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給食をコメに変えたら、非行・犯罪がゼロになった!? ——長野県上田市の学校給食革命|人間力・仕事力を高めるWEB chichi|致知出版社

2018年11月25日
仕事

長野県上田市真田町。以前は子供の非行・犯罪が絶えなかったというこの小さな町は、いまや全国でも抜きんでた学力を誇る一地域へと変貌を遂げた。この変革の立役者が、上田市元教育委員長の大塚貢氏である。大塚氏はいかに子供たちの心を掴み、健康を取り戻していったのか。その一部始終について語っていただいた。

荒み切った学校に赴任して

私が中学校の校長になったのは、平成4年でした。生徒数1200名の大規模校でしたが、その荒れ方はもう非行なんてものじゃないですね。立派な犯罪です。強盗、窃盗も多いです。学校の廊下をバイクで走ったり、窓ガラスは次から次へ割られ、不登校も常に60~70人いました。

そこでまず、取り掛かったのは授業の改善でした。徹底的に研究授業をやって、「こうしたらどうか、ああしたらどうか」と先生同士が互いに切磋琢磨し合う。またそれぞれが教材研究や指導方法を研究していくと、次第に授業のレベルが上がっていきました。

授業がおもしろいかどうかのバロメーターは、なんと言っても子どもの姿勢です。机に伏している子がほとんどいなくなり、みな姿勢を正して授業に臨むようになりました。

いま、学級崩壊とか子どもが本気で勉強しないとかいいますが、99%は授業がつまらないのを子どものせいにしているだけだと思います。

問題の根源は食にあった!?

朝礼で子どもたちが貧血でバタバタ倒れたり、遅刻したり、登校しても保健室にいるので、これはもしかしたら食と関係があるのではないかと思いました。平成4年の頃で、まだ「食育」などという言葉もなかった時代です。

全校生徒の食の調査もやりましたが、朝食を食べてこない子どもが38%。その子たちもやはり非行や犯罪まがいのことをしたり、いじめなどに加担していたりする。あるいは無気力な生徒が多かったです。

ただ、朝食を食べていると答えた生徒にしても、実態はほとんどがパンとハムやウインナ、それと合成保存料や着色料、合成甘味料の入ったジュースです。そして夜はカレーや焼肉が多かったですね。こういう食事ばかりではカルシウムやミネラル、亜鉛やマグネシウムといった血管を柔らかくしたり、血をきれいにする栄養素はまったく摂取できません。

だから子どもたちの血液がドロドロで、自己コントロールができない体になって、普段は無気力でありながら、突如自分の感情が抑えきれなくなってしまう。いくら「非行を起こすな、いじめるな、勉強を本気でやれ」と言ったところで、体がついていかないのです。

そういったことをPTAの席でお話しして、「なんとかバランスのよい食事をつくってください」と呼びかけたところで、いまの若いお母さん方にはまったく聞き入れてもらえませんでした。

給食をコメ主体に切り替えた
そうして赴任した翌年の平成5年からは、週6日のうち5日間を米飯給食に切り替えました。米飯もただの白米ではなく、血液をきれいにし、血管を柔らかくしてくれるGABAが含まれる発芽玄米を10%以上加えたのです。

7か月後あたりから学校全体が落ち着いてきましたね。いまでもよく覚えているのが、4月のPTA総会の前に私が1時間ばかり校舎のタバコの吸殻を拾って歩いたところ、スーパーの大きなビニール袋がいっぱいになったのです。それを総会で見せたところ、保護者たちから、「大塚校長が来てから風紀が乱れたんじゃないのか」と言われましたがね、米飯給食を始めてから7か月後には、吸殻が1本もなくなりました。

1年半から2年がたつ頃には、非行・犯罪はゼロになり、同時に子どもたちの学習意欲も高まっていきました。

荒れていた時は図書館なんて誰も利用しませんでしたが、子どもたちが変わってきてからは、昼休みは図書館の120席がすぐに満席、座れない子は床に腰を下ろして読んでいるのですが、そこもいっぱいになると廊下にまであふれ出てくるような状態になりました。

もちろん、図書館司書が本に関するクイズを出したり、先生の読書感想文を校内放送で流したりと、様々な工夫をしましたが、やはり食によって子どもの心と体が変わってきたことが大きいと思います。

(本記事は『致知』2008年5月号「工夫用力」より一部を抜粋・編集したものです。『致知』には人間力・仕事力を高める記事が満載!詳しくはこちら

大塚 貢
おおつか・みつぐ――昭和11年長野県生まれ。35年信州大学卒業後、中学校教員を経て、東京都内で会社員生活を送る。その後、長野に戻り、県教育委員会指導主事、中学校教頭を経て、平成4年から校長に。9年旧真田町教育長就任。市町村合併後、18年より上田市教育委員長。19年退任後、現在は教育・食育アドバイザーとして活躍。

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情報源: 給食をコメに変えたら、非行・犯罪がゼロになった!? ——長野県上田市の学校給食革命|人間力・仕事力を高めるWEB chichi|致知出版社

ゲノム編集食品、食品表示義務なし 流通制度固まる: 日本経済新聞

2019年9月19日 16:00

狙った遺伝子を切断する「ゲノム編集」技術で開発した食品について、消費者庁は19日、食品表示を義務化せず、ホームページなどでの任意の情報提供を求める方針を示した。消費者団体などから食品表示を求める声があるが、安全面では従来の品種改良と同程度のリスクであり、科学的にも見分けられないことなどから判断した。早ければ年内にも流通する。


ゲノム編集は遺伝子の狙った部分を操作し、効率よく品種改良ができる。特定の栄養の多いトマトや収量の多いイネ、肉付きのいいマダイなどの開発が進む。

国はゲノム編集食品について、届け出と食品表示の2段階で制度を検討した。前者については厚生労働省が19日、届け出制度を10月1日から始める通知を出した。届け出は任意で違反しても罰則はない。

食品表示については、消費者庁が19日、義務化せずに任意の表示にすると発表した。ただ、外部から加えた遺伝子が残る場合は、従来の遺伝子組み換え食品と同じ扱いで安全性審査がいる。

10月からは、ゲノム編集食品の開発者らは届け出前に厚労省に相談し、開発した食品が制度の対象になるかどうかの判断を受ける。対象であれば、有害物質や外部から加えた遺伝子がないこと、技術の詳細などの情報を提出し、安全性審査なしで販売できる。

ゲノム編集食品は自然に起こる突然変異や従来の育種技術などによるものと科学的に区別がつかない。同食品を規制していない米国からの輸入品を原材料に加工食品を作る事業者などに、表示を課しても対応できないわけだ。こうした点などから、消費者庁などは義務化は難しいと判断した。

厚労省は届け出をせずに販売するといった違反事例を見つけた場合、開発者などの情報をネット上に公開する。「届け出によって国のお墨付きを得るような格好になる。信頼性の担保になるので、積極的に届け出が出るとみている」(厚労省)

制度に反対する声もある。消費者団体の日本消費者連盟などは安全審査と表示の義務化を求め、署名活動をしている。東京大学の内山正登研究員らが2018年に実施した消費者の意識調査では、4~5割がゲノム編集食品を「食べたくない」と回答した。

海外をみると、米国は特に規制していない。欧州連合(EU)では欧州司法裁判所が、遺伝子組み換え食品と同様に規制すべきだと判断を示している。新たに流通を認める制度を作った国は特にない。

情報源: ゲノム編集食品、食品表示義務なし 流通制度固まる: 日本経済新聞

ガラパゴス化する日本の食品安全行政(猪瀬聖)

猪瀬聖 | ジャーナリスト
2015/6/23(火) 14:40

米政府は有害なトランス脂肪酸を含んだ食品の全面禁止に踏み切った

マーガリンなどに含まれ心臓疾患の原因となるトランス脂肪酸の使用を、米政府が全面禁止するとのニュースが、日本でも大きく報じられた。トランス脂肪酸は欧州やアジアの国々でも使用規制や表示義務化が進み、国内でも何らかの規制を望む声が上がっている。しかし、政府は今のところ規制には消極的だ。実は、食品の安全に関する日本政府のこうした「わが道を行く」姿勢は、トランス脂肪酸に限ったことではない。農薬など他の問題でも、世界の流れに逆行する動きが目立つ。日本の食品安全行政のガラパゴス化が、顕著になっているのだ。

