけられていたりするが、飲んだ経験がある視聴者なら明治の製品だと判断できる程度の隠し方をしている。

それぞれの番組内の「R-1乳酸菌」の扱い方は個別に検証してみるしかないが、「ステマ疑惑」がこう広がるとそれぞれの放送局だけで対応して済む問題ではなくなってくる。

むしろ、各民放局が加盟している日本民間放送連盟(民放連)、さらには番組制作会社も関係しているから番組製作会社の団体であるATP(全日本テレビ番組製作社連盟)、さらに番組放送の自律的なお目付機関であるBPO(放送倫理・番組向上機構)が徹底調査する必要がある。

インターネットの急拡大で広告収入が相対的に減りつつあるテレビで今回の疑惑が浮上した背景には、多少ルール違反してでもスポンサー側にサービスしなければ、という焦りがあったのかもしれない。

ただ、実態としてCMのようなものを番組に紛れ込ませるのは「ステマ」と非難されても仕方ない。

何度も言うが、これは視聴者を冒涜する行為だ。
テレビ局側には徹底した調査の実施と視聴者が納得いくような説明を求めたい。

情報源: テレビが「ステマ手法」! 視聴者への裏切りでは?

百貨店の「ネット販売」はなぜ失敗するのか 「オムニチャネル」は百貨店の救世主?|経営眼を鍛えるビジネス発想・売れないが売れるに変わるスイッチはどこにあるか?|ダイヤモンド・オンライン

「売り方」にこだわっていた経営者が「価値を売る」ことに気づいた時、「モノの見方」が変わる。そこから企業が変わり始める――。行き詰まりを感じる経営者の視点が変わるきっかけ、企業再生のきっかけとなる「スイッチ」の見つけ方を、経営コンサルティングのプロフェッショナル集団・カート・サーモンの河合拓氏が解説する第2回。今回はもはや“衰退産業”とも言われる「百貨店復活のスイッチ」だ。

 今、我々の生活の様々なところにITが入っている。企業は莫大な投資を行いながらIT化を進めているが、それらが効果的に事業価値を上げたという話は、私の知る限りほんの数件に過ぎない。多くの企業ではIT化は過剰投資、あるいは無駄な投資になっている。

 最近は「IT化」という言葉が少なくなり、「デジタイゼーション」という言葉の方を聞くようになってきた。「IT化」というのは読んで字のごとく、今まで人間がやってきたことがITに置き換わる、という意味である。だから、その効用性は、自動化、省力化、正確性など生産性の向上となる。

 これに対して、「デジタイゼーション」というのは、ITを活用して、これまでなしえなかったような新しい付加価値を新たに創造することをいう。今百貨店業界で最もホットトピックである「オムニチャネル」に焦点をあて百貨店復活のヒントを提示したい。

間違いだらけの「オムニチャネル」

 オムニチャネルというのは、顧客が「いつでも、どこでも、どのようにしても」商品を購買できるよう様々な技術を導入し、組み合わせ、顧客にとって高い価値を実現することをいう。

 例えば、朝起きるとネスプレッソのカプセル在庫がきれていた。その場でパソコンで買うと翌日自宅に届く。オフィスから帰宅し、夜自宅でホッコリしているときに先週末に店舗で見た洋服をスマホで買う(いつでも)。女性の一人暮らしだと宅急便配達が自宅まで来るのがなんとなく嫌なため、通勤途中にあるコンビニで商品を受け取れる(どこでも)。あるいは、店頭で商品を見ていたらSサイズが切れていたため、スマホで在庫を探すと隣の店にあったので、そこからSサイズの商品が配送される(どのようにしても)、などだ。

 顧客は、リアルの店、ECを通して、場所、時間、方法を全く気にせず好きな商品を好きなように買うことができる。「オムニチャネル」という概念は瞬く間に業界に広がった。

 さて、そもそも、オムニチャネルという概念は米国からきたものだ。そして、米国ではGMS などのスーパーで発達したものである。確かに、米国でもメイシーズなど百貨店でオムニチャネルが進化した事例もあるが、米国の場合、まず、広大な土地を広くカバーするために様々な物流拠点が存在し商品を全国に届けている。

 また、米国では多くの消費者がスマホやインターネットを積極的に活用しており、全世代にわたってITリテラシーも日本よりはるかに高く需要も高い。一方、日本の百貨店などは、地方に行けば60歳以上の顧客が中心で、まだまだ購買の中心は店頭での接客を通した買い物だ。

 加えて、百貨店のビジネスモデルを両国で比較すれば、米国では百貨店の「買い取り取引」が多く、商品は百貨店に帰属するため、百貨店が自由に商品を各物流拠点に動かすことができる。だが、日本では委託消化と呼ばれ、百貨店は売れ残ったら返品する取引形態が一般的で、百貨店が自由に商品をあちこちに送り回すことが難しいなど、日本と事情が異なっている。

一口に百貨店と言っても1店舗で数千億の店から
「空き部屋」のような店まで様々

 日本の百貨店業態は特殊だ。まず、日本国内だけで百貨店が250も存在し、駅前などの一等地にある百貨店以外の、特に、地方百貨店の多くは瀕死の重傷を負っている。元気が良いのは「新宿の」伊勢丹、「二子玉川の」高島屋、「梅田の」阪急など、好立地商圏で顧客をがっちりつかみ存在感を出している店舗のみ。百貨店の中でも圧倒的多数を占める地方百貨店の一部には、インバウンド需要(外国人の来店)という「神風」で一時的に持ち直しているところもあるが、業界では「量販家電」か「ユニクロ」のいずれかを入れるしか道はないとまでいう人もいる。

 このように、百貨店といっても好立地に館(やかた)構え、1店舗で数千億円も売るモンスターのような店もあれば、ほとんどテナントも入っていない空き部屋のような館もある。百貨店と行っても全く違うのだ。

 私も、ある金融機関から東北の地方百貨店再生の仕事を受けたとき、東北に出張し、店舗を見に行ったことがある。その百貨店は繁華街の好立地にそびえ立っていたが店内は閑古鳥が鳴いていた。致命的だったのは、その百貨店の真正面に、もう一つの高級百貨店が隣接し「顧客の奪い合い」になっていたことだ。そもそも、その繁華街に人がいない。

 タクシーで5分ほど走ったら、巨大なショッピングセンターが広大な敷地に店を構えていた。ユニクロ、GAP、ZARAなど低価格の衣料品やスターバックス、ABCマートなど、東京でも馴染みの店舗が店を構え、隣にはボーリング場まであった。家族連れも車で来るならこちらに来るだろうということは想像に難くない。

 その窮地に陥った百貨店は「再生」に向けて従業員の教育や芸能人のイベントなどを企画していたが、そのレベルの改善を繰り返しても復活しないことは明らかだった。残念だったが、その再生の仕事はお断りしたのだが、この百貨店のケースは特殊ではない。特に業績が悪化している地方百貨店においてはどこも似たような状況に陥っている。こうなった店舗はすでに存在意義を見いだすのは難しい。

 こうした中、日本の百貨店は、数少ない優良店舗の成長戦略にかけてゆくことになるのだが、売上増加を目指す時、「顧客のLTV (Life Time Value生涯価値・顧客が一生にいくらお金を落としてくれるか)の向上」を狙うのか、「顧客数の増加」を狙うのか、非常に重要な戦略の岐路に立たされている。

百貨店復活のスイッチ(1)
デジタイゼーション戦略での“全員外商化”

 日本という国の特殊事情をみたとき、百貨店というのは、エリア特性と密接な関係がある。分かりやすく言えば、百貨店というのは「街のシンボル」であり「街の文化」なのだ。

 例えば、九州のある名門百貨店の支援に行ったときだ。その百貨店は全国に一店舗しか存在しないのだが、地場の富裕層をがっちりつかみ、近くにショッピングセンターができても顧客を取られていなかった。その街では「結婚やお歳暮時など、特別な贈り物を贈るときは、その百貨店で買ったものを贈るのが常識」という「街の文化」をつくり出すことに成功していた。まさに、長年の事業が生み出した「ブランド力」である。

 しかし、その百貨店でさえ、流行に乗ってインターネットショッピングサイトを始めたのだがうまくゆかない。理由を分析すると、そもそも、その百貨店を支えている顧客が、シニア層で、特に高額品においては、まだパソコンやスマホを使って買い物をしていなかったということ。また、その地域の外に出れば、別の百貨店が商圏を陣取っていて顧客を離さないということだった。

 そこで、もっと遠くの、例えば、関西や関東をめがけて地方の辛子明太子のような名産品をネット販売してはというトライアルをしたのだが、そうなると、今度は百貨店の供給業者が、すでに直接百貨店を飛ばして「楽天」などに出店していて、九州の辛子蓮根や明太子はさっぱり売れない。

 そんなとき、「インターネット販売の戦略を考えてください」といわれて、私が答えたのは「インターネットで遠くの顧客に販売しても売れません。自分のリアル店舗の周りの顧客をもっと大事にしてください」だったのである。

 この九州の百貨店が目指すべきは、「リアル店舗がつかんでいる商圏」に対して、より既存顧客のLTV (Life Time Value生涯価値・顧客が一生にいくらお金を落としてくれるか)を上げることだったのだ。自らが陣取る商圏外の顧客に、自分の百貨店の「のし紙」を有り難がる人がいるはずだ、という前提で、インターネット販売を始めても結果は目に見えている。

 そもそも、百貨店に来る顧客の購買心理を深く知れば、百貨店が他の小売業に対し最も競争力を持っているところは、高額な商品を、じっくり、安心、安全なサービスで販売する技術力とブランド力だということがわかるはずだ。

 そして、その究極の販売手法は「外商」である。「外商」というのは、もともと、百貨店の外に出向き、特別な顧客を訪問し、特別な接客で商品を売る手厚い営業手法であるが、最近では特別ゲストルームのようなところに顧客を呼んで販売するやり方もある。ある老舗百貨店の外商経験者に話を聞いたところ、「昔は個人で現金で1億を払って壺や絵を買う人もいた」というほどだ。

