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外国人観光客が5年で36倍、城崎温泉の戦略とは:日経ビジネスオンライン

 訪日外国人数の増加が続いている。今年1~7月に日本を訪れた外国人旅行者は日本政府観光局(JNTO)の調べによると1643万8800人で、前年同期に比べて17.3%増えた。

 昨今、東京都心の地下鉄の車内やホームで外国人観光客を見かけることは日常のことになった。かつては旅行客を見かけることが少なかった都内の住宅地でも、駅や商店街などで外国人旅行者を目にするようになった。地方も同様だ。日本人にとってもかなり奥深い場所でさえ、外国人の姿を見かけるようになった。人数が増えているだけではなく、旅行する場所もかなり広範囲に広がっているのが最近の傾向だ。

 そうした地方の観光地、兵庫県豊岡市にある城崎温泉も訪日客が急増している場所の1つだ。

 兵庫県と聞くと、神戸市など瀬戸内海側の地域をイメージする人が多いと思うが、豊岡市は兵庫県北部、日本海に面した場所にある。城崎温泉までは大阪からは特急を使っても電車で約3時間もかかる。

 だが、城崎温泉を訪れる外国人観光客の数は直近5年で36倍に増えた。なぜか。

家族経営の旅館が予約サイトに対応

 城崎温泉は川沿いの柳並木、古い街並み、そして浴衣を着た観光客がそぞろ歩く風情のある風景が特徴だ。7カ所ある外湯めぐりが主体の温泉で、旅行者は旅館で浴衣に着替えてげたを履いて、好みの外湯に入りにいく。チェックイン後、旅館での夕食までの時間帯である夕方4時~5時頃と夕食後の8時以降は特に人出が多くにぎわう。

 温泉施設を持つ大型ホテルが軒を連ねる温泉地とは全く雰囲気が違う。城崎温泉の場合、約80カ所ある旅館は小規模で家族経営が主体。1つの旅館の部屋数は10~15室程度。そのため中国人の団体旅行などを受け入れるのが難しかった。


兵庫県豊岡市にある城崎温泉。欧米の個人旅行客が急増している。スイスから訪れたニーノ氏一家。英語ガイドブックで城崎温泉を知り、初めての日本旅行で訪れた(写真:大亀 京助、以下同)
 インバウンド(訪日外国人)の潮流に乗れないかに思えた城崎温泉だが、団体旅行客を受け入れられないことを逆手にとって、個人旅行客に狙いを定めた。2013年ごろから、豊岡市は欧州での観光プロモーションを始めた。個人旅行者の割合が多い、欧州のほか、北米、オーストラリアからの集客を狙った。

 13年、フランスの旅行ガイド「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」に城崎温泉が2つ星の評価を得て掲載された。英語ガイドブック「ロンリープラネット」でも日本のベスト温泉の1つに選ばれた。こうしたことから城崎温泉が欧米人に広く知られることとなる。城崎温泉の外国人旅行者の内、欧州、北米、オーストラリアからの割合は約半数を占める。

 外国人旅行者を観光地に呼び寄せるのに問題となるのが、宿泊施設側の対応だ。個人旅行客は直接、ホテルや旅館に予約を入れることが多いため、英語などの外国語で予約できないと来てくれない。

 城崎温泉の旅館の場合、米エクスペディアやオランダのブッキング・ドットコムなど欧米の旅行・ホテル予約サイトとの連携を深めたことで、欧米の個人客の取り込みに成功した。以前は日本語でもオンライン予約に対応していなかったタイプの小規模な旅館でも、かなりの数が欧米のホテル予約サイトに登録している。

 15年には豊岡市も城崎温泉に関する英語の観光情報サイト「Visit Kinosaki」を立ち上げ、宿泊予約機能を装備した。今ではフランス語にも対応する。サイトはトップ画面に大きなイメージ画像を配し、滞在日と人数を選んで予約するためのメニューが中央下部に表示されている。最近の欧米の予約サイトに見られるようなページデザインで利用者にとって旅館の予約がしやすいよう工夫している。

 さらに外国人旅行者を呼び込むために16年6月に発足したのが豊岡版DMO「豊岡観光イノベーション(一般社団法人)」だ。DMOとは「Destination Management/Marketing Organization」の略。観光地経営組織などと訳される。観光地において戦略の策定、各種調査、マーケティング、商品開発、プロモーションなどを一貫して実施する組織体で、欧米の観光地で発展した形態だ。

 日本では地域の観光は、自治体の観光課や観光協会、地域の旅館組合などの組織が情報提供やプロモーションをするケースが多いが、ツアーなどの商品を開発したり、調査を基に戦略的なマーケティングを展開するなど企業的な動きまではこれまでほとんどしてこなかった。

 そこで豊岡市では企業と連携してDMOを組織した。高速バス大手のウィラー(大阪市)や地元のバス会社、全但バス(兵庫県養父市)、豊岡市に本店がある但馬銀行、但馬信用金庫などの企業が基金を拠出、旅行大手のJTBと三井物産はそれぞれ社員を派遣して参画する。観光地としての関連性が強い隣接する京都府京丹後市とも連携する。社員は9人で、7人が企業出身者だ。今年4月からは旅行大手の近畿日本ツーリストも社員を派遣している。

 具体的にはマーケティング事業、現地ツアーの開発・販売、前述の宿泊予約サイト「Visit Kinosaki」の運営などを手掛けている。

 三井物産から加わり事業を統括する田辺茂・事業本部長は「城崎温泉の集客をさらに伸ばすことに加え、豊岡市と京丹後市の城崎温泉以外の観光地への集客に取り組んでいる」と話す。


一般社団法人豊岡観光イノベーションで事業を統括する田辺茂・事業本部長。三井物産からの出向で、台湾などでの駐在経験がある

 豊岡市には城下町の出石地区などの観光地が点在する。海水浴ができる風光明媚な海岸もある。

情報源: 外国人観光客が5年で36倍、城崎温泉の戦略とは:日経ビジネスオンライン

「地域しごとづくりへの挑戦」地域しごと創生会議 編(2017)

地域しごとづくりへの挑戦」地域しごと創生会議 編(2017)

「やりっぱなし・頼りっぱなし・無関心」を改める
「行政はやりっぱなし、民間は行政に頼りっぱなし、市民は無関心」

五ヵ年計画を立てるに当たっては「何を達成しようとしているのか」を明確にする
「KPI(Key Performance Indicator=重要業績評価資料)」という言葉があります
ビジネスなどで最初に指標を制定しておいて評価することを言います

やりっぱなしにならないためにPDCAサイクルを機能させる
PはPlanの頭文字で「計画」、DはDoの「実行」、CはCheckの「評価」、AはActの、評価に基づいて新たな行動を起こす「改善」を意味します
最後のAを、またPにつなげて、らせんを描くように向上させていくのがPDCAサイクルです

