月別アーカイブ: 2017年7月

「ビーイング・ピース」ティク・ナット・ハン(1999)

ビーイング・ピース」ティク・ナット・ハン(1999)

夜の星を見上げ、美しい星を見て、あなたは微笑みするかもしれません
しかし、星はすでにそこにはなく、一千年前に消えてしまったと、科学者は言うかもしれません
このように、私たちの認識は、正しくありません

実践する人は、体の内の体、感情の内の感情、心の内の心、心の対象の内の心の対象を、
静観しなければならない

知識は、理解の妨げとみなされています
知識は、…水の流れを妨げる氷の塊のようなものです

もし、一つのことを真理と考えて、それにしがみつくならば、真理みずからがやってきて戸を叩いても、
私たちは、戸を開けないだろう

はしごを登るように、知識を乗り越える能力を持たねばなりません
もし、はしごの五段目で、自分が高いところにいると思うなら、六段目に登る見込みはありません

もっとも重要な戒律は、はっきりした心をもって生き、なにが起こっているかを知ることです

車を出す前に、
ゆく先を知っている
車と私は一体
車が高速なら、私も高速

対面して坐ること…
戦う気持ちではなく、役立とうとする気持ちで坐るのです

思い出すこと…
その日ごとに起こりつつあることを、はっきりと知ることです

強情でないこと…
最善をつくして、理解と受容に全力を傾けているとき、結果を心配する必要はありません

ぬかるみに藁を敷くこと…
ぬかるみは、論争…藁は、教えによる、愛に満ちた親切心を表します

自発的告白…
他の人たちが指摘するのを待たず…みずからの欠点を明らかにします
ほかの人たちが言うと、あなたは、違った感情を抱きます…
自分でいえば…素晴らしいことです

全会一致による決定と評決を受け入れること
評決がどのようなものであれ…従うこと…
さもなければ共同体から出てゆかなければならないこと

理解は、愛そのものです
愛は、理解のもう一つの名です

約10分で正しく理解する「8/1に何が起こるのか」 – 西欧の車窓から – Medium

約10分で正しく理解する「8/1に何が起こるのか」

こんにちは。暑さで溶けそうな日々を過ごしているヨーロピアンです。
早いもので7月に突入し、感じる日差しは完全に夏のそれになってきました。同時に、きたるXデーの8/1がもうそこまで迫ってきていることを感じさせます。
「ビットコイン分裂騒動」として日経新聞を始めとした大手メディアにも取り上げられるようになった8/1は、最近の暗号通貨界隈でもバズワードの一つとなっています。
とはいえ実際に何が起こるかを正しく理解している方はあまり多くないようです。

ド素人が70万円突っ込んだ仮想通貨は今どうなったの? 8/1のビットコイン分裂問題とかも – 今日はヒトデ祭りだぞ!

あ、どうも 以前こんな記事を書いたヒトデです! あれから2ヶ月! ヒトデ君の仮想通貨はどうなったんでしょうか? そこそこ勉強も重ねて、コツコツと売買しつつも、現在は 70万円仮想通貨にブチ込んでいます え? まだ仮想通貨投資してないって…
www.hitode-festival.com

人気ブロガーであるヒトデさんの記事を読みました。非常に楽しい記事です。
しかし、残念ながら8/1に対する認識はほとんど全て誤りであると言って良いでしょう。これは仕方がないことです。今回ばかりは状況が複雑で、断片的な情報から問題を正しく理解するのは非常に困難なのです。
そこで、ビットコインの仕組みへの理解も含めて状況をおさらいしようというのがこの記事の趣旨です。

前提記事
まずはこちらの記事を見てください。
【図説】8月1日にUASFが実行されると、ビットコインに何が起こるのか | ビットコインの最新情報 BTCN|ビットコインニュース

8月1日、UASF(User-Activated Soft Fork)が実施される可能性は、ほぼ確実と言ってもいい状況になりました。 …
btcnews.jp

BTCNのざきやまさんによる、今回の8/1問題の大テーマを完璧に解説している非常に優れた記事です。決定版と呼んで差し支えないと思います。
しかしながら、この記事は「ある程度ビットコインの技術・前提を理解している人向け」に書かれていますので、前提知識がない状態で読むのは非常に苦しいです。
そこで一旦この記事は開いた状態で横においておき、先にビットコインの理解を行いましょう。できるだけ簡易に理解できるように記述しましたので、まずは5分ほど頑張ってみてください。

