ふるさと納税、北海道白糠町に最大効果。赤字は3割|nikkei.com

2022年9月18日 5:00

北海道白糠町のふるさと納税による実質黒字は63.9億円で税収の6倍超の規模となった(同町のホームページ)
2021年度のふるさと納税の実績がまとまった。
自治体の寄付受け入れ総額は8302.4億円と2年連続で過去最高を更新した。
寄付受け入れ額から経費と住民税控除額を差し引いた実質収支を見ると、北海道白糠町が税収規模の6倍超の黒字を確保して最大の財政効果を得た。
一方、経費の増加で市区町村の3割弱が実質的に赤字だった。
寄付を集めても赤字になれば本末転倒になる。(「日経グローカル」443号に詳報)

総務省によると、21年度の寄付受け入れ額は20年度から23.5%増えた。
自治体別にみると、北海道紋別市が152.9億円で初めて首位になった。
ホタテなど海産物の返礼品をそろえ人気を集めた。
2位は宮崎県都城市だった。

21年度は京都市が健闘した。
同市の受け入れ額は62.3億円と3.5倍に増え、順位は76位から13位に上がった。
新型コロナウイルス禍で国内旅行や巣ごもり消費のニーズが高まったこともあり、市内の旅行クーポンや地元料亭のおせちの返礼品が人気だったという。

ふるさと納税では寄付者が居住自治体に納める住民税が寄付額に応じて控除される。
全体の控除額は前年度比28.0%増の5672.4億円で、過去最高だった。
自治体別にみると控除額が最も大きいのは230.0億円の横浜市で、名古屋市、大阪市が続いた。控除は22年度課税で適用される。


自治体が寄付を集めるのにかけた経費も増えた。
20年度より26.9%多い3851.4億円だった。
総務省は返礼品調達費を寄付額の3割以下、全体の経費を5割以下に抑えるよう求めている。
21年度は調達費が27.3%、全体の経費が46.4%で上限ギリギリだった。
返礼品は地場産品のため調達費は地元に還元されているとも言えるが、それでも本来は自治体の税収になるはずだった1500億円以上が経費で消失した。

寄付受け入れ額から経費と控除額を差し引いた分が、最終的に自治体の手元に残る実質的な収入となる。
全市区町村の実質収支を調べたところ、実質黒字の自治体は全体の7割にあたる1270で、20年度と同数だった。
黒字額が最も大きかったのは紋別市の76.9億円で、都城市の76.7億円、北海道根室市の72.8億円と続いた。
順位はおおむね寄付受け入れ額と同じだった。


実質黒字額を自治体ごとの税収比でみると、順位は大きく入れ替わった。
18~20年度の平均税収比が最も大きかったのは北海道白糠町だった。
実質黒字額は63.9億円で、同町税収の6.32倍だった。
経費の割合は48.9%と、紋別市(49.5%)や根室市(49.9%)をやや下回り、住民税控除の規模も小さかった。

寄付受け入れ額は4位だったが、財政に対する実質的な効果は最も高かったと言える。
同町は集まった寄付金を22年度以降、活用が必要な事業に順次充てる。

税収比が次いで大きかったのは和歌山県北山村で、黒字額は4.5億円で税収の6.17倍だった。
寄付受け入れ額は市区町村で219位だったが、住民税控除が少なく、全国トップレベルの財政効果を得た。
税収以上の実質黒字額を確保した市町村は20あった。

実質黒字の市区町村数は数年単位で見れば増加傾向にある。
地方部の自治体が多いが、県庁所在地でも黒字だったのは山形市や甲府市など8あり、宮崎市と長野市は20年度の赤字から黒字に転換した。


赤字の市区町村も20年度と同数の471だった。
全体の27.1%にあたる。
住民税控除額が大きい都市部が目立った。
横浜市(227.3億円)、名古屋市(130.4億円)などだった。
京都市は寄付受け入れ額が増えたものの、住民税控除も寄付とほぼ同規模だったことなどで赤字になった。

20年度の黒字から赤字に転落した市区町村は48あり、茨城県古河市や静岡県島田市など地方部の自治体も見られた。

住民税が控除されると課税翌年度に控除によって減収になった分の75%が地方交付税として補塡される。
22年度の交付団体に補塡されたとして改めて最終的な収支を試算すると、1741市区町村のうち黒字が8割強の1478に増え、赤字は263に減った。
横浜市の赤字額は54.8億円に圧縮され、地方交付税の不交付団体の川崎市が95.3億円と最大の赤字自治体になった。
交付団体も190あった。

ふるさと納税は都市部住民に地方への関心を高めてもらうほか、返礼品を通じて地域資源の価値の再発見につながる可能性がある。
ただ一方で本来税収となるはずだった財源が経費で消失するなど地方財政にとって非効率的な面もある。
節度ある活用が必要になる。

(地方財政エディター 杉本耕太郎)

情報源: ふるさと納税、北海道白糠町に最大効果 赤字は3割弱: 日本経済新聞

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