「ビジネスの仕組みがわかる 図解のつくりかた」図解総研|note

ビジネスモデル図解は、よりシンプルでわかりやすく相手にそのビジネスについての情報を伝えるために、いくつかのルールがある。

ルール1 主体を3×3で構成する
ルール2 モノ・カネ・情報の流れを矢印で説明する
ルール3 説明しきれない部分は、ふきだしの補足で説明する…

ルール1 主体を3×3で構成する
「主体」とは、ビジネスにおける重要な関係者・モノのこと
を指す。

ビジネスモデル図解においては、この主体を3段×3列、つまり、3×3のマス目に収めるというルールがある。
なぜこの3段構成なのかというと、ビジネスにおいて、利用者、事業、事業者というのはぜったい存在する普遍的な構造だからだ。

ビジネスモデル図解では、上段、中段、下段をそれぞれ、利用者、事業、事業者を指すものとしてルールを定めている。

たとえば「俺のフレンチ」。
これは、「俺のフレンチ」という事業を、俺の株式会社という事業者が運営し、利用者に提供している。

このように、3段それぞれについて意味を持たせ、その位置に何が来るのか? をルールに沿って考えて配置する必要がある。

ルール2 モノ・カネ・情報の流れを矢印で説明する
「矢印」とは、主体の間を流れる重要な関係性のこと
を表す。
モノ・カネ・情報の流れを区別するためのマークを次の図のように使い分けている。

親子関係(入れ子)の場合、小さいほうに●がつく。

また、場合によっては点線を用いることもあるが、それは必ず存在するわけではない流れの場合に用いる。

ルール3 説明しきれない部分は、ふきだしの補足で説明する
「補足」とは、主体や矢印だけでは描ききれない重要な情報のこと
を指す。

なぜこの主体があるのか?
なぜこの矢印があるのか?
など、理由を明記するときにも使う。
補足に対して補足が入る、ということもある。

こうしたビジネスモデル図解のルールは、次のような強みを発揮する。

①アイコンや矢印によって何が重要なのか表現・理解しやすい
②3×3という制約を設けることで同じ形式で比較できる

順に説明していこう。

①アイコンや矢印によって何が重要なのか表現・理解しやすい
前述の3つのルールに基づいて、僕たちがツールキットで配布しているアイコンをあてはめることで、図解を完成させていく。

たとえば、「俺のフレンチ」を見ると、その事業に重要な一流シェフと、立ち食いテーブルを左右に置いていることで、視覚的に、その重要な主体をイメージさせることができる。

他の分析ツールでは、文字を主として活用することが多い。
文字ベースで情報を整理することは網羅的に情報を掲載できるというメリットを持つ。
その一方で、そこから情報を読み解き、重要なメッセージを抽出するのに時間を要するというデメリットがある。