 こうした独自の販売手法は、小売業の中でも百貨店しかない。私は、デジタルを使い、ローコストで百貨店の顧客全員に特別な体験をしてもらう「顧客の全員外商化戦略」こそ、百貨店がスーパーや書店などと差別化し得る百貨店復活の「スイッチ」だと思う。

 例えば、冒頭にあげた、ネスプレッソのカプセルなどは在庫がなくなれば自動的に自宅まで届けてほしい、お気に入りのブランドの新商品が入荷したら、購買履歴などを参照してそのブランドのファンに入荷の予定を知らせる。あるいは、取り置きをしてくれるなどのサービスを行う。店頭ではITを使った丁寧なコーディネートや入荷していない商品の説明を行うなど、外商で実現している「売り方」のサービスを、百貨店に来る顧客全員にローコストで実施する。

百貨店復活のスイッチ(2)
ECとリアル店舗での“相互送客”

 次は、全く異なるケースを紹介しよう。

「うちは、オムニチャネルという言葉は社内で使わない。徹底して顧客が求めていることを繰り返して改善していった結果、オムニチャネルに近づいた」

 オムニチャネルをうまく活用しているある百貨店の経営者が語った言葉だ。

 その百貨店は、商品開発の企画機能を本社から売場に移し、顧客と一緒に新商品を作るという斬新なビジネスモデルを先駆けて打ち出し、日本の百貨店では珍しくプライベートブランドで成長している。

 彼らの商品戦略の仕事に携わったとき、経営トップから言われた言葉は、「世界で最も良い商品を作ってほしい」だった。「流通しているナショナルブランドの真似をして、価格を下げて売るためのプライベートブランドであればやらない」とはっきり言われたことを思い出す。そこで、私は、世界中の工場とマーケットを回り、日本で流通している商品のレベルを超えた、まさに「規格外」の商品を開発した。調査した顧客の数は数万人を超え、訪問した国や地域は10を超える。コンサルティングのプロジェクトとしては異例のものだった。

 この百貨店は、そのヒット商品を全国販売するためEC拡販の検討を始めていた。既存顧客でなく新規顧客を狙っているのだが、まっとうな戦略だ。完成度が高い商品を自前の店舗で独占的に販売することができきるのであれば、既存の顧客のLTVをあげるより、まだ、その商品を知らない人に認知を高め、その商品が持つ良さを実感してもらう方が理にかなっている。このケースの場合、百貨店復活のスイッチは、商品を軸としたマーケット拡大、つまり「顧客数の増加」となる。

 このように、委託取引を中心とした百貨店のオムニチャネル戦略は既存顧客のLTV向上による「顧客の総外商化」を、魅力あるプライベートブランドを中心とした百貨店のオムニチャネル戦略はECとリアル店舗を絡めた市場拡大による「顧客数の増加」を狙うことで、百貨店のデジタイゼーション戦略は整理できる。

「顧客データ」を主軸か、「商品データ」を主軸か

 デジタイゼーションが進んだ世の中で、小売り事業で勝つためのコツは二つしかない。それは「顧客」を主軸に戦略を展開するか、「商品」を主軸に戦略を展開するかのいずれかだ。オムニチャネル化が進めば、アパレル業界の工場、商社、アパレル、百貨店というバリューチェーン内で、「顧客データ」と「商品データ」の争奪戦が始まる。

 データというのは、過去から今に至る長い時間軸(縦のデータ)、複数の競合企業、類似企業のデータの集積(横のデータ)のかけ算で活用価値が大きく変わってくる。この面積が最も大きなデータを持っている企業が、業界全体をフィクサーのように動かし、業界の中で神の領域に近づくことができる。いわゆる「ビッグデータ解析」という考え方だ。

「顧客」を主軸に戦略を展開するわかりやすい事例は、アマゾンや楽天である。彼らは、自分たちで自主企画商品は作っていないが、膨大な「顧客のデータベース」を持ち、様々な技術を駆使してクロスセル(この商品がよければ、あちらの商品もいかがですかと推薦する技術)やアップセル(ある商品を買ったら、さらにその上位版の商品も推薦する技術)を誘引し、顧客をがっちり掴んでいる。「顧客の全員外商化」戦略は、「顧客データベース」を集積し、顧客の嗜好、購買行動を百貨店がしっかり分析することが重要だ。

 これに対して、「商品」を主軸に戦略を展開するわかりやすい事例では、ユニクロのヒートテック、ブラトップなどだろう。最近では、セブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」、丸井の「らくちんシリーズ」もプライベートブランドの成功事例である。魅力ある商品を主軸に全国にECを使って展開する戦略は、「商品データベース」をしっかり活用し、在庫場所の管理や決済、配送スケジュールなど顧客にとって最適な組み合わせを実現することが重要だ。

 つまり、百貨店のオムニチャネルの戦略とは、「『顧客』を主軸にしてLTVの向上を狙う」のか、「『商品』を主軸にして顧客の増加を狙う」のか、いずれのポジションを取るか判断を行うことなのである。

 私達カート・サーモンには、米国本社に数多くのオムニチャネル導入を手がけたコンサルタントやIT責任者が山のようにおり、彼らと毎日のようにテレビ電話会議で議論を尽くしている。私は、オムニチャネルの本質をつかむべく、彼らに「結局オムニチャネルとは何なのか」とよく聞くのだが、彼らが答えることは一つしかない。

「オムニチャネルの目的は3つしかない。顧客が、When (いつでも)、Where (どこでも)、How (どうやってでも)で買い物ができことを実現することであり、これらの中でニーズがあることを実現すれば良い。だから、その具体的戦略は業態や状況ごとに変わって当たり前だ」というものだ。

 だから、米国でこういうことが流行っているという“形”の議論に惑わされず、自らが顧客に提供すべき価値とは何か、それは、When、Where、Howで何が実現できるのか、という本質論から戦略を組み立てるべきなのだ。

ユニクロを超えるのは百貨店の使命

 私は、メディアの人に「日本で勝っているファッションブランドはどこですか」とよく聞かれるのだが、そのたびに「ユニクロです」と答えるといやな顔をされてしまう。我々はユニクロの話はそろそろ聞き飽きている。デフレ時代の到来と言われ、百貨店衰退論が日本を席巻し、百貨店は無くなるという極論さえまかり通った時があったが、百貨店といっても、世界でも有数の優良店舗もあれば、ショッピングセンターに顧客を奪われ苦しんでいる地方百貨店も存在する。

 私は、その両者と仕事をしているが、特に前者においては、その高度なノウハウや有能な人材に支えられた営業力は世界に類を見ない。また、彼らはM&Aや業態転換を繰り返し、次々と斬新な戦略を実行しようとしている。百貨店という業態は、経済が衰退した日本で、高額商品をしっかり販売することができる唯一の企業なのだ。

 国民はアベノミクスに熱狂的だが、日銀でお札を増産すればお金の価値が下がって物価が上がる、などという、分かったような、分からないような経済政策に期待するより、百貨店業界こそがしっかり正しいスイッチを押すことで、デフレ一色に染められた市場の彩りを鮮やかにすることができるだろう。

 過去、日本のアパレル業界は、SPA化、サプライチェーン、QR (Quick response)、アウトソーシングなど、米国から輸入された改革手法を「間違った形」で導入し、効率化を追い求めてきた結果、顧客が感じる体験価値をどんどんそぎ落としてきた。オムニチャネルではその二の舞は踏んで欲しくない。

(カート・サーモン・ユーエス・インク日本支社 パートナー 河合 拓)
カート・サーモン・ユーエスインク日本支社パートナー/繊維商社にて10年の海外営業の後、経営コンサルタントに転身。ターンアラウンドマネージャ(企業・事業再生)として数多くのアパレル、流通チェーン、百貨店などにハンズオンで入り込み、経営立て直し、新規事業立ち上げを成功させた。著書『ブランドで競争する技術』(ダイヤモンド社)は中国語に翻訳され台湾でも発売されている。

情報源: 百貨店の「ネット販売」はなぜ失敗するのか 「オムニチャネル」は百貨店の救世主?|経営眼を鍛えるビジネス発想・売れないが売れるに変わるスイッチはどこにあるか?|ダイヤモンド・オンライン

吉祥寺「小ざさ」は世界最強のビジネスである!1坪2品で3億円を売り上げ、40年間行列を途絶えさせない秘密|1坪の奇跡|ダイヤモンド・オンライン


ジュンク堂書店池袋本店横の「東(あずま)通り」を入って約5分。
すごい若く綺麗な女性が集まる「天狼院書店」がある。
たった15坪の書店なのに、「本屋にこたつがある!?」と話題になり、開店わずか3年で153件のマスメディアに取り上げられた。
なかでも、店主の三浦崇典氏は『AERA』の「現代の肖像」にも登場した。ただ、その起業のきっかけが、1冊の本だったというから驚きだ。
その1冊とは、稲垣篤子著『1坪の奇跡』。
たった1坪、「羊羹」と「もなか」の2品で年商3億円。吉祥寺ダイヤ街で40年以上行列が途絶えない奇跡の店があるという。
どんなお店なのだろうか?三浦氏に語ってもらった。

僕が行列に並んだ理由

三浦崇典(Takanori Miura)

 数年前の冬、僕は思い立って吉祥寺「小(お)ざさ」の行列に並ぶことにした。池袋から始発に乗り込み、吉祥寺駅に着き、ダイヤ街というアーケード街に向かうと、すでに行列ができていた。

 行列には、常連も多かったが、日本全国から来る人もいるという。
 僕のように、都内なら始発でなんとか間に合うが、地方の人はそうはいかない。前日入りして、近くのホテルに泊まって並ぶ人もいるという。
 行列の先にあるのは、たった1坪の和菓子屋である。
 僕らが狙うのは、1日150本限定の「幻の羊羹」だった。
 この「幻の羊羹」を求める行列が、40年以上、途切れたことがないという。

