ココカラ争奪戦、起点はマツキヨ・スギ破談(ルポ迫真):日本経済新聞

2019/8/27 2:00日本経済新聞 電子版

ドラッグストア大手のマツモトキヨシホールディングス(HD)がココカラファインと経営統合の協議に入った。マツキヨHDがココカラを巡り争奪戦を繰り広げたスギHDは因縁の関係にある。実は2018年末まで、両社は経営統合の交渉を進めていたのだ。ココカラ争奪戦は、元”恋人”同士の構図だった。

今年4月に争奪戦が始まる1年前、マツキヨHDとスギHDは水面下で経営統合に向かって動いていた。持ちかけたのはマツキヨHDだ。

マツキヨHDは16年度に22年ぶりにドラッグストア売上高首位から陥落。同業他社の出店拡大や訪日外国人向け売上高の伸びの鈍化で18年度には業界5位にまで沈んだ。「スギさんと一緒に調剤事業をやっていきたい。調剤なしでは生き残れない」(元幹部)

調剤部門は薬剤師が必要で、高齢化の進展で成長が続く分野だ。スギHDは業界6位だが調剤に限るとドラッグストアではウエルシアHDに次ぐ2番手だ。化粧品や日用品のプライベートブランド(PB)に強いマツキヨHDと、調剤に強いスギHD。相乗効果は大きい組み合わせだ。

だが、交渉が大詰めを迎えた18年末に突如、破談となり統合は幻に終わる。マツキヨHDが「スギに牛耳られる」と後ろ向きになったからだ。


マツキヨHDは創業家3代目の松本清雄(46)が社長を務め、創業一族で10%強の株式を保有する。一方のスギHDは会長の杉浦広一(69)夫妻が開いた薬局が源流で、創業家が4割強を出資する。ともにオーナー色が濃く、役員人事や統合比率といった細部で折り合えなかった。

「別れた相手に未練はない」(スギHD幹部)。再編に動き出した元恋人たちが次の相手に見定めたのが、図らずも同じ相手、業界7位のココカラだった。08年に関東のセイジョーと関西のセガミメディクスの統合で発足した企業だ。経営トップはサラリーマン社長の塚本厚志(56)。「弱者だから色々やらないと」(塚本)と他社との業務提携に積極的な社風でマツキヨHDとスギHDは片思いを募らせていく。

マツキヨHDの松本はスギHDと縁談を進める以前から、ココカラの塚本と接触していた。業界団体の会合で知り合いとなった2人。創業者世代が多い業界にあって年齢も近く、「人見知りで、なかなか腹を割って話す相手は少ない」(関係者)と評される松本が心を許して会話できる間柄だ。「両社が提携したらどうなるか」。15年からは具体的な提携の未来図も2人で語り合っていた。

マツキヨHDはスギHDとの破談後、ココカラに正式に書面で提携を打診した。塚本は「構想を温めていたところに、正式な提案が来たので動いた」と、今年4月に千葉県松戸市のマツキヨHD本社で直接、交渉を開始することを松本に伝えた。

「寝耳に水だ」「急いだほうがいい」。4月26日にマツキヨHDとココカラの提携協議入りが発表になり、スギHD社内は慌てた。翌日にはココカラの全取締役宛てに数十ページに及ぶ経営統合提案書を送った。2社の統合後の将来を力説する内容だった。

提案をまとめたのは子会社のスギ薬局社長で会長の長男、杉浦克典(40)。人当たりが良くまじめな人柄だ。「押しの強い両親とは異なる」(業界関係者)とも評される。以前に勤めていた医療機器メーカーの上司を通じ、約3年前から塚本と親交を深めていた。克典には「調剤・医療への使命感が同じだ」と手応えがあった。その熱意に「私は一切、口を挟まない」と会長の杉浦も交渉を任せた。

ココカラは6月、スギHDとの交渉も決めた。さらに、どちらの提案が良いか、判断を第三者の特別委員会に検討してもらうことにした。自社の命運を左右する判断を第三者に委ねる異例の展開に2社はココカラの真意を測りかねた。

松本清雄と杉浦克典はそれぞれ、特別委員会などへの説明に自ら出席した。ただ、8月14日に結論が出るまで、片思いの相手に水面下で接触して、本命を探り出すことは許されなかった。(敬称略)

情報源: ココカラ争奪戦、起点はマツキヨ・スギ破談(ルポ迫真)  :日本経済新聞

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