地方創生の要諦の一つは「いまだけ・ここだけ・あなただけ」という観点

人々が「帰りたい」「帰ろうかな」と思ったとき、しっかり受け止められる環境をつくることこそ地方創生の目的

観光は四つの要素で決まるそうです
「①四季がハッキリしており、②自然が豊かであり、③伝統文化・芸能芸術が奥深く、④食べものと酒がおいしい」の四つです

「その地にあるものの売り方」として…新潟の「レストランバス」
二階建てのバスを改造し、一階をキッチンに、二階をレストランにして、新潟の美しい景色を見ながら、地元のおいしい料理が食べられるという企画…
バスのレストラン部分には、バスが揺れても食器やビンが倒れないような工夫…
バスの天井部…強度と透明度がともに高い特殊なガラスが使ってあり、気候が良いときはそれを開いて風を取り込み、自然を肌で感じることができます…
バスは、季節に合わせてもっとも景色の良いところで駐車し、客は最高の景色と最高の料理を居ながらにして楽しめる…
日本海の夕日、妙高の雪景色、七夕の夜には美しい星空など、景色のオプションはたくさんあります…
土地代は無料、景色ももちろん無料です
最初からバスで連れていくので、交通の便が足かせになることもありません
バスの中で提供される料理の材料は地元産…そこにも付加価値があり…農産物の宣伝にもなります…
レストランバスは、バス会社の企画によるビジネスで、新潟市が最初に手をあげて事業化しました
新潟以外からの観光客をターゲットとして想定した企画でした…
フタをあけると、半分以上は地元の人たちが面白がって乗った
ex. http://sp.willer.co.jp/restaurantbus/

「経験と勘と思い込み」を略して「KKO」…
これらをもとに動くのは、決して良策ではありません

RESAS…
Regional Economy(and)Society Analyzing System(地域経済分析システム)

8事例

§1「しがらみ」と「横並び」

(ケース1)油津商店街
月給90万円で「250mのシャッター通りに、4年間で20以上の新規出店を実現すること」
木藤亮太
最初に手がけたのは商店街のオーナーたちではなく、商店街に昔通っていたはずの人たちへの徹底したヒアリング…
共通の思い出の場所として浮かび上がってきたのが「むぎぼう」という喫茶店…
70~80歳になったシニアの方々を集めて「思い出を語る会」を開催

いくらイベントが…盛り上がっても、その日の集客…は何も商店街に残さない…
大切にしたかったのは、まちの空気感を変えること…
商店街の外側に、商店街のことが気になって気になって仕方がない応援団をいかに増やし、商店街を…商店街の外側にいるみんなにとって、何か気になる、何かしたくなる空間へ変えていくこと

生活必需品だけなら通信販売でも買える
商店街に必要な「商店」とは人がそこを訪れる理由のある何かを持っている場所

活動の拠点にと、(株)油津応援団を設立した
田鹿倫基

(ケース2)ながと物産合同会社
山本桂司…
長門ゆずきち

右肩上がりの時代で大切になるのは、需要の伸びに供給が…追いつくかどうか…
電力で考えるとわかりやすい…
農産品も同じ…
ものづくりも同じ…
宿泊サービスも事情は似ている…
需要予測やマーケティングは…最終的に製品を市場に卸す親請け企業や系統流通事業者など、需要側の立場を代弁する全国的な流通事業者が担う構造になっている産業…
供給不足ですから価格が高騰します、というわけにはいかない…
右肩上がりの市場構造では…買い取り価格は、全国的な需給の状況に左右される…
おいしかろうと普通であろうと…厳密に吟味される機会は乏しく…全国的な流通の仕組みの中…ほぼ一律の価格で、流通側に引き取られていく…
こうした仕組みは、供給量の確保には強いが、選別の論理には弱い…
市場が右肩下がりになった瞬間、きめ細かな商品の選別・競争ができず、優れた産品も普通の産品も…構造的に供給過剰状態に直面する…
生産者…構造的安値が苦しい…直接消費者にものをさばいた経験がない…他にものを売る方法が見つけられない…多くの生産者が…生産活動の維持に苦しむ状況に追い込まれる…

成長・拡大する全国市場に合わせ…全国的な特定販路や系列取引…事業者に…商材を提供してきた生産者には、最終消費者と直接に関わる機会も乏しく、自分の産品の値付けも販路開拓も、直接手がけたことがない…
地域経済は…良いものも普通のものも…公平に…一律に取り扱われることに慣れてしまっている…
差別化の論理を地域社会に持ち込もうとすれば、しがらみがきしみ、横並びが崩れることになる…

地域産品を取り扱う地域商社の立場…
伝統的な流通構造を補完するための仕組み…
全ての地元の商材を扱い、その取扱量や商品数を単に増やすことを目指す必要…ない…
良いものを選別し…稼ぐ力を伸ばすという戦略こそ、右肩下がりの時代には求められる…

§2「作る」より「伝える」に軸足を移す

(ケース3)佐井村のヒラメの粕漬け
ここでも課題は販路
東出隆弘

目指すべきは
①いきなり全国規模の大…市場でも、域内に閉じた地産地消市場でもない
②自らの生産・受入能力に見合った中規模の市場であって
③単価が高くても買ってくれる…固定ファンを育むことのできる
新たな「ふるさと名品市場」の創出

魅力ある地域の商品・サービス・資源を「今だけ・ここだけ・あなただけ」を求める顧客に…着実にアピール…

(ケース4)お野菜クレヨン
ふるさと名品オブ・ザ・イヤー地方創生賞(コト部門)
https://furusatomeihin.jp/2015/koto_2015.php
http://mizuiroinc.com/

§3人材・資金が自由に出入りする、開放的な地域経済づくり

(ケース5)西粟倉村の百年の森林構想
道上正寿前村長

約50年前に子や孫のためにと木を植えた人々の想い
その想いを大切にして立派な百年の森林に育て上げていく
そのためにあと50年、2058年に向けて村ぐるみで挑戦を続けようと決意する」…
百年の森林構想…
大都市、大企業の下請けにはならず自立する覚悟で「価値の創出と交換が行われる経済」を目指した取り組み…

森林白書…3割以上が1ha以上3ha未満の小規模林業家が多い…日本の林業…
約25m2/人日ある北欧の生産性水準…日本全体平均は約5m2/人日以下…原因は…林業機械の導入の遅れ…

取り組み始めて、約8年
西粟倉村は、売り上げ約1億円の生産材中心の林業を、8億円超…木工加工品販売…へと変貌…
牧大介

小学校の廃校を利用して…ウナギの養殖…村の生産性向上…
木材加工工場でも、生産ラインをあえてバラし…できるときに自分の作業だけを進められるようモジュール化した生産ラインを導入…