 このときは、編集者と装丁デザイナーの友人と一緒に並んだのだが、僕らの手には1冊の本が握られていた。

 それが、吉祥寺「小ざさ」代表稲垣篤子氏の著書『1坪の奇跡』だった。
 つまり、「幻の羊羹」を待つ行列に並びながら『1坪の奇跡』を読もうと僕らは考えたのだ。

 僕は2013年9月26日に東京池袋に天狼院書店の1店舗目「東京天狼院」をオープンさせることになるのだが、その当時は、まだ天狼院書店は存在していない。

 行列の中で、吉祥寺「小ざさ」のビジネスを研究しようと僕らはしたのだ。

 寒い中、朝早くに多くの人がこの行列に並んでいた。この行列の正体は、いったい、何なのだろう。

世界に冠たる「小ざさモデル」

 あのティファニーの1平方メートルあたりの売上を、アップルストアが抜いたという記事を見たことがあるが、試しに、1坪3億円売り上げる小ざさと比べるとどうなるだろうと計算したことがあった。

 それで出てきた数値が驚異的だった。

 ティファニーを凌いだアップルストア。吉祥寺「小ざさ」は、なんと、1平方メートルあたり、そのアップルストアの実に20倍ほど売り上げていることがわかった。
 もしかして、吉祥寺「小ざさ」こそが、世界最強のビジネスなのかもしれないと僕は考えた。

 しかし、どうも、数値が合わないのだ。

「幻の羊羹」は、1本600円ほどでしかなく、1日限定150本である。
 と、すれば、1日に羊羹の売上は9万円程度、月に270万円、年間でも3200万円ほどでしかない。3億円には到底至らないのである。年商の1割程度でしかない。

 吉祥寺「小ざさ」の商品は、幻の「羊羹」と「もなか」の2品しかない。
 そうだとすれば、簡単な引き算で、「もなか」が売上の9割を占めていることになる。実に、「もなか」で年商2億7000万円以上である。
「マーケティング」的にみれば、吉祥寺「小ざさ」のモデルは、こういうことになるのではないだろうか。

 幻の羊羹は、「ブランディング」のための商材である。
 現に幻の羊羹は、そのずっしりとした重みからその形から、金の延べ棒のように感じられ、到底600円の商品とは思えない。その「幻」という概念が、本来の価値以上のものをもたらしている。それは、羊羹のブランディングが成功した現れと見ることもできる。

 そして、その「ブランディング」の成功で上昇したブランド価値を利用して、大量生産している「もなか」を売っていると見れなくもない。

 いち早くネット販売も取り入れて、1坪という物理的な制限を突破しているし、店舗自体は1坪と小さいながらも、別な場所で、製造工場が存在している。

なぜ、40年も行列が途絶えないのか?

 実は、極めて優秀なインターネット通販企業という側面も小ざさにはある――おそらく、吉祥寺「小ざさ」の本質を知らないマーケターなら、そんな分析結果をしたり顔で示すかもしれない。

 けれども、一口、「小ざさ」の幻の羊羹を口にすれば、そんな後付のマーケティング理論など、何の意味もなさないことが明白になるはずだ。

「小ざさ」の羊羹は、圧倒的なのだ。それを口にする人を最大限に幸福にさせる「ハイパーコンテンツ」なのである。これを食べてしまえば、ビジネスモデルは、後からまるで水が合理的な山肌を流れて、川となるように、自然な流れで構築されていったに過ぎないことを思い知るだろう。

 1坪で年間3億円売り上げ、40年間行列が途絶えない「小ざさ」のビジネスの秘密は、決して、そのビジネスモデルにあるわけではない。その「羊羹」と「もなか」の圧倒的な旨さに秘密があるのだ。

 まるで芸術の領域にまで高めた、その創作の秘密は、『1坪の奇跡 』に詳しく描かれている。

「羊羹をつくり続けていると、感動的な喜びを味わえる瞬間があります。
 炭火にかけた銅鍋で羊羹を練っているときに、ほんの一瞬、餡が紫色に輝くのです。
 透明感のある、それはそれは美しい輝きで、小豆の“声”のようにも感じられます」(本書16頁より)

 ヘラを銅鍋の中で動かす時に、「半紙一枚分の厚さを残す」という境地。それこそが、アップルやティファニーを凌いだ、吉祥寺「小ざさ」の強さの秘密なのだ。

今こそ、小ざさに学ぶべきもの

 我々は商売において、マーケティングやビジネスモデルを優先しがちだが、実際のビジネスとは、マーケティングだけでは成り立たない。

 マーケティングを極めようと思えば、やはり、コンテンツ主義に帰結すべきなのではないだろうか。

 特に今年は映画界でそれが証明されている。

 前評判のあまり芳しくなかった庵野秀明総監督の『シン・ゴジラ』は、圧倒的なコンテンツ力で、SNSやオウンドメディアを中心に拡散されて大ヒットした。

 その勢いが衰えない時期に公開された新海誠監督の『君の名は。』は、興行収入が200億円を突破した。これも元々は東宝にとってのエースではなかったので、封切り直後は、上映館数も多くはなかった。

 けれども、コンテンツの力によって、口コミで上映館数が広がり、大ヒットとなった。

 SNSやオウンドメディアが強い、つまりは、個々人の消費者が大きな発言権を持つようになった現代こそ、我々は、吉祥寺「小ざさ」に多くを学ぶべきなのかもしれない。

 逆説的に言うと、我々、サービスや商品の提供者は、コンテンツの制作・製造に集中し、良いコンテンツさせ生み出せば、消費者がヒットさせてくれるという、創る人優位の時代に突入したと言えるかもしれない。

 もし、ビジネスで何かに迷ったら、始発で吉祥寺に出かけて、ダイヤ街の行列に並んでみるのもいいだろう。

 40年以上途絶えたことのない行列に並ぶとき、そして、幻の羊羹を口にしたとき、きっとあなたはマーケティングの本質を理解することだろう。

 僕も天狼院書店の経営者として、そして、実際に本をつくる人間として、改めて、コンテンツ主義を実践して行こうと考えている。

 ビジネスモデルは、結果論にすぎない。学術のためではなく、実際にビジネスをするのなら、コンテンツ主義こそが、最良のマーケティングだろうと思うのだ。

(終わり)

情報源: 吉祥寺「小ざさ」は世界最強のビジネスである!1坪2品で3億円を売り上げ、40年間行列を途絶えさせない秘密|1坪の奇跡|ダイヤモンド・オンライン

ビジネスモデルの崩壊と新時代を迎えるため、 独自性をクリエイトしていく〜株式会社 リウボウホールディングス 糸数 剛一〜 | JOB ANTENNA

2016年12月24日

“ビジネスモデルの崩壊”と新時代を迎えるため独自性を クリエイトしていく

沖縄ファミリーマートを県内シェアNo.1に導いた立役者である糸数剛一氏に、「沖縄の経済と今後」について話を伺った。糸数氏は米ファミマ社でのCEOの経験など、数々の功績を称えられ、2016年5月よりリウボウホールディングスの会長に就任した。国際的視野を持ちつつ、沖縄でイノベーションを展開し続け、沖縄の未来を担う新時代の旗手として期待されている。

「私の携わる小売業の観点から話をさせてもらうと、底打ち感は凄く持っています。今はネットのおかげで日本中どこにいても似たようなものが買えるし、売れている店を真似したところでうまくはいかない。仮に東京でウケているものを沖縄に持ってきても、こっちで売れるとは限らないんです。それはただのコピペにすぎないから。これは小売業にとどまらず、あらゆる業界に共通することではないでしょうか。ビジネスモデルの崩壊。独自性をどうクリエイトしていくか、ということを自分の頭で考えられて、情報収集する癖がある人間でないと、通用しない時代です」 時代の趨勢をみる限り、〝ビジネスモデルの崩壊〟というのは頷けなくもない。似たような話はいろんな業界からも悲鳴として聞こえてくる。独自性をクリエイトしていくこと、つまり差別化を図るということが要である、という糸数氏の指摘はもっともだ。

しかし、実践するのは口で言うほど簡単ではない。社員にはどうアドバイスしているのだろう。 「いつも言っているのは、〝常に本質的な問題を理解し、知識や経験をもとに自分で考えろ〟っていうことですね。最終的には経験がものをいうんです。見たり聞いたり、叱られたりってことが多いほど、想像力は増えます。想像力がないと創造なんてできません。

今は若い人だけでなく、みんな自分の頭で考える習慣がない。調べるのとか、コピペは得意だけど、それでは既存の枠から出られない。私たちの業界でいうと、模倣やダウンサイジングではもうモノは売れないんです。でも、ビジネスモデルがなくなった今だからこそ、いくらでもやりようはあるし、我々含め地方創生のチャンスなんです。新しく作れるって考えたらワクワクしませんか?

下手したら会社がつぶれるかもしれない。でもその緊張感とワクワクがイノベーションを生むんですよ。ゼロベースであらゆることをやっています」

沖縄を本物の 価値ある場所に!

糸数氏の口から〝ピンチはチャンス〟という意味合いの言葉が発せられたときにはいささか驚いた。具体的な施策はあるから平然と言うのだろうが、はたしてピンチから脱却しチャンスに転化していくとはいかように?

