広域連携で実現する地域活性化「Re島プロジェクト」 | 月刊「事業構想」2017年4月号

2017年4月号

広域連携で実現する地域活性化「Re島プロジェクト」

福岡市・九州離島広域連携協議会
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長崎県、鹿児島県そして福岡県。3県にまたがる6市町が共同で進めるRe島プロジェクト。県市町の枠を超えた企画の実施に至った経緯や考え方について、全国離島振興協議会会長でもある白川壱岐市長に聞いた。

“離”を“Re”に変える

読んで字のごとく、Re島プロジェクトの“Re”は、離島の「離」です。英語のReには、再びという意味があります。今回のプロジェクトを通じて、島の魅力を「再発見」し、「再編集」したものを、「再発信」しています。こうしたプロセスを「再構築」できれば、島・まちとしてステップアップできると考えています。

プロジェクトを通じて、島内外の人々による再発見がありました。普段私たちが何気なく見過ごしている日常も、外からいらっしゃった方からすれば非日常で、魅力を感じていただける。その感動や喜びの戸を聞けば、必然的に島の人々にも良さが伝わります。自分たちだけで考えるのではなく、様々な知見や視点でこうした諸問題に取り組み続けることが重要だと考えます。

また、住民参加で進める中でこれまでと違うプレイヤーが協力をしてくれました。普段は農協や漁協、婦人会等に取りまとめをお願いすることが多いですが、今回は組織を通じてではない取り組みとなりました。参加者一人ひとりが自分たちのことだという意識で参加してもらうことが、地域としての総合力向上にもつながるのではないでしょうか。

対馬市の場合、年間20万人以上の外国人観光客が訪れます。しかし、壱岐市は千人に満たない。競合原理として考えるだけでなく、寂しい数字と思っています。当然、住民が外国語を話す機会などほとんどない。もし、このプロジェクトがきっかけとなって、福岡市まで来られている外国人観光客が壱岐を訪れていただけるようになればまちが変わると思います。

英語は、学校で教えられるのではなく、話したいと思って興味を持つようになれば、英語のレベルも向上しますし、グローバル化や活性化も自然と進むと思っています。


白川 博一(壱岐市長・全国離島振興協議会会長)

未来を見据えた計画

全国の離島は、人口流出や高齢化による急速な人口減の時代になっています。壱岐市は、比較的人口の減少スピードは緩やかですがそれでもピークだった昭和30年頃(約5万1000人)と比較すると、半分ほど(約2万7000人※2017年2月現在)になっています。しかし、悲観していても状況は変わらないので考えて行動することが必要です。

離島は、陸続きでないことによって独特な文化的な背景や、自然環境、歴史的な成り立ちがあり、個性豊かです。例えば、壱岐や対馬は朝鮮半島や大陸からの影響を受けていて、神社仏閣の造りや発掘される陶磁器も九州や本州とは違う物が出土します。

しかし、この文化的資源や自然環境に甘んじていると打つ手が見えづらくなります。さらには、国の政策も含め様々なプロジェクトが動いていますので取り組むべき課題を見極めることも必要になってきています。そのために重要なことは「未来を見据える」ということだと考えています。

今、壱岐市の取り組みで力を入れていることに若者の移住・定住ということがあります。移住にも、Uターン、Iターン、他にもCCRC構想のようないくつかのパターンがありますが、若者の行動を喚起するためには何が必要かと考えると、何れにしても仕事の確保ということになります。

競争力のある”まちづくり”

地域力をつけるための戦略として、産業を生み出す努力をするわけですが、離島の場合、ものづくりには不利な条件が多々あります。製造工場を誘致しても、物流費用などが負担となり都市と陸続きの自治体にはかなわない。そこでそうしたハンデの少ない産業を定着させる必要があります。

現在は国も旗を振って働き方改革を推進していますが、その一つの方法にテレワークがあります。テレワークは自宅で業務が可能になると同時に、全国どこにいても働くことが可能になります。こうした動きを見据えて、壱岐市では光回線の敷設を進めてきました。社会の流れがあってもインフラがなければ実行できません。だからこそ先を見据えた構想が必要だと考えます。

もう一つ、このプロジェクトを通じて感じたのは、他の自治体との競争意識の重要性です。自治体として事業を推進する際に、KPIを定め推進します。その時の目標は、基本的に前年比などの過去の自分たちとの比較などが多くなります。しかし、今回のプロジェクトのように5市町で同じ土俵に上がると、あの自治体は入込客数が10%増加したのに、うちは5%だと気になる。自然と目線が上を向くわけです。

職員にも普段からよく話しているのですが、言うだけでなく、プロジェクトを通じて職員にも少しずつ競争意識が浸透し始めたかと思っています。


Re島プロジェクトとは、長崎県・鹿児島県の5つの市町(対馬市・壱岐市・新上五島町・五島市・屋久島町)と、航空路または航路によってワンストップでつながる福岡県福岡市による共同のプロジェクト。島々の良さを届けるために、5つの市町が力を合わせ、魅力を再発見(Re-discover!)し、訪れる人を気持ちよく(Re-fresh!)して、あなたも島の未来も、再び元気(Re-born!)にする。


『Re島 PROJECT BOOK』(発売:宣伝会議)3月1日発売予定/920円+税Re島プロジェクトに参加する対馬、壱岐、五島列島の新上五島町と五島市、そして屋久島で市民・町民やプロジェクト参加メンバーが内外それぞれの視点から見た離島の魅力を写真集としてまとめた。

強いリーダーと公平な組織体

今回のRe島プロジェクトは、福岡市が157万人を擁する“九州のリーダー”として参加しています。同市の髙島市長が提唱する「WITH THE KYUSHU」のもと行政の壁を超えた連携が生まれました。というのも、壱岐や対馬は長崎県ですが、経済的なつながりは福岡県との方が深い。人が生活する以上、行政と経済の区分には違いが発生します。よく言われる“行政の壁”かもしれません。とはいえ、それを嘆いていても仕方がない。長崎県との連携とは違う協力体制があるのではないかと考えていました。

壱岐市では、8年前から福岡市に観光関連の職員を派遣しています。他にも、「壱岐の会」などといった出身者の福岡での集まりがあったりします。こうした人のネットワークを繋いだことが今回のプロジェクトとして実を結びました。

既存の枠組みを否定するのではなく、新しい組み合わせにもチャレンジすべき時代なのでしょう。今回のプロジェクトがそのスタートとなれば嬉しいですし、同じ志の離島が仲間になって、“Re島”の輪が広がると良いなと考えています。

白川 博一(しらかわ・ひろかず)
壱岐市長・全国離島振興協議会会長
旧芦辺町長、壱岐市森林組合代表理事組合長などを経て、平成20年に壱岐市長に初当選。24年に2期目、28年に3期目の当選を果たす。また、24年から全国離島振興協議会会長を務める。座右の銘は「進取(しんしゅ)」。

情報源: 広域連携で実現する地域活性化「Re島プロジェクト」 | 月刊「事業構想」2017年4月号

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