「トランプ大統領」シリコンバレーの反応まとめ。付録:ピーター・ティールの支持理由|ギズモード・ジャパン

2016.11.14 07:45
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「トランプ大統領」シリコンバレーの反応まとめ。付録:ピーター・ティールの支持理由

トランプ大統領。

マスコミもウォール街も政界もまだ衝撃から抜け切れていませんが、一番衝撃を受けているのはシリコンバレーでしょう。インテルCEOが自邸で予定していた遊説も非難轟々で中止になったり、ピーター・ティール以外は誰もトランプ支持なんて口が割けても言えない雰囲気でしたので、まさかこんなことになるとは…。

まずはウェブサミットで当確を知ったデイブ・マクルーア(ベンチャーキャピタル500Startups CEO)の狂いっぷりからご覧ください…。

Adrian Weckler ✔ @adrianweckler
Wow, @davemcclure has a MELTDOWN on #WebSummit stage over Donald Trump election
10:16 PM – 9 Nov 2016
1,120 1,120 Retweets 1,571 1,571 likes
「これが怒らずにいられようか。自分たちはコミュニケーションのプラットフォームを提供している。このファッ○ング米国の残りのやつらにだ。それが大本営発表みたいなプロパガンダに使われた。恐怖、デマの拡散。で、あんなトランプみたいなアス○ールが大統領になるのを許してしまった。われわれ起業家はこのファッ○ング世界の一員として二度とこんなことが起こらないようにする義務がある。われわれは断固戦う。さあ、みんなもスタンド・ザ・ファッ○・アップしようぜ! スタンド・ザ・ファッ○・アップ!」
いやあ、まるでトランプが乗り移ったかのようなFワード。

まあ、トランプも「ヒラリー優勢の世論調査はデマ」、「マスコミは大本営発表」と盛んに喧伝していましたが(世論調査に関してはまんざら嘘じゃなかったのかも)、じゃあ、トランプ支持者が事実を正確に伝えていたのかって言うと決してそんなことはなく、やれ「ヒラリーは選対部長と愛人関係」だの、「モルディブに2億ドル(213億円)の豪邸を購入した」だの、「1億3700万ドル(146億円)相当の不法銃器を輸入した」だの、こっちはこっちでデマのレベルが一段階突き抜けていましたからねぇ…。

ReCodeが取材した業界人のみなさまはこんな風に語っていますよ。

「あれだけの人が支持しているんだから、こういうこともあるだろうとは思ったが、まさかという気分だ。世論調査も選挙予想でもクリントン圧勝だったからね」(Product Hunt創業者のRyan Hooverさん)
「この衝撃はとても言葉にはできない。一滴も飲んでいないのに、二日酔いみたいだ」(GreylockパートナーのJosh Elmanさん)
「自分たちが築き上げた世界に篭って、外の世界が実は見えていなかった。現実を突き付けられた思いがする。全員が刮目すべきデータだ」(NYから移動中、機長のアナウンスで当確を知ったSprinklr CEOのRagy Thomasさん)
「テック、メディア、金融の巨人はみなトランプ阻止に動いた。それでもトランプは勝った。『おまえら何もわかってない!』と叫ぶ上層部に、『わかってないのはおまえらの方だ』と国民が言い返した選挙。上層部は、これだけ多くの国民が苦しんでいる現実を甘く見ていた」(Kik CEOのTed Livingstonさん。カナダ籍)
「シンギュラリティ、善と悪、人間とマシンの戦い―そういうものの話はするんですが、これは完全に想定外の革命。人間とマシンの戦いより、人間とマシンをつくる人間の戦いのことを考えないと。そうリアルに感じます」(NYのDecoded Fashion創設者、Liz Bacelarさん。ポルトガルで見守った)
うん。最近ハリウッド映画ではよく、テクノクラートと貧しい民衆が別々の世界に住んでいる未来が描かれていますけど、もう未来ではなくなってしまっていますね。ビッグデータもアルゴリズムもなんの用にも立たない、サイレントマジョリティによる民衆蜂起。シリコンバレーはこの現実をこれからゆっくりと咀嚼していかなければなりません。

Apple

さて、次に企業ですが、シリコンバレーでトランプに敵視されている企業といえば筆頭はAppleです。ティム・クックCEOはゲイで、マイノリティの権利には人一倍敏感。宗教の自由を守る立場で新聞に論説を寄せるなどの活動をしています。トランプに睨まれないわけはなく、イスラム過激派夫婦による銃乱射の捜査協力でFBIと揉めた際にはこんなわけのわからないツイートをぶちかまされています。

Donald J. Trump ✔ @realDonaldTrump
Boycott all Apple products until such time as Apple gives cellphone info to authorities regarding radical Islamic terrorist couple from Cal
6:38 AM – 20 Feb 2016
4,314 4,314 Retweets 10,659 10,659 likes
「Appleが携帯のデータを捜査当局に引き渡すまで、Apple製品は全部ボイコットしようぜ」(トランプ)

価値観が真逆のトランプが大統領ということで、「Appleこれからどうなるんだ?」と少なからず動揺が広がっていますが、クックCEOは全社員にメールを流し、異質なものを排除するのではなく互いにスクラムを組むことでしかこの難局は乗り切れない、と力強く励ましました。

Amazon

「トランプを宇宙に飛ばす」と張り切っていたジェフ・ベゾスも、「Amazonを独禁法違反で訴えてやる」と張り切っているトランプが大統領になったことで、クック以上に衝撃を受けていることは間違いないでしょう。反トランプの論陣を張ったのも何を隠そう、ベゾスのワシントン・ポスト。「アマゾンこれからどうなっちゃうんだ?」と、先行き不透明感を増しています。

