「ポケモンGO」ヒットを生んだ、ポケモン・Niantic両社の海を超えた連携と信頼関係|SENSORS(センサーズ)|Technology×Entertainment

2016.10.17 12:00

Niantic ポケモン ポケモンGO
今年7月のローンチ以来、幅広い層の心を掴んだ位置情報ゲーム「ポケモンGO」。この制作舞台裏が、9月に行われたメディア向けのラウンドテーブルにて語られた。この場でのポケモン・Niantic両社によるエピソードやその場での空気感は、堅い信頼関係を感じさせられるものだった。

ポケモン・Niantic両社はどのようにそれぞれの社風・進め方を理解し、コミュニケーションを取っていったか。ヒットの裏にあった連携・信頼関係の構築にまつわるエピソードをピックアップ。株式会社ポケモン Pokémon GO 推進室 室長 江上周作氏、Niantic Inc. シニア・プロダクトマネージャー Pokémon GO ゲームディレクター 野村達雄氏の言葉を元にお届けする。
※「ポケモン」については以下、「株式会社ポケモン」を差す場合「ポケモン社」と標記する

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ラウンドテーブルにて。左から4人目が野村氏・5人目が江上氏
■それぞれの”らしい”アイデアが自然と出るように

2014年エイプリルフールのGoogle Maps上の企画「ポケモンチャレンジ」が、両社の繋がるきっかけだったという「ポケモンGO」。両社が最初に顔を合わせたのは2014年4月(Nianticは当時Googleの社内ベンチャーだった)。その半年後、2014年10月にプロジェクトとして立ち上げ。Nianticからは「ポケモンらしい」、ポケモン社からは「(Nianticの手がける位置情報ゲーム)Ingressらしい」アイデアがそれぞれ自然と出て、お互いのアイデアがかみ合うような感覚があったという。

野村: (ポケモン社の)第一印象は、「高レベルのIngressプレイヤーの社員が多く、新しいことに常に敏感な、チャレンジ精神が強い企業」というものでした。乗り越えなければならないという点について、もちろん国を超えた時差・言語の壁というものはありましたが、それ以外の核となるコンセプト部分などでは、ポケモン社さんの方が非常に協力的であるため、特にありませんでした。
我々もみんなポケモンを若い頃に何かしら遊んだり、(現実世界に出てくる等)何かしら妄想したりしていました。小さい頃の自分に自慢してあげたいですね。

江上: (Nianticは)皆さん優秀なエンジニアであり、とても快活で活発に議論もできて、一緒に仕事がしたいと思える人々でした。弊社でもIngressをプレイしている社員が多かったので、「人を外に連れ出す」ということの楽しさを理解できる土壌があったなと感じます。実はIngressのイベントでスカウトされた社員もいる位です。
ユーザーの皆さんにスマホアプリでもポケモンの手触りを感じてもらえるよう、世界観をはじめ、我々が20年間大事にしてきたものや譲れない部分はしっかりNianticさんに提案したり、調整していく必要があると考えていました。そのための弊社から必要と考える仕様やデータ、3Dモデルなどを整理し、提供していきました。なかにはそのままではブログラムに使いにくい形式のデータもあり、そうしたものは、使いやすい形に整形、変換して提供するなど、できるだけ開発チームに手間をかけずアプリ開発に集中できるようにサポートしていきました。
2014年12月に正式に契約を交わし「ポケモンGO」プロジェクトがスタート。その後両社にとっては「課金をヘルシーに」=重い課金を発生させないという共通認識が大きかったという。また、ポケモン社でもNianticと同じグループウェア・Google Appsを導入したこともあり、共通のサービス上でデータや資料の共有、メールのやりとり、ビデオカンファレンスが可能に。時差や距離を感じさせないコミュニケーションを図ることが出来るようになったそうだ。
「ポケモンGO」が発表された、2015年9月のポケモン社・新事業戦略発表会

