独バイエル、モンサント統合で続く誤算 売上高の下方修正や賠償金支払い命令 :日本経済新聞

2018/9/7付日本経済新聞 朝刊

【フランクフルト=深尾幸生】医薬・農薬大手の独バイエルが、種子大手の米モンサントとの統合を巡る誤算に揺れている。5日、2018年12月通期の売上高予想を下方修正。8月にはモンサントの農薬に発がん性が疑われた訴訟で高額の賠償金の支払いを命じられた。6月に完了した総額630億ドル(約7兆円)にのぼる巨額買収は多難な船出となっている。

買収完了後、初めての決算会見でヴェルナー・バウマン社長は「世界トップの農薬と種子の会社を経営できることを誇りに思う」と買収の意義を強調した。6月7日に買収を完了し、8月21日を「Day1」として統合作業を始めた。

モンサントが組み込まれる通期の見通しは売上高が前年比11%増の390億ユーロ(約5兆500億円)。実質的に下方修正で「モンサント買収が遅れた分を調整した」とバウマン社長は説明する。

バイエルの誤算は売り上げ見通しの引き下げだけではない。8月に米国でモンサントが販売する主力の除草剤「ラウンドアップ」に発がん性が疑われた訴訟の判決だ。

米カリフォルニア州の裁判所はモンサントに2億8900万ドルの賠償金の支払いを命じた。ラウンドアップの発がん性をめぐって司法判断が示されたのは初めてだ。

バイエルは安全性を強調し控訴するが、原告は増え続けている。欧米メディアは「賠償額は総額1兆円を超える可能性がある」と報じている。訴訟の行方が収益にダメージを与えるとの見方から、バイエルの株価は年初に比べ22%下落した。

16年の買収合意当初に描いた統合効果が薄まっている可能性もある。バイエルは買収過程で、欧米当局の承認を得るために優良事業を手放さざるを得なかった。野菜種子など、独BASFなどに売却した事業は売上高20億ユーロ前後に相当する。

農薬を含むクロップサイエンス部門の12月通期の特殊要因を除くEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は20%以上の増加を見込む。バウマン社長らバイエル経営陣はモンサント買収が正しかったと結果で証明し続けるしかない。

情報源: 独バイエル、モンサント統合で続く誤算 売上高の下方修正や賠償金支払い命令 :日本経済新聞

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