フラれたスギ、見えないイオンが壁に(ルポ迫真):日本経済新聞

2019/8/29 2:00日本経済新聞 電子版

スギHDはイオンと決別後に売上高と店舗を大幅に拡大した(名古屋市の店舗)

「誰か聞いているか」「まだ連絡はありません」。8月14日昼、ココカラファインとマツモトキヨシホールディングス(HD)の交渉協議入りが伝わると、愛知県大府市のスギHD本社に激震が走った。マツキヨHDが選ばれた決め手は、プライベートブランド(PB)だったことが分かると、「最初から出来レースだったのではないか」(スギHD幹部)と怒りが増した。

【前回記事】ココカラ「モテすぎて決められない」
 「塚本さんの下で新体制を進めていきたい」。スギHDはココカラ社長の塚本厚志(56)に対し統合会社での社長就任もちらつかせた。特別委への説明が不調に終わっても、選ばれるのは自社だとの思いがあった。
特別委がマツキヨHDを支持したのはPB以外にも理由がある。「ドラッグストア業界で企業の集約が進んでいく中、イオンと互角に競争できる陣営が育つ必要があるのではないか」という見地での議論もあった。競争が業界の進化と経済効果につながるとの考えが前提にある。

イオンはドラッグストアで一大勢力だ。首位のツルハHDに13%出資し、2位のウエルシアHDは子会社だ。イオンが主導する医薬品PBなどを共有する企業グループは約5千店の規模がある。マツキヨHDなど今回の交渉協議をしていた3社はいずれも1千店台の規模だ。イオン陣営と競い合いながら業界再編の受け皿となるには、どの組み合わせが最善か。

スギHDにとってはイオンとの過去の関係が逆風になった。両社は2000年に資本業務提携したが、06年に提携を解消した。両社に感情的なしこりが残るとされる。ココカラがスギHDを選ぶとイオンの商業施設に入居するココカラの店が「撤退に追い込まれかねない」(業界大手幹部)との見方もあった。

特別委の委員長の亀井淳(75)はセブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂の元社長。小売業界の再編の知見・経験も豊富だ。特別委6人の専門知識を持ち寄った議論の結果、スギHDよりもマツキヨHDと組んだ方が、商品力や店舗立地などの面で将来性が大きいとの意見が大勢を占めた。

スギHDはイオンと決別してから売上高を4倍に増やした。ココカラ争奪戦でも最後までスギHDは「(イオンの本社のある千葉市の)幕張の動向を注視していた」(幹部)。イオンは今回、表だった動きを見せなかったがスギHDには目に見えない大きな壁となった。(敬称略)

情報源: フラれたスギ、見えないイオンが壁に(ルポ迫真)  :日本経済新聞

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