東京に攻め込む海外ユニコーン、未開拓の巨大市場狙う|nikkei.com

2022年7月15日 2:00
東京を巨大市場ととらえ、新しい需要の開拓に挑む海外ユニコーン企業。
彼らに共通するのは、日本の弱点をくみ取って商機をつかむ点にある。
海外発のスタートアップが東京で飛躍し、グローバルリーディングカンパニーとして確固たる地位を築こうとしている。

東京から世界を目指す企業が少ない一方、海外のユニコーン企業はこぞって東京に攻め込んでいる。
未開拓の巨大市場が広がっているからだ。

ファーミングユニットという「農場」を店頭に置き、育てた野菜をその場で売る。
「店産店消」という都市型農法を提唱するInfarm(インファーム)は、アジア初の進出地に日本を選び、東京・渋谷に拠点を構えた。

インファームのエレズ・ガロンスカCEO(写真中央)は、気候に左右されることなく、いつでもどこでも野菜を育て、収穫できる水耕栽培装置「ファーミングユニット」を開発。
2013年にドイツのベルリンで創業し、21年12月には2億ドルの資金を調達してユニコーン企業の仲間入りを果たした。

ドイツ・ベルリンで創業し(現本社はオランダ・アムステルダム)、インファームをユニコーン企業に導いたエレズ・ガロンスカ最高経営責任者(CEO)は、日本の生鮮野菜の高い需要に目を向けた。

「特に東京は世界的に有名な食の街で、若者が多く、活気に満ちている。
テクノロジーを活用した屋内農業は、若者にとって就農の新たな選択肢となり得る。
異常気象や自然災害のリスクは年々高まっているが、当社の栽培システムを導入すれば、気候に左右されず、化学農薬を一切使用しない新鮮な野菜を、年間を通じて供給できる」(ガロンスカ氏)

既にスーパーの紀ノ国屋、サミットの一部店舗、文具大手コクヨの東京品川オフィスなどに導入先が広がっている。
食料価格が高騰していることもあり、一定量を安定的に生産できるインファームの「店内農場」への引き合いは増す一方だ。

東京・六本木。
超高層ビル「東京ミッドタウン・タワー」の18階に、世界的なスタートアップが集うシェアオフィスがある。
海外企業の日本進出を支援するジャパン・クラウド・コンピューティング(東京・港)と合弁で立ち上げられた日本法人が、ここに続々と入居しているのだ。

日本のECに「風穴を開ける」仏ユニコーン

Mirakl(ミラクル)日本法人の佐藤恭平社長。
米アマゾン・ドット・コムでも楽天市場でもない、新しいECの形を示すことで「日本のEC市場に風穴を開けたい」と意気込む。
フランス発のMirakl(ミラクル)も22年5月、このフロアで業務を始めた。
ミラクルはフランス政府認定の「フレンチテックNext40」に選ばれ、企業価値は35億ドルと、フランス国内でもかなり上位に入る。

事業内容は、マーケットプレイスと呼ばれる電子商取引(EC)サイトの構築支援だ。
評価されているのは、その独特なビジネスモデルにある。

ECを始めるには、米アマゾン・ドット・コムや楽天市場といった巨大ネットモールに出店するか、自社商品だけを扱うサイトを自前で立ち上げるのが一般的だった。
ミラクルを導入すれば、世界約5万社から取り扱いたい商品を選び、自社商品と組み合わせて自社サイトで販売できる

東京オフィスは仏パリ、米ボストンに続く「本社」という扱いで、期待値は高い。
「日本のEC化率は世界と比べて非常に低い。
その分チャンスは大きく、日本のEC市場に風穴を開ける存在となり得る」とミラクル日本法人の佐藤恭平社長は語る。

イスラエル発祥の米WalkMe(ウォークミー)は19年、東京に進出し、この3年間で70社を超える日本企業に導入された。
ミラクルと同じく、ジャパン・クラウドの支援を受け、19年に東京オフィスを構えた米WalkMe(ウォークミー)は、大手企業を中心に日本で70社超の導入実績を積み上げた。
ウォークミーは例えるなら「デジタルトランスフォーメーション(DX)専用のカーナビ」だ。

業務ソフトを立ち上げると、画面上のどこをクリックして、何を入力すればいいのかをポップアップで教えてくれる。
これにより、社内研修をすることなく、誰でもソフトを使いこなせるようになる

DXがなかなか進まない日本だからこそ、重宝されている。

3社に共通するのは、日本の弱点をくみ取り、ビジネスチャンスに変えている点にある。
東京で育まれたスタートアップが世界に羽ばたくためには、広い視野で世界のニーズを把握することから始める必要がある。

あらゆる企業が集積する東京の強み生かせ

銀行、クレジットカード、電子マネー、ポイント、マイル、証券……。
複数の金融サービスを一元管理できる家計簿アプリなどを展開するマネーツリー(東京・港)は今年、創業10周年を迎えました。

オーストラリアで生まれ育った私は、高校と大学の時期に1年ずつ日本に留学しました。
その後、母国で起業を経験し、29歳のとき、社会人として再び日本に戻ってきました。
人材紹介会社のIT部長に就任して、そこで出会った外国人の同僚2人とともに立ち上げたのが、マネーツリーです。

正直、若い頃は米シリコンバレーに憧れを抱いたこともありました。
しかし、それ以上に日本文化に魅せられ、離れがたいと感じるまでになった。
オーストラリアは英語圏なので、渡米しても新たな言語は学べないし、文化的にもさほど違いはないだろう。
それよりは日本語を習得し、日本のことをもっと知りたいという思いが勝ったのです。

私は、日本からグローバルリーディングカンパニーが創出できると思っています。
10年前と比べると、格段に起業しやすくなり、資金調達の環境も整ってきました。
特に東京は「近距離にあらゆる業界の企業が集まっている」という強みがある。
スタートアップを育む上で、これほど恵まれた環境を持つ都市は世界でも数少ないでしょう。

シリコンバレーの企業から学ぶことがあるとすれば、試行錯誤を繰り返し、何度でもシュートを放ち続ける起業家精神です。
シュートを放った数だけ、成功に近づくことができる。私自身もこの10年の経験を東京で起業する後進に伝えたいと考えています。
(日経ビジネス 酒井大輔)

情報源: 東京に攻め込む海外ユニコーン、未開拓の巨大市場狙う: 日本経済新聞

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