テクノロジーが権力に ジャック・アタリ氏 : 日本経済新聞

2020/4/8 23:00
新型コロナウイルスの感染拡大は人類にとって歴史的な危機になりつつある。
世界は今後どう変わっていくのか。
人類はコロナとどう闘っていけばよいのか。

――新型コロナは世界経済をどう変えますか。

危機が示したのは、命を守る分野の経済価値の高さだ
健康、食品、衛生、デジタル、物流、クリーンエネルギー、教育、文化、研究などが該当する
これらを合計すると、各国の国内総生産(GDP)の5~6割を占めるが、危機を機に割合を高めるべきだ」

「経済の非常事態は長く続く。
これらの分野を犠牲にした企業の救済策を作るべきではない。
そして、企業はこれらと関係のある事業を探していかなければいけない

――世界経済を立て直すのに必要なことは。

「誰も第1の優先事項とは考えていないようだが、ワクチンと治療薬に極めて多額の資金を充てることだ。
いくつか支援策は発表されているが、ばかげていると言わざるを得ないほど少額だ。
この問題はワクチンや治療薬があれば解決し、なければ解決しない
それにより危機は3カ月で終わるかもしれないし、3年続くかもしれない」

――人類史的にみて新型コロナはどんな意味を持つのでしょう。

権力の変容が起こるとみている。
歴史上、大きな感染症は権力の変容を生んできた。
例えば15世紀ごろにはペストの発生を機に教会から治安当局に権力が移った。
感染者を隔離するなどの力を持ったからだ」

「その後の感染症で、人々は科学が問題を解決すると考えるようになった。
治安当局から医学への権力の移転だ。
これまで我々はこの段階にいた。
新型コロナの対策ではテクノロジーが力を持っている。
問題はテクノロジーを全体主義の道具とするか、利他的かつ他者と共感する手段とすべきかだ。
私が答える『明日の民主主義』は後者だ」

――中国では経済活動が再開しつつあります。
危機を乗り越えた勝者となるのでしょうか。

「そうは思わない。
技術を持った国としての存在感は高まるが内政で大きな問題を抱える。
米国内が分断を続け、欧州が中国によるアフリカなどへのコロナ支援を黙認する。
この2つの”失敗”が起こらない限り、中国が世界の中心にのし上がることはない。
中国という国の透明性のなさに、世界からはますます不信の目が向けられる

――コロナで大衆迎合主義(ポピュリズム)は勢いを増しませんか。

「当初はドイツ、オランダ、チェコなどで(国境封鎖といった)自国優先の動きがあったが、今は金融でも産業でも欧州の結束が強まっている。
結束できないと『各国がバラバラに行動した方がうまくいく』と唱える勢力は力を伸ばすが、私は悲観的ではない」

――日本はどう危機から脱するでしょうか。

「日本は危機対応に必要な要素、すなわち国の結束、知力、技術力、慎重さを全て持った国だ。
島国で出入国を管理しやすく、対応も他国に比べると容易だ。
危機が終わったとき日本は国力を高めているだろう」
(聞き手はパリ=白石透冴)

Jacques Attali 1943年生まれ。仏国立行政学院卒。81~91年、ミッテラン大統領の特別顧問を務めた。91~93年、欧州復興開発銀行の初代総裁。著書に「21世紀の歴史」など。

情報源: 新型コロナ:テクノロジーが権力に 仏経済学者ジャック・アタリ氏  :日本経済新聞

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です