ビジネスデザイナーに求められる「失敗のデザイン」と「一点突破」。その実践的で泥臭い方法とは? | Biz/Zine

2018年9月6日開催
[公開日]2018年10月10日

QUANTUM井上氏が語る、新規事業の「撤退基準」とは

質問1:年間何十件もの新規事業にリスクを取って信じ企業に携わる際に、お金はどうしていますか?
また、撤退基準についても教えていただければと思います。

質問の中身は二つですね。
1つ目は「お金」に関すること。
幾つかのポイントがありますが、一番重要なのは「自分たちがどこで稼ぐかをはっきり決める」ということです。
例えば、QUANTUMは、5年間の協働プロジェクトで収益を50億円にして、そのうちの10%で5億円を請求するということは、あまりやりません。
どちらかというと、立ち上げ初期にググッとアクセルを踏む所までを支援し、その時点で利益確定をするというモデルです。
ですから、良い場合もダメな場合も、ある程度短期で成果が出るので、ある程度コントロールはしやすいのです。

2つ目の質問は「撤退基準」についてですね。
全事業に対して普遍的に通用する撤退基準はあまりないものの、撤退基準は案件ごとに明確に決めています。
それは、パートナーである大企業にとっても非常に大事なことですから。
よくやるのは、いくつか設けたゲートごとに撤退基準を決めるやり方です。

例えばプロトタイプを作って、ユーザーと対話して、フィードバックをもらう所までを、「ゲート1」とします。
その反応が良ければ「ゲート2」に進みますが、ここでもし全然違うと思ったら、ピボットするのもやめて撤退します。
ゲート2では、例えばある一部の人に売ってみるゲート3はローンチする、みたいな感じです。
そして、それぞれのゲートで、「こうだったらやめましょう」という撤退基準を決めます。
他には、オーナーシップのある人をパートナー内で見つけられないと判断したら撤退することもあります。

“新規事業は失敗する”を前提に考える、「失敗のデザイン」とは

スタートアップではピボット(方向転換)をよくしますが、大企業ではものすごく大変で、「変更になった理由をロジカルに説明せよ」と言われます
ですから、最初からいわば新規事業開発の「オペレーティングシステム」にピボットを組み込んでおきます
また、一度決定した方針を変更することにすごく抵抗があるので、「これはあくまで一時的な方向性で、検証を重ねて修正していきます」と何度も強調するなど、言葉の選び方にも気をつけています。…

佐々木康裕氏:失敗のデザインに関するクライアントとのコミュニケーションには2つのアプローチがあります。
ひとつは海外テック系大企業の「失敗事業リスト」を作成し共有することです。…

もうひとつのアプローチは、プリ・モーテム(死亡前死因分析)を実施することです。
ポスト・モーテムは、医療用語で死因分析のこと。
その事業が失敗するという前提で、死因(失敗要因)をみんなでブレストして出していくんです。
例えば、
「1年後に、競合が類似プロダクトを出して、価格競争に負けて撤退」
「知財で訴えられる」とか。
失敗する理由は100も200も挙げられますが、それらに対する対策リストも作っていきます。

井上:佐々木さんがお話された
「失敗事業リスト」
「プリ・モーテムによる対策リスト」を見ていると、
「なんで失敗したんだ」と言わせないという効果も期待できそうです。
「もう分かっていたじゃないですか、想定内です」と。
まさに失敗のデザインですね。…

そもそも新規事業を外部と組んで進めようとすると、前例がなく難航する場合もありますよね。
そういう場合、研修の枠組みで新規事業の立案をワークショップ形式などでやるのはひとつの手です。
「イノベーション研修です」と言って私が講師をやるんですが、実は新規事業立案をやっている
要するに、その会社にある既存のルール上で大丈夫な枠を見つけてあげるんです。
後は、先方に依頼されてコンサルティングだと言ってもらって契約をしてしまうのもよくやります。
研修は大体予算が確保されていて、すごく簡単に始められるので、おすすめです。
あるいは、R&Dの共同研究ならできるとか、企業によって通しやすいパターンが変わってきます。…

情報源: ビジネスデザイナーに求められる「失敗のデザイン」と「一点突破」。その実践的で泥臭い方法とは? | Biz/Zine

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