ネオニコチノイド問題

ガラパゴス化の代表例が、ネオニコチノイド系農薬(ネオニコチノイド)の規制問題だ。それを理解するために、まず、ネオニコチノイドとは何かを説明しよう。

ネオニコチノイドは、1990年代ごろから、それまでの有機リン系に代わって急速に普及し始めた殺虫剤で、今や世界で最も人気の農薬だ。

用途は非常に幅広い。コメや野菜、果物などの農産物や、樹木に被害を与える害虫の駆除だけでなく、家庭でも日常的に使われている。例えば、ガーデニング用の殺虫剤や台所のコバエ取り、ゴキブリ駆除、さらには犬や猫などペットのノミ取りなどにも使われる。実はとても身近な存在だ。

しかし今、その恐ろしい副作用が世界的に大きな問題となりつつある。

ネオニコチノイドは、簡単に言えば、タバコの有害成分であるニコチンに似た化学構造を持つ神経毒。名前がニコチンに似ているのは、そのためだ。人の体内に入ると、神経伝達物質であるアセチルコリンの働きをかく乱、妨害し、その結果、脈の異常や発熱、頭痛、短期の記憶障害などさまざまな症状を引き起こす。実際に、日本でも、松枯れ病対策のためにネオニコチノイドが散布された地域で、住民の多くが直後に、頭痛や吐き気、めまいなどの症状を訴えるという事件が起きている。

子どもや胎児への影響も

だが、より深刻な懸念は、小さな子どもや母親のおなかの中にいる胎児への長期的な影響だ。

専門家が指摘するのは、発達障害との関連。日本でも発達障害と診断される子どもが増えているが、その原因の1つとして、ネオニコチノイドが疑われている。

ネオニコチノイドの人体への長期的な影響に関する研究はまだそれほど多くない。しかし、ネオニコチノイドと似た化学構造を持つニコチンが、子どもや胎児に深刻な影響を与えることは、すでに多くの研究で証明済みだ。例えば、妊婦の喫煙は、低体重児や注意欠陥・多動性障害(ADHD)児が生まれるリスクを高めることがわかっている。だからこそ、未成年者の喫煙は法律で禁じられているし、妊婦の喫煙は強く戒められているわけだ。ネオニコチノイドも、同様の影響を人体に与え得ると見る専門家は多い。

実際、欧州連合(EU)の専門機関である欧州食品安全機関(EFSA)は、2013年12月、ネオニコチノイドの一種であるアセタミプリドとイミダクロプリドに関し、「低濃度でも人間の脳や神経の発達に悪影響を及ぼす恐れがある」との研究結果を発表している。いずれも、日本で広く使われている農薬だ。

こうして、その危険性が徐々に明らかになりつつあるネオニコチノイドだが、その本当の怖さは、高い残留性にある。

一般に、農薬というと、葉や茎や実の表面に直接、散布するイメージがある。だから、食べる前に水でよく洗えば、かなり落ちるだろうと考える。しかし、ネオニコチノイドは違う。

洗っても落ちない

ネオニコチノイドの特徴は、水に溶けやすい。つまり水溶性だ。葉や茎や実の表面に噴霧されたネオニコチノイドは、水と反応して農産物の内部に浸透する。土壌にまかれた場合も、根や吸収され、植物の内部を移動しながらいろいろな場所に残留する。さらには、発芽前の種子をネオニコチノイド溶液に浸す、いわゆる種子処理という方法もある。種子処理された種子から発芽した農産物は、生まれながらにして体内に強力な殺虫力を備えているというわけだ。

したがって、害虫はネオニコチノイドを直接浴びても死ぬが、ネオニコチノイド入りの葉や茎や実を食べても、死ぬ。だからこそネオニコチノイドは、一度使えば効果が確実に長持ちする優れた農薬として、重宝されるのだ。

しかし、これが人間には災いする。農産物の内部に残留しているので、食べる前にいくら洗っても、成分を除去できない。

タバコなら、ニコチンの害を防ぐには、吸わなければいいだけの話。受動喫煙も、注意すれば避けられる。だが、ネオニコチノイドはそうはいかない。毎日食べているコメや野菜、果物を通じ、知らないうちに体内に取り込まれている可能性が高いのである。

危険なネオニコチノイドを摂取しない唯一の方法は、ネオニコチノイドを使った農産物を一切口にしないことだ。しかし、ネオニコチノイドを使っているかどうかなど、消費者にはまずわからない。どうしても避けたければ、値段は多少高くても、有機農産物や農薬不使用の農産物を選ぶしかない。

ネオニコチノイドは、自然環境への影響も強く懸念されている。

ネオニコチノイドが普及し始めたのとほぼ同時期の1990年代から、ミツバチの大量死や数の減少が世界中で報告されるようになっている。

この現象は、蜂群崩壊症候群(CCD)と名付けられ、欧州各地で最初に報告された後、北南米やアジアなど世界中に広がった。日本でも2005年ごろから、全国各地でCCDと思われる事例が相次いで報告されており、養蜂農家が大きな損害を被っている。

CCDの原因はまだ突き止められていないが、ネオニコチノイド犯人説が有力だ。ネオニコチノイドを含んだ花の蜜を吸った働き蜂が、ネオニコチノイドの神経毒にやられ、帰巣できなくなったと考えられている。

国連環境計画(UNEP)によれば、世界の主要な100種類の作物のうち、70種類以上の受粉にミツバチがかかわっている。つまり、ミツバチが地上から消えれば、世界の食料生産が大打撃を被る可能性があるのだ。UNEPはCCDの考えられる原因の1つとして、ネオニコチノイドの大量使用を示唆している。

世界は規制強化の流れ

ネオニコチノイドの有害性の深刻度合いが徐々に明らかになるにつれ、ネオニコチノイドの使用を禁止したり制限したりする動きが、世界的に進み始めている。

例えば、消費者保護に敏感なEUは、2013年12月、主要ネオニコチノイドのうち、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムの3種類について、安全性が確認されるまで使用を暫定的に禁止すると発表した。EU加盟国の中には、すでにそれ以前から、個別に規制強化に乗り出しているところも多い。

業界団体の政治力が強く消費者保護が後回しになりがちな米国でも、規制強化が始まった。環境保護庁(EPA)は4月2日、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、ジノテフランの4種類のネオニコチノイドについて、「新たな使用」を当面、認めない方針を明らかにした。「新たな使用」とは、使用申請済み以外の農作物への使用や、現在行っている以外の使用法(例えば空中散布など)、また、試験的使用などが含まれる。

欧米だけではない。韓国も規制強化に乗り出した。農村振興庁は昨年2月、EUが暫定使用禁止措置を取った3種類のネオニコチノイドについて、EUが最終評価を出すまでは使用に関する新規登録や変更登録を制限すると発表した。

日本は使用基準を緩和

これに対し日本では今年5月、厚生労働省が、ネオニコチノイドの残留基準を緩和する旨を各都道府県知事や保健所設置市長などに通知した。つまり、ネオニコチノイドはもっと使っても構わないと、お上がお墨付きを与えたのである。

今回、基準が緩和されたのは、主要ネオニコチノイドのうち、クロチアニジン、アセタミプリドの2種類。国立環境研究所の最新データによると、2013年度の国内出荷量は、それぞれ70トンと52トン。ネオニコチノイドの中では使用量が比較的多い種類だ。特にクロチアニジンは、出荷量が10年ほど前と比べて7倍増と激増している。

この結果、クロチアニジンの食品残留基準は、例えばホウレンソウの場合、従来の13倍強の40ppmとなった(1ppmは0.0001%)。ほかにも、カブの葉が2000倍の40ppm、シュンギクが50倍の10ppm、コマツナが10倍の10ppm、ミツバが1000倍の20ppm、パセリが7.5倍の15ppmなど、定番の野菜の残留基準値が大幅に緩和されている。