その点、このビジネスモデル図解では、シンプルな構成とアイコンによって、その事業を特徴づける主体が何か、を理解することができる点が強みだ。

②3×3という制約を設けることで同じ形式で比較できる
ビジネスモデル図解は、どの図解も3×3のルールに従って作成されている。

そのため、そのフォーマットに従って比較しやすく、その事業で何が違うのか、という点を考えやすいというメリットがある。

ここまで説明してきたルールを守れば、最低限の図解は作成できるだろう。

しかし、ビジネスモデル図解は、このルール以外にも意識しなければならない点がいくつかある。

それについて、順に説明していこう。

2.ビジネスモデル図解における注意

注意1 ビジネスモデル図解は目的が大事
ビジネスモデル図解は、あくまでもコミュニケーションツールだということを意識すること
が大事だ。

つまり、その図解を、誰に、何のために伝えるか? が重要だということである。

たとえば、自分が新しく事業を立ち上げたとして、ビジネスモデル図解を用いて、投資家に出資を促そうと考えたとしよう。

その場合、ビジネスモデル図解を作成するときに、その図解で表現するべきことは、「いかにその事業が経済合理的で、成長可能性があるか?」ということだろう。

また、自分が営業で、取引先に対して自社と契約を結んでほしいときに、ビジネスモデル図解を用いるとしよう。

その場合、ビジネスモデル図解を作成するときに表現するべきことは、「いかにその事業が双方にとって経済的なメリットがあるか?」ということ。

このように、ビジネスモデル図解を作るときには、その目的を明確に意識する必要がある。

注意2 ビジネスモデル図解に正解はない
ビジネスモデル図解には、唯一正しい図解というのは存在しない

どういうことかというと、ビジネスモデル図解の前提条件と大きく関係する。
ビジネスモデル図解の前提条件とは、以下のようなものだ。

①時間軸を表現しない
②複数の事業を表現しない
③網羅性よりもメッセージ性を大事にする

それぞれ順に説明しよう。

①時間軸を表現しない
ビジネスモデル図解は、その時点のスナップショットを表現するもの

そのため、ビジネスモデルが形成された経緯や歴史など、時間軸を伴う表現はできない。

②複数の事業を表現しない
ビジネスモデル図解の3×3のフォーマットという制約上、載せられる情報はどうしても限られる

会社のすべての事業を表現しようとしたり、それらの関係性を表現しようとするために使用するのは非常に難しい。

したがって、ビジネスモデル図解をする対象は単体の事業のみになる。

③網羅性よりもメッセージ性を大事にする
ビジネスモデル図解の3×3のフォーマットがある以上、その事業に関するすべての情報を図解で表現することは難しい

つまり、その制約の中で、なんの情報を載せるべきか、ということを考える必要がある。

そのため、メッセージを伝えるために必要なことを考え、情報に優先度をつけて整理をし、重要なことだけに絞り込む必要がある。

まとめると、ビジネスモデル図解は、すべての情報を網羅的に正しく載せることはできないという前提があるため、それぞれの目的や、何が重要かと考える人の観点によって、それぞれの図解が完成する、ということだ。

つまり、作る人によって、その事業の捉え方や、誰に何のために伝えるかというメッセージが異なるため、図解の形は違うものになる。

以上のことから、ビジネスモデル図解では、正しい図解を作成することがゴールではないことを認識する必要がある。
あくまでも、「目的に照らして、相手に自分が伝えたかった情報が、その図解から伝わるか?」を考えることが大事なのだ。

この章では、ビジネスモデル図解を作成するにあたっての、大前提となるルールや注意点について解説してきた。

次の章からは、この章の内容を踏まえ、実際にビジネスモデル図解を作成するにあたって、どのように作成していくべきか、その考え方やコツをお伝えしよう。

第1章のまとめ

ビジネスモデル図解は、主体、矢印、補足によって構成されていて、3×3のマス目に必要な主体を収めるというルールがある
●ビジネスモデル図解はコミュニケーションツールなので、誰に何を伝えるのか、という目的を意識して考えるのが大事
●ビジネスモデル図解の対象は単一事業に限られ、かつ伝えられる情報に限界があるので、情報の正確性よりも、相手に伝えたい情報が伝わるかということを意識することが大事

第2章:「何を」提供するビジネスなのかを考える
1.ビジネスモデル図解の7ステップ

1章で、ビジネスモデル図解がどのようなルールと前提によって成り立っているかは理解してもらえたと思う。
ここからは、ビジネスモデル図解(以下、略してビジモ図解)を実際に作っていくための具体的なステップについて説明していこう。

ビジモ図解を作っていく際の手順として、図解をよむ7ステップというのがある。

(1)まずは中央の縦列を見る
①だれに?‥その事業は誰のために行われているのか
②なにを?‥何がその事業として行われるのか?
③だれが?‥誰がその事業を行っているのか?

(2)次に中央の横列を見る
④なにが重要?
‥その事業を特徴づける重要な関係者・モノはなにか?

(3)そして四隅を見る
⑤だれが関係?
‥提携している企業や、重要な関係会社はあるか?
⑥だれが関係?‥利用者の他に関係している重要な人物、会社は存在するか?

