沖縄とビールの楽しさを届けるオリオンビール、EC売上約50倍の成長

2020/10/09 08:00

…外出自粛の最中にSNS活用を本格化したオリオンビールから、コロナ以前と大きく変わる戦略の鍵を探った。

外出自粛でビール消費の機会が激減

いいたか:企業のSNS活用の中でも、新型コロナウイルスによる生活者の行動変化は重要なトピックです。
そこで今回は、外出自粛の最中だった2020年4月にSNS活用を本格化したオリオンビールの上符さんとお話していきます。
まず、現在の業務領域を教えていただけますか?

上符:オリオンビールのマーケティング、具体的にはお客様とのコミュニケーションに関する業務全般と、沖縄県外のお客様に向けた通販サイトの運営も担当しています。

 今回お話しするコロナ関連の施策では、マーケティングコミュニケーションの立場と、デジタルマーケティングとして販売を伸ばしていく立場の両方で関わっていました。

オリオンビール マーケティング本部マーケティングコミュニケーション課/EC部長 上符裕一氏

いいたか:コロナの影響により、生活者のライフスタイルや消費行動は大きく変化していますが、御社ビジネスにおいてはコロナ禍による環境変化を受け、どのような変化があったでしょうか。

上符:コロナの影響は非常に大きいです。
オリオンビールは沖縄という環境に依存している会社であるため、土地に絡んだ2つの大きな変化が挙げられます。

 一つは、沖縄県内に起きた変化です。
緊急事態宣言以降、県内においても飲食店の休業が相次ぎ、弊社がお取引している多くのお店で、ビールを消費していただけない状況になりました。

また、お客様のエンゲージメントを高めることを目的に携わってきた多くのイベントも中止となりました。
地元のお祭り、那覇マラソンといったスポーツイベントなど、イベントには飲酒の機会があり、「乾杯のビールはオリオンビール」と言われてきたのですが、店舗と合わせてこちらもなくなってしまったわけです。

 もう一つが、沖縄県外から訪れる方々による消費です。
御存知の通り、沖縄は観光業が盛んで年間約1,000万人が訪れます。
「沖縄に来たらオリオンビールを飲む」という方が非常に多い中、観光客が前年と比べて大幅に減ったことで、ビールの消費量も大きく割れました。

コロナ以降、潜在層に向けた取り組みを開始

いいたか:そうした影響を受け、SNSの活用を本格的に開始したのでしょうか?

ホットリンク CMO いいたかゆうた氏

上符:デジタルマーケティングの強化はコロナ以前から課題で、SNSの活用もそれが背景になっています。
元々お客様とのリアルでの接点は多かったのですが、オンラインでの接点についてはなかなか存在感が出し切れていませんでした。

いいたか:コロナ以前で考えれば、夏の旅行シーズン前にSNS上でオリオンビールのクチコミを増やしたり、実際に沖縄に訪れた人々にオリオンビールを飲んで楽しんでいる写真を投稿してもらったりすることで、県内外のブランドリフトにつなげていく、といった取り組みが可能だったと思います。
コロナによってSNSの活用方法に変化はありましたか?

上符:そうですね。コロナ以前は、沖縄に訪れたお客様が自主的にSNSに投稿してくださることが多かったので、それらの投稿をさらに増やすための施策に力を入れてきました。
しかし、コロナの状況になってからは、潜在的なオリオンビールのファンの方々に、我々がコロナという状況に対してどのような取り組みを行っているのかを、きちんと伝えるという方向に変えました。

県内企業とのコラボで、助け合いとエンタメ作りを両立

いいたか:具体的にどのような施策を実施していくことになったのでしょうか?