野菜類だけではない。玄米が1.4倍の1ppm、ウメが1.7倍の5ppm、牛や豚などの肝臓が10倍の0.2ppmなど、緩和の対象も広範囲に及んでいる。

アセタミプリドに関しては、シュンギクとレタスがいずれも2倍の10ppm、オウトウ(チェリーを含む)が2.5倍の5ppmに緩和されるなどしている。

今回は変更の対象外だが、主要ネオニコチノイドのイミダクロプリドも、2011年にホウレンソウの残留基準が2.5ppmから6倍の15ppmに引き上げられている。ネオニコチノイドの残留基準は年々、緩和される傾向にあるのだ。

それでなくても、もともと日本の残留基準は欧米に比べて甘い。例えば、アセタミプリドのイチゴに対する残留基準値は、日本の3ppmに対し、米国は5分の1の0.6ppm。EUにいたっては、それ以上は計測不可能を意味する検出限界値の0.01ppmだ。

もともと甘い基準をさらに甘くするのだから、日本と世界との差は開く一方である。

国際環境団体のグリンピース・ジャパンは「この農薬が人や環境へ及ぼしうる悪影響に関する科学的証拠や、世界で次々とネオニコチノイド規制を導入する国が増えている流れに逆行している」と、今回の政府の基準見直しを厳しく批判している。

ガラパゴス化招く「企業寄り」の姿勢
食品の安全問題で日本だけが「わが道を行く」背景には、「農薬メーカーの利益を優先していると言わざるを得ない」(グリーンピース)との指摘があるように、国民の健康よりも企業利活動の自由を重視する政府の姿勢があるのは、疑いの余地がない。

事実、今回の残留基準緩和も、化学メーカーからの適用拡大の申請を受け、検討された結果だ。しかも、基準見直しの過程で政府が募集したパブリックコメントは、集まった約2千件の意見のうち、大半が基準緩和に反対の内容だったという。にもかかわらず基準は緩和されたのである。結果的に、少しでも安全なコメや野菜を食べたいという消費者の意向は完全に無視され、もっとたくさん農薬を売って利益を伸ばしたいという企業の意向だけが考慮された格好だ。

食品安全行政における日本政府のガラパゴス化は、初めに指摘したように、トランス脂肪酸の問題にも当てはまる。

トランス脂肪酸に関しては、米政府が全面禁止を発表した約2か月前の4月14日に、多くの消費者団体が参加する「食品表示を考える市民ネットワーク」が、トランス脂肪酸の表示を義務化すべきだとの要望書を、山口俊一・内閣府特命担当大臣らに提出している。同ネットワークは、それ以前にも、トランス脂肪酸の表示義務化を何度も政府に働きかけていた。しかし、消費者側の声は今のところ完全に無視されている。ここでも「行政は企業寄り」(消費者団体幹部)と映る。

他にも、薬の効かない耐性菌の繁殖につながる家畜への抗生物質投与の問題、穴だらけの遺伝子組み換え表示ルールなど、食品安全行政における日本政府のガラパゴス化を示唆する例は数多い。いずれの場合も、国民の健康よりも経済や企業活動の自由を優先する行政の姿勢が根っこにあることは、食品安全にかかわる多くの専門家が指摘するところだ。

食品安全問題で、政府がこのままガラパゴス化の道を突き進むなら、そのツケは将来、国民に回ってくることになる。

情報源: ガラパゴス化する日本の食品安全行政(猪瀬聖) – 個人 – Yahoo!ニュース

シェイクシャックが「ホルモン剤不使用」にこだわる理由(猪瀬聖)

猪瀬聖 | ジャーナリスト
2016/4/28(木) 15:32

シェイクシャック日本1号店(外苑いちょう並木店)(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

「ニューヨークのベストバーガー」の称号を引っさげ、昨年11月、華々しく日本デビューを果たした米ハンバーガーチェーンのシェイクシャック。東京の明治神宮外苑内に開いた1号店に続き、2号店が今月15日、東京のJR山手線恵比寿駅の駅ビル内にオープンした。

平日午後、恵比寿の2号店に立ち寄ると、ランチタイムはとっくに過ぎているのに、注文客の列は店外にまであふれ、最後尾で立て札を持っていた警備員に尋ねたら、最大40分待ち。店内はほぼ満席で、女性客やビジネスマン風の若い男性客などで賑わっていた。

人気の理由は、味やボリューム感、おしゃれなイメージにあるようだが、シェイクシャック側が強調するのは、使用する食材の安心・安全へのこだわりだ。

メニューには、「ホルモン剤を一切使用していないアンガスビーフ100%」「ホルモン剤や抗生剤を一切使用していないベーコン」「糖分は砂糖のみを使用し、コーンシロップなどは使用していません」といった、安心・安全を強調する説明が並ぶ。

飲み物も、有機りんごジュースや、有機ワインで有名なカリフォルニア州ナパバレーのワイナリーに作らせたワインをメニューに加えるなど、一工夫。さらには犬用のクッキーにも着色料を一切使わないなど、なかなかの手の込みようだ。

安心・安全なものを消費者に提供するのは、当然と言えば当然。だが、ここまで安心・安全にこだわり、それをアピールするファストフード店は珍しい。シェイクシャックはなぜ、そこまでやるのか。

消費者ニーズとらえ急成長

実は、シェイクシャックの地元米国では今、消費者の間で、食の安心・安全への関心が急速に高まっている。特に関心が高いのが、遺伝子組み換え、抗生物質(抗生剤)、成長ホルモン剤(ホルモン剤)、人工添加物の問題。また、家畜が倫理的に扱われているかどうかといった動物福祉も、消費者が食品や店を選ぶ際の判断材料になっている。

こうした消費者意識の変化をいち早くとらえて急成長した新興ファストフードチェーンの一つが、シェイクシャックだ。日本でも食材の安心・安全にこだわるのは、それがシェイクシャックの成長の原動力となってきたからである。

では、シェイクシャックが使用しないと決めている成長ホルモン剤や抗生物質は、なぜ安心できないのか。

成長ホルモン剤には家畜の成長を早める効果があり、米国では多くの畜産農家が日常的に使用している。家畜が早く成長すれば、それだけ早く出荷でき、餌代の節約にもなるからだ。乳牛に成長ホルモン剤を与えると、搾乳量が10%以上増えるため、乳牛にもふつうに使われている。

ホルモン剤に発がん性の疑い

しかし、成長ホルモン剤の成分が残留した牛肉や牛乳を人が摂取すると、子どもの成長に異常が生じたり、がんを発症したりする可能性が以前から指摘されてきた。女の子の初潮年齢の早まりは、牛肉や牛乳に残留する成長ホルモン剤の影響ではないかとも言われている。

このため、EU(欧州連合)は、域内で飼育する牛への成長ホルモン剤の使用を認めておらず、成長ホルモン剤を使用した牛肉の輸入も禁止している。日本は、国内で飼育されている牛には、成長ホルモン剤は使われていないが、輸入牛肉に関しては、ホルモン剤の残留量が国の基準値以下なら、輸入を認めている。つまり、国内のスーパーで売られている米国産牛肉や外食で口にする米国産牛肉は、成長ホルモン剤入りの可能性が高い。

抗生物質も、人への影響が懸念されている。家畜に抗生物質を使うのは、病気を治療するためだけではなく、病気の予防や、ホルモン剤同様、成長促進の目的がある。抗生物質の最大の問題は、過剰に投与すると、その抗生物質に耐性を備えた耐性菌が体内に生まれ、同じ抗生物質が二度と効かなくなること。耐性菌に汚染された食肉を人が食べたり触れたりすると、家畜の耐性菌が人に感染し、その人が病気になった時に抗生物質が効かない可能性が出てくる。そうなると、治療が不可能になり、軽い病気でも死亡する可能性が高まる。