■「未完成でも出していく」ことへの考え方

その後、両社にとって新鮮な驚きがあったというのが2016年3月開始(ローンチ直前7/4まで実施)となったフィールドテストだ。「一週間ほどですよね?」「発売するまで数ヶ月続きます」というスタイルの違いがここでも新鮮な驚きとなり、サービスを面白くするのに役に立ったという。

野村: Ingressエージェントを中心にフィードバックを頂きました。なかなか厳しいご意見もあったり、一方で捕まえたところで写真を撮ったり、という期待通りの反応もありつつ…一喜一憂しながら反応を見ていました。フィールドテスト中はレベル16がMAXだったのですが、レベルアップを細かくしていくことでユーザーを褒めてあげられるようにすることなど、様々な調整を行っていました。

江上: 「こんな未完成で(ユーザーテストに)出すんだ」という反応が最初は社内でもありましたね。「一緒に作っていくのが楽しいんだ」というユーザーのコメントに出会ったのは、最初の経験でした。

野村: 元々ネットの企業の出自なので「未完成の部分があっても早く出して、どういう部分に優先順位をつけていくかを決める」というDNAがあり、それをポケモン社さんにもご理解頂きました。
こうして7月にローンチ。日本でのローンチの頃にはすっかり海外での熱狂ぶりが話題となっていたが、ローンチされる国の順序も重要だったのでは。どのように決めていったのだろうか。

野村: まずはオーストラリア、ニュージーランドという比較的小さい英語圏からスタートしました。次にアメリカですね。これは(Nianticと)タイムゾーンが一緒なのですぐに対応できるからです。Ingressで、リアルワールドゲームがどのようなエリアでどれだけ受け入れられるかは分かっていたのでその順番は最初から考えていましたね。日本でローンチする頃には安定したサービスを供給しようと。
ポケモンというコンテンツはどんな日本人より有名ですよね。20年間培われてきた部分と、Nianticの新しい遊び方が上手く融合して生み出せたんじゃないかと思います。

江上: オーストラリア、ニュージーランドなどでの海外での反応は現地の子会社を通して伝わってきていました。そのときは「またまた」という感じだったのですが、日本でローンチされた後の反応を見ると、すごいことになったなぁと実感しています。
ちなみに日本ならではの反応としては、「自治体からの反応が早かった」ことだという。また、日本のように公共交通機関が発達し、街を歩く習慣がある国はポテンシャルがあると捉えているようだ。

野村: 「ポケモンGO」でのユーザー体験に限らずですが、Nianticはプレイヤーのみなさんを現実世界での冒険に誘い、体を動かし、人々につながりをもたらし、世界を少しでも良い場所にしようという理念がありますので、それを大事にしています。
出来るだけシンプルに、複雑にならないように、作っていきました。私個人としては、よく家族一緒にプレイしているところを見掛けるので、ポケモンGOを通じて、家族の絆がより深まっていけば嬉しく思います。

2015年に公開された「ポケモンGO」トレーラー

■成功の秘訣は、やはりコミュニケーション

「間口を広く、敷居を下げて、だれでも遊べるゲームにすること」(江上氏)によりこれだけの反響を集めた「ポケモンGO」。野村氏は「まだやりたいことの1%も出来てない。トレーラーをもう一回見て頂くと、やりたいことが分かる」と語る。

最後に、このように風土が違う企業がコラボしていく上で、ヒットを生み出すための秘訣は何かと尋ねてみた。シンプルだが、やはりコミュニケーションを重要視していたことが大きいようだ。

野村: 「継続的なコミュニケーション」ですね。毎週TV会議を実施し、それ以外でも常にメールで情報・アイデアを共有していました。それらを通じて、お互いの価値観を理解・共有しあえていたことが良かったのではないかと考えています。

江上: お互いがお互いを尊重し、理解不足や認識の齟齬のないように綿密にコミュニケーションをとる事につきると思います。

情報源: 「ポケモンGO」ヒットを生んだ、ポケモン・Niantic両社の海を超えた連携と信頼関係|SENSORS(センサーズ)|Technology×Entertainment

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