Amazonの音声認識「Alexa」は世界のIoTを席巻し「スマートフォンの次」のプラットフォームの覇者となりつつある – GIGAZINE

2017年01月17日 21時00分00秒
Amazonの音声認識「Alexa」は世界のIoTを席巻し「スマートフォンの次」のプラットフォームの覇者となりつつある

Amazonが販売するスピーカー型の音声アシスタント端末「Amazon Echo」は、Amazonのハードウェア史上最大のヒット作になりました。しかし、本当の大ヒットはEchoではなくその中身である音声認識機能「Alexa」によってこれからもたらされるのであって、Alexaを武器に「スマートフォンの次」のプラットフォームをAmazonが手中に収めつつあるという指摘があります。

Alexa: Amazon’s Operating System – Stratechery by Ben Thompson
https://stratechery.com/2017/amazons-operating-system/

Voice Is the Next Big Platform, and Alexa Will Own It
https://backchannel.com/voice-is-the-next-big-platform-and-alexa-will-own-it-c2cf13fab911#.h6v383pec

記事作成時点で、日本ではいまだに発売されていない「Echo」がどんな端末なのかは以下の記事を見ればわかります。

Amazonが話しかけるとお買い物リスト作成・予定管理・音楽再生・検索などができる「Amazon Echo」を販売開始 – GIGAZINE

発売当初は「話しかけるだけで好きな音楽を流してくれるスピーカー」と勘違いされがちだったEchoでしたが、人間の音声を正確に認識でき、人間と間違うほど流ちょうかつ的確に回答するクラウドベースの人工知能AlexaのおかげでEchoは爆発的なヒットを記録し、Amazonの5万件を超えるレビューの3分の2以上が星5つの評価を出すなど、KindleをしのぐAmazon史上最高のハードウェア成功例となりました。

しかし、実はAmazonが期待するのはEcho本体ではなく中身であるAlexaであったことは、その後のAmazonの戦略を見れば明らかです。AmazonはAlexaを単なるEchoのアシスタント機能としてではなく、他のサービスや他社にも解放することで、あらゆる製品に活用できるプラットフォームに育てようと考えています。つまり、EchoはAlexaを利用する唯一の製品ではなく、単なるAlexaを活用する最初の製品に過ぎなかったというのが正確です。

AmazonはAlexaをサードパーティや開発者に利用してもらうために、Alexa Voice Service(AVS)という音声認識機能を解放し、Alexa Skill Kit(ASK)と呼ばれるコンテンツ作成の枠組みを定義しました。ASKではSkill(スキル)と呼ばれるアドオンを使って開発者はAlexaにさまざまな注文を処理させることができます。例えば、ドミノピザの開発したSkilによってAlexaがピザを注文したり、UberのSkillによってAlexaが配車サービスを手配したり、ということが可能になりました。EchoやFire TVを使ってAlexaに話しかけることで、日常生活がより快適になるというのがAmazonの狙いです。もちろん、AmazonでのショッピングにAlexaを利用することも可能。アクティビティチェッカーのFitbit、音楽ストリーミングサービスSpotify、スマート電球hueなど各種サービスが次々とSkillを作り、記事作成時点ではサードパティ製のAlexa対応Skillが5000個を突破し、Alexaを利用するサービスは増加の一途です。

ちなみにTurboFutureが発表する「Amazon Echoで使えるSkillベスト20」を見ると、Alexaが使えるサービスの便利さを知ると同時に日本で利用できないもどかしさを痛感できます。

Amazon Echo: 20 Best Skills in the Alexa App | TurboFuture
https://turbofuture.com/consumer-electronics/The-20-Best-Amazon-Echo-Skills-in-the-Alexa-App

また、AmazonはEchoやFire TVなどに限られているAlexaの利用シーンを広げるために、「Echosim.io」というAlexaシミュレーターを公開しています。これは、ウェブサイトでマイクを使って話しかければEchoに話しかけるのと同様にAlexaを利用できるというもの。つまり、あらゆるウェブサービスがAlexaを利用できるようにAmazonは環境整備を始めているというわけです。

Alexa Skill Testing Tool – Echosim.io

AmazonがAlexaで見据えている未来は、「スマートフォンの次」であることが、Amazonのアミット・ジョトワニ氏によって語られています。マウスやキーボードを中心とするインターフェイスを利用するPCから、タッチインターフェイスを利用するスマートフォンへとコンピューティングは進化してきましたが、スマートフォン時代のタッチインターフェイスの次は、IoT時代の「音声インターフェイス」になるとAmazonは考えているというわけです。

