ファッション業界で15年生きてきた人間が思うD2Cの本当の価値|深地雅也|note

深地雅也
2020/02/10 14:53

D2Cがもたらした変化

D2Cの肝はブランドストーリーだとか、コミュニティ形成だとか、データドリブンだとか、そんなものでは一切無い。
それらは以前から当然のようにあったし、Webによってわかりやすく可視化されたに過ぎない。
D2C以降で一番変化が起こったと思われるのは「店舗の役割」ではないだろうか。

【インスタ平均フォロワー数70万人】NYで話題のD2C店舗に実際に行ってみた

上記はD2Cブランドの店舗についてレポートされたものだ。
これを読めばわかるが、それぞれの店舗にはしっかりと目的がある。
それは「商品の体験」であったり、「コンセプト・世界観の理解」であったりと色々あるのだが、注目すべきは、ECありきの実店舗の設計だ。つまり、

売る事を一番の目的としない店舗のあり方

に他ならない。
ユーザーはECを使えばいつでも決済は可能になる。
だからこそ、店舗では売る事を一番の目的としなくてもよくなった。
ここで重要なのは、店舗で「体験価値を高める」ではなく、店舗で「売らなくてよくなった」にある。
この「売らなくていい店」が活発になったのがD2C以降ではないだろうか。

「売らなくていい店」の価値

この変化がどれだけ革新的かは、小売出身でないとわかり辛いかもしれない。
売らなくていい店は、「マネジメントコストが格段に下がった」とも言い換える事ができる。…

多店舗展開の弊害

高いマネジメントスキルが求められなくなる店が、どれだけアパレルにとって有難いかは「多店舗展開の弊害」について話しておかなければならない。

アパレル企業の多くは、毎年のように前年実績を上回る売上目標を立てている。
全社的に売上アップを目指そうと思うと、一番簡単な方法は「出店」になる。
出店を増やせば増やすほど、店舗をマネジメントする店長が必要になるが、店長の育成とは一朝一夕で出来るものでもない。
結果、未熟な店長がどんどん生み出され、売上が取れない店舗が増え続ける。
アパレル市場の縮小も相まって、現場は更に疲弊する。…

結果として、既存店の売上は伸びず、販管費だけが増加し、営業利益が削られる一因にもなっている。
「売らなくていい店」は多店舗展開がもたらした弊害に対する一筋の光になるかもしれないのだ。

自社ECを拡大するのと何が違う?

大手アパレルが自社ECを拡充し、出店を抑制し始めている
店舗を増やさなくていい=マネジメントコストは上がらないし、販管費も効率化できる
結局はこの動きと大きくは変わらないのだが、既存アパレルは店舗設計において「売らなくていい店」までは作ってこなかった。(GUやZARA、リラクスは試着型店舗を出しているが)

ここが一番大きな変化ではないだろうか。
ブランドのあり方に大した差は無いが、Webで出来る事の幅が増えた結果、実店舗との役割分担が明確になった
バーチャルフィッティング(試着)も店頭在庫連携もスタッフコーデも、元々は全て店頭で受ける事ができたサービスであり、それによって店舗のあり方が変化してきているのは周知の事実。
クロージング自体を店舗から切り離して考えるのも、役割分担の一つだ。

とは言え、規模拡大したいならまだまだ店舗は必要だ。
日本国内のEC比率はアパレルのみだと2018年時点で13%弱。
リアルで買い物をする人間の数が圧倒的であり、オンラインメインで規模拡大は難しいという大前提は今のところ覆らない。

成長した理由は何なのか?

「中間コストを省くから安い」という価値提供を聞くと、本当に馬鹿馬鹿しいと感じる。
製品の品質に対する価格はチャネルではなく流通量・生産量によって決まる。
「既存ブランドは売った瞬間、顧客との関係性は終わる」などと言っていたら、ブランドの顧客管理をしている店長は激怒するだろう。

間違った価値提供を謳うから、アパレル民は「D2Cとは」に?がつく。

有識者によくよく話を聞いてみれば、メガネのWarby Parkerが売れた理由は「アメリカ市場にオシャレな低価格メガネが無かったから」や「他のメガネ屋では視力測定サービスが店頭で受けれなかったから」というローカルな事情も出てくる。
コスメブランドの「Glossier」は当初、ブログのトラフィックが高かった事から成長したという話も聞く。

大切なのは「D2C」という枠組みなどでは無い。
既存ブランドに対して、おかしなマウントを取らず、自分たちの顧客と真摯に向き合う事こそがブランド運営において大切な事なのではないだろうか。

情報源: ファッション業界で15年生きてきた人間が思うD2Cの本当の価値|深地雅也|note

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