生産性を引き上げるためには、働き方を変え、新しい取り組みに挑戦することが必要…
「よそ者・若者・ばか者」の力が必要…
しがらみ…横並び…軋轢…摩擦…を乗り越え生産性を向上させるサイクルに入った地域では…よそ者…姿を微笑ましく眺める地元の長老…生産性の伸びに期待して集まる投資資金…両立させることができるようになる…

(ケース6)とかち・イノベーション・プログラム
地方創生…誰が取り組むのかという…肝心要の真ん中が不在であることが多い

帯広信用金庫…野村総研…革新者プロジェクト
http://diamond.jp/category/s-it_2030BM
https://www.nri.com/~/media/PDF/jp/opinion/teiki/chitekishisan/cs201507/cs20150707.pdf

十勝Outdoor Valley構想…(株)スノーピーク社の山井太社長…(株)北海道ガーデン街道…林克彦社長…
http://www.hokkaido-garden.jp/

十勝アウトドアDMO…
https://destination-tokachi.jp/company.php
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2017/0628-009325.html
・社  名:株式会社デスティネーション十勝
・所 在 地:北海道帯広市西13南8 観光交流拠点施設とかちむら内
・資 本 金:3,050万円
・出資比率:株式会社スノーピーク49.2%、株式会社電通16.4%、帯広市13.1%、他21.3%

十勝千年の森…
http://www.tmf.jp

§4地方創生の「創り手」を育てる

(ケース7)Visit Napa Valley
DMO…世界で600以上

Visit Napa Valleyは、地域の共通利益のために活動を行う民間団体…宿泊客や観光消費の動向などについて正確なデータを収集し、エリア内の事業者に…提供…
顧客の少ない時期への対策も含めたイベント…その対策の実施、域外への…プロモーション、現地サービスの運営などを行っている

TID…自治体に収める税金とは別に、共益的な負担金を徴収する仕組み…
観光産業改善地区(Tourism Improvement District)にある事業者が、宿泊税収など行政が徴収する税とは別に、DMOが行う共益的な活動のために互いに負担金(Assessment)を出し合うもの

Visit Napa Valleyでも…調査をはじめとしたマーケティング活動…観光戦略の立案…ナパバレー全般の国内外への効果的な宣伝、現地案内サービスの運営などを行っている…
年間予算は、7億円程度…その3分の1程度はマーケティングに用いている…
例えば…ナパバレーの訪問客は国内客が9割…
30代までの若い者が比較的多くを占め…この層をリピーターとしていかに獲得するかが重要なポイント…
こうした活動に…エリアの関係者から理解を集めるのは一筋縄ではいかなかった…
実際Visit Napa Valleyの場合も…DMOを立ち上げてから数年経ってから…
きっかけは、ある大型ホテルの開発案件がマーケティングの失敗により頓挫したことだった…
以降、データの共用とその活用の重要性に対する認識が地域に広まり、今では…異を唱える者はいない…

(ケース8)坂ノ途中
環境負荷の低い農業への新規就農を支援するビジネスを展開しているソーシャルベンチャー…支援件数は約100件…ほとんどが新規就農者…
小野邦彦

地方では耕作をやめた農地が余っている…都会では、スキルの高い素養のある人が疲れている…
新規就農者の場合…0.1ha程度の耕作地で売り上げは50万~60万…
0.5haの土地を取得できたとしても300万円程度…

坂ノ途中は創業後7年半…2016年12月には…2億円程度の資金調達を実施…
直前期の売り上げは1.8億…正社員は11名…今期は売り上げ2.5億…社員も1.5倍を見込む…

地域の魅力のブランド化(ローカル・ブランディング)
地域商社事業
地域には魅力ある多くの農林水産品・工芸品…観光資源が未活用のまま埋もれている…
稼ぐ力の向上に向け…着手しやすい対策は…ポテンシャルを生かしきれていない地域産品や観光資源の活用…
課題は…より高い単価で販売できる販路を開拓するか…
個々の生産者…観光関連施設の所有者全てが、他地域にはない特色ある産品・資源の販路を、明確な市場戦略をもって開拓していく作業をできるわけではない…
誰かが代わって新たな販路を開拓していく事業…地域商社事業

地域商社は…マーケティング・販路開拓を行い…収益と市場の生の声を生産者にフィードバックする役割を担う

地域の…商材の発掘・販路開拓に、一定程度成功すれば…段階を追って、他地域との連携…観光等の異分野との連携も進め…域外からの投資を呼び込める…ビジネスモデルへと取り組みを進化させることも必要…
人材育成、物流・決済環境の整備…値域の事業インフラ整備にも貢献することが求められる…
地域商社は観光やまちづくりとも手を携え…地域に投資を呼び込むハブとして成長していくことが期待される…

日本版DMO形成・確立のための手引き
http://www.mlit.go.jp/kankocho/page04_000050.html
http://www.mlit.go.jp/kankocho/topics04_000086.html

グローバル・ネットワーク協議会
http://www.meti.go.jp/press/2016/06/20160609001/20160609001-1.pdf
http://www.meti.go.jp/press/2016/06/20160609001/20160609001.html
http://www.gncj.go.jp/about/

「救急ヘリを呼べ」観光客のモラルに、沖縄・竹富島の医師が「疲弊」訴え

HuffPost Japan | 執筆者: 泉谷由梨子

投稿日: 2017年07月26日 17時21分 更新: 2017年07月26日 20時52分

沖縄・竹富島でたった1つの医療機関、竹富町立竹富診療所が、一部の観光客が無理な要求をしてくることで「スタッフが疲弊している」とFacebookで悲痛な訴えをしている。投稿した診療所の唯一の常勤医、石橋興介さん(38)は、ハフポストの取材に対して、「離島の医療資源は限られている。出来ないことが多いことを理解して、マナーを守って欲しい」と話した。

石橋さんがFacebookに投稿したのは2017年7月25日。

「船をチャーターしてほしい」「ヘリを呼んでほしい」「専門医がいない、薬剤がないのはなぜ」と診療内容に対してクレームをつける患者がいるとして、「内地の病院の様に、全てが揃っている訳ではありません」「観光客の皆さんは、各離島の状況をよく知った上で、宿泊してもらいたい」としている。

ハフポスト日本版では、投稿した医師の石橋さんに、現状について聞いた。

——投稿されたような観光客のモラル問題はいつ頃から浮上したことなのでしょうか?

