2020年2月19日 18時59分
広島や九州北部など西日本を中心におなじみの「かき小屋」。最近は全国的に店が増えていますが、熊本県では、地元ならではの食材を生かした一風変わったソースで味わう食べ方が静かなブームとなっています。2時間待ちの日もあるという人気メニューを開発したあるかき小屋の挑戦を追いました。(熊本放送局記者 本庄真衣)
人気のヒミツは?!
冬の味覚「かき」。フライにしたり、蒸したり、はたまた生でそのまま食べたりとさまざまな味わい方があります。この時期、西日本を中心に、とれたてのかきをその場で楽しめるかき小屋がにぎわいます。
熊本県の南部、人口4000人余りの津奈木町。ここでも、廃校となった小学校を活用したかき小屋がこの時期、オープンします。海や山に囲まれた絶景を楽しみながら、地元でとれた豊かな海の幸を堪能できます。
このかき小屋のもう1つの特徴が、さまざまな食べ方です。
しょうゆやポン酢につける一般的なものだけでなく、ガーリックバターやゆずごしょうといった味付けもあります。
特に力を入れているのが、ここでしか味わえない「バジルソース」です。
ここでしか出せない味は?
開発したのは、地元の漁協の宮山徹さんです。
福岡や佐賀、長崎など周辺にもたくさんのかき小屋がある九州。6年前、かき小屋をオープンするにあたって、差別化を図るために、ほかにはない味を用意することが必要だと考えました。
宮山徹さん
「近くにもたくさんかき小屋があるので、ひときわ目立つものがないと、お客さんに足を運んでもらえないんじゃないかと思っていました」ここでしか出せない味はないか。模索を続ける中で、目を付けたのが、バジルソースでした。イタリア料理などで魚介類などと一緒に使われることも多く、相性は悪くないと思ったからです。
こうして、2年前からバジルソースで味付けをしたかきの提供を始めると、意外性も受けたのか、またたくまに評判になり、持ち帰りを希望する客も相次ぎました。
かきの販売拡大にもつながるチャンスとみた宮山さんは、本格的にバジルソースの商品化に乗り出すことにしました。
ソースの「こだわり」
幸い、隣の水俣市には、水耕栽培の設備でバジルを育てている施設があり、季節に関係なく年中、手に入れることができます。しかし、開発は簡単には進みませんでした。おいしさの決め手となるコクを出すのが難しかったからです。調味料を生産している県内の工場に相談すると、隠し味として地元のみそを使ってはどうかと提案されました。
試行錯誤を重ね、半年かけてようやく納得いくソースが完成しました。地元のかきのおいしさを知ってもらうため、中にはペースト状にしたかきも入れました。
早速バジルの生産者に味わってもらうと…
北野剛志さん
「おいしかったです。自分のバジルがこうなるのかと思って、めちゃくちゃうれしかった。香りだちと苦み雑味少ないところで貢献できたかなと」新たな名物に!
今シーズンのかき小屋のオープンに合わせて、バジルソースの販売を始めると、土産物として買い求める人が相次ぎ、想定以上の売れ行きだということです。また、かきの味わい方の1つとしてバジルソースも定着してきています。これを目当てに遠方から訪れる人もいて、今シーズンは長くて2時間待ちの日もあるほどの人気になっています。
今シーズン1か月余り残っているにもかかわらず、売り上げはすでに昨シーズンを上回ったということです。
宮山さん
「津奈木に来たときの土産物として、もっといろんな人が知ってくれたらと思いますし、町に足を運んでくれるきっかけになればと思います」
商品化したバジルソースは、すでに福岡のホテルや東京のアンテナショップなどにも販路を広げつつあります。津奈木町もご多分にもれず、高齢化や人口減少といった問題に直面していますが、最近ではこのかき小屋を1つの目玉として、観光客の誘致にも力を入れ、少しずつ明るい雰囲気も出てきているようです。
地元のこだわりの味が詰まったバジルソースが今後どう広がっていくのか、応援しながら見守っていこうと思います。