ビットコインの仕組み
まずは最初におさらいです。
ビットコインは非中央集権型のコインです。「ノード」と呼ばれる端末が接続しあって、蜘蛛の巣のようにネットワークを構成しています。
このノードには誰でもなることができます。これがビットコインが民主的であると言われる所以ですね。
(ノードにはいくつかの種類が存在し、それぞれ役割が微妙に異なりますがここでは省略します)

送金
さて、AさんがBさんにビットコインを送金したとしましょう。
この時の送金はAさんのノードからBさんのノードへコインが移動した……というわけではありません。
AさんはBさんに1BTC送金したいとき、Aさんのアドレスの署名を添えて「AからB 1BTC送金 手数料0.0001」と書いてどこかのノードに向けて送信します。この時の送信内容を「トランザクション」と呼びます。
ノードはあちこちから送られてきた大量のトランザクションをある程度まとめて「ブロック」にします。そしてこのブロックをノードが共有している「台帳」の最後に付け足すための計算を一生懸命始め、計算が解けたらブロックは無事に台帳の末尾に追記されます。
この台帳が「ブロックチェーン」です。
つまり、我々がビットコインと呼称しているのがこの膨大な台帳そのものなのです。台帳には過去から今までの全ての送金内容が記載されています。
聞きなれない用語が次々出てきたと思いますので、一旦ここまでをまとめます。
「ノード」……ビットコインのネットワークに繋がるコンピュータ1つ1つ
「トランザクション」……「AからBに◯◯BTC送金」という一回の送金の単位
「ブロック」……トランザクションを一定サイズまとめたもの
「ブロックチェーン」……ブロックを順に繋げたもの。台帳。
大丈夫でしょうか。理解できたら次を読み進めてください。

台帳の共有
この台帳はそれぞれのノードが隣のノードにコピーを送信する仕組みになっています。先程の「AさんがBさんに1BTC送金した」という記録も、台帳のバケツリレーにより全ネットワークで共有されるようになるのです。
ここで疑問が出てきます。コピーされた台帳の最後に違う2つのノードがそれぞれ別のブロックを追記してしまうことはないのでしょうか。
はい、しょっちゅう起こります。 ノードは無数に存在するわけですから、台帳のコピーが間に合わないこともよくあるのですね。こうすることで「歴史」が異なる2種類の台帳が発生します。しかしこれは通常、一時的なものです。
ビットコインには「送信されてきたチェーンが自分の持っているチェーンより長ければ、長い方のチェーンを採用する」というルールが敷かれているからです。
こうして2つの異なる台帳は、よりたくさん追記された方だけが残されて、もう片方はネットワーク上から消滅します。
この時消えた台帳の方に記録されている送金履歴は「なかったこと」になります。ごくまれに「ビットコインを受け取ったはずなのに改めて見たら無くなっていた」ということがあります。
これは送金されたという事実そのものが消滅したことによる巻戻りです。
しかし、本来送金を気軽に「なかったこと」にされては困ります。ビットコインはお金ですから、送金時には商品やサービスと交換されていることでしょう。レジで受け取ったつもりのお客さんの代金が1時間後に確認した時「なくなっていた」なんてことが発生しては困ってしまいますね。
このため、自分の送金を記録した台帳が確実に生き残るかしばらく待つという方法が一般的になっています。
トランザクションを送信した状態が「0承認」
台帳に記載されたら「1承認」
さらにその後ろに別のブロックが記載されたら「2承認」
以後、3承認、4承認……と続き、一般的には6承認を待つと、ほぼ間違いなく安全であると言われています。
余談ですが、台帳が長い方が常に生き残るということは計算の速いノードは有利ですよね。これの「計算の速さ」が俗に「ハッシュパワー」と呼ばれます。ハッシュパワーの強いノードは誰よりも速く台帳の記録を伸ばしていけますから、追いつけない他のノードは長い台帳で上書きし続けるしかないのです。
ここまでの説明を理解できたら「俺はビットコインの全てを理解しているぜ」と言っても過言ではないと思います。是非お友達に自慢してください。笑
という冗談は置いておいて、これでようやく前置きが終了です。お疲れ様でした。深呼吸して、もう5分だけ頑張りましょう!