「百貨店というのは一番幸福感を味わえる、一番ワクワクするところでなくてはいけないんです。やり方は変えつつ、幸福感を出すためにはどうすればいいか。もちろん、ライバル店が何をしているのかとか、どこで何が売れていて、どういう動きがあるかは常に知ってなければいけません。それはいわばモップ掛けと同じ〝ルーティンワーク〟であり、やらないといけないこと。ただしそれをやっているだけでは話にならない。

我々がやるべきことは、沖縄でしかできないワクワクを演出することです。沖縄を訪れる国内観光客の数は年間600万人います。この数字は大きいですよ。海外からの観光客も、戦略的に取り込みたいと考えています。国内外の観光客に『沖縄に来たら必ずリウボウに寄る』って言ってもらえるようになれば、これほどのことはありません」 国内観光客数が長年横ばいである一方、沖縄を訪れる海外観光客は約150万人(2015年)。今後10年間、その数は伸びていくとも言われている。最終的に国内外の観光客数が1000万人を越す可能性もあるのだ。確かにこれはチャンスと考えても差し支えない。さらに糸数氏はこう続ける。

「この島を、本当に価値ある場所にするためには国際観光都市化が必須でしょう。将来的にはヨーロッパやアメリカからの観光客も取り込みたいと考えています。ただ、足がかりとして今はアジアに目を向けています。沖縄はアジアにとって〝一番近い日本〟であり、本土からもやはり、アジアに〝一番近い日本〟なんです。双方の中継点、つまりハブとしての沖縄という構想自体は数十年前からありました。ただ、なかなか具現化できないでいました。

我々は、日本とアジア双方のステップマーケットとして、零細企業や中小企業に『沖縄でチャレンジしてみてはどうですか?』っていう交渉をしています。特にやり取りをしているのは台湾ですね。台湾の商品って美しいデザインのものがあるので(台湾と沖縄の)コラボ商品なんかを展開しようとしています」 確かに台湾の企業からすれば、いきなり東京で商売を展開というのは腰が引けてしまうだろう。しかし、沖縄ならばまずはファミマ300店でテストができる。そこで実績を挙げられれば、全国のファミマ1万店にも展開ができるし、実際に成功事例もたくさんあるという。それは日本側からしても同様で、まずは、これから増えつつある海外観光客向けに商売をしてみて、反応が良ければ海外進出ができるというメリットがあるのだ。 「台湾とのコラボ商品だけでなく、台湾土産そのものも私は売れると思っています。台湾土産が沖縄でも買えるよって。そうなれば台湾に行く必要もないじゃないですか。もしくはそれで台湾に興味が湧いて『台湾に行ってみよう!』となってくれればいい。そういう目線でいくと台湾と沖縄はまだまだなんです。

毎年50万人の人が台湾から沖縄に来てくれていますけど、沖縄からはほとんど行っていない。私はこれが不満です。双方向の行き来がないと発展につながらない。正確な数字は出せていないのですが、沖縄から台湾への旅行者は年間、ほんの数万人程度です。だから橋渡しとして沖縄の中に台湾を作りたいな、と。これは受け入れられるという確信があります。アジアのカオス感と日本の安心感が沖縄にはありますから」

コンテンツの弱さをカバーするため 国際通りにエンタメエリアを作る

アジアとの架け橋となれる多様性が、沖縄に既存する。

立地的にも沖縄ほど適した土地はないだろう。しかし課題が山積しているのが事実でもある。 「自分たちの会社と沖縄のあるべき姿っていうのは、私は同一だと思っています。観光客がもっと多様化していくと、付随的にそこでいろんなビジネスが国際的に始まるでしょう。目を向けるのはアジア、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアであり、マーケットはそこ。ただし、日本には高度な技術がある。それを海外マーケットにつなげて、沖縄自体が大発展するところにつなげていきたいですね。でも沖縄の最大の課題はコンテンツなんです。コンテンツが弱い。沖縄は、まずショッピングモールとか、ハコから作ろうとしてしまう。どれくらい人が来るのか、どんなコンテンツが入るのかわからないと、出店なんてできないのに。魅力的なコンテンツをたくさん集めて、それに合わせてハコを作る、というようなことをしなければいけないと思います」 モールを作ったりするのは、街づくりの一環としてやるべきことである。海外の観光地にあるような、歩いていて楽しい街を目指すべきだろう。地元民も楽しめて、初めて来る観光客も退屈しないコンテンツの充実がこれからは大切になってくる。 「だから国際通りなんかもったいないですよね。エンタメが足りないんです。もちろん三線が聞けて、沖縄料理が食べられてっていうようなお店はあるんだけど、長期滞在してる人が毎日そこに行きたいとは思わないでしょう? それがダメっていうことではなくて、そこが沖縄じゃなかったとしても楽しめるようなエンタメ、たとえば劇場とかも必要なんです。沖縄に行けば、いろんなものがある、と思ってもらいたい。

沖縄の真髄っていうのは多様性を受け入れる〝ちゃんぷるー〟文化です。日本とアジアとアメリカと沖縄……異質なものを混ぜてフィットするのは沖縄にしかない特長ですから。具体的な案としては、国際通りはエンタメエリアとお土産物エリアとを分けてはどうかと思います。久茂地から安里まで、いろんなお店があって、もちろんその中には魅力的な飲食店もあって、面ごと人が増えれば、全体が盛り上がるでしょう?うちはスタート地点にあるからそのおこぼれに与れればいいな、と(笑)」

異質なものに触れることこそが 自身の成長に繋がる

糸数氏の構想は具体的かつ、腑に落ちるものが多い。しかしその実現に適した人材は揃っているのか、という疑問も浮かんでくる。その質問をぶつけると糸数氏はこう答えた。 「正直まだまだ足りないですね。若い社員も多いので、彼らを直接教育するよりは、そういうことを教えられる、経験のある社員を中途で雇用したり、個別で契約しないといけない。そうすれば若い人がその背中を見て育ってくれると思っています。人材育成というのは、育成する側が広く経験を持っている人間でないと、新人に対しての見方が狭くなってしまうんですね。人材育成の前に、会社自体が魅力的であれば、人は意欲を持って入ってこられる。意欲のある人が入れば、それは人材育成につながる。会社自体の魅力度を上げなければ人材は育たない。これは大きなポイントじゃないかな、と思います。先ほどお話したようにリウボウでは今、海外も視野に入れているので、経験ある外国人も採用し始めていますし、意欲的な社員は海外に派遣しよう、ということをやっています。社員が優秀になって帰ってくるのを期待しているのではなく、人材として成長するためには、異質なものに触れて〝カルチャーショック〟を起こさないとダメだと私は思うんです。私の経験で言うと、渡米してから、話す言葉は極力シンプルに、を心がけるようになりました」 確かにネイティブスピーカーでない限り、所詮細かいニュアンスなんて伝わらない。なるべくわかりやすく伝えなければならない。そうすると頭の中で、会話をなるべく削ぐようになる、というのも合点がいく。 「以前はもっと余計なことを話してましたね。語彙もシンプルな方が伝わるんですよ。習慣とか宗教とか考え方や常識が違う人に、ケンカしないで、『こういう考え方もあるんだ』と伝えることはとても重要です。そうしないと排除する方向に向かってしまう。何人はダメだとか、話にならんとか。そうならないために異質なものに触れさせたいんです。それが成長につながると考えているので」 糸数氏の言葉は短く、的確だ。聞いているこちらも理解がし易い。沖縄の抱える問題点をクリアする方法が明確化になった気がするほど、ひとつひとつの言葉から発するパワーを漲らせ、周りの人々にやる気を充満させていく。これぞ、トップの資質である。 最後に座右の銘を聞いてみたところ、「座右の銘として掲げているわけではないのですが、〝思い立ったら一気呵成にやる〟というのがひとつの方針ですし、何かをやるときには常に、後悔しない方を選ぶようにしています」とのことだった。なにかに迷ったとき、どちらが後悔しないかをひとつの指針にしてみるのも確かにアリだ。やらずに後悔することはあっても、やって後悔することはこの世の中にないはずだから。

情報源: ビジネスモデルの崩壊と新時代を迎えるため、 独自性をクリエイトしていく〜株式会社 リウボウホールディングス 糸数 剛一〜 | JOB ANTENNA

WELQなどのキュレーションメディアを著作権法の観点から分析してみた | STORIA法律事務所ブログ

医学部卒のライター兼編集者・朽木誠一郎氏の記事に端を発し、医療系サイト「WELQ(ウェルク)」をはじめDeNA(ディー・エヌ・エー)が運営するまとめサイトが次々に休止に追い込まれました。
また、DeNA以外が運営しているキュレーションサイトも次々と閉鎖されるなど、その影響はとどまるところを知りません。
この問題については、企業としての倫理の問題、著作権法上の問題、薬機法上の問題、記事内容を信じた人が損害を被った場合の法的責任の問題など法律的/社会的な問題が複雑に絡まり合っています。

http://dena.com/jp/press/2016/12/01/1/より

私は個人的には「顧客に価値を提供できないサービスが存在する意味はない」と考えていますので、今回のWELQ閉鎖は当然だと思います。
ただ、今回の問題の複合的な側面のうち、著作権法上の問題、つまり著作権的にどこからがアウトで、どこがグレーなのかについて正確な知識や情報をなるべく沢山の人に持って頂きたいと思っています
というのは、「著作権法上どこまでが許されるのか」という問題は単にキュレーションサイトにおけるパクリがいいか悪いか、という論点にとどまらない非常に大きな影響を持っているからです。
たとえば「無数の著作物を元データとして生成されたAIが、人間の指示で元の創作物に類似した著作物を創作した場合に著作権侵害になるのか。」「どこまで類似していれば著作権侵害になるのか」という問題などにも非常に強い関連性を持ちます。
「「パクリ」という言葉の意味や範囲が不明確なまま一人歩きするのは良くない」「なんでもかんでも著作権侵害だと決めつけるのはマイナスの方が大きい」と考え、著作権侵害についてできるだけ正確な知識やイメージを持って頂くためにこの記事を書きました。
目次は以下のとおりです。
▼ 問題は切り分けた方が良い
▼ 「引用」に関する大いなる誤解
▼ 「リライト」はどこまで許されるのか
▼ 写真については特殊な問題がある
▼ 今回の騒動でDeNAは法的責任を負うのか
■ 問題は切り分けた方が良い

冒頭でも申し上げたように、今回の問題は企業としての倫理の問題、著作権法上の問題、薬機法上の問題、記事内容を信じた人が損害を被った場合の法的責任の問題など法律的/社会的な問題が複雑に絡まり合っています。
ただ、それぞれは独立した問題です。

たとえば、有名になった「肩こりの原因は幽霊」記事は、もちろん内容的にはトンデモ記事以外のなにものでもありませんが、ライターがオリジナルに書いたものであれば著作権侵害にはなりませんし、特定の商品(魔除けとか)の医学的な効能効果を標榜していなければ薬機法上も問題にはなりません。それに、記事を読んだ人がその内容を信じたからといって、具体的な損害が生じるとも思えません。
逆に、「●●という商品を飲めばがんが治る!」などと、他者が作成した嘘っぱちの記事をコピペして、特定の商品の医学的な効能効果を謳い、それを信じた人が標準治療を拒否して●●という商品だけを飲んだ結果がんで死去した、というようなケースの場合は、「内容虚偽+著作権侵害+薬機法上違法+記事によって生じた結果について賠償責任を負う可能性あり」というフルコンボになります。
今回の記事で詳しく説明しようと思うのは、この中で「著作権侵害」の部分です。
■ 「引用」に関する大いなる誤解