Donald J. Trump ✔ @realDonaldTrump
If @amazon ever had to pay fair taxes, its stock would crash and it would crumble like a paper bag. The @washingtonpost scam is saving it!
12:22 AM – 8 Dec 2015
1,728 1,728 Retweets 3,145 3,145 likes
「Amazonなんて税金まともに払ったら株価大暴落で紙くず同然だ。ワシントンポストの赤字で救われてるようだがな!」(トランプ)

トランプ氏はこんな嫌味を垂れ流し、AmazonやAppleやGoogleが税金払わないことに物申す健全イメージをつくってきました。しかし実際には自らも借金王でありまして、1995年に1000億円近い負債を出し、それを毎年繰り越し申告して節税する前代未聞のセコい手を使ってきた節税王。税金は18年間ビタ一文払っていません。

トランプ大統領は、確定申告開示を拒む史上初の大統領となります。ご~ん。

Google

スンダー・ピチャイCEOは移民です。昨年の秋には自らのライフストーリーをウェブに公開し、トランプのムスリム入国拒否の公約に異を唱えました。創業者セルゲイ・ブリンもロシア移民。うちの近所から出るグーグルバスもみんな移民です。いやほんと、あのがんばってる人たちはこれからどうなっちゃうだろう…。

Facebook

マーク・ザッカーバーグは移民ビザ発行拡大の新報制定を目指す最大のロビー団体「FWD.us」の出資者です。今年4月のF8カンファレンスでは「壁ではなく橋を築かなければならない」とデベロッパーを前に語り、トランプのメキシコの壁を批判しました。

会社としてはトランプ阻止なのですが、選挙後にはデマ拡散マシンとして使われたとのことで、「トランプを大統領にした主犯はFacebookだ」と少なからず批判の声も出ました。それについては反論しています。まあ、共和党寄りのニュースを人力で検閲して問題になったぐらいだから、会社としてはあれが限界だと思いますね…。

おまけ: ピーター・ティール

video: Horus Finley via YouTube
こんな一枚岩の結束の中、トランプに1億円以上の政治献金をし、ひとり公然と応援していたのがPayPalマフィアのドン、ピーター・ティールです。Gizmodoの親会社ゴーカーを破産に追い込んだ黒幕の彼ですが、今回も彼のひとり勝ち。まったくクソ勝負強いです。シリコンバレーの企業家150余名がトランプ阻止の署名をするのを尻目に最後まで支持を貫くなんて、並みの神経でできることではありません。

ドイツ系ということぐらいしかトランプとは共通点も思いつかないのですが、ここまで支持した理由とは? 10月31日記者クラブで行なったスピーチの動画が参考になるかなと思うので、前半を訳しておきますね。

「誰もがこの選挙はクレイジーだと思っている。まるでSNL(深夜のお笑い番組)のリハーサルのようなことが目の前で起こっている。アウトサイダーが二大政党の大統領候補になるなんて誰が思っただろう。金とマスコミで選挙を思いのままに動かしてきた富裕層はまるで悪夢を見る気分だろう。さっさと11月9日(投票日)が過ぎて元に戻ればいいと思っている。だが無視したくてもできない現実がここにある。それは、どれだけこの選挙がクレイジーに見えても、この国の今置かれている状況に比べたらまだましだということだ。

それはちょっと見回せばわかることだ。65歳以上の64%は今の貯金で1年もたない。医療保険は海外の10倍だ。払える人はいいが、とても払えたものではない。若者は医療費の心配こそないが、学費がどんどん釣り上がっていて、今や学生の借金は総額1.3兆ドル(138兆円)。一生返済できない借金を学生に背負わせている。しかも自己破産しても逃れられない。こんな国はアメリカだけだ。

親の世代より貧しくなるのはミレニアム世代が最初だ。中流世帯の年収は17年前より低い。臨時出費が400ドルも用立てできない国民が実に半数近くにのぼる。これだけ国民が困窮しているのに国は遠い海外の軍事費に、何兆ドルもの血税を湯水のように浪費している。イラク、シリア、リビア、イエメン、ソマリア。

逼迫している国民がすべてというわけではない。都市部、僕が住むシリコンバレーなんかでは暮らしは絶好調だ。しかし国民の圧倒的大多数はベルトウェイ(首都DC)やサンフランシスコ湾岸に住むことも、その豊かさに触れることもなく生きている。

トランプの言動すべてに同意するわけではない。それは他の支持者も同じだろう。女性蔑視発言に至っては支持する人はゼロだ。明らかに暴言と言える。僕らは別にそういうジャッジ(判断力)不足が良くて投票するわけではない。僕らは現政権がダメだとジャッジした。だからトランプに票を投じるのだ。

トランプとオバマの選挙…確かに。オバマに二度負かされたヒラリーは悲劇と呼ぶほかありません。

関連記事: メキシコ外相「壁の金は払わん」、プーチンは祝電。トランプショックの夜

image: 当確当夜のエンパイア・ステート・ビル/Twitter(@TylerGildin)
source: Recode, Twitter(@adrianweckler, @realDonaldTrump), The Washington Post, ニューズウィーク日本版, Medium(Sundar Pichai), YouTube(Horus Finley)

(satomi)

情報源: 「トランプ大統領」シリコンバレーの反応まとめ。付録:ピーター・ティールの支持理由|ギズモード・ジャパン

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