ハードフォークとソフトフォーク
さて、ノードではビットコインの専用プログラムが稼働しています。 このプログラムはある程度自由に変更することができますから、決められたルールを少しだけ変えることもできるのです。
「今までの台帳とは違う方式のブロックを採用する」というルールを敷いた新しいプログラムを作成したとしましょう。そしてこのプログラムを動かしたノードがいくつか稼働しているとします。
すると、その時点から従来の方式のノードと新方式のノードではお互いに台帳をコピーし合うことができなくなります。
こうすることで台帳は「従来の方式のノードが持っているA」「新しい方式のノードが持っているB」がそれぞれどんどん台帳を伸ばしていくことになります。つまり、2つの異なる「歴史」が生まれるのです。これがハードフォーク。
分裂前のアドレスの所有者はどちらの台帳にも問題なくアクセスすることができますから、一般に「コインが2つに分裂する」はこの状態のことを指すことになります。
一方、「ソフトフォーク」は劇的な変更を加えないために、台帳のコピーが問題なく行なえる程度の変更を加えたプログラムを動かすことです。旧バージョン・新バージョンのノードで互換性があるので台帳の分裂は発生しません。これが「ソフトフォークは安全」と言われる理由です。

8/1 UASF
さて、いよいよ8/1の話です。 ビットコインのプログラムに対する方針の違いにより、8/1にもフォークを引き起こすことを宣言した一部陣営が存在しています。
ハードフォークで2つに台帳が分裂したとして、2つの台帳のどちらに価値が生まれるか、というのは誰にも分かりません。
記憶に新しいのは、イーサリアム(ETH)とイーサリアム・クラシック(ETC)です。ハードフォークを行ったETHに対し、従来の台帳に価値がないと誰もが考えれば、古いバージョンの台帳(レガシーチェーン)を所持するノードはそのうち無くなり、従来の台帳は実質的に消滅するはずでした。
しかし実際には取引所で取り扱われることが決定し、価値がついてしまったのです。そのため旧バージョンの台帳もETCと名付けられそのまま稼働しています。
この場合は多少の混乱はありますが、コインが2つに分裂すると言ってもそれで大騒ぎするような内容ではないのは肌感で理解しやすいと思います。
しかし、8/1に行われるフォークは一味違います。 ソフトフォークでもハードフォークでもない、UASF(User-Activated-Soft-Forkの略)という第三のフォーク方式が行われます。
※7/15追記:「第三のフォーク」という表現は簡易ですが、若干不正確です。マイナーによる95%のハッシュレートの同意を得ないという意味でアクティベート方式が異なりますが、プログラムでの解決方法としては通常のソフトフォークと同一です。簡易に捉えるなら「安全なフローを経ないソフトフォーク」という認識で大体大丈夫です。
UASFにおける新プログラムを採用した新しいノードの挙動はこうです。
古い台帳と互換性を持ったプログラムを走らせるために、新プログラムの台帳は問題なく古いバージョンのノードにもコピーされます。しかしながら、従来の台帳のコピーは全て拒否します。
つまり、全ての基本である「送信されてきたチェーンが自分の持っているチェーンより長ければより長い方のチェーンを採用する」というルールを完全無視するのです。
これは言い換えると、相手にコピーするときはソフトフォーク的、しかし相手からコピーされるときはハードフォーク的であると言えます。
これにより何が起こるか?そうです、「UASFを仕掛けた側の台帳追記速度が少しでも従来の台帳を上回った時点で従来の台帳の敗北が決定する」という敵対的シナリオです。
何故こうなってしまうのか。お互いの台帳の生き残りをかけた勝負であると考えた場合、UASFを仕掛ける側は常に有利であるからです。