実はずっと歴代の医師が同じ悩みを抱えています。石垣島から一番近い離島で、島の規模に対して非常に多くの観光客が訪れるからです。

——どんな患者さんに困っておられますか

日中は、白砂の道を自転車で走って転んだ、であるとか、熱中症などによる脱水症状などの訴えが多いですね。これは注意すれば防げる可能性があります。

投稿したような、軽症にも関わらず「船をチャーターしてほしい」「ヘリを呼んでほしい」という無理な訴えがあるのは主に夜間です。高級リゾートに宿泊していて「金ならあるんだ」と言う人もいましたし、軽症なので緊急搬送などは不要と診断しても「あなたは(特定の病気の)専門医じゃないから信じられない」となじられたりしたこともありました。

——ちょっと信じられないような事態ですね…

万一、命に関わるような事態には、船などでの救急搬送も不可能ではありません。しかし、観光客の方には、離島はリスクだということを知ってもらいたい。限られた医療資源を大切に使うために、観光で来る方にも理解とマナーが大切です。

私がもう1つ訴えたかったことは、島の人たちは診療所を維持するために我慢している、ということです。

島の人たちは医者がいなくて、不安な苦しい暮らしを強いられた経験がありますから、無茶なことは言いません。週末に体調を崩しても、迷惑をかけてはいけないと診療所に連絡せず、「よく我慢したな」と思うような方さえいました。

島の診療所は本来、そういう島の方たちの健康を維持するためにあって、私もそのために働いているんです。

竹富島と医療
竹富島は石垣島から高速船で約10分。昔ながらの沖縄の町並みが残る島として近年、人気が高まっている観光地だ。

島の人口は364人(2017年1月末)。これに対して観光客は年間約48万2000人(2016年)が訪れる。1989年の約8万6000人から5倍近くに増えており、観光の環境は激変した。

島で唯一の医療機関である町立竹富診療所は、2009年4月〜2011年4月の2年間、2014年7月〜2015年3月までの9カ月間、常勤医が不在だった。

福岡県内の医療機関に勤務していた石橋さんが2015年の4月に常勤医として着任し、現在は医師、看護師、事務職員の3人で診療所が運営されている。夜間の急患の際には3人に加えて、ボランティアの消防団員が駆けつけることになるという。

石橋さんは診療以外にも、65歳未満の死亡率が高いなどの健康課題を解決するため、島をあげての予防医学活動に取り組んでいる。

情報源: 「救急ヘリを呼べ」観光客のモラルに、沖縄・竹富島の医師が「疲弊」訴え

竹富診療所〜石橋 興介先生インタビュー!! – 離島医療情報ネットワーク

2017/3/17 離島医療 コメント: 0 投稿者: 池上 文尋

今回は、沖縄県の離島にある竹富町立竹富診療所の石橋 興介先生にお話しをお伺いすることができました!

竹富島は石垣島から高速船で15分程度、沖縄ならではといった風景が色濃く残る人気の観光地です。石橋先生は、2015年にこの島の診療所に着任され、島の方々の健康管理やその意識改革などに積極的に取り組まれています。

その成果が評価され、先日には、第一回沖縄県健康づくり表彰の健康づくり地域活動部門で表彰されております。離島医療ならではの魅力や苦労も聞かせていただいた、本当に興味深いインタビューとなりました。

それでは、気になる内容をどうぞ!

竹富診療所の石橋先生です。

●ドクターになられた、きっかけを教えてください。

元々、祖父と父親が外科医でした。ただ、小さい頃は父親が全く家にいなかったので、父に育てられた記憶がありません。そのため、正直に言うとそんなに忙しい仕事には就きたくないというのが本音で、医者には興味がなかったですね。

学生当時、行きたい高校があったのですが落ちてしまったので、実は、高校には行かずに大学検定を受けています。そして、コンビニでバイトなどをして生計を立てていたのですが、その頃の楽しみといえばお金を貯めて旅行に行くことでした。中でも、八重山が一番好きでしたね。

八重山の西表島へ来たときに、たまたま釣りをしている人と出会い、その方がドクターでした。恐らく県からの派遣という形で来ていたと思うのですが、その方が言っていたことが今でも心の中に刻まれています。

そのドクターの「生まれ育ったところで最後を迎えるということが本来のあるべき姿だけれども、離島はそれができない。だから自分はもがきながらも、そういったことができるように島で働いている」という話を聞き、面白そうだと直感的に感じました。なんとなくですが、離島などで働くお医者さんであれば、自分の中で想像できるかなと思ったのが21歳の夏でしたね。

そして、医学部進学を決意し、岩手医科大学へ入学しました。学生時代も夏休み、春休みなどの長期休暇のときには必ず八重山、特に竹富島を好んで訪れていました。

大学を卒業後は沖縄に勤務していましたが、父親の調子が悪いということもあり、福岡に戻ることになりました。そして子供が生まれたのですが、その直後に、知らない番号から電話があったのが竹富町からでした。誰かしらか、私が離島医療をやりたいということを聞いたようで、電話をかけてきてくれたのです。

学生時代からいつか離島医療に携わりたいと感じ、それができるのは若いときかリタイヤしたときのどちらかだと思っていました。

父親の調子もそれほど良くはないことに加えて子供が生まれたばかりと、条件はあまり良くなかったのですが、これを逃したら多分、竹富島からのオファーはもうないだろうと決断に至りました。

●ご家族には反対されませんでしたか?

妻を説得するのに約1年かかりました。妻は埼玉出身なのですが、実は、八重山が好きな人たちの集まりを通じて、知り合ったという縁があります。

しかし、妻にこの話をしたときに、子供の環境や教育の面を考えると住むことは難しいと言われ、かなりもめましたね。結果的には、周りの協力もあり、納得してくれましたが、住むのは期間限定で4~5年が限界といったところでしょうか。

●竹富島に来られてどのくらい経ちますか?また、実際に来てみて、診療所での医療活動はどうですか?

こちらに来て、ちょうど2年になります。

やはり、島の人の健康に対する意識は、来た当初に比べるとかなり変わったと感じています。

学生時代の頃から、働き盛りの世代、特に65歳未満の死亡率の高さが問題となっている『沖縄クライシス』については、有名なので知っていました。

実際に島に来てデータを調べてみたのですが、亡くなった方に占める65歳未満の割合は、沖縄県が5ポイントくらい突き放して、ダントツで全国トップです。竹富町はそれよりも高く、男性に至っては33%、つまり、亡くなっている方の3人に1人が65歳未満なのです。これは、かなり問題だろうと島へ来た時に感じました。

●65歳未満の死亡率が高い背景には、どのような問題があるのでしょうか?

竹富町は、1人あたりの医療費が約12,000円/月と全国の半分ほどです。結局、これは定期的な受診ができていないからなのだろうと思っています。

さらに、竹富町の入院と外来の費用額の割合をみると、入院に占める費用額が非常に多いので、検診や通院をせずに重症化し、入院するというケースが多数を占めているということがわかりました。

●島民の方々の健康状態はいかがでしょうか?