抗生物質の人への影響を危惧したEUは、2006年、成長促進を目的とした家畜への抗生物質の使用を禁止した。一方、米国はこれまで、家畜への抗生物質の使用は事実上野放しだったが、オバマ大統領は2014年、抗生物質の使用削減に動き出している。日本は、成長促進を目的とした抗生物質の使用は、飼料安全法に基づいて一定の規制をかけているが、使用そのものは禁止していない。

マクドナルドなども追従

米国では、シェイクシャックなどの成功に刺激を受け、大手ファストフードチェーンや大手食品メーカーの間で、消費者が安心できる食材に切り替える動きが急速に広がっている。例えば、マクドナルドは昨年、発がん性の疑いが指摘されている人工ホルモン剤(rbST)を投与した牛のミルクを、米国内店舗のメニューから外すと発表。同時に、鶏肉に関しても、人の病気の治療に使われる抗生物質と同種類の抗生物質を投与した鶏の肉は、今後使わない方針を公表している。

食の安心・安全を追求し、米国のファストフード業界に変革をもたらしたシェイクシャック。果たして、日本でも旋風を巻き起こすことができるだろうか。

情報源: シェイクシャックが「ホルモン剤不使用」にこだわる理由(猪瀬聖) – 個人 – Yahoo!ニュース

米カップヌードル、脱“味の素”(猪瀬聖)

猪瀬聖 | ジャーナリスト
2016/9/23(金) 0:32

(写真:Reuters/AFLO)

米国でもファンの多い「日清食品カップヌードル」が、1973年の現地発売以来、初めてレシピを大幅に変更し、話題となっている。変更は、塩分の削減、人工香料の自然香料への切り替え、そしてMSG(グルタミン酸ナトリウム)の添加中止の3点。MSGは「味の素」の主成分だ。背景には、米消費者の自然志向、健康志向の高まりがある。

「歴史的変更」

日清食品グループのNissin Foods (U.S.A.) Co.(アメリカ日清)は、9月15日、「アメリカ日清は、その象徴的ブランドである『カップヌードル』のレシピの歴史的変更を行った」と発表した。

米主要紙ロサンゼルス・タイムズは同日、「消費者の健康志向が高まる中、カップヌードルが史上初めてレシピを変更」と伝え、変更の中身やその背景を詳報した。カップヌードルに対する米国民の関心の高さをうかがわせるエピソードだ。

アメリカ日清によると、変更の内容は次の通り。

塩分の削減は、「チキン風味」など特に人気の3風味に関しては、従来の製品より20%以上削減、その他の風味については15%前後、削減する。風味を強化する香料に関しては、化学合成した人工香料の使用を止め、ターメリックやパプリカ、ライムなど自然由来の香料を使用する。MSGの添加は全面的に中止。ただし、トマトや唐辛子などの農産物に少量含まれる自然由来のMSGに関しては、その限りではない。

根強いラーメン人気

日本風のラーメンは、米国人の大好きなイタリア料理のパスタをイメージさせるからか、米国でも人気だ。ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市では、ラーメン店が次々とオープンし、その都度、マスコミに取り上げられている。その中でもカップヌードルは、安価で、お湯を注ぐだけですぐに食べられ、しかもお腹にたまるとあって、お金のない大学生など若者を中心に根強い人気がある。

ただ、「世界ラーメン協会」によると、米国では、2015年のインスタントラーメンの消費量が2年連続して減少するなど、ラーメンブームとは裏腹に、インスタントラーメン人気に陰りも見られる。インスタントラーメン業界にとって、米国は中国、インドネシア、日本、ベトナムに次ぐ世界5位の市場だけに、日清食品にとってもテコ入れは急務だ。アメリカ日清は11月、レシピの抜本変更に合わせ、同社としては初めて、全米規模のキャンペーンを展開する計画だ。

自然・安全志向を反映

その日清が、同社の象徴でもあるカップヌードルを再び成長軌道に乗せるために目を付けたのが、米消費者の自然志向、健康志向だ。

肥満や高血圧が死因の上位を占め、大きな社会問題となっている米国では、政府や専門家が、糖分や塩分の摂取量を減らすよう口を酸っぱくして呼びかけている。同時に米国では、農薬や化学肥料、遺伝子組み換え技術などを使わない有機食品が飛ぶように売れるなど、「できるだけ自然なものを食べたい」という消費者ニーズが、かつてなく高まっている。ちなみに、同様の傾向は、EU諸国でも見られるなど、先進国共通の現象となりつつある。

カップヌードルの抜本的なレシピ変更も、こうした米国の消費者ニーズを映したものだ。アメリカ日清のアル・ムルタリ社長は、「お客様の声を聞いた結果、お客様は、従来の味を変えることなしに、塩分の低減、MSGの無添加、人工香料の不使用、の3つを商品に反映させることを望んでいることがわかった」と、レシピ変更の理由を説明している。

MSGは義務表示

今回のレシピ変更で特に注目されるのが、MSGの使用中止だ。MSGは、日本ではほとんど聞かない言葉だが、グルタミン酸ナトリウムを意味するmonosodium glutamateの略。味の素のホームページによると、うま味調味料「味の素」の成分は、「グルタミン酸ナトリウム97.5%、イノシン酸ナトリウム1.25%、グアニル酸ナトリウム1.25%」。つまり、MSGは、ほぼイコール「味の素」だ。

MSGは、日本では家庭用、業務用ともに幅広く使われているが、米国の消費者には評判が良くない。食品安全行政を担当する食品医薬品局(FDA)は、食品に人工的に添加されるMSGに対し「安全」のお墨付きを与えている。しかし、MSGを添加した食品を食べて、頭痛や吐き気など様々な症状を訴える例が多数、報告されているため、FDAは、MSGを添加した食品は、その旨をパッケージに明記するよう義務付けている。こうした経緯から、米国では、米国に進出している日本の食品メーカーを含め、「MSG無添加」を強調する企業は多い。

果たして、MSGと決別した新生カップヌードルは、自然志向、健康志向を強める米国の消費者の心をつかむことができるだろうか。

情報源: 米カップヌードル、脱“味の素”(猪瀬聖) – 個人 – Yahoo!ニュース

国産食品は本当に安心か(猪瀬聖)

猪瀬聖 | ジャーナリスト
2017/10/10(火) 6:00

(ペイレスイメージズ/アフロ)

全ての加工食品に原料の原産地表示を義務付ける新たな表示ルールが先月、施行された。輸入食品に対する消費者の不安の声にこたえると同時に、あわよくば国産農産物の消費拡大につなげようとの関係者の思惑がある。しかし、国産食品は輸入食品に比べて本当に安心して食べることができるのだろうか。

加工食品の原料原産地表示はこれまで、加工度の低い一部の食品だけが対象だったが、新ルールでは対象を全加工食品に拡大した。実際に表示義務の対象となるのは、製品中の使用量が一番多い原材料。複数の国の原材料を混ぜて使っている場合は、使用割合の多い順に「A国、B国」と表示するなどが新ルールの柱だ。もっとも、2022年3月末までの猶予期間を設けてあるため、消費者が新ルールの恩恵を実感するのは少し先になりそうだ。

消費者の6割強が国産志向

そもそも、今回、消費者庁が原産地表示の拡大に踏み切った背景には、輸入食品の安全性に対する消費者の根強い不安がある。

それを裏付けるのが、ルール改訂の検討にあたって消費者庁が昨年3月に実施した消費者意識調査だ。調査では、全体の76.8%が加工食品を購入する際に原産地表示を参考にすると回答。参考にする理由を聞いたところ(複数回答可)、「原料が国産のものを選びたい」が65.4%、「原料が特定の原産国のものを選びたい又は選びたくない」が39.0%に達した。

調査結果を見ると、消費者の多くが輸入食品に強い不安を持つと同時に、国産食品に深い信頼と安心を抱いていることがわかる。

輸入食品“不信”が、中国からの輸入餃子に殺虫剤の成分が混入していたり、同じく中国産の冷凍野菜から高濃度の農薬が検出されたりした事件から来ていることは、想像に難くない。しかし、本当に国産品は輸入品より安心して食べることができるのか。「国産だから安心」は単なる神話に過ぎないのではないか。そんな疑問を抱かざるを得ないようなニュースが最近相次いでいる。