ハッシュパワーが拮抗する場合
BTCNの記事の①に該当します。記事を開いて該当の図を見ながらお読みください。
台帳追記速度がほぼ同じだった場合です。このような状態において、台帳を上書きしあうようなシチュエーションが高い頻度で発生することは前述しました。 このような状態では従来の台帳は実質的に使い物になりません。従来の台帳は相手を上書きできないのに対し、相手の台帳は従来の台帳を上書きしてくるからです。
こうして、従来の台帳を支持するノードは降参し、新方式に乗り換えます。

UASF側が圧倒的に遅い場合
BTCNの記事の③に該当します。
台帳追記速度で従来のノードが圧倒的に上回る場合です。想定されるケースとしてはこちらの可能性の方が高いでしょうか。 この場合、新方式のノードは台帳が短いために相手にコピーできない。そして従来のノードは台帳が長いにも係わらず相手に拒否されてしまうためコピーできない。ほとんどハードフォークと同様のことが起こります。
しかしながら、ハードフォークと決定的に違うのは「従来のチェーンはいつ新方式に追い抜かれるか分からないという恐怖と常に戦わなくてはいけない」ということです。 追い抜かれた瞬間にそれまでの歴史は全て無効化され新台帳に上書きされてしまうわけですから、これは当然です。
「一般的には6承認を待つとほぼ間違いなく安全」と前述しました。しかしこの状態では1000承認されようと1年経とうといつまででもその送金が「なかったこと」にされる可能性があります。
これでは旧方式の台帳のビットコインを決済に使うことはできません。商品の代金として受け取ったはずのビットコインが1年後にこつ然と消えてしまう可能性があるからです。取引所の入金も同様です。
これらのビットコインの送金をベースとしたビジネスを営む事業者は、送金が「なかったこと」にされる可能性のない新方式の台帳をしぶしぶにでも採用するほかありません。つまりUASFは事業者やユーザーを人質にとったテロ行為であると言えます。
単純に「2つのコインに分裂するんだ」程度の理解では実態からはほぼ遠いことはお分かりいただけたでしょうか。「一度受け取ったビットコインは消えたりしない」というある種の常識・前提を覆される可能性がある、つまりビットコインの信頼そのものを揺るがす事態が起こるかもしれないのです。
このUASFが予告された8/1に必ず実行されるのか、実はまだ分かっていません。対抗策であるハードフォークの先行きも不透明ですし、両陣営の歩み寄りにより解決する可能性も残されています。
この問題は基本的に、我々一般の利用者にはどうすることもできません。 それでも刻一刻と近づいてくる「Xデー」の正体を正しく理解しておくことで「今何が起こっているか分からない」という根源的な恐怖に立ち向かうことができるのです。

情報源: 約10分で正しく理解する「8/1に何が起こるのか」 – 西欧の車窓から – Medium

島根県海士町に人が集まる秘密とは? 「役場は住民総合サービス会社」という山内道雄町長の改革

chika.igaya@huffingtonpost.jp

島根県海士町に人が集まる秘密とは? 「役場は住民総合サービス会社」という山内道雄町長の改革
投稿日: 2013年11月08日 01時18分

「ないものはない」。日本海の島根半島沖合約60キロに浮かぶ隠岐諸島、その島のひとつである島根県海士町(あまちょう)を訪れると、まず迎えてくれるのはこの言葉だ。2011年に「海士町らしさ」を表現しようと宣言されたもので、島の玄関口である菱浦港の施設「キンニャモニャセンター」には、「ないものはない」と書かれたポスターがあちらこちらに貼られている。

コンビニエンスストアがない。ショッピングモールもない。本土から船で2、3時間かかる離島の暮らしは都市に比べ、確かに便利ではない。それにも関わらず、人口約2400人のうち、島外から移住してきた人は1割に及び、その多くが20代から40代の働き盛り。少子化で統廃合寸前だった高校にも、全国から生徒が入学し、2012年度から異例の学級増となっている。

離島の異変はそれだけではない。魚介の鮮度を保ったまま都市に出荷できる「CASシステム」を第三セクターに導入、豊富な海の幸を商品化して全国で人気に。島で育てた隠岐牛やブランド化した「いわがき・春香」なども都市の市場で高い評価を得ている。現在、全国から視察が絶えない自治体となっているが、10年前は財政破綻や過疎化の危機にひんし、「島が消える」寸前だった。その窮状をどのように脱したのか。役場を「住民総合サービス株式会社」と位置づけ、大胆な行財政改革と産業創出に取り組んできた山内道雄町長に、“ないものはない離島にあるもの”を聞いた。