昨年の3月31日で一旦、区切ったデータがあるのでご紹介します。

竹富島は360人で構成されている島で、そのうち成人は280名くらいですが、高血圧の方が61名、脂質異常の方が42名、糖尿病の方が17名いました。これらの疾患は、脳卒中や心筋梗塞などの危険因子になります。

加えて、この危険因子を1つだけ持っている方が29名、2つ持っている方が27名、3つ全て有している方が17名という結果が出ました。

危険因子を3つ持っている17名について詳しく調べてみると、30代から60代の働き盛りがほとんどであり、その中にはすでに脳卒中、心筋梗塞を発症している人もいました。

●島民の健康状態を受けて、竹富島ではどのような取り組みをされているのでしょうか?

竹富島では色々な取り組みを始めています。

まずは、竹富町と公民館で既に行われていた「ぱいぬ島健康プラン21」に積極的にコミットし、島での健康への取組みを強化することにしました。

このメンバーは、診療所のスタッフや公民館、役場の保健師や管理栄養士、小中学校の校長や郵便局長、老人会や婦人会、青年会代表といった島の要職についている人たちで構成されています。

活動内容は、島の疫学データを共有し、ウォーキングや医療講話、料理教室などの企画や運営の実施、振り返りまで一貫して行い、それらについて地域住民を巻き込むようにしています。

竹富島で長く過ごせるように、そして最後まで迎えられるようにという私の強い思いがあったので、これをコンセプトに、「体を動かす健康づくり」と「心と頭の健康づくり」この2つを軸にいま、島では健康づくりを行っています。

●体を動かす健康づくりについて、具体的に教えてください。

これは、体力測定会、健康体操教室、三世代ゲートボール、清掃活動、歩け歩け運動の5つで構成されています。

体力測定会に関しては、まずは自分の体力がどのくらいあるのかを知ってもらうようにしています。若い人から老人まで対象にしているのですが、こういったときには普段、診療所にこない人も参加してくれます。そのため、血圧計などをもっていき、測定データが得られるようにしています。

健康体操教室では、普段、使わないような筋肉を動かすようにしています。ウォーキング会もやっているのですが、それだけでは飽きるということで、こちらでは無酸素運動をメインに取り入れています。

そして、三世代ゲートボールでは、子供から大人まで、世代間の交流を図るために、ゲートボールで汗を流してもらっています。子供達は小学生から参加していて、大会前になると、おじいちゃんおばあちゃんと子供達が一緒に練習しています。

また、みなさん日常的に動かないので、どうしたら動いてくれるのだろうと考えた結果、月に1回は住民総出で美化活動、島の掃除を行うようにしています。そうすると、公民館主導で動いてくれるので、ほぼ全員参加で動いてくれますし、島も綺麗になって運動にもなります。

最後の歩け歩け運動ですが、竹富島は観光業の島なので、本当にみなさん歩かずにちょっとした距離でも車に乗ります。竹富島の外周道路は3キロ強なのですが、一周歩くなんてとんでもないという感覚ですね。

そのため、ウォーキングの普及や定例化を図るために、毎週火曜日に公民館が全島放送で歩きましょうと放送してくれています。そのおかげもあって、最近では多いときは20~30人くらいは歩いてくれています。

やはり、メタボの人には歩いてもらいたいので、そういった方にはこちらから積極的に声をかけていますね。

●心と頭の健康づくりについてもお聞かせください。

こちらは医療講話、キャリア講演会、心肺蘇生講習会、料理教室、古謡教室、保健指導、禁煙外来・喫煙防止教室の7つで構成されています。

まずは医療講話です。

いまはネットで間違った情報がたくさん、流れていますよね。正しい情報を発信するという目的で、昨年はニーズが多い、がんや生活習慣病、命に関わる病気と在宅診療を中心に、全国から先生方に来ていただき、竹富島で講話してもらいました。

次に、キャリア講演会です。

これは、私が重点的にやっている1つなのですが、やはり島出身の医療従事者というのが島の健康を守る上で必ず必要になってくると思っています。ただ、歴代の先生や看護師は内地の人だったので、辞めてしまうと健康管理がうまくいかなくなってしまいます。

どうしても、島出身の医療従事者の誕生が望ましいということで、診療所スタッフが小中学校まで出向いて、年に1、2回ほど島の医療の現状や、奨学金の話や医学部・看護学部にいくためのルートを紹介し、将来的に八重山の医療に関わって欲しいと伝えています。

3つめは、心肺蘇生の講習会です。

診療所は、私と看護師、事務の3人で運営しているので、どうしても急患のときは消防団の力がかなり必要となってきます。島には消防署がないので、消防団はボランティアで構成されており、みなさん普段は仕事をされています。

そういった方々には正しい医学教育が必要だということで、日本ACLS協会の方にお願いをして竹富島で心肺蘇生法に関する講習会を開催してもらっています。これをやっていて良かったと思うことが、ちょうど昨年起こりました。

講習を受けた消防団の方が、2ヶ月後にたまたま那覇のレストランで心肺蘇生が必要な方に遭遇し、その方が助かって那覇市消防局から表彰を受けたということがありました。

そして、料理教室ですね。これは役場の管理栄養士と一緒にやっているのですが、女性に関しては希望制、男性についてはメタボの人に絞っています。

そのほか、体の健康だけでは面白くないので、島の文化や伝統を残すために心の健康もみんなで育もうと、公民館主体で月に2回、古謡教室を始めました。歌を歌ったり太鼓を叩いたりしているのですが、竹富島は伝統芸能の島なので古謡がたくさん残っています。

65未満の働き盛りの人がいなくなると、島の文化や芸能を残すことができなくなるので、そういった活動も少しずつですが行っています。

保健指導については、私が島に来て、一番力を入れていることかもしれません。

役場の保健師と一緒に、未治療の人や検診を受けていない人、治療中でもコントロール不良の人のところへ、時間を見つけて、家庭訪問しています。

その成果がいま、少しずつ出てきているところです。

竹富町は4,200人くらいの人口なのですが、全国に5,000人未満の市町村が218ある中、検診の受診率がかなり上がってきています。これは、島民の健康への意識が少しずつ上がってきている証拠ではないでしょうか。

最後は、禁煙外来ですね。喫煙者には積極的に声をかけて禁煙外来に来てもらうようにしていることもあり、喫煙者は随分と減りました。

ただ、やはり中にはうまくいかない人もいますね。そういった人のために、小中学校から依頼されて、タバコやドラッグの害について、年に1、2回ほど話をしています。私たちが話した内容を、子供から親に伝えてもらうのです。それでうまくいった方もいました。