(4)さらに矢印(や補足)を見る
⑦どんな流れがある?
‥モノ・カネ・情報の流れがどうなっているか?

この章では、(1)〜(2)について、解説していく。順番に見ていこう。

(1)まずは中央の縦列を見る
1章で述べたとおり、ビジネスにおいて、利用者、事業、事業者という3段構成はぜったいに存在する。
この縦列で表現しているのは、利用者と事業者が、事業によってどうつながるか? ということだ。

どのようにサービスを提供しているのか、利用者がどのようなお金の払い方をしているのか、といったことが、この縦で表現される。
場合によってはサービスや事業ではなく、製品そのものが入ることもある。
ここについては、誰でもすぐに埋められると思う。

(2)次に中央の横列をみる
ここが、ビジモ図解において、一番重要なポイントである。
この横列によって、そのビジモ図解で一番表現したいことを説明するからだ。

たとえば、「俺のフレンチ」で見てみよう。
「俺のフレンチ」で伝えたいことは、そのビジネスの革新性(≒逆説の構造をいかに成り立たせているか)だ。

これまで、一流フレンチというのは、座って食べる高価な料理だった。
高いお金を払い、コース料理などで落ち着いて食事をするイメージがあるだろう。

しかし、「俺のフレンチ」は、そのイメージとまったく正反対なことをした。
つまり、立って食べる手頃な料理、というスタイルでフレンチ料理を提供している。

フレンチを安価で提供する。
普通に考えると、それだと利益率が下がり、経済合理性が下がるはずだ。

しかし、立ち食いにして通常の3倍の回転率にしたことで、安価でも成立する料金設定にしたのだ。

さらに、シェフについても、好きな食材を好きなだけ使っていい、という謳い文句で一流のシェフを引き抜いている。
そのため、料理の品質は保たれつつも、安価でフレンチを提供できている。

このような特徴を表現するために、ユニークな主体は何か? ということを意識して、左右には立ち食いテーブルと、フレンチ料理を配置している

2.左右の主体を考えるポイント
実践してみるとわかると思うが、主体を考えるのは意外に難しい。
特に難しいという声を耳にするのは、④のステップ、つまり中央の横列についてである。

この部分について、そこに配置されるべきは「そのビジネスを特徴づける関係者・モノ」という説明をしてきた。

しかし、これでは自由度がかなり高くて、「何をもって重要なのか?」という点で制約が何もないがゆえに、逆に図解を作成する際に一番悩むポイントとなってしまっていた。

そこで、今の3×3のルールに対して、より具体的なルールを設けることにした。
それをこれから説明していこう。

(1)4象限にわけて考える
ビジモ図解の3×3について、その位置にどのような意味を設けるかを考えると、4つの象限にわけて考えることができる。

①Who‥だれに
これは、利用者についての話。その事業が誰に向けたものなのか、ということを意味する。

②Who‥だれが
これは、事業者についての話。その事業が誰によって運営されているものか、ということを意味する。

③What‥なにを
左には、「利用者は何にお金を出している?」という問いに答えられるものを入れる
これはつまり、利用者(顧客。①のWho)が何に価値を見出して、お金を出しているのか? を定義することである。

④How‥どのように
右には、「事業者はどうお金を回している?」という問いに答えられるものを入れる
これはつまり、事業者(②のWho)が、その事業でどのように経済合理性を満たしているのか? を定義することである。

これを、左右に焦点を当てて整理すると、このようになる。

(2)なぜこの4象限なのか?
そもそも、ビジモ図解とは、そのビジネスが経済合理的か? をみるもの。
それを、ビジモ図解の左右で、ふたつの問いに分解して応えている。

①利用者にとって経済合理的か?
②事業者にとって経済合理的か?

