業務スーパーで買い物する人が知らない「地方で増えまくる」本当の理由

2025/11/13 6:15
業務スーパーを支える加盟店の実態は?(撮影:今井康一)

実質賃金マイナスが続いていて、消費者の節約志向はかなり強くなっているといわれているが、中でも賃上げが進まない中小企業勤務者や年金生活者の財布はかなり厳しい。
特に支出を減らしにくい食品に関しては、より安い店を探索する消費者が増えているという。

ディスカウントスーパーの利用者が増えていて、中でも、神戸物産の運営する「業務スーパー」(以下、業務スーパー)は好調に売り上げを伸ばしている。

業務スーパーは、業務用需要に対応してさまざまな材料、調味料などを大容量パックで販売するチェーンのことだ。
一般消費者も利用できるので、そのコスパのよさが徐々に周知されてきて、節約志向の高まりも追い風となって来店客がさらに増えつつある。

業務スーパーのビジネスモデルは何がすごいのか

運営元の神戸物産の業績は以下のとおり増収を続けており、すでに5000億円を超えており、2025年10月期も増収増益を達成する見込みだという。

この会社のビジネスモデルは、食品卸売業をベースにしている。
業務スーパーという店舗網は直営2店を除き、すべてがフランチャイズ加盟店で構成されており、加盟店向けの食品卸売業という位置付けだ。
オリジナル商品が多いのも、問屋として数多くの食品メーカーとの接点を持っていたことが背景にある。

ざっくり言えばメーカーとともに商品開発を行いつつ、その販売先も組織化し、サプライチェーン全体で成長していこうとする壮大なモデルが特徴だ。

業務スーパーは、コスパの高いオリジナル商品が注目され、SNSでも話題になることが多いが、自社ブランド商品の開発をメーカーと進めるだけでなく、自社グループ内に製造工場を抱えて内製化を推進している点が他のチェーンとは一線を画している。

同社のウェブサイトによると、取扱アイテム7070のうち、海外50カ国からの直輸入品が1680アイテム、自社グループ工場15社27工場からの供給が390アイテムで、プライベートブランドの売上比率は34%以上に達している。
この自社グループによる内製化強化という戦略が、実は日本の食品製造業界の構造を踏まえた合理的なやり方なのである。

技術はあるが営業が苦手な中小メーカーを活用

日本の食品製造業界は、大手のナショナルブランドメーカーだけでなく、全国各地の数多くの中小企業で構成されている。
地域の自社ブランドメーカーもあれば、大手製品のOEMメーカーもあり、他国に比べても多様で数も多い。
ただ、小売りの寡占化が徐々に進む中で、メーカーの淘汰も進みつつあり、製造技術は高いものの営業面が弱く業績不振に陥っている中小メーカーが各地に散在している。

こうした業界環境を踏まえ、業務スーパーは、技術はあるが営業が苦手で稼働率の低下に苦しむ中小メーカーに自社販売網の発注を回して稼働率100%にし、再建するという方法をとる。
自社製品を任せるため資本的には傘下に入れるが、製造技術の維持のため、被買収メーカーの組織は経営者も含めてそのまま温存する。
メーカー側にとっても、会社が持続可能になる上に雇用条件も改善するのだから、この関係はWin-Winといえるだろ
う。

こうした商品内製化の推進が、この会社のビジネスモデルの要だが、これを維持拡張していくには、販売網の維持拡張(グループ工場稼働率に直結)が前提となる。
それがフランチャイズ(FC)制なのだが、有名なコンビニのフランチャイズとは異なり、加盟店は地方のさまざまな事情を抱えた小売業という一見特異な選択をしている。
しかし、これこそが業務スーパーの成長力の源泉なのだ。
今回はこの業務スーパーのパートナーである加盟店企業に注目したいと思う。

業務スーパーのFC加盟企業は、元々カー用品店、ホームセンター、酒ディスカウンター、スーパーなど、別の祖業を持つ地方の小売りチェーンである。

次の表は各地の概況がわかる加盟店チェーンを抽出し、祖業と事業概況を示したものだが、多様な祖業を持つ小売りチェーンが有力加盟店となっていることがわかる。

有力加盟店は「敗者復活戦」勝ち上がり組

これらの祖業の業態、すなわちカー用品、ホームセンター、酒ディスカウンターなどのチェーンは、1970年代以降のモータリゼーションの進展とともに地方各地のロードサイドで勃興したが、2000年代以降の市場飽和と寡占化の進行によって再編淘汰の波に飲み込まれた。