広がる農薬汚染

一例が、この夏、新聞各紙が報じた殺虫剤のネオニコチノイドによる「農薬汚染」の実態だ。東京新聞は「蜂蜜 ネオニコチノイド汚染全国に」、日本経済新聞は「蜂蜜やミツバチ、広がる農薬汚染 9都県で検出」との見出しで報じている。

記事によると、千葉工業大学の研究チームが、北は岩手から南は沖縄まで全国9都県で蜂蜜製品、蜜蜂、蜜蜂のさなぎのサンプルを収集し分析したところ、73のサンプル全てからネオニコチノイドを検出。蜂蜜中の残留濃度は、28サンプル中、6割超の18サンプルで国が定める食品中の農薬の残留基準を上回った(ネオニコチノイドの対蜂蜜の残留基準は設定されていないため、他の農薬の暫定基準を適用)。

研究チームは、日常生活で食べる量であれば人の健康にすぐに影響が出るレベルではないとしているが、気になる情報もある。

ネオニコチノイドは、稲や野菜、果物など様々な農産物に使われ、世界的に使用量が多い。しかし、世界各地で起きている蜜蜂の大量死や、子供の発達障害の原因と疑われたりするなど、自然環境や人の健康への影響が問題視されており、各国が使用の禁止や制限に乗り出しているのだ。

緩い残留基準

欧州連合(EU)は13年、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムの3種類のネオニコチノイド系農薬について、安全性を確認するまで使用禁止を決定。翌年、韓国もEUに追随し、同様の措置を講じた。さらにその翌年、米国が独自の使用規制に踏み切り、フランス議会は昨年、ネオニコチノイド系農薬の全面使用禁止法案を可決した。

対照的なのが日本。厚生労働省は11年にイミダクロプリド、15年にクロチアニジン、アセタミプリドの一部農産物に対する残留基準を緩和。欧米に比べて元々緩いネオニコチノイドの規制が一段と緩くなった。

こうした結果、国内で売られている野菜の中には、日本の残留基準はクリアしても、海外の残留基準を超えているものがある。一般社団法人アクト・ビヨンド・トラストが昨年、ネオニコチノイド系農薬7種類と、ネオニコチノイドに似た農薬2種類、あわせて9種類について、市販の小松菜、ホウレンソウ、白菜、レタスへの残留量を調査したところ、全30サンプル中、20サンプルから、1種類以上の農薬を検出。国の残留基準超えのサンプルはなかったが、EUの基準を上回ったのが8サンプルあった。

抗生物質も問題

農薬だけではない。

米マクドナルドは8月、人の病気の治療に重要な抗生物質と同じ種類の抗生物質を投与した鶏肉の使用を、18年から日本を含む全世界の店舗で順次、中止すると発表した。牛肉についても、将来は同様の措置を取る方針という。マクドナルドが使用を禁止する抗生物質は、世界保健機関(WHO)がHPCIAと呼ぶカテゴリーに分類しているものが対象だ。

抗生物質は人の病気の治療に欠かせないが、実は牛や豚、鶏などの家畜にも大量の抗生物質が使われている。病気治療にも使われるが、問題視されているのは、病気予防や成長促進のために日常的に多くの抗生物質が使われている点。家畜に抗生物質を投与すると、家畜の体内に薬剤耐性菌が生まれ、それが食肉を通じて消費者に感染する可能性が指摘されている。人に薬剤耐性菌が感染すると、病気の治療で抗生物質が効かなくなる。命にかかわる問題だ。

EUは06年に成長促進目的での抗生物質の投与を禁止するなど、いち早く厳しい使用制限を打ち出した。米国も抗生物質の使用削減に乗り出しており、マクドナルドの取り組みもこの流れに沿ったもの。米国内店舗では、すでに16年末までに、HPCIAを投与した鶏肉の使用を止めている。米国では、他の大手ファストフード・チェーンも抗生物質不使用肉への切り替えを進めているほか、ホールフーズ・マーケットなど高級スーパーに行けば、抗生物質不使用肉が簡単に手に入る。

「国産だから安心」とは限らず

日本の農林水産省も、抗生物質の家畜への使用に一定の基準を設けてはいるものの、EUのように成長促進目的での使用の禁止にまでは踏み込んでいない。市場でも、今のところ、一部の生産者やスーパー、有機野菜宅配サービス業者が、抗生物質不使用肉を扱うにとどまっている。

もちろん、輸入食肉の中にも抗生物質や、同じく発がん性の疑いが指摘されている成長ホルモンを投与し飼育された家畜の肉が多く含まれており、輸入肉のほうが安心とは到底、言うことはできない。しかし、だからといって、「国産品だから安心」とは必ずしも言えないのが現状なのだ。

情報源: 国産食品は本当に安心か(猪瀬聖) – 個人 – Yahoo!ニュース

「脱農薬」目指す異色の農協(猪瀬聖)

猪瀬聖 | ジャーナリスト
2018/5/14(月) 11:00

無農薬・無化学肥料のコメ作りに取り組む徳島県阿南市の村上弘和さん(筆者撮影)

自然環境や人体に多大な影響を及ぼす恐れから、世界的に使用禁止や規制強化が進むネオニコチノイド(ネオニコ)系農薬。日本では害虫駆除に不可欠との理由で、今も全国の田畑で使われている。そうした中、地域の農家や消費者、NPOなどと協力して果敢に「脱ネオニコ」に取り組み、成果を上げている農協がある。現地を訪ねた。

収量増え、味も向上

「コメ作りは楽しいですよ。おかげさまで充実した毎日を過ごしています」。田植えが済んだばかりの水田で、日焼けした顔に笑みをたたえて出迎えてくれたのは、紀伊水道に面した徳島県阿南市で農業を営む村上弘和さん(66)だ。

システムエンジニアだった村上さんが、会社を定年退職して実家のコメ作りを継いだのは6年前。所有する15反(約15000平方メートル)の水田のうち、3分の1は農薬も化学肥料も一切使わない水田。もう3分の1は化学肥料の使用量を半分以下にし、農薬は除草剤の使用が1回だけという「特別栽培米」を作る水田だ。

村上さんは以前から有機農業に関心があり、コメ作りを始めるのと同時に、農薬や化学肥料を減らす取り組みを始めた。成果は予想以上で、「収量も増え、食味に関しても高評価を得ている」と声を弾ませる。

水田の場所が散らばっていることもあり、農薬、化学肥料の削減は段階的だが、「いずれは全ての水田で無農薬・無化学肥料のおいしいコメを作りたい」と抱負を語る。

そんな村上さんの強力な援軍が、阿南市や小松島市など2市2町にまたがる「東とくしま農業協同組合」(JA東とくしま)だ。

JA東とくしまは正組合員数約8000人の一見、ごく普通の農協だが、他の農協と大きく異なる点がある。地域の農家やNPO、生協などと協力し、農薬や化学肥料をできるだけ使わない農業を精力的に推進している点だ。

農協の異端児

農協では農薬や化学肥料を生産資材と呼び、生産資材をメーカーから仕入れ農家に販売することは、重要な収益源となっている。農林水産省によれば、農家が購入する農薬の約6割は農協から。生産資材の取扱量を減らすことは、農協の利益に直に響くだけに、どの農協も慎重にならざるを得ない。

にもかかわらず、JA東とくしまは10年ほど前から、農薬や化学肥料を極力使わないコメ作りを果敢に推し進めてきた。その中心人物が、現在JA東とくしま坂野支所参与を務め、仲間から「農協の異端児」とも呼ばれる西田聖さん(60)だ。

JA東とくしまの西田聖さん(筆者撮影)

自身コメ農家の西田さんは、ある時、若いころには水田を埋め尽くすほどいた白鷺(しらさぎ)の姿が、いつの間にかほとんど見られなくなったことに気付いた。

野鳥が消えたということは、タニシなど餌となる水田の生物が減っていることを意味する。当時は農作業の省力化や作物の収量増を目的に、農薬が当たり前に使われた時代。「自然環境の異変は農薬が原因に違いない」。西田さんはそう直感したという。