事業において、利用者と事業者の双方が経済合理性を確保していないと、それはビジネスとして成り立たない

利用者が支払う金額に見合うと感じる価値がなければ、そのビジネスにはそもそもお金が入ってこないし、事業者にとって経済合理的な仕組みがなければ、いかにそのビジネスが利用者に魅力的なものであっても、結局持続しない。

その双方の経済合理性を説明できるか? ということが、ビジモ図解においては大事なのである。

この章では、ビジモ図解のステップの全体像を見つつ、その中でも一番重要な、左右の主体についての考え方をメインに説明してきた。

次の章では、図解の上段、「利用者」について、どのように考えるべきか、どのように表現していくべきかを解説していく。

第2章のまとめ

●ビジモ図解を作成するときは、①中央の縦列を見る②中央の横列を見る③四隅を見る④矢印や補足を見る、というステップを経ることを推奨している。
この中で特に重要なのは②
中央の横列で考えるべきことは、利用者と事業者の経済合理性を説明できるか否かということ。
なぜその事業者がその事業にお金を払うのか?
なぜその事業を持続的に運営することができるのか?
という問いに答える
必要がある
●区分として、上下段はWho、左はWhat(利用者は何にお金を払っているか?)、右はHow(事業者はどのようにお金を回しているか?)を説明する。
これができないと、ビジネスモデルの説明としては不十分

第3章:「誰に」対する事業なのかを考える
1.「利用者」をどのように選ぶべきか?

前章では、ビジモ図解のステップの全体像を見つつ、図解の中央段の「事業」に何を配置すればいいかをメインに説明してきた。
3章では、図解の上段の「利用者」について、どのように考えるべきか、どのように表現していくべきかを解説していく。図
僕たちは、あえて「顧客」ではなく「利用者」という言葉を使っている。
それには理由がある。
なぜなら、事業やサービスで価値を提供される主体が、必ずしも対価を支払うわけではなく(受益者負担ではなく)、一般的に顧客と定義されない主体も利用者の段に入る可能性があるからだ。

そのため、より広い意味で「利用者」という言葉を用いている。
必ずしも対価を払うわけではないが、事業やサービスを利用しているなら、それも主体の候補とすることが必要になるのだ。

そうした前提の上で、「利用者」という言葉で想像するのは、どのような主体だろう?

実は、サービスを利用する、といったときにも多様な関わり方がある。
直接的であれ、間接的であれ、単に「利用している」という軸だけで利用者を選ぼうとすると、たくさん候補が出てきてしまい、混乱してしまうかもしれない。

そこで、利用者について以下のような定義で考えることを推奨する。

利用者の条件1 サービスの価値を受けている
利用者の条件2 サービスに対価を支払っている

それぞれ解説していく。

利用者の条件1 サービスの価値を受けている
たとえば、図解する対象の事業がアプリを提供するものだった場合、それをインストールして利用する人が利用者として想定されるだろう。
店舗を構える事業なら、その店舗に足を運ぶ人が利用者として選定される。

他にも、そのサービスを利用している人が、他の主体にビジネスを行う、というような形もあり得る。
いわゆるB2B2C(※)などがこれに該当するが、そういう主体も利用者に含まれるだろう。

※B2B2C・・・Business to Business to Customerを略した単語。B2C取引を仲介する事業などが該当する。

利用者の条件2 サービスに対価を支払っている
ビジモ図解は、その事業の経済合理性をシンプルに整理して表現するものである。
そのため、価値を受けるという関係以外にも、それに対して対価を支払うということが説明されないといけない。

ただし、この場合の対価とは必ずしもお金とは限らない。最終的にお金に換えられる何らかの対価を事業者側へ提供している場合もある。

たとえば、「Cansell」というサービスがある。
行けなくなったホテルの予約を簡単に売ったり買ったりできるというものだ。
通常、予約していたホテルをキャンセルすると、キャンセル代を支払う必要がある。
しかし、このサービスを使うと、自分の宿泊予約の権利を売ることができるのだ。

利用者(予約を売りたい人)はCansellに対してお金を払うわけではない。
それどころか逆に宿泊予約の権利を売ることによって、Cansellからお金を得ることができる。