■「2008年には財政再建団体になる」

2007年、北海道夕張市が財政再建団体へ移行するというニュースは話題を呼んだが、山内町長は驚かなかったという。どの地方自治体も、程度の差はあれども財政は苦しく、海士町も例外ではなかったのだ。山内町長が当選した2002年、海士町は平成の大合併の嵐が吹き荒れる中で離島が合併してもメリットがないと判断し、単独の道を選んだ。ところが、2003年の三位一体改革による「地財ショック」で地方交付税が削減され、国からの補助金も減少、公共事業を島の建設業が請け負って雇用を確保するというやり方が成り立たなくなってしまう。「2008年には海士町は財政再建団体へ転落する」。これが、当時のシミュレーションだった。


全国から注目を集まる離島、海士町

徹底した行財政改革を断行するには、自ら身を削らなければならない。そう考えた山内町長は当選後にまず、自分の給与カットに踏み切った。すると、職員たちが「自分たちの給与もカットしてほしい」と申し出てくれた。町議、教育委員も続いた。2005年、町長の給与は50%、助役、町議、教育委員は40%、職員は16%から30%とそれぞれカットし、2億円の人件費削減に成功した。海士町は「日本一給料の安い自治体」となったが、小さく守りに入ったわけではなかった。生き残りをかけ、ここから攻めに転じる。

「前の民主党の時代だったでしょうか。官から民へということがいわれた。それは理想的な言葉なんですが、私たちのように民力がない小さなところだと、やっぱり官が本気にならないといけない。漁師も農家も自分たちだけで営業できるわけではない」という山内町長。しかし、海士町には離島というハンデがあった。「うちには市場がないですから、漁師が魚を捕ったら漁協へ渡して、漁協が境港(鳥取県)の魚市に出す。今日捕ってきたものでもあくる日の船で行けば、鮮度が落ちて買い叩かれる。この流通機構を変えて漁師が儲けられる仕組みをつくらないと、後継者は育ちません」

■都市のお客さんに海士町を“売る”

そこで海士町では第三セクター「ふるさと海士」を立ち上げ、細胞組織を壊すことなく冷凍、鮮度を保ったまま魚介を出荷できる「CASシステム」という最新技術を導入した。海士町で一貫生産に成功したブランド「いわがき・春香」や、特産の「しろイカ」などを直接、都市の消費者に届けることがねらいだ。システムそのものは1億円しなかったが、建物まで含めて5億円が必要だった。「県議会はなんでそんなにお金がかかるのか、絶対に黒字にならないと批判しましたが、あれが海士町のものづくりの一大革命だった」と山内町長は振りかえる。


「ふるさと海士」のCASシステム

背水の陣だったが、産地直送の新鮮な魚介は人気となり、首都圏の外食チェーンをはじめ、百貨店やスーパー、米国や中国など海外にも販路を広げていった。山内町長が社長を兼ねた「ふるさと海士」は見事に黒字化。2012年度には売上高2億円、595万円の黒字決算となり、4期連続で黒字が続いている。「運ぶための氷代や汽船運賃、漁協の手数料、魚市場の手数料をすべて抜いた。でも、町が儲けているわけではありません。今、しろイカの最盛期ですが、一番儲けた漁師さんだとふた月半ぐらいで600万円。漁師さんからすれば、ありがたい話です。ようやくそれがわかってもらえました」

「目標は外貨獲得」と笑って話す山内町長だが、「島の中だけで経済をまわしてもだめ。島の外からいかにお金を持ってくるか、それが大事です」と話す。「それまでは予算ありきで、国から補助金が下りて終わり。自ら役場が企画しなかった。これからの行政は、特に我々のように小さいところは、営業もやらないと」

