サンゴがプラスチック片を餌と間違えて飲み込んでいる動画が紹介されています。
サンゴ礁に住むサンゴもまた、海洋プラスチック汚染の被害者です。サンゴは、小さなプラスチックの破片であるマイクロプラスチックを、本物の餌と間違えて食べていることがオーストラリアの研究から分かりました(Hall et al. 2015)。
浅いサンゴ礁に住むサンゴは、自分の体に植物を住まわせて、その植物(共生藻といいます)から栄養をもらって生活しています。
しかし、植物からもらえる栄養は炭水化物ばかりなので、ビタミンやタンパク質を補うためにサンゴはプランクトンを捕まえて食べています(Ferrier-Pagès et al. 2003)。
サンゴは、小さなバクテリアから少し大きな動物プランクトンまで、いろいろ食べます。
大きさで言うと0.2マイクロから1,000マイクロ㍍(= 1mm)という、ものすごく幅広い多様なサイズのプランクトンを食べることができます。
そしてプランクトンから摂取する栄養は、1日に必要な栄養の半分ほどを満たしています(Houlbreque & Ferrier-Pagès 2009)。
サンゴのポリプ。ポリプから伸びる触手を使ってプランクトンを補食する。Photo: NOAA Photo Library/Flickr (CC BY 2.0)多くのサンゴは、サイズが10マイクロから100マイクロ程度のプランクトンを好んで食べているようですが(Anthony & Fabricius 2000, Mills et al. 2004)、このサイズは、海を漂うマイクロプラスチックのサイズでもあるわけです。
すでに二枚貝や魚、クジラのような大型の海洋動物まで、プラスチックの誤食によって食道が塞がれ、あるいは毒性物質に汚染されていることが知られています(Tanaka & Takada 2016, Fossi et al. 2016, Jacobsen et al. 2010)。
同様のことがサンゴでも起きている可能性があります。
本物の餌と同じ速さでプラスチックを食べる
オーストラリアの研究チームは、サンゴがマイクロプラスチックを食べるかを知るために、グレートバリアリーフで採集したサンゴをプラスチックを混ぜた海水の中で飼育しました(Hall et al. 2015)。大きさが10マイクロ㍍から2 mmのポリプロピレンの破片を、実験的に1リットルに0.4gになるように加えて、48時間待ち、その後でサンゴを解剖して消化管の中身を調べたのです。
すると予想通り、実験に使ったマイクロプラスチックが胃の中から見つかりました(Hall et al. 2015)。
さらなる実験では、サンゴはプラスチックを動物プランクトンを食べるときと同じスピードで食べていることがわかりました(Hall et al. 2015)。
サンゴは、来る物は拒まず、口に入る物ならなんでも食べてしまう性質があるようで、プラスチックを餌の動物プランクトンと間違えて食べてしまったのでしょうか。
さらに、サンゴの食べたプラスチックは、胃の組織の中に深く潜り込んでいたのです。つまりサンゴは、飲み込んだプラスチックの破片を吐き出せなかったわけです(Hall et al. 2015)。
サンゴは、いまのところ、プラスチックの摂食がサンゴの健康に影響を与えているかは研究例がなく分かっていません。