三越伊勢丹、デジタル外商 富裕層の消費深掘り : 日本経済新聞

2020/10/7付日本経済新聞 朝刊

三越伊勢丹ホールディングス(HD)は、外商と呼ぶ富裕層接客をデジタルで進化させる。
都心店では要望をチャットで共有し数十人がかりで商品を提案、地方店ではサロンを設けライブコマースで新作を薦める。
新型コロナウイルス禍で訪日客需要が消えるなか、遺産相続などで急増する若い富裕層や地方の上顧客の消費を深掘りする。

外商は、武家屋敷を回って注文を集めた江戸時代の呉服屋にルーツがある。
専任の販売員が相手の自宅まで通い、趣味嗜好や家族のイベントを把握してご用聞きする。
三越伊勢丹HDは詳細を開示していないが、売上高に占める比率は3割前後とみられ大きな柱だ。

良くも悪くも職人芸だった外商に、同社は新たな営業スタイルを加えようとしている。

伊勢丹新宿店(東京・新宿)で約210人が所属する外商部。
年間1千万円以上の購入額がある富裕層を多数顧客に抱える同部では、日夜スマートフォンのチャットアプリ「LINEワークス」を駆使した営業や接客が繰り広げられている。


「きょうは時計とワインを」「ありとあらゆる白Tシャツを見せて」。
顧客からこんな要望が外商担当者に入ると、即座に各売り場の数十人の販売員にメッセージが飛ぶ。
わずか数分でお薦め商品のリストを作成、
外商担当者がオンラインや店頭で顧客に薦める。
先方がどう反応したか、何を購入したかのデータは店舗横断の社内システムで共有する。

同部の6~8月の売上高は前年同期比で約1割増加。
特に8月の客単価は2割ほども伸びた。
顧客の好みを共有し、提案商品の幅を広げたことで1人当たりの買い上げ点数が増えたという。

成功事例を共有

外商部の嶋崎信也氏は「現代の富裕層は忙しくデジタルの知見も豊富。
必要な情報をタイムリーに届けることが重要」と話す。
担当者が抱え込んできた顧客データや成功事例を各店舗で共有する狙いもある。

「しぶとく生き残ってきた百貨店だが、今まさに存在意義が問われている」と杉江俊彦社長は危機感をあらわにする。
市場規模は6兆円を割り、ピークの6割ほどに落ちている。
ここ数年、頼みだった訪日客もコロナ禍で消えた。
同社も2021年3月期は600億円の最終赤字を見込む。

逆風のなか、希望のひとつが富裕層だ。
8月の全国百貨店売上高によると「美術・宝飾・貴金属」は前年同月比14.4%減で、「衣料品」(23.2%減)や「食料品」(17.7%減)より回復が進んでいる。
4~5月は大半の店が食品売り場以外の営業を自粛したため激減したが、その後は「インバウンド需要が消えたのに高額品は底堅い」(三越伊勢丹)。

1億円世帯1.5倍

富裕層の厚みは増している。
野村総合研究所の推計では、純金融資産が1億円以上の世帯は17年に約127万世帯で、09年比で5割増えた。

株価上昇に加え、親や祖父母からの相続や生前贈与が大きな要因と分析する。

IT(情報技術)分野の起業家ら「ニューリッチ」も台頭している。
こうした新世代の富裕層には「ネット上での商品提案やサービスが不可欠」(嶋崎氏)だ。

7月中旬には一部顧客向けに、三越日本橋店(東京・中央)でビデオ会議システム「Zoom」を利用したライブコマースを実施した。
書道家の武田双雲氏を招き、作品を書き上げる様子を配信、その作品を販売した。

ライブコマースは地方の富裕層向けにも生かす。
百貨店の地方店は地盤沈下が激しく、三越伊勢丹HDも09年3月の31店から21年3月には20店まで減る。
来店客が減り有力ブランドが去るという悪循環が続くなか、商品が豊富な旗艦店からライブコマースを仕掛けて富裕層をつなぎ留める。

7月中旬には三越日本橋店と三越松山店(松山市)をつないだ。
5台の大型モニターを備えた松山の「デジタルサロン」に集まった顧客に、日本橋の販売員が高級ブランド「ランバンコレクション」の新作や限定品を紹介。
気に入れば取り寄せて購入できる。

事前に松山店の外商担当者が顧客の要望や好みを聞き取り、日本橋店の販売員が品ぞろえやコーディネートを考案。
成約率は約7割と成果を上げた。三越広島店(広島市)など他の地方店にも導入していく計画だ。

情報源: 三越伊勢丹、デジタル外商 富裕層の消費深掘り 数十人で「接客」、地方は生配信で :日本経済新聞

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