tie ~人生100年時代のシニアの知恵と経験をつなぐ社会デザインの試み~ 第二回:宗形英作氏と橋本直彦氏 |博報堂WEBマガジン センタードット

2019.05.27
#クリエイティブ#シニア#博報堂ブランド・イノベーションデザイン#地域創生

定年退職後も社会へ貢献する熱意を持ち、新たなチャレンジをしていきたい「クリエイティブシニア」と、地域の課題解決、その先の創生と活性化のために協働していくプロジェクト“tie”。(https://tieproject.jp/)

第二回は、クリエイティブシニアからの視点として、宗形英作氏(tieプロジェクトリーダー/元博報堂顧問)と橋本直彦氏(元博報堂/現Simplegood)に、プロジェクトメンバーの川口・岩佐が話を聞きました。

第一回はこちら

「tie」に関わるきっかけ

岩佐
まず、「tie」を知ったきっかけや関わるようになった経緯を教えてください。

宗形
私がまだ博報堂の役員だった時に、永井さんが「tie」プロジェクトをやりたいと、私のところに来たんです。
話を聞いて、地方支援とシニア人材の活用という意義は大きいと思いました。
とくに博報堂の人材は様々なクリエイティブワークを経験してきているので豊か。
これを活用しない手はないと思った
んです。
もともとのプランはもっと壮大で、人材を博報堂に限定せず、いろいろな業種から人材を募ろうということだったのですが、いきなり大きく展開するのは難しい面があったので、まずは博報堂社員や博報堂出身者からということでスタートしました
米沢の案件で先方側のキーマンとなったのも元博報堂社員。
彼が米沢市役所に行くために博報堂を退社するという挨拶にきたときに、手伝えることがあれば声をかけてと話しました。
このとき「tie」の存在がうまくはまるんじゃないかと感じたんですね。
プロジェクトの話を聞いた当初は、もっと客観的に見ていて、自分が関わることは想定していなかったのですが、ちょうど顧問という立場になったこともあり、橋渡しをするだけでは失礼だろうと思い、実戦部隊として関わるようになったんです。

橋本
「tie」の話は聞いていて、私が博報堂を退社することになったとき川口さんから誘われ、これは断れないなと(笑)。
博報堂での最後の所属は博報堂ブランド・イノベーションデザインだったんですが、ちょうどブランディングが大企業だけのものでなく、病院や研究所など、いろんな範囲に広がっていく時期と重なっていたんです。
「tie」が目指しているものと重なるところがあって、面白いと思いました。
また博報堂時代にやっていた「平均年齢50歳の国のマーケティング」というプロジェクトで、いろいろなところでプレゼンや講演をしているうちに、これはまさに“自分ごと”だという気持ちになり、米沢の案件に参加することになりました
永井さんはじめ、既知の人ばかりなので、スムーズに入ることができたと思っています。

岩佐
実際にはどのように関わられましたか。

橋本
米沢には米沢牛というよく知られた産品がありますが、今回のブランディングは産品を作るのではなく、市民の力を高めていくのが狙いです。
みんなで米沢をよくするぞという市民巻き込み型の仕組みづくりで、現地の方にヒアリングをしたり、ワークショップをしたり、市役所の人だけなく産業界の人も参加するプロジェクトチームといっしょにプランを練っていくような関わり方をしました。
「TEAM NEXT YONEZAWA」というプロジェクトを立ち上げたり、アワードを作ったりして、実質的な稼動は2019年度からになります。

宗形
米沢の案件では、我々「tie」と、米沢市役所の人たちと、米沢の「米沢ブランディングプロジェクト」という三者で取り組んでいました
この「米沢ブランディングプロジェクト」の存在が大きかったですよね。
旅館、料亭、建築、織物、メディアというジャンルの異なる30〜40代の人の集まりで、ほとんどが地域の中堅どころのオーナーです。
自分ごとだからということもあるでしょうけど、ものすごくいい目をしているんです。
考え方も見方も。
あの方々と仕事ができたことで前へ進めたんじゃないかと思います

私は地域支援、つまり地域の課題解決には、地域企業の力を借りる必要があるだろうと思っています。
ブランディングは、以前は“価値の提示”でよかったのですけど、今は具体的なものがなければブランディングができない時代になってきています。
では、具体的なものをどうするのか。
やっぱり地域企業との連携が必要になってくると思うんですね


橋本
宗形さんがずっと言っているのは、米沢についても、ただ有名になればいいわけではないとうことですよね。
価値の高いものを市民の手で生み出すことができ、付加価値がついて、経済的にもちゃんと回るというところまで持っていかないと意味がないと。
それができるように地域に人材が育ち、ものづくりにつながっていくことが大事なのだと。