そして、島に来たときに気がついたかもしれませんが、竹富島にはタバコの自動販売機がありません。商店の店頭販売も中止しています。これについては、店主が禁煙外来に来た時に、自分の店に置いておくと吸いたくなるし、自分が禁煙した証にお店からタバコを撤去したいという店主の希望でなくなったので、自発的に島の流れとしてやめてもらうことができました。現在、竹富島ではタバコが手に入らない状態で、それで喫煙率が約40%弱も減りましたね。

動脈硬化になる因子をどんどん削っていこうとした時に、タバコはどうしても外せないリスクファクターですから良いことだと思っています。

ただ、竹富島では買えないのですが、石垣島では買えるので、吸う人はみなさんまとめ買いするようになりました。ですが、これがきっかけでやめた人も複数いますので、少しずつですが上手くいっているのではないでしょうか。

このような活動をメインに行っていたところ、第一回沖縄県健康づくり表彰 地域活動部門グランプリを受賞することができました。

●これは、竹富島の規模感だからできることかもしれないですね。

そうですね。少人数だからできることであって、石垣島のように何万人規模になると難しいですね。そのため、今後は市町村の中でもエリアごとに健康づくりの取り組みを行い、競うようにしていけば長野県のようになれるのではないかと思っています。

沖縄県は元々、長寿のところでしたが、もうそう言えません。現在は、平均寿命が全国で30位程度ですが、それは今の老人が頑張っているからです。あと15年、20年経つとその人達がいなくなり次の世代が来るので、間違いなく男女ともに47位になると思います。

●竹富島に来て、思っていたことと違うことはありましたか?

行事が多いですね。月に2回平均、年間24回あります。

私は診療所だけに集中しているので、行事には参加することができませんが、その代わりに診療の時間外も診ていることでバランスをとっている部分があります。

また、島は話題がないので、良い情報も悪い情報もネットより早いですね。

子供のこともあるので妻が2ヶ月、埼玉の実家に連れて帰った時は、知らない間に離婚していることになっているということもありました。

買い物も旅行の時とは違うと感じた部分です。

石垣に出て一週間分のものをまとめて買ってきていますが、生活が非常にやりにくいですね。必要なのもがすぐに手に入らないことはストレスをどうしても感じてしまいます。

医療の面に関して言うと、市中病院に勤めていた時はわからないことがあった場合、各診療科に相談すれば教えてくれましたが、今はそれができません。子供から大人、そして外傷、外科から内科まで全て診なくてはいけないので、それが難しい時もあります。たまたま、今日のお昼は台湾人の方が来院されたのですが、英語も日本語も通じないという中での診療はやはり大変だと感じましたね。

そして、今までと一番違うことは、コメディカルの人たちがこんなに大切だと思わなかったということです。それはかなり感じますね。

離島にポンと投げられたら、看護師、医療事務、消防団、島民みんなの協力がないと絶対にうまくいきません。これまで内地の病院でしてきたことは全く実績にもなりませんし、エコーもないのでて手探り状態です。先日も、500キロ近くある釣鐘が子供の足に落ちてきて開放骨折があったのですが、そのようなときに今までの事例について教えてくれたり、アドバイスをくれることは本当にありがたいですね。

●日々の診療の中では、どのような疾患が多いのでしょうか?

高血圧や脂質異常、糖尿病や骨粗鬆症など生活習慣に関するものですね。あとは観光客の熱発等への対応でしょうか。一般内科領域が多くなっています。

ちょうど島に来た初日に、救急で脊椎損傷がありました。そして、一週間後に脳梗塞がありましたので、その当初は慌ただしかったですね。また呼吸状態が悪くても、酸素が通常の病院のように壁からは出てきません。搬送の途中で酸素ボンベの酸素が切れて呼吸状態が悪くなってしまったことがあり、挿管の準備までしたのですが事なきを得たということもありました。やはり、限られた医療資源の中でやるのは大変ですが、その分、やりがいも大きいですね。

●急患は、石垣島や沖縄本島へ搬送するのでしょうか?

基本的には石垣島への搬送となります。

八重山の医療圏の中でも、竹富島は直接、船で搬送することができます。夜中であっても、消防団の人が船を出してくれますし、夜でも定期船が走っています。特に、ここは内海なので、そんなに船は揺れないですしね。

他の島であれば、海保ヘリや民間の船(要は漁船)にお願いすることになります。

実は、救急指定病院として県立八重山病院と石垣島徳洲会病院が指定されているのですが、これらには脳神経外科や心臓外科がありません。徳洲会については、救急指定病院でありながら常勤の先生は数名しかおらず、研修医がいてようやくといった感じです。

次に、沖縄本島への搬送に関してです。

西表島や小浜島、波照間島については、県立診療所なので、親病院である八重山病院を迂回せずに本島へ患者搬送をすることができないという暗黙のルールがあるようです。一方、竹富島と黒島は町立診療所なので、それに当てはまらず、なおかつ、竹富島だけは県から許可をもらい、直接本島への搬送が昨年の12月からできるようになりました。現在、石垣島を除く八重山の離島で直接搬送できるのは竹富島だけですね。

先日、ヘリの訓練をして、実際に自衛隊のヘリを飛ばしうまくいったので、今後は脳や心臓といった緊急を要する疾患に関しては、こちらの判断である程度送ろうとは思っています。

ただし、自衛隊ヘリで運ぶためにはある程度、根拠が必要となります。診療所にはCTなどがなく、医療資源が限られるので、その判断は難しいですね。心臓に関しては、心電図や血液検査を使い、心筋梗塞だけはこちらで確定判断まで可能となりました。しかし、脳に関しては、可能性で搬送するしかないのかもしれません。

ちなみに、与那国島には県の一括交付金で購入したCTが入りました。そのため、海上保安庁のヘリの出動回数は減ったということを聞いています。やはり、心筋梗塞や脳卒中などは命に関わりますし、時間との勝負になりますので、拠点病院には治療を完結出来るような救急医療体制の強化に努めて欲しいと思っています。

●やはり、脳や心臓に関する疾患の搬送件数が多いのですね。

沖縄県からの報告によりますと、八重山の脳出血における死亡者数は、平成15年から19年で81名、平成20年から24年では143名と増えています。その原因を関係機関と一緒に調査しているところなのですが、感覚的に言うとおそらく飲酒と肥満ではないかと思っています。

毎日、飲酒をしてなおかつ3合以上飲んでいる方が13.8%と、全国と比べると非常に多いのです。さらに、1日1時間程度、運動する割合も著しく低く、20歳に比べて体重が10キロ以上増加している方も多数います。

国の発表によると、1日1合以上飲む方は明らかに脳出血のリスクが上がることがわかっています。これらと拠点病院に脳外科がないことと、離島の救急医療搬送体制等の合わさっての結果だと考えています。

●竹富島に来てよかったと思うことは何ですか?