その間、コメ農家の経営は、外国産米への市場開放や消費者のコメ離れなどで、急速に悪化。「このままではコメ農家が立ち行かなくなる」と危機感を抱いた西田さんの頭に浮かんだのが、失われた自然環境の回復とコメの高付加価値化を同時に実現できる、無農薬・無化学肥料によるコメ作りだった。今で言うところの「持続可能な農業」だ。

西田さんはまず、農薬や化学肥料を使わずに作物を育てる有機農業の理論を勉強し、自ら有機に近いコメ作りを実践。理論を実証できたところで、農協内に「特別栽培米部会」を立ち上げ、仲間のコメ農家に参加を呼び掛けた。

無農薬化を進めると決めた際に、「真っ先に排除した」(西田さん)農薬が、ネオニコ系殺虫剤だった。当時、ネオニコ系農薬が原因と疑われる農業の被害が相次いで報告され始めていたのが、理由だった。

海外は脱ネオニコの流れ

ネオニコ系農薬は1990年代から普及し始めた比較的新しいタイプの殺虫剤で、現在、世界で使用されている殺虫剤の主力を占める。しかし、植物の受粉に不可欠なミツバチの大量失踪や大量死、様々な野生生物の減少の原因と疑われているほか、世界的に増えている子供の発達障害との関連性を指摘する専門家もいる。そのため、ネオニコ系農薬の使用中止を求める声が世界的に高まっている。

脱ネオニコの動きも広がっている。欧州連合(EU)は4月、ネオニコ系農薬のうちクロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムの主要3種類の使用をほぼ全面的に禁止することを決定。米国やカナダ、ブラジル、韓国、台湾なども、使用禁止や規制強化に踏み切っている。

一方、もともと農薬使用量の多い日本では、ネオニコ系農薬も他の農薬と同様に、全国の田畑で普通に使用されているのが現状だ。減農薬をうたった特別栽培米でも、ネオニコ系農薬を使っているものが少なくない。

西田さんが脱農薬・脱化学肥料に向けた取り組みを始めた時は、農協内に慎重な声も多かった。農薬や化学肥料の使用を減らせば、その分、生産資材の売り上げが減るからだ。農家にとっても収量が減る心配があった。

しかし、実際にやってみると、殺虫剤の使用を止めても大きな問題は起きず、化学肥料を減らす代わりに鶏フンやミミズのフンで作った有機肥料を増やしたら、稲が丈夫になり、むしろ収量も増加。食味も明らかに向上した。

当初は様子見だった農家も、成功例を見て次々と参加を決め、数人でスタートした特別栽培米部会は、現在、約150人に膨らんでいる。また、JA東とくしまが扱う有機肥料は、評判が他地域の農家の耳にも入り、化学肥料の売り上げの減少分を補ってお釣りがくるほど売り上げが伸びているという。

西田さんは「まずは参加農家を増やすことが先決と考え、コメ作りで最も重労働の除草作業はまだ除草剤に頼っているが、有機肥料を増やしたら土壌が改善し、雑草が生えにくくなった。このまま続ければ、数年後にはおそらく除草剤も要らなくなる」と完全無農薬に自信を見せる。実際に、村上さんのように一足先に完全無農薬を達成した農家もいる。

ミツバチを守るコメ

コープ自然派の「ミツバチを守る産直米」(筆者撮影)

JA東とくしまの脱ネオニコの取り組みが成功しているのは、地域の生協やNPOの協力も大きい。

関西と四国で事業を展開する生活協同組合連合会コープ自然派事業連合(コープ自然派)は、ネオニコ系農薬が問題視され始めた約10年前から、ネオニコ系農薬を使わない徳島のコメを扱い始めた。「ミツバチを守る産直米」「ツルをよぶお米」などの名前で販売している。

ネオニコ系農薬を使わずに作るコメは、カメムシがかじった跡が黒く残る「斑点米」ができやすい。斑点米は安全性や食味に問題はないものの、見栄えが悪いため取引価格が安くなる。また、気温が上がると、保管中のコメにコクゾウムシがわくリスクもある。コープ自然派の子会社でコメ事業を担うコープ有機の佐伯昌昭専務は、「ネオニコ系農薬を使ったコメに虫がわかないのは、収穫後もコメに農薬の成分が残留しているから」と説明する。

斑点米や保管中のリスクをなくすため、コープ自然派は3年前、コメを低温で通年保管できる倉庫を徳島市内に建てると同時に、斑点米を自動的に取り除くことができる光学式の選別機を購入した。

特別栽培米や無農薬・無化学肥料のコメは、農家からの買取価格が高いため小売価格も高くなりがちだ。だが、農家を買い叩いたら、脱農薬・脱化学肥料の動きは広がらない。そこでコープ自然派は、あいだに流通業者を入れずに直接、組合員に販売することで、販売価格をスーパーで売られているコメ並みかそれ以下に抑えた。「安全でおいしく安いコメ」が消費者ニーズに合致してか、コープ自然派の会員数は毎年約1割のペースで伸びているという。

有機こそが日本の農業の未来

JA東とくしまのある地域では2012年以降、毎年、有機農業の関係者や消費者らが交流する「オーガニック・エコフェスタ」を開いている。

年々規模が拡大し、現在は徳島市内で開催。実行委員会には、JA東とくしま、コープ自然派、NPO法人とくしま有機農業サポートセンターなどが名を連ね、JA東とくしまの荒井義之組合長が実行委員会会長を務める。農薬や化学肥料を否定する有機農業のイベントのトップに、農薬や化学肥料を売る農協の組合長が就くのは異例だ。

その荒井会長は、今年のオーガニック・エコフェスタの冊子の中で、JA東とくしまの取り組みの意義をこう強調している。

「JAの組合長という立場の私がオーガニックの旗を振ることに疑問を抱かれる方もいるかもしれません。しかし我々JAグループの最大の目的は農業者の所得増大、農業生産の拡大、そして地域の活性化であり、私はこれらの実現にはオーガニックの実践が最適と確信いたしております」

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ストローの次はレシート? 米加州が禁止を検討へ(猪瀬聖)

猪瀬聖 | ジャーナリスト
1/9(水) 16:17

(写真:ロイター/アフロ)

ストローの次はレシート? 米カリフォルニア州議会に8日、スーパーなどで買い物をした際に発行される紙のレシートを禁止する法案が提出された。レシートのコーティングに使われる化学物質が人の健康や自然環境に有害というのが理由だ。成立すれば、米社会への影響は必至だ。

法案によると、スーパーやコンビニエンスストアなどの小売店は、客が要求しない限り、従来の紙のレシートは発行できなくなる。代わりに、電子レシートなど紙以外の方法での対応を迫られることになる。

法案を提出した民主党のフィル・ティン下院議員は同日開いた会見で、オンラインショッピングやクレジットカード払いの普及に伴い、すでに多くの小売店が電子レシートを発行しており、紙のレシートを禁止することは難しいことではないと強調した。また、2022年1月の施行を目指すと述べた。

生殖機能への影響を懸念

紙のレシートを禁止する理由としてティン議員が挙げたのが、レシートのコーティングに使われている化学物質ビスフェノールAが、人の健康や自然環境に害を及ぼす可能性だ。同議員は「紙のレシートの大半にはビスフェノールAが含まれている」と述べた。

ビスフェノールAは、食品容器やOA機器、土木・接着剤など様々なプラスチック製品に使われているが、人の生殖機能への影響や発がん性が疑われており、米食品医薬品局(FDA)は、ビスフェノールAを使用した素材をほ乳瓶や乳幼児用の食器に使うことを、2012年に禁止した。

欧州も、フランスが2015年に食品の包装容器へのビスフェノールAの使用を禁止するなど規制強化の方向だ。2017年には、欧州化学品庁(ECHA)がビスフェノールAを、人体への影響が極めて懸念される「高懸念物質」に認定。これにより、企業は製品にビスフェノールAが使用されている場合は、購入者にその旨を通知しなければならなくなった。