■建設業者が挑戦する「隠岐牛」ブランド化

海士町を訪れると、のんびりと草をはむ隠岐牛に出会う。隠岐特有の黒毛和種。急峻な崖地で放牧されながら、ミネラルを含んだ牧草を食べて育つため、足腰の強くおいしい肉質牛が育つという。これまで海士町では子牛のみが生産され、本土で肥育されて松阪牛や神戸牛となって市場に出ていた。


急峻な崖地で育つ隠岐牛

しかし、公共事業が減ったことで売上が激減した建設業の経営者が、2004年に異業種だった畜産業へ進出。「隠岐潮風ファーム」を立ち上げて、島生まれ島育ちの隠岐牛のブランド化を目指した。2年後に3頭を初出荷、すべて高品位の格付けを得て、肉質は松阪牛並みの評価を受ける。現在、月間12頭を品質の厳しい東京食肉市場に絞って出荷しているが、今後は新しい牛舎を建設して、出荷頭数を倍の24頭に増やす計画だ。

インタビューした日、山内町長は東京に出張中だった。東京都中央卸売市場食肉市場(港区)で10月に開かれていたイベント「東京食肉市場まつり2013」で、隠岐牛をPRするためだ。イベントでは、海士町の職員がしろイカを始めとする島の特産品を、声を上げて販売していた。町長以下、職員全員で海士町を売りだしているのだ。「東京のお客さんは舌が肥えているので、良いものは買ってくれます。東京で認められれば、ブランドになる。一見、短絡的な考え方ですが、間違いではなかったなと。また、東京の人たちに食べてもらえるというのが、漁師や農家の人たちの誇りにもなる」

■「島留学」で異例の学級増をした高校

海士町の快進撃は、ビジネスだけではない。最近、特に注目を集めているのが、島外からの高校の入学者やIターン、Uターンによる住民の増加だ。山内町長は、離島が生き残るために産業を立ち上げ「島をまるごとブランド化」する戦略をとった。「では、そもそも島が生き残るとは何か。それは、この島で人々が暮らし続けること」という。そのために必要なのが、「地域活性化のための交流」。海士町では、島外から人を呼ぶため、さまざまなプロジェクトを行ってきた。

たとえば、隠岐諸島の島前地域で唯一の高校である島根県立隠岐島前高校は、少子化と過疎化で2008年度には生徒数が30人を切っていた。このままでは高校は統廃合され、島の子供たちは15歳で島外に出なくてはいけなくなる。人口が流出、その仕送りも島民にとって負担となる。だったら、島外の子供たちを高校へ呼ぶしか存続の道はない。「島前高校魅力化プロジェクト」が立ち上がった。

島留学で島外からの子供たちが集まる隠岐島前高校

難関大学進学を目指す「特別進学コース」や地域づくりを担うリーダーを育てる「地域創造コース」などを新設、島外からの“留学生”に旅費や食費を補助する制度を作り、「島留学」を銘打った。この取り組みは評判を呼び、2012年度からは異例の学級増、2013年度も45人が入学、島外からの生徒は22人だった。

「22人のうち、19人が県外です。しかも、東京あたりから。ドバイから帰国した子もいます。19人のうち15人は学校長推薦を受けた優秀な子たちです。今年も東京と大阪で高校の説明会をやったのですが、201人の親子が参加されていました。ただ、建物が手狭な関係で、島外から入学できるのは24人ぐらい。今、島外からの子供たちにとっては狭き門になっています。島の子供たちとの間で、摩擦は生まれないか始めは心配していました。でも、島の子供たちは刺激を受けているし、うまく同化もしている」

■キャリアを持つ現役世代のIターンで島が変わる

子供だけではない。大人もなぜか海士町に集まっている。その数、246世帯、361人(2012年度末)で、一流大学の卒業者や、一流企業でキャリアを持つ20代から40代の現役世代が続々とIターンしているのだ。海士町教育委員会で島前高校魅力化プロジェクトを手がけるプロデューサーは、ソニーで働いていた岩本悠さん。一橋大学を卒業後、海士町で「干しナマコ」の加工会社を立ち上げ、中国に輸出を始めた宮崎雅也さん。他にも、島の活性化に一役買うような人の枚挙にいとまがない。一体、なぜ?