カー用品、ホームセンターなどの業態が、すでに有力大手によって市場が分割されていることはご存じの通りだろう。
つまり、業務スーパーの有力加盟店は、地方小売りチェーンの「敗者復活戦」勝ち上がり組なのである。彼らがどんな会社か見ていこう。

上場している加盟店のうち最大の売上規模を誇るのが、G-7ホールディングスである。
1970年代からオートバックスのフランチャイズ加盟店としてカー用品店をチェーン展開していたが、1990年代にはカー用品市場が伸び悩むようになり、2002年から業務スーパーの加盟店となった。

次の図は同社の業績推移を示したものだが、全体売り上げは順調に成長を続けており、内訳を見ると、その成長を支えたのが業務スーパー部門であることがわかる。
同社は、基本形では生鮮を取り扱わない業務スーパーに生鮮を併設するため、精肉専門店を買収したり農産物直売所の併設店なども整えて集客を図った。
その結果、業務スーパー事業は順調に拡大し、現在では部門売り上げ1000億円を超える規模となり、業務スーパー最大の加盟店となっている。

業務スーパーに加盟して厳しい環境を勝ち抜いた企業

新潟の食品スーパーであったオーシャンシステムも、業務スーパー加盟によって大きく成長した企業だ。
生鮮を中心としたスーパーとして新潟県内に展開していた同社は、業務スーパーに自社の生鮮品を供給した生鮮+業務スーパーを展開するようになって大きく成長している。

新潟県は全国屈指の有力スーパー、アクシアル リテイリングと地元有力生鮮スーパー、ウオロクがシェアを競う激戦地だが、業務スーパーのコスパ商品を提供することで両社に伍して存在感を保っている。

静岡県沼津発祥のマキヤは、古くからの金物店からホームセンターへと発展したチェーンで、家電量販店や食品スーパーなどを経営統合しつつ、現在は主力を大型ディスカウントストアに置いている地場小売だ。
2000年代以降は業務スーパーに加盟し、既存店舗との連携でコスパのいい業務スーパー商品を集客力に活用してディスカウントストアを構成している。

またホームセンターのカンセキは、競争激化で本業が長らく低迷していたが、業務スーパーを集客力の補強に活用して生き残ってきた。
ただし2022年、大手ホームセンターDCMの傘下に入っている。
業務スーパーがなければ、独立性をここまで維持できなかったかもしれない。

ほかにも、非上場のため詳細は不明だが、中食事業から食品スーパーに進出し、業務スーパーのコスパ商品と鮮度に定評ある生鮮売場で1000億企業に急成長した広島県福山市のエブリイは、現在最も勢いのある加盟店かもしれない。
また、酒類量販店チェーンを祖業としていたが、業務スーパーに加盟して酒&業務スーパーで生き残りに成功した神奈川県の良知経営(旧パスポート)は、酒販チェーンでは数少ない成長株である。

確認できる範囲でも、業務スーパーに加盟することで停滞する祖業から転換、もしくは併存させ、厳しい環境を勝ち抜いた企業が多く存在する。
こうしたしぶとい加盟店群が業務スーパーの成長を支えているのだ。

業務スーパーの成長を支える根幹

業務スーパー加盟店群は、なぜ多くの企業が「敗者復活戦」を勝ち上がることができたのか。
これはフランチャイズ本部の神戸物産が卸売業であったこともあり、チェーンの小売店としての店づくりを加盟店の裁量に委ねる柔軟性を持っていたことに尽きる。

フランチャイズチェーンの多くは、店づくりに厳格なフォーマットを定め、その通りに展開することを基本とするが、これは多様な現場環境や変化する状況への対応が遅くなるという欠点がある。
その点、業務スーパーは、地域で一定規模まで成長した実績ある小売りチェーンと組み、そのノウハウを存分に生かす方針をとった。
加盟店側も祖業や本業で何らかの課題を抱え、自社存続に必死に取り組む企業であるため、背水の陣から繰り出す創意工夫が結果を出すことが多かったのだろう。

業務スーパーは、そのコスパの高い商品開発に注目されることが多いが、成長の根幹をなしているのは、成長する加盟店が店舗網を拡張し続けていることにある。
加盟小売業の生き残ろうとする執念を見極め、パートナーシップを組んでその自主性を生かしたフランチャイズを構築したことが、業務スーパーの成長の基盤となっている。

ということは、業務スーパーの今後の発展は、店舗網を構成する加盟店の動向を見れば、その行く末を予測できるということでもある。
今後、寡占化がますます進むと言われている小売業界だが、業務スーパー連合軍の活躍に大いに注目したい。

情報源: 業務スーパーで買い物する人が知らない「地方で増えまくる」本当の理由 | 百貨店・量販店・総合スーパー | 東洋経済オンライン

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です