また、ティン議員は、「レシートは紙でできているが、ビスフェノールAが入っているためリサイクルできない」と指摘。レシートをつくるために大量の樹木と水が消費されており、紙のレシートを廃止することは自然環境保護のためにも不可欠であると強調した。

カリフォルニア州では1日、米国の州では初めてとなる、レストランで使い捨てのプラスチック製ストローを提供することを禁止する州法が施行されたばかり。ほかにも、全米一厳しいとされる排ガス規制や喫煙規制を導入したり、2015年にはやはり他州に先駆けて使い捨てのプレスチック製レジ袋を禁止したりするなど、先進的な環境規制で知られている。

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売上No1除草剤に発がん疑惑、禁止国増える中、日本は緩和(猪瀬聖)

猪瀬聖 | ジャーナリスト
7/25(木) 7:00

(写真:ロイター/アフロ)

世界で売上No1の除草剤「グリホサート」に発がん性の疑いが強まり、使用禁止や規制強化に踏み切る動きが欧米やアジアで広がっている。しかし、日本は逆に規制を緩和しており、消費者の間で不安が高まっている。

「毒物の追放は、われわれの責務」

7月2日、オーストリア国民議会(下院)が、グリホサートの使用を全面禁止する法案を可決した。施行には欧州連合(EU)の合意が必要だが、施行されれば、EU加盟国ではグリホサートを全面禁止する初めての国となる。

全面禁止を訴えてきた社会民主党のレンディ=ヴァーグナー党首は声明を出し、「(グリホサートの)発がん性を裏付ける科学的証拠は増えており、私たちの身の回りからこの毒物を追放することは、われわれの責務だ」と述べた。

オーストリアは有機農業が非常に盛んで、ロイター通信によると、今回の投票では右派の自由党も賛成に回り、法案の可決を後押しした。

環境問題や食の安全に関心の高い欧州ではオーストリア以外の国でもグリホサートを禁止する動きが相次いでいる。

フランスも使用禁止へ

フランスでは今年1月15日、リヨンの行政裁判所が、同国の食品環境労働衛生安全庁(ANSES)が2017年、グリホサートを有効成分とする除草剤「ラウンドアップ・プロ360」の販売を認めたのは、有害な可能性のある製品の販売を禁止する「予防原則」のルールに反するとして、販売許可を取り消した。同日、フランス当局はラウンドアップを即、販売禁止にした。

フランスでは現在、グリホサートの使用自体は認められている。だが、マクロン大統領は、2021年までに同除草剤の使用を農業分野も含め原則、全面禁止する方針を掲げている。今年2月には、農業関係のイベントで「私は、フランスがグリホサートを使わない世界初のワイン産地になると信じている」と述べ、全面禁止の方針を改めて強調した。

ドイツでは、6月26日、メルケル首相が連邦議会で「グリホサートの使用は、いずれ終わるだろう」と述べ、使用禁止を含めた規制強化に踏み切る可能性を示唆した。ドイツは、グリホサートを開発した米モンサントの親会社であるバイエルのお膝元だが、禁止を求める声は多い。

ベトナムの輸入禁止措置に米国が激怒

グリホサート追放の動きは欧州にとどまらない。
ベトナム農業農村開発省は4月10日、グリホサートの使用を禁止すると発表した。現地の英字紙ベトナムニュースによると、同省は2016年、グリホサートを有効成分とした農薬の新規登録を中止し、以降、同除草剤が人の健康や自然環境に与える影響を精査してきたという。

ベトナム政府は、同時に輸入禁止も発表。米国のパーデュー農務長官は直ちに声明を出し、「(ベトナムの禁輸措置は)世界の農業に壊滅的な打撃を与えるだろう」と怒りをあらわにした。

しかし、その米国も、足元では脱グリホサートの動きが急速に広がっている。先陣を切ったカリフォルニア州では、州政府が2017年、グリホサートを州の「発がん性物質リスト」に加えたのをきっかけに、公園や学校など自治体が所有する場所でのグリホサートの使用を条例で禁止する郡や市が急増。同様の動きは、ニューヨーク州やフロリダ州、シカゴ市のあるイリノイ州など、全米に拡大している。

1万件以上の民事訴訟

また米国では現在、グリホサートを有効成分とする除草剤を使用し続けた結果、がんの一種である非ホジキンリンパ腫を発症したなどとして、モンサントを訴える民事訴訟が1万件以上起こされている。因果関係を認めて同社に数十億円という巨額の賠償金支払いを命じる判決が2018年8月以降、相次いでおり、親会社バイエルの株価が急落する事態となっている。

1974年に発売されたグリホサートは、2015年3月、世界保健機関(WHO)の外郭団体である国際がん研究機関(IARC)が、「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と結論付け、危険度を示す5段階評価で2番目に高い「グループ2A」に分類したことで、安全性をめぐる議論に火がついた。

その後、自然環境や人の健康に与えるリスクを指摘する研究論文が相次いで発表になる一方、欧州食品安全機関(EFSA)は2015年11月、がんや先天異常などを引き起こす可能性を否定。FAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)も2016年5月、「人が食事を通じてグリホサートを摂取しても、それでがんになるとは考えにくい」との見解を示すなど、専門機関の間で評価が分かれているように見える。

モンサントに忖度?

ただ、EFSAの評価については、英高級紙ガーディアンが、EFSAが評価の根拠とした研究論文はモンサントが作成した論文をコピペした疑いがあると、2017年に報じている。EFSAは論文の公開を拒否してきたが、欧州司法裁判所は今年3月、EFSAに対し評価の根拠とした論文を公開するよう命じた。

JMPRについても、見解をまとめた会議で議長を務めたアラン・ブービス氏がかかわる民間研究機関が、2012年にモンサントから50万ドル、さらにモンサントが加盟する業界団体から50万ドル強の資金援助を受けたことが米市民団体の調べで明らかになり、見解はモンサントの意向を反映したものではないかとの疑惑が出ている。

ガーディアン紙によると、同じ民間研究機関の出身でEFSAの理事だった人物に利益相反行為があったとして、欧州議会がEFSAに対する予算の執行を半年間中止するという事件も2012年に実際に起きている。

一方、米国では、環境保護庁(EPA)が「発がん性の証拠はない」と繰り返し述べてきた。しかし、モンサントに対する一連の訴訟の中で、農薬の規制にかかわるEPA職員とモンサントの社員の蜜月ぶりが暴露され、EPAの見解がモンサントの影響を受けた可能性が浮上した。

こうした中、保健福祉省の有害物質・疾病登録局(ATSDR)が4月8日、グリホサートに関する報告書の草案を公表し、その中で「グリホサートと非ホジキンリンパ腫との因果関係の可能性は否定できない」と述べて注目を集めている。従来の政府の立場と180度異なるためだ。

残留基準値を大幅に緩和

こうした世界の潮流に対し、日本政府の動きはそれに逆行しているかのように映る。

食品などのリスク評価をする内閣府食品安全委員会は、グリホサートに関し「発がん性、繁殖能に対する影響、催奇形性及び遺伝毒性は認められなかった」などとする評価書を2016年7月にまとめた。

この間、農林水産省はグリホサートを有効成分とする農薬の新商品を淡々と登録。厚生労働省は2017年12月、一部の農産物の残留基準値を引き上げた。特に目立つのがパンやパスタ、シリアルなどの原料となる穀類で、小麦は5.0ppmから6倍の30ppm、ライ麦が0.2ppmから150倍の30ppm、とうもろこしが1.0ppmから5倍の5ppmへと、大幅に引き上げられた。そばも0.2ppmから30ppmへと150倍に緩和された。

薬害エイズの二の舞に?