まず最初に知っておいて頂きたいのは「引用」に関する大いなる誤解です。
▼ 「引用」として出典を明記しておけば著作権侵害ではない
▼ 無断で「引用」した場合すべて著作権侵害となる
▼ どんな引用でも著作者の許諾が必要である
・・・どれも間違いです。
「引用」というのは,著作権法上「著作権侵害ではない」と明記されている行為です。
したがって,「引用」の要件を満たさなければいくら出典元を記載しても著作権侵害になりますし、逆に言えば「引用」の要件を満たしていれば,著作権者の許諾を得なくとも,記事や写真を適法にコピーできる、ということになります。
これまでの判例などを総合して考えると,公表されている著作物について,おおよそ以下の要件を満たしたものは「引用」としてセーフ,と言われています。
1 引用先と引用元の明瞭区分
2 引用元(自分の記事)がメインで,引用先がサブ(主従関係)
3 引用の必然性がある
4 改変しない
5 出典を明記する
このうち特に重要な1と2について簡単に説明します。
▼ 引用先と引用元の明瞭区分

当たり前ですね。
どこまでが引用先で,どこからが引用元なのかはっきりしないとダメです。
方法としては,たとえばカッコでくくるとか,フォントを変えるとか,いろいろな方法がありますが,要は区別がつけばよいです。
▼ 引用元(自分の記事)がメインで,引用先がサブ(主従関係)

たとえば,自社記事が全くなく,引用先の記事だけを掲載している場合はダメです。
裁判例で問題になったのは,「中田英寿事件」です。
これは,当時イタリアのプロサッカーリーグのセリエ Aに所属するチームで活躍している中田英寿選手について、その出生からワールドカップ・フランス大会の本大会出場直前までの半生をまとめた本が問題になった事件です。
この本の製作については,中田氏に対する取材や確認は一切行われていません。
引用が問題になったのはなぜかと言いますと,この本では中田氏の中学時代の詩を丸ごとコピーしていたのですよね。
で,中田氏側はこの行為は著作権侵害だ,と訴えたわけです(この裁判の争点はここだけではありませんが)。
出版社側は「これは「引用」だから侵害ではない」と反論したのですが,裁判所は「引用」の成立を認めませんでした。
というのは,この本では,中田氏の中学時代の詩を丸ごとコピーしたものの下に「中学の文集で中田が書いた詩。強い信念を感じさせる。」とコメントしたにすぎなかったのです。
これは,どう考えても引用先(中田氏の詩)がメインで,引用元(コメント)が従です。つまり主従関係を満たしませんよね。
ちなみに、NAVERまとめなんかは、そもそも「主」がないので「引用」の要件を満たしていないものがほとんどです(そういえば先日「肩こりの原因は幽霊 : 医学デマサイト?[WELQ]とは?! – NAVER まとめ 」という記事を見つけて、めまいがしました。)
■ 無許諾での「リライト」はどこまで許されるのか

次に著作権者に無許諾での「リライト」が著作権法上どこまで許されるのかについてです。
▼「複製」「翻案」「それ以外」

著作権法には「複製」と「翻案」という概念があります。
「複製」とは、元の著作物をそっくりそのままコピーすること、「翻案」とはざっくりいうと、元の著作物の表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等することです(江差追分事件・最高裁判所平成13年6月28日判決)。
「複製」も「翻案」も著作権者の許諾なく行えませんので、ある「リライト」が「翻案」に該当すれば、無断でリライトを行うことは著作権侵害になりますし、「翻案」に該当しないリライトであれば著作権者の承諾なく自由におこなうことができます。
ですので、適法なリライトかどうかは「翻案」に該当するかどうかによって決まる、ということになります。

▼ 具体的な判断基準

翻案とは先ほど述べたような概念ですので、「元の著作物の表現上の本質的な特徴の同一性」が維持されているかどうか、が著作権侵害か否かの境界線だということになります。
しかし、「元の著作物の表現上の本質的な特徴の同一性」が維持されているかどうかという基準はあまりに抽象的すぎますよね。
そこで、私なりにこれまでの判例や学説を総合し、あえて言い切ってみると以下の2つのことが言えるのではないかと思います。
1 思想,感情若しくはアイデア,事実、事件、データ、科学的な知見など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には当たらない
2 「創作性が低いもの」≒「表現の選択の幅が狭いもの」≒「だれが書いても同じような表現にならざるを得ないもの」については保護の範囲が狭く、デッドコピー(まったく同じ表現)の場合でなければ複製や翻案に該当しにくい。
まず、1つめの話を図で示すとこんなイメージです。

著作物を、思想,感情若しくはアイデア,事実、事件、データ、科学的な知見などの「コア部分」と、そのコア部分を「具体的に表現した部分」に分けます。
この「コア部分」ついては模倣したとしても翻案にはなりません。
そもそも著作権法は「表現」を保護する法律だからです。
なので、同じ「コア部分」を、全く異なる「表現」で記載した場合には「翻案」にならず無許可で行ったとしても著作権侵害にはなりません。
一方同じ「コア部分」を少し違う「表現」で記載した場合、つまり「元の著作物の表現上の本質的な特徴の同一性」が残っている場合には翻案に該当し、無許諾で行った場合には著作権侵害になります。
2つ目の話は、1つ目の話を違う観点から言い換えたものです。
たとえば、小説なんかは0から創作しますから無限の選択の幅があるので保護の範囲が広いということになります。つまりデッドコピーでなくても「似ている」だけでも翻案に該当する可能性があります。
一方、本件のような医学情報については一定の科学的な知見ですから、「創作性が低いもの」≒「表現の選択の幅が狭いもの」≒「だれが書いても同じような表現にならざるを得ないもの」の一種と言えると思います。
ごく単純に図式化すると
▼「元ネタの創作性が低い」=保護範囲が狭い=デッドコピーでない限り,かなり似ていても「複製・翻案」ではない。
▼「元ネタの創作性が高い」=保護範囲が広い=デッドコピーはもちろん,かなり広い範囲で「複製・翻案」となる。
ということです。
これも図で示してみましょう。

青い楕円が元ネタの創作性の高低を示しています。創作性が低ければ狭い保護範囲,高ければ広い保護範囲,というイメージです。
そして,小さい円が,元ネタをもとに制作されたものを示しています。
デッドコピーの場合(赤い円)は,当然のことながら,元ネタの創作性が高い場合はもちろん、創作性が低くても「複製・翻案」に該当します。
一方,かなり似ていてもデッドコピーでは無い場合(黄色い円),狭い保護範囲には入らないが広い範囲に入るので,元ネタの創作性が低ければ「複製・翻案」に該当せず,高ければ「複製・翻案」に該当する,ということになります。
▼ DeNAのマニュアルは非常に「良く」出来ている

ここまでの説明を読んで頂ければ、今めちゃめちゃ叩かれているDeNAの、ライター向けマニュアルは非常に良く出来ていることが分かると思います。

https://www.buzzfeed.com/keigoisashi/welq-03?utm_term=.egMWgb5LW8#.mdB54Ned56より引用

「執筆で他サイトを参考にするのはOKですが、参考にしたサイトの文章の語尾や言い回しを変えただけでほとんど同一の場合は、参考元との類似性が高いと判断され、差し戻し対象となります」
「事実を参考にするのはOKですが、表現は参考にせずご自分の言葉、説明の順序で説明してください。執筆前に内容を、事実と表現に単語単位で分解してみてください」
これは私がこれまで説明してきたこととほぼ同じ内容です。
つまり、このマニュアルに記載されていることは、著作権法的には正しい内容なのです。
実際、著作権周りを取り扱う弁護士(私も含め)が、「違法にならないリライトの方法を教えて頂けますか」と聞かれたら、私も含め全員がこのマニュアルに記載されているのとほぼ同じような答えをすると思います。
■ 写真については特殊な問題がある

先ほどのリライトは「文章部分」についてのものです。
では「写真」についてはどのように考えるべきでしょうか。
まず、「引用」については、文章部分と全く同じように判断がされます。つまり先ほどの5要件(引用先と引用元の明瞭区分」「引用元(自分の記事)がメインで,引用先がサブ(主従関係)」「引用の必然性」「改変しない」「出典を明記する」)を満たしていなければ著作権侵害になります。
ただ、写真については写真特有の問題として「リンク」の問題があります。
まず、他人が著作権を持っている写真を、無断でサーバー内にアップロードして記事内で表示させた場合には、当該写真の複製行為や送信可能可行為を行っているので、当然のことながら著作権侵害になります。
一方、写真を埋め込みリンク方式で表示させた場合、サイト閲覧者が見ている写真はリンク元のデータであり、リンクを張っている人は、当該写真を複製しているわけではないので、著作権侵害にはならないのです。
詳細は杉浦弁護士のこの記事をご参照ください。
【参考】
MERYやWELQ問題を受けて押さえておきたい、画像直リンクと画像無断使用の違法性
ただ、実は利用している元データが適法にアップロードされたものか違法アップロードされたものかによっても著作権侵害の成否が異なります。
表にしてみました。

この表に示したように、サーバーにアップロードする方法は一律アウト、埋め込みリンク方式の場合は、適法にアップロードされた写真にリンクを張る方式であれば著作権侵害にならないが、違法にアップロードされた写真にリンクを張ると、著作権侵害の幇助になる可能性があります。
■ 今回の騒動でDeNAは法的責任を負うのか

最後に、ユーザー投稿型のサイトにおいて運営者が著作権侵害の責任を負うか、という問題もあります。
たとえば「WELQに著作権侵害となる記事が投稿された場合に、DeNAが法的責任を負うか」「NAVERまとめに著作権侵害があった場合LINEが法的責任を負うか」という問題です。
▼ まずはプロバイダ責任制限法を理解しよう

