「売らない」店をつくる 丸井グループ社長 青井浩氏|小売りの未来を探る

2019/4/11付

人手不足に悩み、ネット通販の攻勢に押される日本の小売り。
大量出店で大量消費にこたえたビジネスモデルは転換のときを迎えている。
未来への成長軌道をどう描き直すか。経営者らにこれからを勝ち抜く戦略を聞いた。

■「売らない」店をつくる 丸井グループ社長 青井浩氏

「売らない店」をつくっていきたい。
あらゆるモノがネットで買えるようになり、モノを売るだけでは実店舗は存続できなくなる。
体験という価値を提供し、売り上げを前提としないビジネスに転換していかなければならない。

具体例をあげよう。
スポーツ衣料のルルレモンは店員に客への売り込みを禁じている。
一緒にヨガやランニングをする。
それで坪当たりの売上高は全米トップ10に入る。
売らないことで結果的に売れる。
この逆説は極めて現代的だ。

売る前提だとノルマが生じる。
ノルマを抱える人に接客されると、客はある時点から買い物が楽しくなくなる。
販売員にもプレッシャーがかかる。
売らなくていい、買わなくていいとなると双方が楽しくなる。

もう一つ大切なのは「誰も置き去りにしない」という考え方。
これまでは絞り込むのがマーケティング理論だった。
パンプスは成人女性の3割が履きたくても買えなかった。
ほぼ23.5センチの前後1センチのサイズしか作らないからだ。
これでは豊かな社会といえない。
サイズを広げたら、LGBT(性的少数者)や障害者の方も買ってくれた。

アパレルは作った製品の半分しか売れていないが、何かが間違っている。
男女で売り場を分けるのもおかしい。
男女分けずに製品を作るアパレルのブランドは世界で2つぐらい。
区別をなくして新しい市場をつくればまだ成長できる。

Eコマースは米国でも1割。
残りは実店舗だ。
Eコマースはある程度成長したら必ず実店舗をもつ。
しかも短期間で開く。
そのうちネットと同時に実店舗をもつだろう。
両者の統合型が小売りの未来の形だ。

大量生産・大量消費で覆い隠されていた多様性がネット社会で再び浮かび上がった。
消費者は誰も「アマゾンは敵」と思っていない。
楽天もヤフーもいる。
店舗を持たずにネットで直接消費者に売る「DtoC」(ダイレクト・トゥー・コンシューマー)も増えている。
これらが協業して新しい価値を生む。
小売り目線でデジタルの活用を考えると間違えるだろう。

(聞き手は編集委員 大岩佐和子)

あおい・ひろし
1986年丸井入社。
2005年から現職。
ターゲット戦略見直しや不動産型商業施設への転換を推進。
58歳

情報源: 小売りの未来を探る  :日本経済新聞

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