ビジネスモデルの崩壊と新時代を迎えるため、 独自性をクリエイトしていく〜株式会社 リウボウホールディングス 糸数 剛一〜 | JOB ANTENNA

2016年12月24日

“ビジネスモデルの崩壊”と新時代を迎えるため独自性を クリエイトしていく

沖縄ファミリーマートを県内シェアNo.1に導いた立役者である糸数剛一氏に、「沖縄の経済と今後」について話を伺った。糸数氏は米ファミマ社でのCEOの経験など、数々の功績を称えられ、2016年5月よりリウボウホールディングスの会長に就任した。国際的視野を持ちつつ、沖縄でイノベーションを展開し続け、沖縄の未来を担う新時代の旗手として期待されている。

「私の携わる小売業の観点から話をさせてもらうと、底打ち感は凄く持っています。今はネットのおかげで日本中どこにいても似たようなものが買えるし、売れている店を真似したところでうまくはいかない。仮に東京でウケているものを沖縄に持ってきても、こっちで売れるとは限らないんです。それはただのコピペにすぎないから。これは小売業にとどまらず、あらゆる業界に共通することではないでしょうか。ビジネスモデルの崩壊。独自性をどうクリエイトしていくか、ということを自分の頭で考えられて、情報収集する癖がある人間でないと、通用しない時代です」 時代の趨勢をみる限り、〝ビジネスモデルの崩壊〟というのは頷けなくもない。似たような話はいろんな業界からも悲鳴として聞こえてくる。独自性をクリエイトしていくこと、つまり差別化を図るということが要である、という糸数氏の指摘はもっともだ。

しかし、実践するのは口で言うほど簡単ではない。社員にはどうアドバイスしているのだろう。 「いつも言っているのは、〝常に本質的な問題を理解し、知識や経験をもとに自分で考えろ〟っていうことですね。最終的には経験がものをいうんです。見たり聞いたり、叱られたりってことが多いほど、想像力は増えます。想像力がないと創造なんてできません。

今は若い人だけでなく、みんな自分の頭で考える習慣がない。調べるのとか、コピペは得意だけど、それでは既存の枠から出られない。私たちの業界でいうと、模倣やダウンサイジングではもうモノは売れないんです。でも、ビジネスモデルがなくなった今だからこそ、いくらでもやりようはあるし、我々含め地方創生のチャンスなんです。新しく作れるって考えたらワクワクしませんか?

下手したら会社がつぶれるかもしれない。でもその緊張感とワクワクがイノベーションを生むんですよ。ゼロベースであらゆることをやっています」

沖縄を本物の 価値ある場所に!

糸数氏の口から〝ピンチはチャンス〟という意味合いの言葉が発せられたときにはいささか驚いた。具体的な施策はあるから平然と言うのだろうが、はたしてピンチから脱却しチャンスに転化していくとはいかように?

「百貨店というのは一番幸福感を味わえる、一番ワクワクするところでなくてはいけないんです。やり方は変えつつ、幸福感を出すためにはどうすればいいか。もちろん、ライバル店が何をしているのかとか、どこで何が売れていて、どういう動きがあるかは常に知ってなければいけません。それはいわばモップ掛けと同じ〝ルーティンワーク〟であり、やらないといけないこと。ただしそれをやっているだけでは話にならない。

我々がやるべきことは、沖縄でしかできないワクワクを演出することです。沖縄を訪れる国内観光客の数は年間600万人います。この数字は大きいですよ。海外からの観光客も、戦略的に取り込みたいと考えています。国内外の観光客に『沖縄に来たら必ずリウボウに寄る』って言ってもらえるようになれば、これほどのことはありません」 国内観光客数が長年横ばいである一方、沖縄を訪れる海外観光客は約150万人(2015年)。今後10年間、その数は伸びていくとも言われている。最終的に国内外の観光客数が1000万人を越す可能性もあるのだ。確かにこれはチャンスと考えても差し支えない。さらに糸数氏はこう続ける。

「この島を、本当に価値ある場所にするためには国際観光都市化が必須でしょう。将来的にはヨーロッパやアメリカからの観光客も取り込みたいと考えています。ただ、足がかりとして今はアジアに目を向けています。沖縄はアジアにとって〝一番近い日本〟であり、本土からもやはり、アジアに〝一番近い日本〟なんです。双方の中継点、つまりハブとしての沖縄という構想自体は数十年前からありました。ただ、なかなか具現化できないでいました。

我々は、日本とアジア双方のステップマーケットとして、零細企業や中小企業に『沖縄でチャレンジしてみてはどうですか?』っていう交渉をしています。特にやり取りをしているのは台湾ですね。台湾の商品って美しいデザインのものがあるので(台湾と沖縄の)コラボ商品なんかを展開しようとしています」 確かに台湾の企業からすれば、いきなり東京で商売を展開というのは腰が引けてしまうだろう。しかし、沖縄ならばまずはファミマ300店でテストができる。そこで実績を挙げられれば、全国のファミマ1万店にも展開ができるし、実際に成功事例もたくさんあるという。それは日本側からしても同様で、まずは、これから増えつつある海外観光客向けに商売をしてみて、反応が良ければ海外進出ができるというメリットがあるのだ。 「台湾とのコラボ商品だけでなく、台湾土産そのものも私は売れると思っています。台湾土産が沖縄でも買えるよって。そうなれば台湾に行く必要もないじゃないですか。もしくはそれで台湾に興味が湧いて『台湾に行ってみよう!』となってくれればいい。そういう目線でいくと台湾と沖縄はまだまだなんです。