上符:目的別に複数のコンテンツを用意しました。

 一つは、飲食店の支援になるコンテンツです。沖縄県内の飲食店を紹介するサイト「ちゅらグルメPlus」と協力し、飲食店応援プロジェクトとしてテイクアウト・デリバリー実施店の情報をまとめた特集ページを作り、SNS上で発信しました。

 次に、オフラインのイベントがなくなったことから、オンラインイベントを強化するためにライブ配信コンテンツを作りました。

 沖縄県内のお笑い系芸能事務所と協力した「わったー宅飲み」という番組がその一つです。
視聴者の「宅飲みのお供」として楽しいコンテンツを目指し、お笑い芸人の方をMCに発信したもので、4月~6月の3ヵ月間にわたり、毎週配信していました。

他の企業でもこれに近い取り組みがありましたが、一足早く実施できたのではないかと思います。

 また、オリオンビールは元々音楽フェスとの相性も良かったため、国内14都市でライブイベントを開催している「uP!!!SPECIAL LIVE HOLIC supported by SPACE SHOWER TV」と協力し、オリオンビールのYouTubeから出演アーティストによる、ご自宅で楽しめる音楽番組を生配信しました。
「わったー宅飲み」「LIVE HOLIC」ともにコロナで活動ができなかった芸人さんやアーティストと良い形でコラボレーションができ、エンターテインメントとしても非常に面白いものになったと思います。

 こういったコンテンツをSNSで発信していくことで、それまで認識できていなかった潜在的なオリオンビールファンに公式アカウントをフォローいただき、フォロワーが増えました。また、投稿へのエンゲージメントも非常に高まりました。

ユーザーの接点を増やし、購買につなげる

いいたか:では、これらの施策が実施に至るまでにはどのようなステップがあったでしょうか。

石塚:まず、SNSを中心としたデジタル活用の大きな目的を上符さんとすり合わせ、デジタル上でのユーザー接点を増やすという方向性に決めました。
接点が増えた結果として、オリオンビールを飲みたいと思っていただき、ブランドへの好意度向上からの購買につながればと考えていました。
さらにそこから定めたSNS活用の方向性が、Twitterを最注力メディアにすること、UGCを最大化することです。

石塚:Twitterを注力メディアに選んだ理由は、他のメディアと比べてもユーザーに拡散機能が使われていて、より多くのユーザー接点を得られるのが一つ。
もう一つが、デジタルにおける情報拡散のハブになれることです。

YouTubeやInstagram、自社ECなど他のメディアへの誘導や、配信コンテンツ、オンラインイベントの集客がしやすくなります。

 UGCの数を目標にしたのは、オウンドメディアとして自社から発信をしていくよりも、ユーザーにオリオンビールを語っていただいたほうが、他のユーザーが見たときに信頼性が高い情報を届けられるためです。

いいたか:そこからUGCを増やしていくためにどのような取り組みがあったのでしょうか?

石塚:これまでに紹介した取り組みも含め、大きく4つに分けられます。

 1つ目は、UGCを軸としたユーザー分析です。
SNSでの言及数、エンゲージメント、指名検索数、売上などを分析し、各種指標の相関関係を分析したほか、UGCの総量の推移を観察していきました。
また、UGCがどのような内容なのか、どのようなユーザーから投稿されているのか、公式アカウントをフォローしている人がどのような方なのか、といったことも分析しました。

 ここから、ユーザーがオリオンビールを話題にしてくれやすいきっかけや、ユーザーとの接点を効果的にする方法を考え、施策の軸にしていきました。

 2つ目は、ユーザー接点を増やすためのTwitterアカウントの基盤強化です。
オリオンビールを既に好きな方、好きになってくれそうな方、SNS上でアクションが多い方など質の高いフォロワーを集めていくことで、UGCが生まれやすい基盤を作っていきました。

 3つ目は、ユーザー起点のコミュニケーションを意識したアカウント運用です。
公式アカウント対ユーザーという「1対N」ではなく、ユーザー対ユーザーのコミュニケーションが活性化されるように、そのきっかけとなるようなアカウント運用に取り組んでいました。

 4つ目は、オリオンビールを話題にしてもらいやすくなるコンテンツやキャンペーンです。
先程上符さんが紹介したライブ配信や音楽番組といったコンテンツなどでUGCが生まれるきっかけを作り、ユーザー間の話題が広がりやすい仕掛けをしていきました。

コロナ禍でも昨年よりUGCが増加、EC売上にも好影響

いいたか:PDCAを回していく中で、特に追っていた指標や数字は何ですか?

