「ニュースレターは、D2C文脈に沿った新しいメディア」:Quartz Japan編集長 年吉聡太氏 | DIGIDAY[日本版]

2020/4/30

ここ数年、アメリカのパブリッシャーのあいだで、「ニュースレター」が注目を集めている。
日本では「メールマガジン」と混同されがちだが、ニュースレターはデザイン性が高く、それだけで読書体験が完結する「よりリッチな読み物」だ。

アメリカで2012年にスタートしたビジネスメディアのQuartz(クオーツ)は、このニュースレターにいち早く着目し、支持を集めてきた。
2018年7月に日本のNewsPicks(ニューズピックス)の親会社である(株)ユーザベース(Uzabase)の傘下に加わると、広告から有料課金へマネタイズの軸をピボット。
2019年11月には、日本でもニュースレターを主体とした有料課金サービス、Quartz Japanをスタートしている。
なお。米Quartzでは、モバイルファーストを掲げ、Webサイトおよびアプリにも注力しているが、いまのところQuartz JapanにはWebサイトおよびアプリは用意されていない。

Quartz Japanの読者は現在、月額1000円(税込)で、平日の朝に配信される「Daily Brief(デイリー・ブリーフ)」と、夕方に配信される「Deep Dive(ディープ・ダイブ)」、2種類のニュースレターを読むことができる。
前者はビジネスパーソンが知るべきグローバルニュースをまとめたもので、後者はスタートアップ、アジア、アフリカなど「次に来る」注目トピックを深堀るという内容だ。
加えて、週末版のニュースレターおよび米QuartzのWebサイトで掲載されている有料記事も読める。

QuartzのCEOであるザック・スワード氏とQuartz Japanの創刊編集長である森川潤氏は2019年11月当初、連名で「なぜ今、日本にQuartzが必要なのか」という記事を投稿。
そのなかでは、Quartzが日本上陸する3つのポイントとして、「①真のグローバル」ニュースを展開し、「②『ニュースレター』という革命」を日本にももたらすため、「③世界初のコラボレーション」を行っていくと述べている。

「ニュースレターは直接読者と繋がれる点が、新しいメディアの形として注目される理由のひとつだ」と、この1月にQuartz Japan新編集長として就任した年吉聡太氏は語る。
「入社前から、ニュースレターを活用したパブリッシャーの先駆けとして、Quartzには注目していた」。

なお年吉氏は、ライフハッカー[日本版]編集長、WIRED[日本版]副編集長を歴任してきた人物だ。
日本では、まだメジャーとは言い難いニュースレターを用いて、同氏はいかにQuartz Japanを成長させていくのか。DIGIDAY[日本版]のPODCASTコンテンツ第1段として、話を訊いた。以下、その音源とインタビューの要約だ。

DIGIDAY Podcast一覧はこちら(※随時更新予定

ニュースレターの可能性

「アメリカではここ数年、パブリッシャーのあいだでニュースレターが注目を集めている。
たとえば、ニューヨーク・タイムス(The New York Times)は非常に細分化されたニュースレターを配信しているし、ニュースレターのプラットフォーム(※)が多額の資金調達を行うなど、盛り上がりを見せている。
周りに話を聞くと、ニュースレターは限定された村のようなコミュニティ内で情報交換が行われるので、SNSと違って炎上しないのが良い、という話を聞く。
こうした『本音をいいやすい』という側面は、支持を集めている理由のひとつだろう。
加えて、近年盛り上がりを見せるD2C企業のように、直接読者と繋がれるという点も、ニュースレターが新しいメディアの形として注目される理由だと思う」。

世界をより「身近に」

「国内では一般的に、海外ニュースはあまり注目されない傾向にある。
しかし昨今では、20〜30代前半の、メディアやスタートアップに携わる人たちと話をすると、40〜50代に比べて屈託なく海外を見ている。
また、国境を感じさせない動きをしている。
そうした状態こそが『真のグローバル』だといえると思う。
そしてこうした流れは、今後国内でも加速していくだろう。
特にいまは、新型コロナウイルスの影響により、世界のニュースに注目が集まっているため、海外ニュースへの需要が国内でも高まっており、Quartz Japanの会員数も成長傾向にある。
こうした国内の流れを、海外の空気感や情報を生のまま届けることで、さらに加速させていきたい。
我々が目指すのは、世界のビジネスパーソンがニュースに触れるのと同じタイミングで、国内の読者も世界基準のニュースに触れることができる、そんな体験だ」。

Quartz Japanの今後

「現在、Quartz Japanのチームは、私を含め編集担当が4人とプロダクトやマーケティングを担当するスタッフ2人の合計6人に加え、ニューヨークのQuartzオフィスで日米のハブになってくれている森川とで運営している。
ユーザーサポートも私たちが担当しているが、最近は『会員導線がわかりにくい』など、UI改善の要望を聞くことが多い。
コンテンツの良し悪しだけでなく、サービスとしての良さも、有料のニュースレターには求められるということを痛感している。
今後はこうしたサービス自体の改善要求を、一層真摯に受け止めていくつもりだ。
また、私がQuartz Japanに加わった当初はイベントなども予定していたが、新型コロナウイルスの影響も鑑みて、短期的にはニュースレター1本でやっていこうと考えている」。

※ニュースレタープラットフォーム「Substack(サブスタック)」のこと。
同サービスは2019年に1530万ドル(約16億円)を調達した。

Written by Kan Murakami

情報源: 「ニュースレターは、D2C文脈に沿った新しいメディア」:Quartz Japan編集長 年吉聡太氏 | DIGIDAY[日本版]

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