川村剛志 2018年7月29日15時19分
マイクロプラスチックを混ぜた餌を与えたサンゴの幼生。褐虫藻(赤い部分)が1日経過しても体内にほとんど取り込まれていない(東京経済大の大久保奈弥准教授提供)紫外線などで劣化したプラスチックごみが砕けてできた微小粒子「マイクロプラスチック」が、サンゴの成長に悪影響を与える可能性があるという研究結果を、東京経済大などの研究チームがまとめた。マイクロプラスチックがサンゴの体内に入ることで、成長に欠かせない藻類を取り込みづらくなるという。
特集:マイクロプラスチック
サンゴの体内には「褐虫藻(かっちゅうそう)」という大きさ0・01ミリほどの微小な藻類が大量にいる。サンゴは褐虫藻にすむ場所や老廃物を与え、褐虫藻は光合成で作り出した栄養をサンゴに与え、共生している。サンゴの体内から褐虫藻が失われると白化して死滅につながることもある。研究チームは、まだ体内に褐虫藻を取り込んでいないサンゴの幼生約20匹に、直径0・003ミリのマイクロプラスチックを混ぜた餌を与えた。培養皿に褐虫藻を放ち、サンゴが体内に取り込む具合を調べた。
その結果、褐虫藻を取り込んだサンゴは1日後では約2割、2日後でも半数ほどしかなかった。一方、マイクロプラスチックを混ぜた餌を与えなかったサンゴ約20匹は、すべて2日後までに褐虫藻を取り込んだ。
マイクロプラスチックによる海洋汚染は地球規模で問題になっている。サンゴ礁は多くの生物の生息地となっており、生物多様性の宝庫だ。東京経済大の大久保奈弥(なみ)准教授(海洋生物学)は「サンゴの生存や成長に影響を及ぼす恐れがあるプラスチックの使用を制限するなど対策が必要だ」と話している。
研究成果は、海洋環境の専門誌「マリン・ポリューション・ブレティン」の電子版( https://doi.org/10.1016/j.marpolbul.2018.07.016 )に掲載された。(川村剛志)