「町はIターンの人たちに直接的なお金の援助はしません。ただ、本気で頑張る人には本気でステージを与えようと思っています。若い人たちは、都会の生活に疲れたり、海士町に仕事があったりしたから来たのではなく、新しい仕事を作りに来ている。友達が友達を呼んで、次々に縁によって来ている人たちです。逆に言えば、彼らをお金で引き止めることは絶対にできません。彼らが島の閉鎖性とどう向き合うか心配しましたが、島民と良い化学反応を起こして、活性化につながっています」

■「ないものはない」けれど、海士町にあるもの

山内町長の持論は、「役場は住民総合サービス株式会社」だ。町長は社長、副町長は専務、管理職は取締役、職員は社員で、税金を納める住民は株主で、サービスを受ける顧客でもあるという。「2012年は全国の自治体などから1400人ほどの視察が来ましたが、CASシステムや島前高校を見ながら、最終的には職員の動きを見ていました。『町長、ここは役場じゃないですね』って言われます(笑)。私は社長のつもりでやってきましたが、トップひとりのアイデアでは成功しません。職員に恵まれて、その意識も変わりました。そして、役場が変われば、町民も変わります。町政座談会にいくと、以前は何を造ってほしいという声ばかりでしたが、最近は違いますね」

現在、海士町で取り組んでいることのひとつが、海藻資源の活用だ。2012年に「海士町海藻センター」を3億円で建設、海藻をバイオ燃料として生産する研究などを行っている。東日本大震災による福島第一原子力発電所事故で再生可能エネルギーの必要性が高まる中、注目を集めている。「新しい藻も発見もしています。私たちは島で暮らしていますから、海抜きでは生きられない。海を大事にしないと」

海士町のさまざまな取り組みは、高い評価を受けている。島前高校魅力化プロジェクトは7月、地域の課題解決のモデルとなるような取り組みを表彰する「プラチナ大賞」で、124件のエントリーの中から見事、大賞・総務大臣賞を受賞した。「プラチナ大賞を頂いたことで、この間、総務大臣が海士町に来ると言ってたんですが、台風24号で船が出なくてとりやめになりました」と山内町長は笑う。


海士町の改革を導いた山内道雄町長

海士町は確かに不便な離島だが、「ないものはない」というその言葉にはこんなメッセージが込められているという。「地域の人どうしの繋がりを大切に、無駄なものを求めず、シンプルでも満ち足りた暮らしを営むことが真の幸せではないか? 何が本当の豊かさなのだろうか? 東日本大震災後、日本人の価値観が大きく変わりつつある今、素直に『ないものはない』と言えてしまう幸せが、海士町にはあります」

———————–

この10年におよぶ海士町の改革は、他の地方の自治体のまちづくりに新たな可能性を示しています。あなたのご意見をお聞かせください。

猪谷千香

もっと見る: Iターン 島根県 離島 社会 島留学 財政再建 自治体 海士町 山内町長 ソーシャルデザイン 教育 島根 隠岐牛 山内道雄町長 地方自治 島根県海士町 島前高校 山内道雄 海士町 地方創生 地域活性化

情報源: 島根県海士町に人が集まる秘密とは? 「役場は住民総合サービス会社」という山内道雄町長の改革

沖縄流通大手と業務提携、トライステージ子会社、訪日客向け  :日本経済新聞

2017/6/29 23:00日本経済新聞 電子版

 テレビ通販支援のトライステージ傘下の日本百貨店(東京・港)は沖縄県で訪日外国人(インバウンド)向けに日本の伝統工芸品の販売を始める。現地の流通大手リウボウインダストリー(那覇市)と業務提携し同社が運営する百貨店やコンビニエンスストア、スーパーマーケットで商品を販売する。沖縄県で増え続けるインバウンド需要を取り込む考え。

 日本百貨店は、日本の職人が手掛けた江戸切子や漆塗りの器、竹筒などを販売している。国内では東京都と神奈川県に計7店を運営しているほか、香港の大手ショッピングセンターなどにも商品を供給している。沖縄県での販売は初めてで、初年度は2億円の売り上げを目指す。

情報源: 沖縄流通大手と業務提携、トライステージ子会社、訪日客向け  :日本経済新聞