ではCansellはどこからお金を得ているのか?
それは、予約を買いたい人からだ。
Cansellを通じてホテルの予約を購入しようとすると、通常価格より安くホテルの宿泊予約の権利を購入できる。
Cansellは、その時の価格の15%を手数料として受け取る。

つまり、利用者はお金ではなく宿泊予約の権利をCansellに提供することで、Cansellの経済合理性を生み出す手助けをしているのだ。

この2つの利用者の条件は、第2章の内容と照らして考えるとよりわかりやすい。
第2章では、図解の左右をWhat(利用者は何にお金を払っているか?)と、How(事業者はどのようにお金を回しているか)に分け、これが説明できないとビジモ図解としては不十分、ということを述べた。

つまり、図解の上段の「利用者」に記載すべき主体は、「サービスの価値を受けている」「サービスの対価を支払っている」の両方を満たしているものほどふさわしい、ということになる。

2.「利用者」をどのように絞り込むべきか?
ここまで、利用者の段に入れる主体をどのように考えるべきか?
ということを説明してきた。

しかし、この次に問題になるのは、「とはいえ、これらの条件に照らしてみても、図解に入れたい主体がたくさんあって、選べない」ということだろう。
ビジモ図解では、3×3のルールを守ることでシンプルにコミュニケーションしやすくしているため、すべてのステークホルダー(利害関係者)を網羅的に入れることができないからだ。

だからといって、すべての情報を載せようとすると、誰にも何も伝わらない複雑な図になってしまう。
ここからは、そうしたジレンマを解消するための考え方を説明していこう。

利用者を絞り込むためには、以下の2つの観点で考えるとよい。

(1)その主体は対象のビジネスモデルが成立するために必要な主体か?
(2)その主体は、対象のビジネスモデルが経済合理性を成立させるために必要な主体か?

それぞれ解説していく。

(1)その主体は対象のビジネスモデルが成立するために必要な主体か?
事業はステークホルダーがそれぞれ価値を交換し合い、それが循環することで成立する。
顧客に提供する価値を生み出し、提供するために必要な主体があれば、それは記載する必要がある。
なぜなら、その情報が抜け漏れてしまうと、なぜそのビジネスモデルの仕組みが成立しているのかがわからないからだ。

「KOMTRAX」という事業を例に挙げてみる。
KOMTRAXとは、コマツの機械稼働管理システムのこと。
ブルドーザーなどの建設機械に、GPSとその他のセンサーをモニターし、発信するユニットを組み込んでデータを送出することで、どの機械がどこにあるかや、エンジンの動作有無、燃料の残量、機械の稼働時間や稼働率などが、コマツのオフィスでわかるようになっている。

KOMTRAXによって部品の状況が常時モニターされると、故障が起こる前に代理店が手を打てて、効率的に保守点検ができる。
また、その車両情報を蓄積することで、付加価値の高い情報を提供できる。
このシステムにより、「コマツでないと困る」と言われるほどのブランドを作り上げた。

ここで重要なのは、販売した建設機械の部品の状態を常時モニターすること、そしてその情報を活用して、保守点検が効率的にできるということだ。
コマツだけで保守点検までできているわけじゃない。
となると、代理店が図の中に挿入されないと、ビジネスモデルとして説明が不十分になってしまう。

このように、必要な主体が整理されることで、まず仕組みとしてどうやって成り立っているのかを説明することができる。
そして、その上で、経済合理性について説明する必要がある。

(2)その主体は、対象のビジネスモデルが経済合理性を成立させるために必要な主体か?
ビジモ図解で必要なことは、経済合理性を説明することだ。
たとえば、利用者のうち、サービスを直接的に利用している人がお金を払わないビジネスの場合は、他の利用者や事業者側の主体がお金を支払うことがあるかもしれない。