プライベートに関しては、それほど変わらないですね。内地にいる時と同じように仲良しができて、といった感じです。

島の人に野菜をもらうようになったのは、嬉しいですね。

医療の面に関しては、今までよりも明らかに、患者さん一人と話す時間が増えました。これまでは、患者さんの名前と抱えている病気が一致しなかったのですが、島に来てからは島の方の殆どについて、飲んでいるお薬や病気が頭に浮かびます。

急患の時など運ばれてきた時にすぐ、必要な検査などの計画が立ちますし、搬送する一つの基準にもなりますね。

あとは、コメディカルとの距離がとても近いので、いい関係が築けています。

前任の先生が辞めたときに当時の看護師もやめたので、この診療所の看護師は私と同じ時期に、沖縄本島から来てもらっています。事務の方は東京出身なのですが、島の方と結婚されて、もう島に20年ほどいらっしゃいます。

私はもともと、糖尿病代謝内科を中心にやっていたのですが、幅広く診療できるようになりました。将来、医者としてやっていく上では、このタイミングで学ぶことができたということは非常に大きいことだったのかなと思っています。

●今度のビジョンを教えてください。

最終的には、福岡の実家を継ぐことになるかと思います。兄弟もドクターではないので、将来的にそこの基盤をきちんと築いていかないといけないということは思っていますが、そこまで開業に対してはそそられないですね。

気持ちとしてはこちらで長く続けたいと思っているのですが、子供の教育の面などもありますので、どうしても期間限定になってしまいます。

今後のビジョンとしては、竹富島で疫学のデータを出すことがとても面白いと思っていますので、福岡の疫学データを出して問題を掘り起こすようなことを行政とやっていきたいという気持ちはすごく大きいですね。

また、竹富島には将来的にも携わっていきたいと思っていますし、いまあるデータのさらなる構築や、島での健康づくりが今後どのように展開されて値が変化するのか、ということをみていきたいですね。

もうひとつ、島で取り組んでいこうと思っていることがあります。

ここは町立診療所なので、役場が医者をみつけなくてはなりません。それでは上手く行かないことも多いのが実情です。

いま、全国で上手くいっている自治体の中には、診療所長に医師を探す権限を与え、即ち、特任課長に任命し医者を探すというシステムとを取っているところもあります。それをヒントに、私の後任は役場に探す権限をもらい、島民と共に後任を探し、その先生が休むときには歴代の先生を代診に立てるという流れを作ろうと、島の公民館長や重鎮達と話をしているところです。

私もまた島に来たいですし、どのように変わっていくかを見届けられるようなシステムを構築したいと思っています。

●なかなか大きな壁があるのではないでしょうか。

おそらく、全国的にそうだと思うのですが、町立診療所同士はある程度交流あるのですが、県立診療所との交流はほぼないですね。

町立診療所の先生は、辞めるタイミングは自分たちで決めることができます。しかし、県立診療所の先生達は、自治医大出身の先生が多く、僻地勤務2~3年間の縛りがあります。自分の希望ではなく、とにかく任期が終わったら沖縄本島に帰ることができるというイメージで来られている感じがしますので、他の県立診療所はこういった健康づくりは進みにくいでしょうね。

竹富島で私が上手くやれているのは、もうひとつ理由があります。

これは全国的にかなり珍しい組織だと思うのですが、竹富診療所を支援する会というものがあります。歴代の公民館長など、要職についていたような方で構成されているのですが、定期的に診療所へ来てくれて、いま私たちがストレスに感じていることや問題などを聞いてくれます。

そして、それを支援する会で集まって方向性を出してくれるのですが、これはかなり有難いですね。支援する会に話すからこそ、下の世代が納得してくれるということも多々ありますので。

●患者さんや、読者に伝えたいことがあればお願いします。

やはり、私は竹富島が好きでここに来ているので、自然がどんどん壊れていっているのは心苦しいですね。残したい自然がありますし、お祭りや文化もあります。島の人達がなぜ、それらを守りたいのかという願いを辿ってみると、そこには自然や歴史、伝統を守るということが見えてきます。

ただ、それを守るためには、いま生きている人間が健康であることがどうしても重要になりますので、私たちが健康づくりに参画することで島を守ることにつながると信じています。

みなさんがつなげたいと思う真剣な思いは子供達にも受け継がれていくので、この健康に対する取り組みがいつか当たり前になることを願って、今後も介入していきたいですね。

これらの取り組みは、島民や行政も深く関わっていることなので、先日いただいた賞はみんなでとったものだと思っています。

●まとめ

離島の中でも比較的、島民の数が少ない地域だからこそ出来る取り組みをされていらっしゃる石橋先生のお話には、とても感銘を受けました。また、直に話しを聞いてみなければわからないことも多々あり、とても勉強になりました。

離島では、ドクター一人だけの力では難しいことも多く、島民の協力があってこそ実現することが多い反面、地域住民を巻き込むことができれば円滑に進めることができ、石橋先生はまさにそれを実践してらっしゃいます。

また、自分の代だけではなく、後任のことまで視野に入れていらっしゃることは、本当に島民のことを考えているのだろうと強く感じました。

石橋先生、貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

★竹富診療所

http://www.ritoushien.net/taketomi.shtml

情報源: 竹富診療所〜石橋 興介先生インタビュー!! – 離島医療情報ネットワーク

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UXデザインの正しい品質評価方法
Brandon K. Hill Aug 8, 2017

ユーザーエクスペリエンス (UX) デザインを少しでもかじったことのある人であれば、ヒットするプロダクトやビジネスの成功におけるユーザー体験の重要さが理解できると思う。「これからの企業に不可欠な三種の神器とは」でも説明されている通り、グローバル規模で成功している企業が提供する商品やサービスの裏には、優れたユーザー体験がその成功の秘密として隠されている。

また、「2017年からはユーザー体験こそがマーケティング戦略の主流になる ~UX for Marketing~」でも語られている通り、現在話題になっているスタートアップ企業やユニコーン企業も正しいユーザー体験を通じて多くのユーザー獲得につなげている。

UXにおいて何が優れているのか?