海外では危ないと言われている農薬の規制緩和に不安を募らせる消費者は多く、市民団体が独自にグリホサートの残留値を調べる取り組みも始まっている。

3月18日の参議院予算委員会では、質問に立った立憲民主党の川田龍平議員がグリホサートなど農薬の問題を取り上げ、「薬や食品など国民の命にかかわる分野に関しては、薬害エイズの時のように、何かあってから対処するのでは取り返しがつかない」と政府の姿勢を厳しく批判。そして、「EUをはじめ多くの国々がとっている予防原則にのっとって速やかに対策をとるべきだ」と政府に規制強化を迫った。

薬害エイズの被害者だけに、説得力のある言葉だ。

情報源: 売上No1除草剤に発がん疑惑、禁止国増える中、日本は緩和(猪瀬聖) – 個人 – Yahoo!ニュース

トランプ政権、遺伝子組み換え食品の規制緩和が鮮明に―日本も追随か?(猪瀬聖)

猪瀬聖 | ジャーナリスト
8/12(月) 7:00

遺伝子組み換え食品の規制緩和を推進する大統領令に署名したトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

米トランプ政権が、消費者の不安が根強い遺伝子組み換え食品の規制を緩和し、市場拡大を後押しする姿勢を鮮明にしている。トランプ大統領は6月、大統領令を発して政府機関に早急な規制緩和を命令。それを受けた形で、環境保護庁や農務省などが、早くも具体的な行動をとり始めている。トランプ政権は遺伝子組み換え食品を海外に売り込むため、日本にも同様の規制緩和を働きかけるとみられ、日本の食品安全行政への影響が注目される。

警告表示の撤去を指示

環境保護庁(EPA)は8月8日、声明を出し、除草剤グリホサートを有効成分とする化学製品に「発がん性リスクがある」との警告表示を義務付けたカリフォルニア州政府の措置を、「もはや承認しない」と述べた。同時に、すでに製品に警告表示を付けて販売している企業に対し、それに代わる新たな表示案を90日以内に提出し、警告表示を削除するよう指示した。

グリホサートは日本を含む世界各国で使用されている人気の除草剤だが、発がん性の疑いが浮上。欧州ではオーストリア議会が7月、全面禁止を決定し、フランス政府も1月に一部製品の販売禁止に踏み切った。

一方、足元の米国では、発がん性のリスクがあると知らずにグリホサートを長年使用した結果がんを発症したとして、開発元のモンサントに損害賠償を求める訴訟が1万件以上起こされており、昨年来、原告の訴えを認めてモンサントに億単位の賠償金支払いを命じる判決が相次いでいる。朝食用のシリアルやワイン、水道水などからグリホサートが検出されたという報道も、後を絶たない。

EPAがグリホサートの警告表示の強制撤去に踏み切ったのは、これ以上、反グリホサート世論を放置すれば、遺伝子組み換え作物の生産に影響しかねないと懸念したためとみられる。グリホサートは1974年に発売されたが、後に、モンサントがグリホサートに耐性を持つ遺伝子組み換え大豆やトウモロコシなどを開発して以降は、その作物の種とグリホサートをセットで販売することで、両者の市場が急成長してきた経緯がある。

大統領令を発令

EPAがこのタイミングで警告表示に強い態度を示したのは、トランプ大統領の大統領令を受けた可能性が濃厚だ。というのも、カリフォルニア州が警告表示の義務付けを決めたのは、2年も前の2017年。この間、EPAはグリホサートの安全性は繰り返し主張してきたものの、カリフォルニア州の決定に対しては具体的な行動はとってこなかった。

この大統領令はトランプ大統領が6月11日に署名。内容は、ゲノム編集食品を含む遺伝子組み換え食品の開発を推進するため、関連規制を早急に見直すよう関係省庁のトップに命令するというもので、具体的には、農務長官、EPA長官、食品医薬品局(FDA)長官の3者に対し、180日以内に過剰な規制を洗い出して対処するよう指示した。

大統領令から1カ月余りの7月17日、農務省のアイバック次官は、下院の小委員会で、「ゲノム編集技術を含む新たなテクノロジーを、有機農業促進のために活用できるかどうか議論を始める機会だと思う」と証言し、ゲノム編集食品を有機食品として認める可能性に言及した。米メディアは、アイバック次官の発言と大統領令を関連づける報道をしている。

現在、ゲノム編集食品を含む遺伝子組み換え食品を、有機食品と認めている国はない。米国では有機食品市場が急拡大しているが、理由の1つは、消費者が遺伝子組み換え食品の安全性に不安を抱いているためだ。アイバック次官の発言は、消費者団体の猛反発を招いている。

遺伝子組み換え鮭を承認

この他にも、今年に入り米国では、政府が遺伝子組み換え食品の規制緩和を進めていることを示すニュースが相次いでいる。

大豆を原料とした人工肉の生産で急成長しているベンチャー企業のインポッシブル・フーズは7月31日、FDAが、人工肉に本物の牛肉の風味と色合いを付けるための物質「大豆レグヘモグロビン」を、着色料として認可したと発表した。

この大豆レグヘモグロビンは遺伝子組み換え酵母を使って培養したもので、インポッシブル・フーズの申請を受け、FDAが安全性の審査をしていた。同社は現在、製品をハンバーガー・チェーンなど外食企業に卸しているが、FDAの認可によって、今後は小売りも可能になる。

インポッシブル・フーズの人工肉は原料大豆も遺伝子組み換え品種を使っているが、同社がその人工肉を自然食のイメージで売ろうとしていることから、消費者団体や環境団体が反発している。

FDAはまた、今年初め、バイオベンチャーのアクアバウンティ・テクノロジーが開発した遺伝子組み換え鮭の卵の輸入を承認した。この鮭は、人気種のアトランティックサーモンに成長スピードの速いキングサーモンの成長ホルモン遺伝子を組み込んだもので、通常の約半分の18カ月で成魚になる。カナダで養殖していたが、これまでFDAは輸入を認めていなかった。

AP通信によると、卵の輸入は5月から始まり、すでにインディアナ州内の工場で養殖を開始。来年中には、レストランか大学のカフェテリアで提供される予定という。AP通信は記事の中で大統領令に触れている。

消費者団体や環境団体は、この遺伝子組み換え鮭を「フランケン・フィッシュ」と呼び、生産や販売に反対してきた。

日本も標的に

トランプ政権の遺伝子組み換え食品に関する明確な規制緩和方針は、米農産物の大口輸入国である日本の食品安全行政にも影響を与えるのは確実だ。兆候はすでに出ている。

6月11日の大統領令で、トランプ大統領は農務長官と外交トップの国務長官に対し、120日以内に、米通商代表部(USTR)などと協力しながら輸出推進のための戦略を確立するよう指示している。同時に、USTRに対し、120日以内に、農務長官や国務長官と協力しながら貿易相手国の不公正な貿易障壁を取り除くための戦略を立てるよう命じた。

ほぼ同じ時期、日本政府は、消費者の懸念が強いゲノム編集食品の安全性審査や表示義務の見送りを決めた。米国ではすでに、ゲノム編集技術を使って開発された大豆を原料とした食用油が流通しており、日本政府の決定は、その食用油の輸入の可能性を念頭に置いたものとみられる。

また、農林水産省は7月17日、米国内で新種の遺伝子組み換え小麦が発見された問題で、米国からの小麦の輸入を停止しないと発表した。

米政府は、パンやパスタなど国民の主食となる小麦に関しては、遺伝子組み換え品種の商業生産を認めていない。しかし、過去にたびたび、試験栽培していた遺伝子組み換え小麦が何らかの理由で一般の圃場から見つかることがあり、そのたびに日本政府は、一時輸入停止措置をとってきた。

ところが、今年6月にワシントン州内で発見され、7月12日に米農務省が新種の遺伝子組み換え小麦であると発表した小麦に関しては、輸入停止措置を見送った。このニュースを報じた日本農業新聞は、日本政府の措置を「異例」と表現し、「米国産小麦の輸入停止を回避したのは、水面下で進む日米貿易協定交渉への悪影響を農水省が懸念して忖度(そんたく)した可能性がありそうだ」と解説した。

情報源: トランプ政権、遺伝子組み換え食品の規制緩和が鮮明に―日本も追随か?(猪瀬聖) – 個人 – Yahoo!ニュース