(人間発見)リウボウホールディングス会長 糸数剛一さん 沖縄「国際化」 地元百貨店が挑む :日本経済新聞

  ■「冬の時代」とされる地方百貨店だが、増収増益を続けるのが沖縄のデパートリウボウ(那覇市)だ。運営するリウボウホールディングス(HD)の糸数剛一会長(57)は、グループのコンビニの沖縄ファミリーマート出身。傾いた百貨店を、外からの視点で再生した。

 沖縄は国内で有名な観光地です。国際観光都市になるには、何回訪れても「また行きたい」と思われる魅力が要る。そのためには人をひきつける商業施設が不可欠です。

 百貨店は、昔は一番わくわくする「お出かけ」の場所でした。今は総合スーパーと似ていたり、専門店のほうが欲しいものがあったりします。

 経営が厳しいのは、顧客の要望に応えきれなくなったため。決算は赤字で、社員も苦境を自覚していました。ただ百貨店は全国で厳しく、2014年に閉店した沖縄三越も苦しいとされつつも営業していました。このため「うちの会社はなくならない」と考えていたようです。グループオーナーは立て直しに百貨店を外からみる視点が必要だと考えたのでしょう。沖縄ファミマにいた私は、請われて13年にHDの社長になりました。

  ■まずは地元の客に向け、売り場を改装した。

 売り上げが低迷する中、改装資金を工面しなければなりません。社内で「そんなリスクをとれるのか」と消極的な見方もありました。でも私には沖縄ファミマでの成功体験がありました。売り上げ低迷により販売商品を絞っていた店で、あえて仕入れを増やし雰囲気を変えたことが再生のスタートとなったのです。魅力ある売り場を作ればうまくいくと確信していました。

 最終赤字を抱え銀行に融資を申し込む時は「グループには財務状況が極めて良い沖縄ファミマもある。心配ない」と、たんかを切りました。

 来客数を増やすため、まず強みだった化粧品や婦人アクセサリー、婦人服の売り場を一新。世界で人気を集める米ブランドを、沖縄で初めて導入しました。次は食品売り場を変革。店全体に波及効果が及ぶとみました。狙い通り来店客の評判は上々で「東京に行かなくても欲しいものを買いやすくなった」と言われ、一気に黒字転換できました。

  ■改革は第1ステージ。次は世界的な国際観光都市に向けて踏み出す。

 沖縄の訪日外国人客はこの数年で急増。アジアに一番近いのは有利ですが、日本の商品だけでは外国人客の需要を取り込めないし、沖縄も発展しません。台湾などアジアの大都市の百貨店の品ぞろえは東京並みかそれ以上で、世界の優れた商品を買えます。こうした店との競争です。

 国際観光都市を目指し、第2ステージでは東京にない商品やイベントを仕掛けます。バイヤー(仕入れ担当者)を育て、海外ブランドや専門家とのネットワークをつくります。イタリアにバイヤーを派遣し、日本で知られていないブランドや商品を発掘。セレクトショップ的な「コレッツォーニ」を開きました。「日本でもアジアでもリウボウにしかない」が目標です。

 リウボウは昔は「琉球貿易商事」。米軍機で海外に仕入れに行き「舶来品のリウボウ」といわれ、沖縄で一番きらきらした店でした。そのときに戻りたいですね。

  ■目抜き通りである「国際通り」などの再開発にも取り組む。

 国際通りにあった沖縄三越跡地を14年に買い取り、観光商業施設「ハピナハ」を開業しました。現店舗は来年6月までで、建て替える予定です。将来は地下駐車場から3階程度までの商業施設をリウボウが管理し、その上にハイクラスのホテルをつくりたい。

 沖縄で「ぜひ訪れたい」と言われるエンターテインメント施設は、那覇空港から車で約2時間の沖縄美(ちゅ)ら海水族館(本部町)だけでしょう。国際通りは那覇市の中心。食事も買い物も楽しめる「ぜひ訪れたい」場所にすべく、行政も巻き込んでアイデアを練る必要があります。

 沖縄都市モノレール古島駅近くにも商業施設を開発予定。スーパー「リウボウストア」のほか、外国人客にも魅力あるテナントを集めるつもりです。沖縄は、沖縄料理や琉球舞踊だけではダメ。ほかの料理や演目が充実してこそ沖縄の良さが認められるはずです。

(聞き手は牛山知也)

情報源: (人間発見)リウボウホールディングス会長 糸数剛一さん 沖縄「国際化」 地元百貨店が挑む :日本経済新聞

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