このIoT時代におけるAlexaは「OSの機能を果たす」とStratecheryのベン・トンプソン氏は指摘しています。つまり、OSとは「ハードウェアと各種ソフトウェア群の仲立ちをするプラットフォーム・ソフトウェアである」と考えた場合、PCというハードウェアと各種ソフトウェアをWindowsが取り仕切り、スマートフォンというハードウェアと各種アプリをAndroidが取り仕切っているように、IoT端末と各種サービスをAlexaが取り仕切るという構図です。要するに、AmazonはAlexaをスマート家電などの身の回りの生活に関する製品を取り仕切る支配的なハブとしてのOSに育てようとしているということです。

ここでいう支配的地位を持つ唯一のOSが誕生することで、以下の3つのメリットが生まれるとトンプソン氏は指摘しています。まず1つは、ハードウェア間の競争を促し製品の性能向上が見込めること。最終的にはハードウェアのコモディティ化が起こる場面で、OSプロバイダーは最大限の利益を得られるようになります。2つめは、さまざまなソフトウェアをまとめ上げることでネットワーク効果を得られること。豊富なサービスがユーザーを惹きつけ、さらには大多数のユーザーにサービスが集まるという好循環が得られます。3つめはエンドユーザーとの価値のある関係性を持つことができ、顧客を取り込んだエコシステムから長期にわたって利益を上げられるということです。

そして、実際にプラットフォームAlexaにハードウェアが集まり始め、Alexaを活用した新しいサービスが続々と登場しています。

いち早くAlexaの採用を決めていた自動車メーカーのフォードは、車内でAlexaに語りかけて、お気に入りのスポーツチームの試合結果を尋ねるというSiriやGoogle Nowのような従来的な音声アシスタント機能の使い方だけでなく、走行中に自宅の車庫のシャッターを操作したり、スーパーマーケットに立ち寄ることなく商品を注文したりというAlexaならではの使い方を提案しています。

Alexa in the Car: Ford, Amazon Enable Shopping, Searching, Smart Home Access – YouTube

また、LGはスマート冷蔵庫「Smart InstaView」にAlexaを採用することを発表。将来的には、Alexaに冷蔵庫の足りない食材を自動的に発注させるというような使い方が考えられます。

LG Smart InstaView: Hands-on – YouTube

また、シングルボードコンピューター「Raspberry Pi」をAlexa対応させるメイカーも登場するなど、IoTでのAlexa利用の範囲は広がり続けています。

Installing Alexa Voice Service to Raspberry Pi – YouTube

中でも高齢者向けのホームケアロボット「ElliQ」は圧巻のデキ。まるで執事のようにAlexaが的確なアドバイスをしたり、わずらわしい操作を代わりにしてくれたりします。

ELLIQ – The active aging companion – YouTube

2017年1月に行われた世界最大のIT・家電見本市のCES 2017では、AppleやGoogleの音声認識システムを使うメーカーはごく一部で、大半はAmazonのAlexaを使っていたとのこと。エコノミストのショーン・デュブラバック氏によると、CES 2017でAlexa統合製品を発表したのは700社で、これだけの数が既存の1500製品に一気に加わることになるそうです。また、Alexa関連製品であふれていたCES 2017の状況について、Cerevoの岩佐琢磨氏は自身のブログで「家電から車まで、何もかもがAmazon Alexaに蹂躙された」と表現してAlexaの勢いを語っています。
会場どこにいってもAlexa, Alexa and Alexa。昨年のCESではほとんど影も形もなかったAlexaだが、大手からスタートアップまで、ありとあらゆるハードウェアがAlexaに対応、会場のどこへいってもHey Alexaの声を聞く羽目に。

ぶっちゃけ、あのレベルで生音声を集められてしまうと、もう戦えるプレイヤーはGoogleぐらいしか残っていない。Google homeが白旗をあげたそのとき、Alexaのグローバル・デファクトスタンダードが完成することだろう。8年ほど前、日本のオーディオ関連会社すべてがiPod/iPhoneに白旗を上げたように。もちろんGoogleは強大な体力を誇るゆえ、巻き返してスマートフォンにおけるAndroid/iPhoneのような二強となる可能性はまだまだある。しかし、少なくとも本年のCESを見る限りではAlexaが圧勝したことに異を唱える人はいないはずだ。会場をざっと見回しただけでも数百を超える機器がAlexa Enabledとなり、車から冷蔵庫まで、徹底的にVoiceControlを押し出していた。もちろんクラウドベースの音声認識解析エンジンで日本が勝てるとは思っていなかったが、ここまでAlexa一辺倒になってしまうとは、正直予想できなかった。

テクノロジー産業では、デファクトスタンダードの地位を獲得したサービスが圧倒的に優位に市場を支配するのが常で、後からその座が揺らぐことは極めて希です。Alexaを音声コントロールに採用する企業が多数現れている現状は、今まさにAmazonが大きな獲物を手中に収めようとしている状況だと言えるかもしれません。

情報源: Amazonの音声認識「Alexa」は世界のIoTを席巻し「スマートフォンの次」のプラットフォームの覇者となりつつある – GIGAZINE

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