ココカラ振り向かせた「元王者」の変身 マツキヨHDと統合協議へ: 日本経済新聞

2019年8月14日 15:17

両社の統合が実現すれば、ドラッグストア業界で国内首位に立つ
ドラッグストア大手のココカラファインを巡るマツモトキヨシホールディングス(HD)とスギHDによる争奪戦は14日、マツキヨHDに軍配が上がった。ココカラとマツキヨHDが経営統合を目指した協議に入る。マツキヨHDの勝因を探ると、好採算のプライベートブランド(PB)商品を中心に利益重視に舵(かじ)を切った約5年前の「変身」が浮かび上がる。

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ココカラは6月10日、両社からの提案を受けて社外の有識者らを集めた特別委員会の設置を発表した。同社の社外取締役で公認会計士の谷間真氏、イトーヨーカ堂元社長の亀井淳氏、メリルリンチ日本証券元副会長の今井光氏など計6人で構成され、商品や店舗、物流、株価など総合的に検討を重ねてきた。8月7日にマツキヨHDを推す結論を提出。ココカラの取締役会もこれを認める格好で、14日にマツキヨHDを選んだ。

当初マツキヨHDとスギHDは、いずれも店舗網でココカラを補完することが見込まれ、「好勝負になる」とみられていた。最終的にマツキヨHDが選ばれた要因は何だったのか。

マツキヨHDは2016年度、20年あまり続いたドラッグストア業界の売上高首位をウエルシアHDに譲った。当時は「ドラッグストアの王者が陥落」と騒がれたが、ここには3代目社長、松本清雄社長による方針転換があった。いったんは規模拡大のスピードを緩めることにしたのだ。

「いずれコンビニのように集約が進む」(同社首脳)。市場飽和を見据えて新規出店を抑制し、稼げる店づくりへと明確に転換したのだ。その象徴がPBだ。2700万人のカード会員情報を活用し、PBの企画開発に生かしている。包装デザインを重視した日用品「matsukiyo」を15年に投入し、それまでの低価格重視から切り替えた。

高品質・高機能をうたう化粧品・日用品の「アルジェラン」シリーズが累計1千万個以上を販売するなど看板ブランドも育った。エイジングケアブランド「レチノタイム」など、これまでにない商品も提供した。「ナショナルブランド(NB)の低価格版」というイメージだったPBとは一線を画した。

マツキヨHDのPBはNBよりも利益率が約1割高い。PBの売上高構成比率を11%まで引き上げるとともに、営業利益率は18年度に6.3%となり、大手でトップ。16年度からはスギHD(同5.3%)を逆転している。ココカラは14日、マツキヨHDについて「店舗作業の効率性やPB商品の開発などについて、大きなシナジー効果が生じる可能性がある」とコメントした。

一方、スギHDは自社の強みである調剤部門を前面に打ち出せば勝算があるとみていた。店舗の約8割で調剤薬局を併設するほか、地域と連携した訪問介護・看護の取り組みを進めてきた。同じく調剤を得意とするココカラとの経営統合で、調剤や医療のノウハウを持ち寄り、強みをさらに伸ばす戦略だった。

スギHDがココカラと組めば、調剤事業の売上高は約1500億円となり、同分野で首位のウエルシアHDを上回る。だが「調剤市場全体におけるドラッグストアの占有率は現状では低い」(関係者)。ココカラも一定のノウハウがあったことから「高い評価にはつながらなかったようだ」(同)。

日本チェーンドラッグストア協会によると、ドラッグストア業界の2018年度の全店売上高は7兆2744億円と17年度と比べて6.2%伸びた。店舗数が2万店を超え、取扱商品は日用品や化粧品など同じメーカーも多く、スーパーやコンビニエンスストアとの業態の垣根が消え、同質化が進んでいる。さらなる競争激化が予想されるなか、今回の再編劇は、PBなどで同質化から一歩抜け出す変身を遂げたマツキヨHDが勝利した。

マツキヨHDとココカラが統合すれば、売上高1兆円の「メガドラッグ」が誕生する。業界では、これまで大手同士の統合は例がなかった。両社以外にも、生き残りをかけたM&A(合併・買収)や統合の動きが広がりそうだ。(池下祐磨、林咲希)

情報源: ココカラ振り向かせた「元王者」の変身 マツキヨHDと統合協議へ: 日本経済新聞

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