宗形
そういう意味では、戦略会議プロジェクトチームの存在価値は大きいですね。
どこを目指してどう動き、どのように人を動かすか、実際の船頭はそこに住んでいる人たちですから。
私たちはそういう人たちの支援がうまくできればいいのだと思います。
彼らがそれぞれまた違うネットワークを作りながら、現実的な活動をしていくことが、次のステージにつながる

橋本
米沢市のプロジェクトチームの人はほんとうに志が高かったと思います。
最初はどっちを向けばいいのかわからなかったようですが、プロジェクトを進めて行く中で、少しずつあちこちに気づきが生まれ始めています。
その延長上として、より多くの人たちがアクションを起こすように進めていくのが、来年度からの取り組みですね。

シニア人材をいかに活用するか、シニア人材が活躍できる場があるか

宗形
シニア人材は、年も上であるし、キャリアも積んでいて自分に自信をもっているし、ある意味、若い人からすると、扱いにくい人材でもあると思うんですね。
ただ地域の決定権者との世代が近いことが多いから、うまくいけば友達関係のように話ができるという利点もあるでしょうし、もちろん積んできたキャリアの存在は大きい。
突破口を開くという意味でも、知恵をうまく共有するという点でも、シニア人材に優位性があるということだろうと思います
実際に走り出したあとは、地域の人たちにうまく伴走するように連動できると良いでしょう。
ただ、具体的なところに落とし込んでいくときには、シニア人材だけでは難しくなってくるかもしれないなと思います。

橋本
米沢の案件には、僕と同年代やそれ以上の方が入っていました。
しばらくは現場を離れていたのかもしれませんが、いざ始まってみるとすごい。
こんなに実力を持っているのに実戦を離れてしまうのはもったいないと感じました。
やはり知識や経験を生かす場として「tie」は有効だと思います。
それに地方に行けば行くほど高齢化が進んでいて、“若手”の概念が東京などとは異なり、50代、60代もプレイヤーです
だから同じ年代の人が地方でプレイヤーとして活躍する土壌は大いにあると思います。
ただ、宗形さんがおっしゃるように、シニアだけでは問題を解決できない場面もあるので、地方や東京の若い人材もからめていくということも必要だと思います。

宗形
シニア人材のいいところは、他人の手をあまり借りないところですね
博報堂の通常の仕事だと様々なセクションから人を集めてチームで業務をすることが多いですが、今回は、たとえばCMを担当した藤田さんの場合、ロケハン、撮影、編集をひとりでこなしていました。
こういうことはやはりキャリアを積んでいるからこそできること。
シニア人材は“個”で立っているんだなと感心しました
実のところ、依頼主からしたらシニアである必然性はないわけです。
優秀であり、力になってくれればいいわけですから。
ただ、「tie」の目的としてはシニア人材の活用が大きな柱。
少し違う角度で言うと、シニア人材は仕事が早いと思うんです。
引き出しがあるから、判断が早い。
新しい発想という点ではウィークポイントがあるかもしれないけど、チームのスピード力という点ではシニアの力が発揮できると思います。

川口
ストックが多いということであり、依頼主にとっては安心材料にもなるということですね。

宗形
「tie」プロジェクトでは、シニア人材はどこかで、意気に感じて行動するというボランティアの部分が必要だろうと思います。
自分がやってきたことを生かしたいとか、人の役に立ちたいというところに面白さが出てくるんでしょう。
そのモチベーションがあって、熱量が上がらないとできないんじゃないかと思います

橋本
私は、もともと地方自治体のブランディングに興味がありました。
行ってみると、元博報堂ですという看板は、役に立たず、逆に足かせになるという感じでした。
宗形さんが言われた“個”の力みたいなものがないと、地域では受け入れてくれません。
だから厳しさもありますが、その分楽しさもあるんです。
それが、熱量が上がった一つの要因ですね。

宗形
「tie」プロジェクトにふれる中で、やりがいみたいなことを感じ取る人もいると思います。
立場によって違うと思うけど、今もプレイヤーの人にすれば、未体験領域への興味関心かもしれないし、マネジメント系の仕事をしている人にとっては、もう一回プレイヤーとしてやるなら大義のあるものをということかもしれない。
「tie」プロジェクトの活動が広がると、関心を持つ人がでてくるかもしれませんね。

