フリーに勝てる、8つのもの

2008年03月09日

「無料より優れたもの」
著者 ケヴィン・ケリー Kevin Kelly
訳  堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による “Better Than Free” の日本語訳である。


無料より優れたもの Better Than Free
インターネットはコピー機である。・・・コピーは安いどころではない、タダなのである。

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コピーが無料であれば、コピーできないものを売る必要がある。
さて、コピーできないものとは何か?・・・

コピーできない性質のものはいろいろある。たとえば「信頼」
信頼はコピーできない。買うこともできない。信頼は時間をかけて獲得するものである

それはダウンロードできない。でっち上げることも偽造することもできない。(とにかく、長期的には)・・・
だからコピーで飽和する世界の中で、信頼は価値の増大する無形資産なのである

信頼と同じように、コピーすることが難しい性質は他にもあって・・・それを調べる良い方法は
生産者・・・の目から見るのではなくユーザーの目で見ることであると私は考える

ネットワーク経済に関する私の研究によれば、無料でありうるものにお金を払うような無形の価値として
八つのカテゴリーがあると思われる・・・八つのコピーできない価値。私はこれを「生成力」と呼ぶ
生成力のある価値とは、発生させ、成長させ、培養し、育成しなければならない性質または特性である・・・
生成力のある性質は、デジタルの世界で無料のコピーに付加価値を与える
すなわち、それは売ることができるものなのだ

無料より優れた八つの生成力

即時性 –創作者がそれを発表した瞬間・・・または・・・ベータ版

個人化 –には創作者と消費者・・・の間で継続的な対話が必要である
それは回数と時間がかかる・・・人と人のつながりによる個人化はコピーできない・・・これを「粘着性」とよぶ
つながりの当事者たちは・・・乗り換えたりもう一度やり直そうとは思わない

解釈 –古い冗談に「ソフトウエアはタダ、マニュアルは10,000ドル」というのがある・・・
コードのコピーは無料である・・・
それが何を意味するか、あなたが何をすべきか、それをどのように使うか、といった・・・
マニュアルは高価なのである

信憑性 –芸術家たちは長年この問題を扱ってきた
写真や版画の複製は、その複製の価格を上げるために、作者による真正性の証印すなわち署名がついてくる

アクセスしやすいこと –整頓・・・更新・・・バックアップ・・・取り出すことができる・・・長期間保有する・・・
多くの人は、自分の「所有物」を誰かに頼んで  é¢å€’見てもらえたらうれしいと思っている

具体化 –・・・高解像度の巨大画面で見たい・・・紙に印刷されて、それを革で製本したものを読むのも素敵だ・・・
音楽は無料だが、生身の人間の演奏は高価である・・・本は無料だが、生の講演は高価である

後援 –視聴者は創作者にお金を払いたがっている・・・
ファンは芸術家、音楽家、著述家などに対して、評価のしるしとしてご褒美をあげたい・・・
ただã
—お金を払うのは、支払いが非常に容易で、手頃な値段で、しかもそのお金が創作者に直接恩恵を与えると思われる場合である・・・
後援という力・・・視聴者が満足感だけでお金を払う例は、他にもたくさんある

見つけやすいこと –未発見の名作など無意味だ・・・何百万冊もの本・・・歌、映画、アプリケーションプログラムやら何やら・・・
大部分が無料である中で、見つけられるということには価値がある
アマゾンやネットフリックスのような巨大集積業者は、視聴者が好きな作品を見つける手助けをして商売している・・・
「ロングテール現象」・・・それはニッチな視聴者とニッチな作品を結びつける。ただし・・・
巨大集積業者のほか、出版社やスタジオ、レコードレーベルのような大規模な中間レベルの集積業者についてのみ言えることである・・・
見つけやすさを発揮するためにはそれなりのシステムが不可欠であり、創作者は集積業者を必要とする・・・
出版社やスタジオやレーベル(まとめてPSL)は決して消滅しない・・・
PSLの役割は・・・ユーザーの注目を流通させて作品に集まるようにすることである・・・
PSLはファンがつながりたいだろうと思われる創作者の作品を発見して、育成し、磨きをかける
批評家や評論家のような仲介者も注目を伝達する
ファンたちは、この見つけやすさのために用意された多段階の機構を利用して、無数の作品の中から価値あるものを発見する・・・
紙の出版物「TVガイド」は・・・見つけやすさを売って金もうけをしている 

八つの性質は新しいスキルを必要とする・・・流通・・・知的財産権や著作権・・・秘蔵や希少性・・・ではない・・・
必要なのは・・・理解である
(豊富さが共有という態度を生みだすこと、気前の良さがビジネスモデルとなること、
マウスのクリックで複製できない価値の育成が不可欠であること、などに対する)

ネットワーク化された経済ではお金はコピーという経路を通らない。お金は注目という経路を通る・・・
注目は行きと帰りの双方向の経路を持っている

広告について何も言わなかった・・・広告は注目が通る経路の片方だけにすぎない・・・広告のつまらない皮の下で・・・
八つの生成力は・・・すべてのデジタルコピーに適用できる・・・だけでなく、コピーのための限界費用がゼロに近づくようなコピーなら
何でも適用できる(私のエッセイ「技術は無料になりたがる」”Technology Wants to Be Free“を参照されたい)

素材産業でさえも複製のコストはゼロに近くなりつつある。したがって素材についても、デジタルコピーと同様になるだろう。
地図はã
¡ã‚‡ã†ã©å¢ƒç•Œã‚’超えたところだ。遺伝学はもうすぐ。機械類や小型機器(携帯電話など)もその方向へ向かうだろう。
医薬品はすでにその位置にあるが、彼らはそのことを誰にも知られたくない。錠剤を作るのにコストはかからない。
私たちは薬の信憑性と即時性にお金を払っている。やがては個人化にお金を払うようになるだろう。

生成力を維持することは工場で複製を作るよりもずっと難しい。まだまだ学ぶべきこと、解明すべきことは多い。
あなたが解明できたら、ぜひ私に知らせてほしい。

この作品は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。 

七左衛門のメモ帳: 「無料より優れたもの」