この問題については、プロバイダ責任制限法、正式名称「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」を理解することが重要です。
まずこの図を見てください。

ユーザー投稿型のサイトは、記事を投稿する投稿者、投稿された記事を見る閲覧者、サイトを管理するサイト管理者がいます。
サイト上には著作権侵害などの法的な問題がない真っ白な記事、グレーな記事、著作権侵害ど真ん中の真っ黒な記事など、様々な記事が投稿されます。
それら全ての記事について、サイト管理者がすべて事前確認をしたり、常時監視を行って真っ黒な記事をいちいち削除しなければならないとしたのでは、サイト管理者の責任が重すぎます。
そこで、プロバイダ責任制限法は以下の場合に限ってサイト管理者の責任を認めています。プロバイダ責任「制限」法となっているのは、このようにサイト管理者などの責任を一定の場合に制限しているためです。
1 他人の権利が侵害されていることを知っていたとき(プロ責法3条1項1号)
2 違法情報の存在を知っており、他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき(同法3条1項2号)
3 サイト管理者自身が当該違法投稿の「発信者」であるとき(同法3条1項但書)
1と2はほぼ同じようなことですが、サイト管理者が権利侵害を知っていれば、その削除は容易であることから「違法投稿を知っていながら放置していた」場合に限って責任を認める、というものです。

3についても、サイト管理者自身が違法な投稿をしていれば責任を負うことは当然ですからこの場合にもサイト管理者は責任を負います。

▼ WELQに著作権侵害となる記事が投稿された場合に、DeNAが法的責任を負うか

WELQの場合、記事を投稿しているのは個々のライターです。
ですので、著作権侵害となる記事が投稿された場合には個々のライターがその責任を負うのは間違いないのですが、本件では、DeNAがマニュアルや記事作成のシステムなどを用意してライターに記事制作を依頼しています。
このような体制の下で著作権侵害となる記事が制作され、同記事が投稿された場合には、記事発注者であるDeNA自身が当該記事の「発信者」に該当し、免責されない可能性はそれなりに高いのではないかと思います。
■ まとめ

▼ 問題は切り分けた方が良い
 今回の問題は企業としての倫理の問題、著作権法上の問題、薬機法上の問題、記事内容を信じた人が損害を被った場合の法的責任の問題など法律的/社会的な問題が複雑に絡まり合っているが、切り分けた方が良い。
▼ 「引用」に関する大いなる誤解
 著作権法上の「引用」の要件はぜひ覚えておくべき。
▼ 「リライト」はどこまで許されるのか
 「翻案」に該当するリライトはアウト。元ネタの創作性が高いか低いかによってもどこまでのリライトがセーフかは異なる。
▼ 写真については特殊な問題がある
 写真については、「適法なソースから」「埋め込みリンク方式で表示」した場合には著作権侵害にはならないが、サーバーにアップロードしたり、違法ソースにリンクを張ったりする行為は著作権侵害となる。
▼ 今回の騒動でDeNAは法的責任を負うのか
 プロバイダ責任制限法の解釈が問題となるが、WELQの記事制作体制を前提とすると、著作権侵害の記事があった場合DeNAも法的責任を負う可能性があると思われる。
(追記あり)
2016年12月20日 「写真については特殊な問題がある」の表に、念のため「ただし「引用」(著作権法32条)の要件を満たすものは適法」という表記を追加しました。
(弁護士柿沼太一)

情報源: WELQなどのキュレーションメディアを著作権法の観点から分析してみた | STORIA法律事務所ブログ

キュレーションサイトの「闇」に既存メディアは打ち勝てるか|今週もナナメに考えた 鈴木貴博|ダイヤモンド・オンライン

鈴木貴博 [百年コンサルティング代表] 【第45回】 2016年12月9日

会見で頭を下げるディー・エヌ・エーの(写真奥から)南場智子取締役会長、守安功代表取締役社長兼CEO、小林賢治経営企画本部長 Photo:Rodrigo Reyes Marin/AFLO
「WELQ」炎上の背景に見える
メディアが存亡をかける大抗争

 ここ数年、DeNA(ディー・エヌ・エー)の成長を支えてきた「発明」と言われるキュレーションサイトが炎上した。きっかけは医療系サイトの「WELQ」(ウェルク)で、医学的な根拠のない記事が無断転用されていたことだ。それが発端で同メディアの記事作成の手法が取り沙汰され、大問題に発展。DeNAは「WELQ」「MERY」など10のキュレーションサイトで記事公開を中止した。

 表面的には「不確かな情報やパクリ情報を掲載するメディアの運営の見直し」という問題に見えるこの騒動だが、実はダイヤモンド・オンラインやその競合のウェブメディア、週刊誌や大新聞やテレビなどの既存メディアが存亡をかける大抗争が、その裏に存在している。

「メディアの闇が表に出た」ことが今回の騒動の真の意味であり、このことをきっかけに、水面下のメディア間の大抗争が表面化し、キュレーションサイトを徹底的に殲滅させたいという方向に業界が動き出しそうな気配である。今回のコラムはこの「闇」を説明したい。

 キュレーションメディアの闇とは何か。それは既存のメディアよりもお金が稼げる新しいビジネスモデルが発明されたことにある。そしてそれによって、既存のジャーナリストたち、既存のメディアたちが「立ちゆかなくなるのでは」と危惧されるのが真の問題だ。

 具体的に説明しよう。ダイヤモンド・オンラインのような既存のウェブメディアの「記事」のビジネスモデルを説明すると、次のようになる。

(1)プロのライターが編集者と相談しながら書きたいテーマを発見し、取材し、記事を書く。

(2)運営会社はライターに原稿料を支払った上でメディアに掲載する。

(3)掲載した記事が読者の興味をひいた場合、PV(ページビュー/閲覧数)がたくさん集まる。

(4)メディアは多くの読者に支持されることによってブランド価値を高め、スポンサーの広告料収入で運営費や利益を賄う。

キュレーションメディアを
勢いづかせた「記事量産」の大発明

 これが牧歌的な時代のメディアとライターによるビジネスモデルだった。そこにこのビジネスモデルを壊す大発明が登場する。それがキュレーションメディアだ。

 彼らが発見したビジネスモデルは、既存のメディアとこう違う。

(1)運営会社がお金になるテーマやワードを選定し、それぞれについてインターネット上の情報をまとめ、記事の構成をつくる。プロのライターの20分の1のコストでそれをきちんとした記事に仕上げてくれる一般ライターを、クラウドで募集する。

(2)ライターは与えられたまとめ記事をリライトし、独自の体裁の記事にして納品し、メディアがそれを掲載する。

(3)もともとお金になるテーマやワードを基にした記事に、SEO技術を駆使してさらにアクセスを集めることで、検索結果の上位にランクさせる。

(4)注目ワードを使った記事が検索上位にランクされ、多大なアクセスが集まることを背景に、スポンサーから多大な広告料収入を得て、運営費と莫大な利益を賄う。

 ちょっとわかりにくいかもしれないので具体例を出すと、閉鎖される前のDeNAのWELQの場合、「ヘルニア」というワードでグーグル検索をすると、2つの記事が他のメディアや医療サイトを押しのけて上位に登場していた。「ヘルニアの症状とはこうだ」という記事と「ヘルニアがストレッチで改善する」という記事だ(注:筆者が「ヘルニアはストレッチで改善する」と言っているわけではない。念のため)。

 ここでメディアにとってお金になるのは、「ヘルニア」というキーワードだ。グーグルで「ヘルニア」を検索するのはヘルニアで困っている人が大半であり、しかもその人数は多い。そして、ヘルニア患者を相手に商売をしようという人たちも多く、ヘルニアのキーワード検索で記事が上位にくるメディアに高い広告費を支払ってでも広告を掲載したいと思う。

 キュレーションサイトというビジネスは、ここに目をつけたのだ。先ほどの既存メディアのビジネスモデルと、キュレーションサイトのビジネスモデルの差分を整理してみよう。

(A)運営側は最初から高く売れるテーマ、ワードだけに目をつけて、それに関する記事を書かせる。

(B)記事の中身の基本構成は、インターネット上のサイト記事をまとめることで叩き台をつくる。

(C) 記事を書くライターをクラウドで集める。このことで低コスト(20分の1)で大量の記事を集めることができる。

(D)SEO技術を駆使してグーグル検索での記事の表示ランクを徹底的に上げる。

(E)テーマやワードの高い集客力を武器に、高額の広告料を手に入れる。

 キュレーションメディアが力を入れるポイントは、このように既存メディアと大きく違うのだ。そして問題なのは、このやり方の方が、楽にたくさんのお金を儲けることができることだ。

筆者のヒット記事で検証
「こうすれば誰でも記事をつくれる」

「そんなことを言っても、記事の面白さでは既存メディアに勝てないだろう」と思う人も多いかもしれないが、そうとも言えないところがこのビジネスモデルの優れたところだ。筆者の記事をパクるケースでそれを説明しよう。

 先週、15万PVを稼いだ筆者の連載記事「ジーユーが兄貴分のユニクロをたぶん追い抜く理由」だが、もし私がキュレーションメディアの運営側で「ジーユー」や「ユニクロ」がキーワードとして売れると考え、以下のような執筆マニュアルを作成したとしよう。

「発注書:『ジーユーがユニクロを抜く』という記事を書いてください。基本構成は以下のとおり」

(1)ユニクロの直近の業績が頭打ち(※ここに2ちゃんねるへのリンクを貼ってあるとお考えください)

(2)このままではH&MやZARAを抜くことは難しい(※ここに個人ブログへのリンクが貼ってあるとお考えください)

(3)弟分のジーユーの調子がいい。ジーユーとユニクロの違いはハイファッション(※ここに東洋経済オンラインへのリンクが貼ってあるとお考えください)

(4)H&MやZARAのようなハイファッションの方が世界ランクでは上(※ここにユニクロのIRページへのリンクが貼ってあるとお考えください)