石塚:KGIを売上に、KPIをUGCに定め、観察していました。
そのほかに公式アカウントのフォロワー数、指名検索の数、Webの流入数など、様々な数値をモニタリング指標として追っています。

上符:オリオンビールとして特に意識していた指標は、エンゲージメントの高さです。
フォロワーの少なかった頃からエンゲージメントは高かったのですが、フォロワーが多くなることによってファンとの濃いコミュニケーションが少なくなり、エンゲージメントが低くなるのではないかという懸念がありました。

 しかし、質の高いフォロワーによるアカウント基盤作りによって、エンゲージメントは高いまま、規模を拡大することができました。
ビール業界の競合と比べても、非常に高いエンゲージメントを獲得できています。

いいたか:エンゲージメントのほかに、UGCや売上にはどのような成果が現れていますか?

上符:UGC数、指名検索数については、例年観光客やイベントの多い夏に高まるため、コロナの影響で落ちていてもおかしくない状況でしたが、施策の成果により前年比に対して伸びています。

 またECでは、SNS活用と並行してサイトのリニューアルを行うことで、その相乗効果から昨年比で販売件数・売上が約50倍になりました。
SNS上で接点を増やしたことによって、オリオンビールのファン、あるいはオリオンビールで沖縄に行った気分を楽しみたいという方がスムーズに購入できるようになったことも、この結果に貢献していると考えています。

石塚:SNSに注力し始めた4月から、UGCやモニタリング指標などが伸びています。
観光客がピークの時期である昨年8月と比べても同等以上の数が出ています。
特に最重要指標として定めている画像付きの投稿は、観光客が多かった昨年8月を上回っています。
当然ほかにも様々な仕掛けがありますが、それを加味しても今回のSNS活用が貢献していることがわかると思います。

SNS上の言及数の推移を表したグラフ(2019年8月~2020年7月)。
画像つきのUGCを表す黄色の折れ線を見ると、今年においても昨年8月と比べても変わりない数値まで伸びてきていることがわかる

ユーザーの期待に応えるアカウントへ

いいたか:施策に取り組んでみて、気づいたことや学びになったことは何でしょうか?

上符:ユーザーの皆様の反応は本当に正直なので、宣伝感の濃いものなどオリオンビールに求められるイメージにそぐわない投稿では、エンゲージメントが伸びません。
一方、「沖縄らしさ」「リゾート感」のある投稿はとても反応が良くなります。

 公式アカウントで「#エア沖縄」をつけて沖縄の写真を投稿し、行った気分を味わおうという提案をしたところ、エンゲージメントが高まりました。
ユーザーから「すごく癒やされる」「自分も去年行ったときの写真をあげよう」といった反応があり、潜在していた沖縄に行きたい方々に上手く訴求できたことを実感しました。

石塚:オリオンビールさんのビジョンが「人を、場を、世界を、笑顔に」であり、SNSの施策でもビジョンの体現を重要視されていることを感じました。
コロナ禍でネガティブな情報が多くなっている中でも、ユーザーにいかに楽しんでもらうか、笑顔にできるかを考えた結果、「#エア沖縄」のようなユーザー中心に広がるコミュニケーションにつながっていると思います。

いいたか:コミュニケーションが一方通行にならないように、企業のエゴにならないことが重要ですね。
最後に今後の展望を教えてください。

上符:沖縄を代表する企業として、全国の沖縄ファンに共感してもらえるような投稿を心がけたいです。
また、いわゆる企業アカウントではなく、ライフスタイルやカルチャーを伝えるアカウントとして「カタすぎない投稿」を心がけていきたいですね。

情報源: 外出自粛でも沖縄とビールの楽しさを届ける EC売上約50倍の成長に貢献したオリオンビールのSNS戦略

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