橋本
私は、博報堂を退社してから起業して、100人〜200人規模の企業のブランディングなどに携わっています。
こういった仕事も「tie」プロジェクトと似ているところがあって、費用も潤沢ではありません。
でも、日本は大企業ばかりではなく、約97%を占める中小企業が強くならないといけないといわれているので、そこに力を発揮していきたいと思っています。
博報堂にいたときとは違って、ある種解放された部分も感じながら、楽しい気持ちでできているところもあります。

宗形
最近、ブランディングという考え方が後退しているのではという危惧を持っています。
なにかというと、みんなプロモーションにいっている気がするんです。
どうすれば売れるかという議論が先行して、そこにデジタル化があって、one to oneマーケティングができるようになってきたこともあり、そういう手法へと流れているところがあります

もちろん、それはそれで大事なことなんだけど、その先がちょっと見えにくくなってきているかなと。
企業や地域の“素晴らしい”をどうやって人が認めてくれるものにするのか、共感のある関係性を作ることが必要だし、そのためにはどんなリアルなものが必要なのか、なにを生み出せば持続的なものになっていくのか、ということが大切なのではないか、と
博報堂の中でブランディングについて、もう一度きちんとやっていくきっかけとしても、「tie」の存在は、いいと思います。

「tie」の存在価値と今後の展開

宗形
地域活性化は、まず土地をならし、その上に何を建てるのかが必要になります。
米沢の案件は、土地をならすことに関してはまあまあうまくできたんじゃないかと思いますが、重要なのは次に何を建てるか。
有名な米沢牛のほかにも米沢織などもありますが、どうすれば人の関心をひくものになるのか

川口
そうですね。
土地をならしたあと、ものを建てるときにはプレイヤーが変わることもあるんですね。
今度はより実働の人と組む必要があるということでしょうか。
スキームが一回変わったとしても、同じビジョンで取り組めるかということが、課題の一つということなのですね。

宗形
僕は東京生まれ東京育ちなので、「tie」に関わってみて、改めて地域の地元愛ってすごいなと思いました。
ただ、みんな、あれもこれもやりたいと考えるので予算が分散していってしまう。
何を変えたいのか、何を中心に実行していくのか、焦点をはっきりさせることが大切なのではないでしょうか

それを一緒に探す。
今後もお手伝いできる仕事はたくさんあるだろうと思います。
一方で、これから会社自体も高齢化していき、定年はますます先送りされていくでしょう。
そのときにどうやって会社にいることの意味と自分のキャリアの価値とを結びつけるか。
シニアが働く場として、tieがあることの意義はそこにあるような気がします。
いずれは営業部隊が中に入るなどの取り組みも必要になってくるかもしれません。

橋本
ある程度自由にやっていいということになれば、「tie」=シニアではなく、若い人でもやってみようという場になると面白いかなと思います。
そして、会社を辞めると会社とのつながりがなくなった分、人とのつながりを増やすことができます。
時間的な面でも、それが可能になる。
そういう点でいえば、「tie」は人とのつながりを増やしてくれるプロジェクトです。

岩佐
今後、地方にいるシニアの人と組むとか、あるいはシニア自身が移住するという可能性もあるでしょうか。

宗形
地域のシニアと連携することは大いにありえると思います。
それに移住も。
博報堂のOB・OGの中には、地方の企業の顧問として力を貸してくれないかと声をかけられることもあるようです。
そうなると、半定住という形になることもあるでしょうね。
地域の人材との組み合わせということを考えると、地域の若い人と組むということもあるでしょう

橋本
地方だからお金にならないという思い込みを崩さないといけないでしょう。
ヨーロッパでは、イタリアの小さい村から出た高付加価値のファッションブランドがあります

それが、日本でできないということはない。
頭の片隅になんとなく存在している、仕方がないというような思い込みを崩して付加価値をつけ、ある程度の経済規模に持っていけるようにしたいですね。
そこまで「tie」が関わるようになるといいと思います。
今は、博報堂のOB・OGの範囲で進めていますが、商社の方とか、ファンドを立ち上げた人などが加わると、違う展開が見えてくるかもしれません。

川口
それは新しいステージにひろがっていく感じがしますね。
これからもお二人の力もお借りして、新しい取り組みで「tie」プロジェクトを広めていきたいと思います。


https://tieproject.jp/

https://www.hellonew-niihama.jp/

https://www.yonezawahinshitu.jp/

情報源: tie ~人生100年時代のシニアの知恵と経験をつなぐ社会デザインの試み~ 第二回:宗形英作氏と橋本直彦氏 |博報堂WEBマガジン センタードット

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