では、そもそもUXにおいて「優れた」とか「正しい」とされる要素は何であろうか?一般的にはユーザー側から見ると、利用していて”心地良い”とか”楽しい”などの要素。そして提供側から考えると”ビジネスの目標を達成する”ことが優れたユーザー体験の一つの目標となる。

UIとUXの評価軸の違い

UXデザインを考える際に、頻繁にユーザーインターフェース(UI)との比較をされる。これはUIがUXに及ぼす影響力が大きく、場合によっては、ごっちゃになるケースが多いからであろう。今一度UIとUXにおけるざっくりとした評価軸の違いを示しておく。

UIのクオリティは、ユーザーが費やした時間量に反比例
UXのクオリティは、ユーザーが費やした時間の濃さに比例
また、優れたUXがもたらす主な価値としては下記が挙げられるであろう。

対ユーザー: 使いやすい
対ビジネス: 売り上げが上がる
対ユーザー+ビジネス: 期待値が合致してる
– ビジネスにおけるユーザーエクスペリエンス (UX) の重要性

優れたデザインが優れたユーザー体験を生み出すとは限らない

UX”デザイン”という単語から、それが一つのデザイン領域であることがわかる。現にここ数年”UXデザイナー”と呼ばれる役職に注目が集まり、多くの企業も採用を急速に進めている。しかし、実はUXデザイナーに求められるスキルやその仕事内容は、見た目を美しくすることが主だった仕事であるデザイナー職とは大きく異なるため、その評価方法がはっきりとされていないケースもある。

結論から言うと、UXデザインの価値はユーザーが決める。下記の写真を見ても分かる通り、いくらデザイナーがこだわりを持ってデザインしたとしても、それがユーザーに受け入れられなければ正しいUXデザインを行なったことにはならない。

優れたユーザー体験とロジックは相反することがある

UXデザインのややこしいところは、それがユーザーの心理に密接しているところであろう。”見た目が美しい = 優れたUX”になるとは限らないし、”目的達成のための時間短縮 = 優れたUX”とも限らない。「ユーザーのストレスを減らし、費やした時間の価値を上げるが最終目標になるのであるが、ときにそれは机上のロジックと相反することもある。

その良い例が、ヒューストン空港における到着ゲートから手荷物受取所エリアまでの設計事例である。

以前より、この空港では手荷物引渡所での待ち時間が長いという苦情を受けていた。スタッフ増員など対応していたにも関わらず、なかなか問題が解消されないという課題を長期間に渡り抱えていた。

そこで、ユーザーのエクスペリエンス改善のために、わざと手荷物引渡所までの距離を延ばし、客に空港内で長い距離を歩かせるようにした。これにより移動距離と時間が伸びたものの、手荷物受取所での待ち時間が短縮されたことで、顧客のストレスが減り、顧客体験が解決したという結果となった。

UXの最終的な役割とは?

では、ユーザー側と企業側の双方向から考えて見た場合のUXの最終的な役割は何になるのであろうか?btraxが提供する「イノベーションブースター」のカリキュラムの一環であるUXデザインセッションでは、下記のように表現される。

The Role of UX
= To Attract Users’ Emotions to Produce Business Results
(ユーザーの心を掴み、ビジネスに繋げる)
理解はできるが、あまりにも簡潔すぎてよくわからない?

では、より具体的な評価方法を考えて見る。

UXハニカムを利用した評価手法

今回は、UXデザインの業界でスタンダードとして利用されている評価方法の一つである、UXハニカムを活用してのその評価方法を説明する。このハニカムはUXの価値を6つの異なる評価軸に合わせて評価し、そのクオリティを図っている。

下記のそれぞれの項目に対して5段階評価をし、総合得点でUXの価値を評価することができる。

1. Useful – 役に立つ

提供されるプロダクトやサービスがユーザーの役に立っているか。彼らのニーズを満たしているか。もしそれがユーザーの目的を達成していなければ、ユーザー体験としてはレベルが低い。

2. Desirable – 好ましい

プロダクトの見た目や雰囲気がユーザーにとって好ましいかどうか。ここに評価軸においては”デザイン要素”はなるべく少ない方が優れているとされる。

3. Accessible – アクセスしやすい

体の不自由な方や、異なる制限のあるユーザーにとっても使いやすい体験がデザインされているかどうか。色盲の方でも認識しやすいサインなどもその例の一つ。

4. Credible – 信頼できる

企業やプロダクトが信頼できるものであるかどうか。例えば無名な企業よりも、著名なブランドの製品であれば、最初からユーザーの心理的ハードルが下がり、自ずと利用体験がよくなりがち。

5. Findable – 探しやすい

情報やコンテンツが見つけやすい。短期間でユーザーが求める情報にたどり着ければ、利用している際のストレスが下がる。サイトであればページの構造、駅や公共の建物であれば、目的の場所に辿り着きやすいなど。

6. Usable – 使いやすい

そしてユーザビリティの高さ。利用していて必要以上に複雑で使いにくい場合はユーザー体験の価値が下がってしまう。例えば家電製品であれば、説明書を読まなければ使い方がわからない時点で減点対象になるであろう。

One more thing – そしてもう一つの価値基準

そして、btraxが提唱するUXの評価におけるもう一つの価値基準を紹介する。これはユーザーが気づかないうちに提供されるが、実は大きなメリットとして評価されるべきポイントだと考えている。

Ex. Added Value – 付加価値

優れたプロダクトには必ず主となる価値に加えて、ユーザー体験をアップさせる付加価値が隠されている。

Case Study – Tesla Model S

Teslaのモデル Sを例に考えてみよう。この車両のドアハンドルの部分は走行中やオーナーが離れている際には”引っ込む”仕組みになっている。これはデザイン的にかっこ良いし、空気抵抗を減らす意味合い、そして何より、近づいてきたときに”ぴょこっと”出てくる感動を生み出す。

実はこれには大きな付加価値もある。盗難防止に繋がるということだ。例えば鍵を壊してこの車両を盗もうとしたところで、ドアのとってをつかむことができなければドアをこじ開けることが容易ではなくなる。それだけでも車泥棒のモチベーションを下げる効果があるだろう。

Case Study – August SmartLock

もう一つの例として、btraxのSFオフィスでも利用しているAugust SmartLockの場合を見てみよう。このスマートロックは、スマホを活用してドアの鍵を開けることを主の目的としている。Apple Store史上初めてApple製品以外で店頭ディスプレイされたことでも話題になったプロダクトでもある事から、そのUXの高さが評価されている。

このプロダクトの付加価値は、利用ログにあると思われる。スマホで鍵が開くだけでもかなり利用価値が高いのであるが、その”隠れ機能”がより利用価値をアップさせている。アプリ内で見ることができるUser Activity Logは、複数のユーザーの利用ログが記録され、誰がいつ利用したかがわかるため、ちょっとしたセキュリティー的役割ややタイムカード的役割も果たしてくれる。

これからより高まるUXデザインの価値

プロダクトのサービス化を進める際には、そのプロダクトがユーザーに与える体験、いわゆるユーザーエクスペリエンス (UX)が非常に重要なファクターとなってくる。

そして、世の中で”イノベーション”と考えられている商品/サービスのその多くが、デザイン的プロセスに起因する部分が大きいと考えられる。実にユーザーエクスペリエンスが劣るプロダクトで人々がイノベーションの例として挙げるものはほぼ無いと言っても過言ではない。

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