(be report)家庭に広がる除草剤・殺虫剤 発がん性や農業被害で欧米は規制:朝日新聞デジタル

2019年8月24日03時30分

写真・図版
身近に広がる農薬<グラフィック・高田ゆき>

 発がん性や胎児の脳への影響が指摘されている農薬が、駐車場や道ばたの除草、コバエやゴキブリの駆除、ペットのノミ取りなどに無造作に使われ、使用量が増えている。代表的なのが、グリホサートの除草剤とネオニコチノイド系の殺虫剤だ。海外では規制が強化されつつあるのに、国内の対応が甘いことに、研究者は懸念を抱いログイン前の続きている。

 「ダイソーさんからは、製造もしないし、販売もしないという回答をいただきました」

 「小樽・子どもの環境を考える親の会」(北海道)の神聡子代表は7月、2万2千筆余の署名とともに小売業者4社にグリホサートやネオニコチノイド系製品の販売中止を要望した。その結果が今月8日、東京・永田町の衆院議員会館で発表された。

 100円ショップ最大手の「ダイソー」を展開する大創産業(広島県東広島市)は、グリホサートについて、在庫がなくなり次第、販売を終了し、酢の除草剤などに切り替えていくと回答した。だが、ほかの3社は「国が認めている」などとして、販売を継続する意思を示したという。

 グリホサートをめぐっては、米カリフォルニア州の裁判所陪審が5月、これを使った除草剤ラウンドアップを製造したモンサントの親会社バイエルに対し、ラウンドアップが原因でがんになったと訴える夫婦に約20億ドル(約2100億円)の支払いを命じる評決を下した。同じような裁判で昨年8月に約3億ドル、今年3月には約8千万ドルの支払いを命じる評決が下された。バイエルは、米国内で1万8千件以上の訴訟が起きていると公表している。

 オーストリア国民議会(下院)は7月、グリホサートの使用を禁止する法案を可決した。欧州連合(EU)で初めての全面禁止になる可能性がある。ドイツ、イタリア、オランダでも個人使用が禁止されたり、米国やアルゼンチン、オーストラリアでは自治体で部分的に禁止されたりするなど、各国で規制の動きが広がっている。率先して販売を中止する企業も出ている。

 ■ヒトへの健康影響、相次ぐ研究結果

 世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)は2015年3月、「グリホサートはヒトに対して恐らく発がん性がある」とした。一方、欧州食品安全機関(EFSA)や米環境保護局(EPA)は発がん性を否定。日本の食品安全委員会も「食品を通じてヒトの健康に悪影響を生じるおそれはない」という立場だ。17年12月には小麦やそば、ゴマなどの残留基準値を緩和した。

 健康影響をめぐる議論は続いているが、発がん性以外にも発達障害や腸内細菌の異常、生殖毒性などを指摘する研究結果が相次いでいる。国際産婦人科連合(FIGO)は7月31日、化学物質が胎盤を通過して胎児に蓄積し長期的な後遺症を引き起こす可能性があるとして、予防原則の観点から「グリホサートの使用を全世界で段階的に廃止すべきだ」との声明を発表した。

 グリホサートと並んで海外と日本の対応が大きく違うのが、ネオニコチノイド系農薬だ。EUは昨年4月、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサムの3種の屋外での使用を禁止した。花粉媒介者として農作物生産などに大きくかかわるミツバチの大量死との関係を認めたからだ。胎児などへの発達神経毒性を指摘する研究結果も増えており、米国やカナダ、ブラジル、韓国なども規制を強めている。

 ■日本は基準緩和、研究者から警告

 だが、7種のネオニコチノイド系農薬を登録している日本は、ミツバチの大量死の「原因である可能性が高い」としながら、残留基準を緩和するなどしており、欧米に比べて規制が緩い。コバエやゴキブリの駆除剤、ガーデニング用の殺虫剤、ペットのノミ取りなど、家庭でも広く使われている。

 グリホサートやネオニコチノイド系農薬の国内出荷量は、この20年間に2~3倍に増えている。農水省は、使用量が多いこれらの農薬について、21年以降に新たな科学的知見に基づいて優先的に再評価する意向を示している。だが、市民団体や研究者からは、早急な対応を求める声が高まっている。

 環境脳神経科学情報センターの木村―黒田純子副代表は「日本は農薬が毒物だという認識がなく、基準値以下なら安全としているが、基準には発達神経毒性などは含まれず、安全は保障されていない。科学的にもこれらの農薬暴露が、発達障害を増やし、発がんを起こすなどの実験的証拠が多数集まっている。すぐに使用を中止できないにしても、予防原則に基づいて規制を強化していくべきだ」と指摘している。(編集委員・石井徹)

情報源: (be report)家庭に広がる除草剤・殺虫剤 発がん性や農業被害で欧米は規制:朝日新聞デジタル