毎年50万人の人が台湾から沖縄に来てくれていますけど、沖縄からはほとんど行っていない。私はこれが不満です。双方向の行き来がないと発展につながらない。正確な数字は出せていないのですが、沖縄から台湾への旅行者は年間、ほんの数万人程度です。だから橋渡しとして沖縄の中に台湾を作りたいな、と。これは受け入れられるという確信があります。アジアのカオス感と日本の安心感が沖縄にはありますから」

コンテンツの弱さをカバーするため 国際通りにエンタメエリアを作る

アジアとの架け橋となれる多様性が、沖縄に既存する。

立地的にも沖縄ほど適した土地はないだろう。しかし課題が山積しているのが事実でもある。 「自分たちの会社と沖縄のあるべき姿っていうのは、私は同一だと思っています。観光客がもっと多様化していくと、付随的にそこでいろんなビジネスが国際的に始まるでしょう。目を向けるのはアジア、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアであり、マーケットはそこ。ただし、日本には高度な技術がある。それを海外マーケットにつなげて、沖縄自体が大発展するところにつなげていきたいですね。でも沖縄の最大の課題はコンテンツなんです。コンテンツが弱い。沖縄は、まずショッピングモールとか、ハコから作ろうとしてしまう。どれくらい人が来るのか、どんなコンテンツが入るのかわからないと、出店なんてできないのに。魅力的なコンテンツをたくさん集めて、それに合わせてハコを作る、というようなことをしなければいけないと思います」 モールを作ったりするのは、街づくりの一環としてやるべきことである。海外の観光地にあるような、歩いていて楽しい街を目指すべきだろう。地元民も楽しめて、初めて来る観光客も退屈しないコンテンツの充実がこれからは大切になってくる。 「だから国際通りなんかもったいないですよね。エンタメが足りないんです。もちろん三線が聞けて、沖縄料理が食べられてっていうようなお店はあるんだけど、長期滞在してる人が毎日そこに行きたいとは思わないでしょう? それがダメっていうことではなくて、そこが沖縄じゃなかったとしても楽しめるようなエンタメ、たとえば劇場とかも必要なんです。沖縄に行けば、いろんなものがある、と思ってもらいたい。

沖縄の真髄っていうのは多様性を受け入れる〝ちゃんぷるー〟文化です。日本とアジアとアメリカと沖縄……異質なものを混ぜてフィットするのは沖縄にしかない特長ですから。具体的な案としては、国際通りはエンタメエリアとお土産物エリアとを分けてはどうかと思います。久茂地から安里まで、いろんなお店があって、もちろんその中には魅力的な飲食店もあって、面ごと人が増えれば、全体が盛り上がるでしょう?うちはスタート地点にあるからそのおこぼれに与れればいいな、と(笑)」

異質なものに触れることこそが 自身の成長に繋がる

糸数氏の構想は具体的かつ、腑に落ちるものが多い。しかしその実現に適した人材は揃っているのか、という疑問も浮かんでくる。その質問をぶつけると糸数氏はこう答えた。 「正直まだまだ足りないですね。若い社員も多いので、彼らを直接教育するよりは、そういうことを教えられる、経験のある社員を中途で雇用したり、個別で契約しないといけない。そうすれば若い人がその背中を見て育ってくれると思っています。人材育成というのは、育成する側が広く経験を持っている人間でないと、新人に対しての見方が狭くなってしまうんですね。人材育成の前に、会社自体が魅力的であれば、人は意欲を持って入ってこられる。意欲のある人が入れば、それは人材育成につながる。会社自体の魅力度を上げなければ人材は育たない。これは大きなポイントじゃないかな、と思います。先ほどお話したようにリウボウでは今、海外も視野に入れているので、経験ある外国人も採用し始めていますし、意欲的な社員は海外に派遣しよう、ということをやっています。社員が優秀になって帰ってくるのを期待しているのではなく、人材として成長するためには、異質なものに触れて〝カルチャーショック〟を起こさないとダメだと私は思うんです。私の経験で言うと、渡米してから、話す言葉は極力シンプルに、を心がけるようになりました」 確かにネイティブスピーカーでない限り、所詮細かいニュアンスなんて伝わらない。なるべくわかりやすく伝えなければならない。そうすると頭の中で、会話をなるべく削ぐようになる、というのも合点がいく。 「以前はもっと余計なことを話してましたね。語彙もシンプルな方が伝わるんですよ。習慣とか宗教とか考え方や常識が違う人に、ケンカしないで、『こういう考え方もあるんだ』と伝えることはとても重要です。そうしないと排除する方向に向かってしまう。何人はダメだとか、話にならんとか。そうならないために異質なものに触れさせたいんです。それが成長につながると考えているので」 糸数氏の言葉は短く、的確だ。聞いているこちらも理解がし易い。沖縄の抱える問題点をクリアする方法が明確化になった気がするほど、ひとつひとつの言葉から発するパワーを漲らせ、周りの人々にやる気を充満させていく。これぞ、トップの資質である。 最後に座右の銘を聞いてみたところ、「座右の銘として掲げているわけではないのですが、〝思い立ったら一気呵成にやる〟というのがひとつの方針ですし、何かをやるときには常に、後悔しない方を選ぶようにしています」とのことだった。なにかに迷ったとき、どちらが後悔しないかをひとつの指針にしてみるのも確かにアリだ。やらずに後悔することはあっても、やって後悔することはこの世の中にないはずだから。

情報源: ビジネスモデルの崩壊と新時代を迎えるため、 独自性をクリエイトしていく〜株式会社 リウボウホールディングス 糸数 剛一〜 | JOB ANTENNA

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