「『だからジーユーはユニクロを抜くのでは』という結論で締めてください。上記リンクからコピペしてもいいですが、表現はオリジナルな感じでリライトしてください。以上」

 どうだろう。ここまでマニュアル化してくれたら、筆者ではないライターでも筆者と同じような記事が書けるのではないか。

著作権法上の違法性はないが
これではメディアに未来はない

 ところがこのやり方には、「著作権法上は違法ではない」という問題がある。というか筆者、つまり鈴木貴博だって、やろうと思えばこのやり方でジーユーの記事が書けるというグレーゾーンの問題もある。むしろこういう方法で書かせていただければ取材するコストがかからないので、筆者だって助かる。

 実際は筆者の場合、ジーユーとユニクロの店舗をまわって商品ラインの違いについてきちんと調べている。前述の記事中に出てくる「MA-1」というフライトジャケットについても、同記事には書いていないが、ジーユーのメンズの方がさらにファッション感が凄く、「これは来シーズンは着られないだろうな」という斬新なMA-1ジャケットが売り場を占めている。「おそらく年明けには、これらの商品は見切り価格で安売りされるはず」というところまでわかった上で、ジーユーのビジネスモデルを論じている。

 もう1つ、記事には書かなかったエピソードを紹介すると、ジーユーの柚木社長は独特のファッションセンスを持っている。本人のいないところでユニクロの社員からよくからかわれているくらいだ。その微妙なセンスが今のジーユーの快進撃につながっていることを考えると、ユニクロはジーユーの商品を真似できない。つまり、柚木社長がユニクロに復帰しない限りは、ユニクロがジーユーのビジネスモデルを取り込むのは難しい。そこまでわかって筆者は記事を書いている。

 でも、ファッション関係のキュレーションサイトが私の記事に目をつけて、「似たような記事を書いてほしい」とライターに発注すれば、実際に1000円くらいの原稿料で似たような記事ができてしまう。

 そして、その掲載先がダイヤモンド・オンラインのような伝統的なメディアではなく、高いIT力を持った企業のメディアであった場合、SEO能力の違いが出て、IT企業のキュレーションメディアの記事の方がPVを集めることができるだろう。結果、私の記事よりも読まれることになる。

 ここが既存のメディアや伝統を重んじるジャーナリストには許せない、キュレーションメディアの「闇」である。取材もしない「後追い記事」の方が読まれる、その上その内容に責任を負わないメディアの方が儲かる――。そんなことがまかり通るようであればメディアに未来はない、という怒りだ。

 しかし、これまでは著作権法上、手の打ちようがなかった。ところが「医療」という法的に問題のある分野でDeNAが「ヘタを打った」。さらにキュレーションの過程で写真画像という、著作権を主張しやすいものがパクられている事例が多数あることを問題にすることができ、キュレーション記事の多くを閉鎖に持って行くことが、今回初めて達成できた。

 実際、キュレーションサイトの記事公開中止の動きは、他社へも波及している。大手ではヤフーの「TRILL」、サイバーエージェントの「Spotlight」、リクルートの「ギャザリー」などで、DeNAと同様の問題を抱えている可能性がある一部の記事を削除する対応が行われている。これらのサイトが問題にしたのが、画像のパクリである。

既存メディアはキュレーション
メディアに打ち勝てるのか?

 ただ、まだこの問題の本丸はほぼ無傷のままである。たとえば、日本企業のようにはコンプライアンスを気にしない、外国資本のキュレーションメディア最大手は、サイトを閉鎖する動きを見せていない。

 この企業、「今後は原著作権者の権利に配慮する」という新方針を表明しているが、グレーゾーンはある。一般論として、キュレーションメディアに対して著作権のクレームを行なうと、「あなたが原著作権者であることを証明しろ」と言ってくることが多い。配慮はすると言うだけで、実際にクレームをつけるとものすごい手間がかかる状況をつくって、勝ち逃げしようとしているように見えるケースもある。今回、日本の大手IT企業が軒並みキュレーションサイトの自粛に走った結果、最大手がさらに焼け太るのではないかということが危惧される。

 今回の騒動で、既存メディアはキュレーションメディアを殲滅できるのか。それとも日本のIT企業だけを討ち取った結果、最終的に外国資本にメディアの未来を支配されるのか。メディアに関わる筆者個人としては「最悪な未来が待っていないこと」を祈るのみである。

情報源: キュレーションサイトの「闇」に既存メディアは打ち勝てるか|今週もナナメに考えた 鈴木貴博|ダイヤモンド・オンライン

まとめサイト、記事削除広がる リクルートなど

2016/12/5 2:00日本経済新聞 電子版

 特定のテーマの情報をサイト上にまとめる「キュレーションサイト」で、記事を削除する動きが相次いでいる。すでに問題となったディー・エヌ・エー(DeNA)だけでなく、リクルートホールディングスやサイバーエージェント、ヤフーも誤りや著作権侵害の疑いがある記事の公開を中止した。質よりも量を優先し、品質管理が不十分な記事が広がっていたことが明らかになってきた。

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一部の記事公開を中止したサイバーエージェントのサイト「スポットライト」

一部の記事公開を中止したサイバーエージェントのサイト「スポットライト」
 キュレーションサイトは外部ライターや投稿による記事を集め、多くは閲覧が無料。読者を集めるほど広告も入りやすくなる仕組みで、ここ数年急拡大した。DeNAは検索サイトで記事が上位に表示されることを優先して編集していた。

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 リクルートはキュレーションサイト「ギャザリー」で1日以降、全体の約4分の1にあたる1万6000件の公開をやめた。健康に関する内容が中心という。詳細な基準は明らかにしていないが、少しでも疑わしい場合が対象。記事の執筆者が取り下げを依頼したケースもある。社内の審査チームで内容を精査したうえで、再公開を目指す。

 利用者数が月2000万人いるサイバーエージェントの「スポットライト」は12月1~2日にかけ、全体の数%にあたる医療や健康に関わる記事の公開を中止した。編集部が認定したライターに記事を投稿させる仕組みで、掲載前に内容を監修する体制がなかった。

 DeNAの不正問題を受けてサイト内を見直したところ、記事に誤りがないと断定できない可能性が出てきた。内容の正確性や著作権侵害の有無を判断し、問題がなければ再公開する考えだ。

 ヤフーは10月上旬、運営するトレンド情報サイト「トリル」ですべての独自記事を事実上、削除していた。一部記事で権利者の許諾を得ずに画像を掲載していたことが発覚。編集部のチェック体制が不十分で、その他の記事についても著作権侵害の可能性を否定できないためだ。

 今のところ記事の再公開や新たな独自記事を掲載する予定はない。現在は広告主とのタイアップ記事などだけを掲載している。

 DeNAのキュレーションサイトを巡っては、10月ごろから記事の信ぴょう性などを疑う指摘がネット上で相次いだ。強い批判を受け、11月29日に医療情報の「WELQ」の公開を中止し12月1日には8媒体も追加で公開をやめた。

 唯一公開を続けているファッション情報の「MERY」も大半の記事を取り下げた。

情報源: まとめサイト、記事削除広がる リクルートなど

キュレーションメディアに写真をパクられたら請求書を送ることにした

キュレーションメディアに写真をパクられたら請求書を送ることにした

2016/12/2 著作権侵害の対策

パクリメディアの横綱DeNAが10あるキュレーションサイトのうちWELQを初めとする9サイトを一昨日非公開にした。キュレーションサイトとは写真や文章を余所からパクってまとめるサイトのこと。作品をパクられて困惑というか怒り心頭しているブロガー・イラストレーター・カメラマン・著述業の方々は数知れない。今回の騒動にはみなさぞ溜飲が下がったことだろう。

それにしてもDeNAは東証一部上場企業なんだそうだけど、パクリメディアを運営することで成り立つ企業が堂々と一部上場していていいのかね。パクリメディアとは窃盗団と同じことだ。日本社会の暗黒面をここにみたね。

無断使用にも料金請求する

ぼくはこの秋に、キュレーションサイト5つを含む8サイトにぼくのブログの写真が無断使用されているのを発見し、そのすべてに料金を請求した。

そうでないと、普通に使用料を支払ってくださっている他のクライアントに不公平になる。

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上の日芸の写真はあろうことか2つのサイトに使われていた。日芸の写真って意外に出回っていないのかな。それにしてもこんなに多くの大小のキュレーションサイトが乱立してるとはね。

1社を除きすでに解決しているのでサイトの名は記さないが、パクったサイトには話題のDeNAのサイトもあった。その他は、ウェディング・芸能・子育てなどの自社サイトだった。

料金請求した結果、キュレーションサイト4社は3〜4回のメールのやりとりで使用料金を支払ってもらった。キュレーションサイトではない他の自社サイトはさらに反応が早く2回程度のメールの往来で使用料金を支払ってもらった。

今回はそのメールの文章を全文公開するので、作品をパクられたクリエイターの方々は参考にして、ぜひ料金請求してください。載せてあるぼくのメールは状況に合わせて自由に修正して使ってください。みなさんがどんどん料金請求をすればパクリサイト撲滅につながります。

キュレーションサイトとのメール

まずは証拠の確保

メールを送る前に証拠を確保する。

パクリ画面を「別名で保存」し、あわせてスクリーンショットをとる。 後で裁判をする可能性を考えると紙プリントしやすい「別名で保存」があったほうがよい。

念のためページのソースも保存する。Google Chromeなら、当該ページ上にポインタをおき右クリックすればページのソースが表示できる。全てを選択して、コピペしてテキストファイルにしておく。

メールその1

タイトルは「写真使用料のご請求の件」とした。

拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

貴社ウェブサイトに、私が撮影し著作権を有する写真1点(ここに無断転載された写真のURL)が無断で転載されていることを確認いたしました。転載元は私のブログ(ここに当該写真の載った自分のサイトのURL)です。

