米国で勃興する「超地元密着型メディア」のビジネスモデル | Forbes JAPAN

ビジネス 2020/05/07 06:00
Brad Adgate , CONTRIBUTOR

米国の地方新聞の多くは発行部数が減少し、廃刊するケースも少なくない。
しかし、一部のハイパーローカル・メディアは好調な業績を維持している。
中でも最も成功している企業の1つが「Patch」だ。
同社は2007年の設立から2年後にAOLに買収されたが、その後業績が低迷し、2014年には従業員の3分の1をリストラし、投資会社の「Hale Global」が株式の過半数を買い取った。

現在、Patchは100名を超える記者を抱えている。
彼らは1200以上のコミュニティをカバーし、1日当たり1000件以上の記事を投稿している。
個々のコミュニティには3万人以上の読者がいる。

超地元密着型のメディアであるPatchは、マンハッタンではウェスト・ビレッジやグリニッチ・ヴィレッジなど12のコミュニティをカバーしている。
Patchが提供するのは、交通事故や犯罪、店舗の開店、不動産など、大手メディアが扱わない地元情報だ。
同社は、グローバルなニュースは一切扱わない

Patchの推定年商は21億円を超え、過去4年間黒字を維持しているという。
昨年のユーザー数は3200万人と、2015年の800万人から大幅に増加した。
Axiosによると、2020年3月の月間ページビュー数は8500万PVから1億4800万PVに増加したという。
また、メーリングリストはこの1年間で40%増加し、毎朝200万人にニュースレターを配信している。

Patchは、地元密着メディアが生き残るためにはイノベーションとコラボレーションが必要であることに気が付き、黒字化が可能なビジネスモデルを構築した。
同社はユーザーに課金をしておらず、広告以外に収益源を多様化している。

その1つが「イベントカレンダー」機能だ。
ユーザーは、イベントカレンダー機能を使ってローカルなイベントをPatch上に投稿することができる。
自分のコミュニティ向けには無料で投稿できるが、他のコミュニティに数日間投稿する場合は、1投稿当たり50ドルの費用が掛かる。
Patchによると、イベントリスティングの収益はこの1年で倍増したという。

もう1つの大きな収益源がクラシファイド広告だ。
ユーザーは、不要になった物を売りに出したり、犬の散歩などのサービスを申し出ることができる。
また、地元企業の求人も掲載されている。

地域に特化した広告が強み

プログラマティックバイイング(運用型広告)も、重要な収益源だ。
BIAのマネージングディレクターであるRick Duceyは「広告主は、ハイパーローカル・メディアへの出稿に関心を強めている」と話す。

BIAが広告主にアンケート調査を行ったところ、81%が何かしらのジオターゲティングを活用していることがわかったという。
75%の広告主が特定の地域限定でテレビ広告を流している。
BIAの予測によると、モバイル広告におけるロケーションターゲティング広告の支出額は、2019年の285億ドル(約3兆円)から2024年には502億ドルに増加するという。

現状のモバイル広告費に占めるロケーションターゲティング広告の割合は約36%で、今後はさらに増えることが予想される。

Patch以外にも、ハイパーローカル・ニュースを提供している企業がある。
その1つが、「Nextdoor」だ。
同社が運営するサイトでは、コミュニティの住民たちがローカルな話題やイベント、おすすめ情報などを投稿している。

大統領選での活用も期待

Patchと異なり、Nextdoorは11ヶ国で事業を展開している。
同社は米国で2011年に設立され、直近の評価額は21億ドルに達する。
他には、経営危機に陥っている新聞社「McClatchy」が、今年4月にコロラド州で立ち上げたローカルニュースサイト「The Longmont Leader」がある。

このサイトは、グーグルのニュース・イニシアティブの資金援助を受けており、市民ジャーナリストによる記事やイベント情報など、ローカルに特化したニュースを提供するという。
McClatchyは、昨年もグーグルから支援を受け、オハイオ州ヤングスタウンでハイパーローカル・ニュースサイト「Mahoning Matters」を立ち上げている。

Patchは幾度の危機を乗り越えて事業を成功させたが、他のハイパーローカル・メディアの多くは経営に苦しんでいる。
「ローカル・メディアはジャーナリズムやビジネスモデルに革新をもたらし、ユーザー数や広告主の数を拡大することに成功したが、広告収益だけでは経営を維持することが困難なのが実情だ。
第2の収益の柱としてユーザーへの月額課金を模索するケースもあるが、スケールが難しい」とBIAのDuceyは話す。

ハイパーローカル・メディアで注目を集めるニュースは、新型コロナウイルスのパンデミックを除けば2020年の大統領選挙だろう。
大統領選挙では、数十億ドルもの広告宣伝費が投下される。
投票データが集まるにつれ、各陣営はジオターゲティング広告を活用してより効果的な選挙活動を展開しようとし、ハイパーローカル・ニュースの重要性が増すことになるだろう。

情報源: 米国で勃興する「超地元密着型メディア」のビジネスモデル | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

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