成長したければ「複業」: 日本経済新聞

2018年7月23日 6:30

安倍政権が推進する働き方改革関連法が成立した。企業が個人を拘束できる時間は明らかに減少しており、個人は自らの成長を最速化させるためにどのように時間を使うのかを考えなければならない。

1971年生まれ。京大卒。公認会計士。2002年にIPO支援コンサルタントとして独立。07年から上場企業の経営者を務め、11年からシンガポールでも活動。13年にIPOビジネス再開
人工知能(AI)やロボティックス等の技術革新により、大企業に勤めてさえいれば安定した収入が得られるという時代は終焉(しゅうえん)を迎えつつある。これからの時代は個人がどれだけ社会の中で代替することができない存在となるかが求められている。

日本企業は、銀行など金融機関にみられるように、人事異動を頻繁に行い、特定の人物の能力に依存しない代替可能な組織や業務体系を構築してきたが、これが個人の人生にとっては大問題となるだろう。

このような状況の中での働き方の一つとして「複業」を提案したい。複数の仕事を同時並行で行う「複業」は、企業に帰属するという考え方から個人として社会の中で生きていくという考え方へと意識が転換し、自分自身を唯一の存在として成長させていく道筋が見える現実的な働き方だ。

私はこれまで上場企業の経営者だった数年を除き、特定の企業に所属することなく、同時並行で複数のベンチャー企業の経営に参画してきた。結果、今月新規株式公開(IPO)予定の企業を含め8社のIPOを経験した。現在、5社の上場企業で取締役を務め、15社のベンチャー企業で取締役、監査役、顧問などの立場で経営参画している。

私の場合、公認会計士の資格を有していたことから、社外取締役などの立場で多くのベンチャー企業の経営陣として課題に向きあう機会を得られたことで、現在のスタイルを構築することができた。おのおのの企業の周辺に存在する多くの情報やネットワークが、結果として私個人のものとなり、これを好循環させることで各企業にも私にも利益をもたらしている。

もし、私が一つの仕事に従事してきたとしたら、このような能力もネットワークも身に付かなかっただろう。転職によりキャリアアップしていくという手法は、培ったネットワークなどを放棄し、新たな企業に帰属する場合が多く、非常にロスが大きい。

大学を卒業し、企業に就職し、真面目に仕事をしていれば、企業が個人を守ってくれるという時代は終わった。企業に完全に帰属するのではなく、複数の仕事を同時並行で進めることで、社会の中で唯一の存在として成長していくことが成功の秘訣だ。

自分の経験や能力を生かすことができる複数の企業に関わるだけでいい。60万円の給料を得るのであれば、20万円ずつ3社から得るようにするのだ。「複業」により、企業から守られる存在から、個人として社会の中で存在する方向に進路を変更することを選択肢に入れてみてほしい。

[日経産業新聞2018年7月20日付]

情報源: 成長したければ「複業」: 日本経済新聞

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です