私はプロのフォトグラファーです。私の写真の使用には料金が発生いたします。

つきましては、料金のお支払いについてご相談させていただきたいので窓口となる担当者の住所とお名前を9月15日までに教えてください。

よろしくお願いいたします。

有賀正博写真事務所
住所○○
メールその1への返信

有賀様

ご連絡いただきありがとうございます。
株式会社○○ キュレーション事業部でございます。
お返事が大変遅くなりまして誠に申し訳ございません。

該当画像の方を削除いたしましたので、ご確認ください。

当メディアに関しまして、弊社はプラットフォーム提供者としての形態を取っておりまして、各記事は個々のライターによって作成されたものとなっております。
それゆえに、記事コンテンツに関する諸問題につきまして、弊社としては責任を負いかねる状況となっていますので何卒ご理解とご了承のほどよろしくお願い致します。

ただし、今回の事例によって有賀様に多大なるご迷惑をお掛けしたと存じますので、該当コンテンツは削除させていただきました。また、本件についてお手を煩わせてしまいましたことを深くお詫び申し上げます。

株式会社○○キュレーション運営事業部
このパクリサイトは、株式会社のくせに担当者名も記されていない返事をよこしてきた。そして基本的にキュレーションサイトは、ライターに責任をおわせて自分たちには関係がないという内容だ。

こんなんで納得するわけない。
即座に用意しておいた返事を送った。

メールその2

株式会社○○ キュレーション運営事業部
担当者さま

返事をありがとうございました。

1)私の写真の使用には料金が発生いたします。現在掲載されていなくても、すでにご使用になった分の料金はお支払いいただきます。

2)プロとして活動している私の著作物を無断で使用されました。これはプロバイダ責任制限法での著作権侵害に当たります。発信者情報開示請求(書き込み者の特定)を行い損害賠償請求を行います。

3)発信者情報開示請求に必要な書類を教えてください。

4)発信者情報開示請求の送付先住所と担当窓口(担当者さまのお名前)を教えてください。

5)以上の手続きに入る前に、作者または貴社担当者から料金をお支払いくださる旨の連絡をいただけた場合は、お支払い金額のご相談を承ります。期限は9月20日とさせていただきます。恐れ入りますが、期限をお守りいただけない場合は当方規定の料金を請求させていただきます。また、民事と刑事の両方での法的手段をとる可能性もありえます。

以上、よろしくお願いいたします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
有賀正博写真事務所
ようするに「法に則って損害賠償請求をするのでライターの名前と連絡先を教えよ」という内容だ。

「しかしことを荒立てるとお互い面倒だから、すくに支払ってくれるなら料金は負けておくよ」と書き添えてある。すると次のような返事が来た。キュレーションサイト5社のうち4社は同様の返事だった。

メールその2への返信

ご連絡いただきありがとうございます。

株式会社○○ キュレーション事業部でございます。

メールの件、承知いたしました。
一旦弊社の方で料金をお支払いいたしますので、お振込先情報と、お支払い金額をご教示ください。

株式会社○○ キュレーション運営事業部
あっさりと片がついてしまった。

意外にすんなりと支払ってくれた

写真の使用料金はレンタルフォト業界最大手のアマナイメージズのそれに揃えているから1点3万円なのだが、さっさと終わらせるために二次使用料扱いにして半額とし、1点1万5千円を請求した。

よく考えたら料金を負ける必用はぜんぜんないのだが、このときは仕事が忙しかったしこういった事務作業を早く終えたかったのでこういう形をとった。本来ならペナルティを加えて2倍請求するケースなんだけど。

なおキュレーションサイト以外からは最初のメールを送った後すぐに支払い了承の返事をもらっている。悪いことをしたという意識があるようだ。一方、キュレーションサイトは何のかんのと言って逃げようとする。コンプライアンス軽視な運営方針であることがよく分かる。

いずれにせよ支払いに応じた会社は1〜2日後には当方の口座に振込完了した。

DeNAのパクリサイトは、現在はサイト自体が非公開になってしまったので秋のうちに料金請求しておいてよかった。まあ、サイトが非公開でもDeNAに請求書を送るけどね。

パクリサイト相手の新商売ができるか?

これまでは、写真やイラストなどをパクられてもクリエイターは泣き寝入りをするケースがほとんどだったと思う。

しかしここで発想を変えてみよう。相手は作品を使ってくださったのだから、使用料をご請求申し上げればいいのだ。無断使用の場合は法律的には「使用料請求」ではなく「損害賠償請求」というのだが、名目はともかく料金を支払ってもらえればそれでよい。

この秋は、無断使用の請求だけで18万円を入金してもらったよ。

こうして悪のパクリサイトがなくなるといいね。
プロはもちろん、アマチュアの方もがんがん請求書を送ってください!

情報源: キュレーションメディアに写真をパクられたら請求書を送ることにした

地魚という宝を探しに。

プロフィール

田中淳士(たなかあつし)
1986年6月生まれ。佐賀県出身。同志社大学商学部卒。
学術的なことよりも、実生活に即したことを学びたいと思い、
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引主任者の資格を取得。
2008年一時大学を休学して、産地直送の海産物卸売業を営む「食一」立ち上げ、
2008年12月の京都商工会議所主催の「京都・学生アントレプレナー大賞で」大賞を受賞。
地魚という宝を探しに。

 寿司屋さんで、今日のお勧めを見るとなんだか見たことのない魚の名前が… 興味本位で食べてみると、結構おいしい。また食べてみたい。こんな経験したことありますか?「食一」は地方のあまり知られていない地魚を全国へ産地直送する卸業「海一流」という事業を中心に、地方の漁港、そして漁業を盛り上げる活動をしています。「海一流」では、なかなか都心部に出回らない珍しく美味しい地魚を認定する機関となり、その魚をブランド魚として扱います。その地域の漁港でしか取れないという希少価値をつけることによって、価値が増すわけです。実際に調理法を研究し、流通する取引先に、その地魚が一番おいしく食べられる調理法も提供しています。

皆知らないから食べない。それはもったいない。

 大学時代、ビジネスプランを作る機会があり、まず頭に浮かんだのは、親の仕事である魚の仲買。仲買は収穫量によって売買の値段が変わるため、もちろんのこと、漁師や農家の生活を左右します。そんな安定しない状況を何とかしたいと思い、プランを作成し、コンテストに出場すると優勝。それを元手に起業に乗り出します。
 田中さんは起業するに当たり、「実際に現場を見る必要がある」。と思い立ち、1か月をかけ、九州と四国の漁港周りの旅に出ます。その旅で低価格な魚の輸入が増えて漁獲量が減少し、漁師の生活が苦しく後継者を作らなくなる。また漁師になりたい若い人もいないといった現状がわかります。
 何とかしたい。そう危機感を抱きながら漁港を回り続けていると、たびたびあまり見たことがない魚を目にします。漁師さんに話を聞くと、「これはあまり獲れないし、有名じゃないから売り物にならないよ」。とのこと。しかし、田中さんはピンときました。「これは売れる。漁獲量が少ない分、希少価値がある!この魚がおいしいことがわかれば、より価値が上がるのでは。珍魚を売り出していけば、漁師さん、漁業も活発になる」と。この珍魚との出会い、そして逆転の発想が、「食一」の始まりといえるでしょう。

高級魚に引けを取らないおいしさを探し出す。

 あまり認知度がない魚をどう広めていくか。田中さんはまず、その魚を自分で調理し、食べてみることから始めます。珍魚を探していると「ミシマオコゼ」という魚に運命的な出会いを果たします。ミシマオコゼは、見た目がかなり上方を向いている目と、口を大きく“ぼけ~”とあけた何とも間抜けな姿をしています。網にかかっていても捨てられたり、漁師の腹満たしになるくらいの魚でした。そこに目を付けた田中さんは、さっそく刺身にして食べてみると、なんとふぐに似ている。漁師に聞くとこの魚は別名「ミシマフグ」と呼ばれていました。「こんなおいしい魚、漁師だけが食べているなんてもったいない。普通のフグは高いけども、ミシマオコゼは捨てているくらいなのだから、海一流の一押しブランド認定魚にして隠れたおいしさを押し出していこう」。このようにして、どんどん珍魚を見つけては、その魚のおいしさをしっかり見つけ出してあげるということに徹底しました。ただ、魚を売ってもらわないことには始まらないため、漁師さんとよい関係を結んで、行くことが大事でした。その点、田中さんには、大学時代から自分の足で築いた漁師さんとの深いつながりが自然と生まれていたのです。

珍魚で漁師を潤したい。

 食一がこれからできることとして、「海一流」事業の拡大。全国の珍魚をブランドとして認定し、流通させる事業「海一流」と「京都」という土地ブランドとのコラボレーションすること。具体的には海一流が認定した珍魚を、京都の伝統的な「西京漬け」で加工し、全国に珍魚を流通していきたいそうです。
 別の角度からは、「みんなの知らない珍魚で作るB-1グランプリ」を2012年の秋に開催予定だそう。内容は、屋台で珍魚を使ったその地方料理を提供し、選手権を開催。食べてもらったお客さんに投票してもらい、1番になったら1年間京都のお店で料理が出せるという特権を付けるといったもの。「単発のイベントで終わらせるのではなく、また食べたいと思ってもらえるようになれば、その料理を出しているお店も儲かるし、より地魚が流れ、地域も活性化する。いろんなところを巻き込んでいくからこそ、相乗効果が出てくる」と田中さんは考えています。
 「漁業を根底から変えようとは思ってない。漁業の発信源になれれば、漁業を盛り上げる起爆剤になれれば。これが食一の立ち位置なんだと思います」。
メッセージ

食一
所在地 〒600-8008
京都市下京区四条通烏丸東入ル長刀鉾町8京都三井ビルディング5階
(株式会社ジェイ・エス・エル内)
設立 2008年
従業員数 1名(2011年8月現在)
事業内容 産地直送の卸売事業、珍魚のブランディング事業
食一 URL : http://www.shokuichi.jp/
編集後記 取材 ・栗山遠音|Photo : ムクメテツヤ

 田中さんは静かに熱い人だなと、取材をしていてひしひしと感じました。あまり表には出さないけども、常に胸の内は熱い熱意で渦巻いているのではないかと思います。漁業を爆発させるため準備を食一がしてくれているのなら、私たちは、よりバランスよく魚を消費することで、着火剤になれるのではないでしょうか。