「生産性上げ、売上高半減でも利益」リウボウ糸数会長:日本経済新聞

2020/6/15 18:30日本経済新聞 電子版

新型コロナウイルスの影響で、好調だった沖縄経済が厳しさを増している。
沖縄の小売業界は観光客の需要に支えられていた面も大きく、今後の観光需要の回復に左右されるところがある。
百貨店や食品スーパーを運営するリウボウインダストリー(那覇市)の糸数剛一会長に、今後の見通しを聞いた。


インタビューに答えるリウボウインダストリーの糸数剛一会長(那覇市)

――百貨店「デパートリウボウ」や食品スーパーの経営状況は。

「百貨店の2020年2月期決算は消費増税やインバウンド(訪日外国人)の減少で、7期ぶりに経常赤字となった。
21年2月期も4、5月は休業要請を受けて一時休館した。
その後、再開したが売り上げの15%を占めていたインバウンドはゼロで、集客につながる催事も開けない。
全体の売り上げは前年の65%の水準とはいえ、8~9割に戻るにはまだ時間がかかる」

「食品スーパーの売り上げは落ちていない。
来店客数は減ったが、1人当たりの購入額は上がった。
消費者は買い物の頻度を減らし、一度に多くの商品を買い込んでいる」

――消費の現場はどう変わりますか。

「対コロナは長期戦となる。
ワクチンが開発されても『3密』を意識した行動は続く。
百貨店の基本は対面の接客だが、例えば服飾売り場の従業員は客に合った服を、瞬時に見抜く能力がより必要になる。
コロナ後はこうした高いレベルの接客が求められるだろう」

「インターネット販売の重要性も再認識した。
ただ、システム構築には多くの資金がいる。
県内の他の小売店や飲食店などと、統一プラットフォームをつくれないか考えている」

――今後の経営戦略をどう考えていますか。

「売上高がコロナ以前の半分であっても赤字にならず、8割なら今までと同じ利益を出せる企業に変えなければいけない。
業務を見直しているが、例えば売り場の販売員を自ら抱える必要はない。
本部の人員はコンサル能力を磨いて集客増につなげ、1人当たりの生産性を上げていく」

――沖縄商材を中心に販売するセレクトショップ「楽園百貨店」は、アジアなどへの進出も目指していました。

「しばらく海外には出店できない。
ただ海外から電子商取引(EC)で扱いたいという要望は現在もあり、今後も増えるだろう。
コロナ後の新しい市場の創造は難しいが、それをこのブランドが担う。
実際に沖縄には来てもらえなくても、沖縄の外で稼ぐ。
ビジネスモデルの転換にもなる」

――沖縄ファミリーマートの運営状況は。

「足元では売上高が前年比で10%強落ちた。
観光地やオフィス街などの店舗で減っている。
今後の出店は慎重にならざるを得ないが、競争が緩和し、安く出店用地を借りられるメリットもある。その兼ね合いだ」

――行政には何を求めますか。

「一時的に企業支援しても、景気悪化の根本が解決しない限り企業は立ち直れない。
沖縄経済の根本は観光だ。
水際対策として、空港や港で国内客も全員PCR検査を受けてもらうべきだ。
そこまでやれば安心して人が来るようになる。
島しょ部の沖縄が全国で真っ先にやらないといけない。
県は政府に予算要望し、断られたら腹をくくって県の予算でやるべきだ」
(聞き手は酒井恒平)

情報源: 「生産性上げ、売上高半減でも利益」リウボウ糸数会長  :日本経済新聞

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