他にも、B2B2Cのビジネスの場合、エンドユーザーに価値が提供され、そこからお金が支払われることで、ビジネスモデル全体の経済合理性が担保されることになる。

ここでは、「lifeStraw(ライフストロー)」の例を紹介しよう。
安全な水が飲めるストロー型の浄水器をケニアの人々に提供する事業だ。

ケニアの人々に普通に浄水器を販売するというのは難しい。
なぜなら、彼らは低所得だからである。
では、どこで収益を得ているか? というと、右上の企業からだ。

ライフストローが出る前は、水を煮沸することで殺菌をして水を飲んでいた。
当然、火をつけるために木々を切る必要があった。
しかし、ライフストローが提供されることで、木々を伐採する量が減りCO2排出量が削減された。
その削減された排出量を炭素クレジットに還元して、企業に販売することで、間接的にライフストローは収益を上げている。

つまり、製品を販売する先にお金を負担させることができないので、他の主体から経済合理性を得ているのである。

このように、事業の経済合理性を説明するのに必須な主体を選別していけば、どの主体を利用者の列に置くのか迷うことは少なくなるだろう。
自分がその事業で説明したいことを軸として、ぜひ前述の観点で主体を選ぶことを試してみてほしい。

この章では、ビジモ図解の3つの段の上段にある「利用者」についてどのように考えるべきかを説明した。次の章では、下の段にある「事業者」についてどのように考えるべきかを説明していこう。

第3章のまとめ

利用者の候補を選ぶときは「①その主体がサービスの価値を受けている」「②その主体がサービスに対価を支払っている」という観点で選ぶとよい
●その2つの観点を満たしているものが、利用者の中央に位置しやすい
●利用者の候補を絞り込むためには、「①その主体は対象のビジネスモデルが成立するために必要な主体か?」「②その主体は、対象のビジネスモデルが経済合理性を成立させるために必要な主体か?」という観点で考えるとよい

第4章:「誰が」運営する事業なのかを考える
1.事業者とはなにか?

前章では、ビジモ図解の上段に位置する「利用者」に何を配置すればいいかを解説してきた。
この章では、ビジモ図解の下段に位置する「事業者」についてどう考えるべきかを解説する。

ビジモ図解の解説をするときによく問われることが、「なぜ事業者と事業は分かれてるのか?」ということだ。
多くの人が混乱する箇所だと思う。

ビジモ図解で事業と事業者を分ける理由は、事業者によっては事業が複数あるためだ。
図解を3×3におさめるというシンプルに構成するルールを持つ特性上、事業を単体で扱うことで情報量をおさえている。
逆に言えば、複数の事業を同時に図解してしまうと、情報量がふえてシンプルな構成にしづらくなる。

そのため、単体の事業がテーマであることをより強く意識するために、事業を中央段に、事業者を下段に配置する

2.事業者として考えられる主体は誰か?
事業者として図解に表現する必要がある主体は何だろう?

大きく、以下3つのどれかを指して、「事業者」と言えるだろう。

(1)その事業を運営している主体
(2)(1)と協業している主体
(3)(1)と資本関係にある主体

それぞれ解説していく。

(1)その事業を運営している主体
「事業者」という言葉で真っ先に浮かべるのはここだろう。
対象の事業に経営資源を投下し、利用者から収益を得る主体だ。
この事業者は中央下に位置する。

ただし、現代のビジネスは多様なステークホルダーと協力して経営資源をやりとりしながら、一つのビジネスモデルを構築するケースが多い。
その場合、別の主体を事業者として表現する必要があり、そのために(1)だけで完結する事例は少ないだろう。
そこで、(2)と(3)についても考える必要がある。

(2)(1)と協業している主体
(1)と一緒に運営している主体のこと。
経営資源をその事業に対して割いている場合や、社内外の異なる事業をその事業と連携している場合などがある。

「Spotify」はいい事例だろう。
「Spotify」とは、月間2億人のユーザーが利用する世界最大級の音楽ストリーミングサービスだ。

「Spotify」は、音楽配信を無料で提供する代わりに、広告モデルによって収益を上げている。
そうした同社のビジネスモデルを実現するため、「レーベル」と「広告主」とそれぞれ協業関係にある。
レーベルは音楽配信のために、広告主は広告を作るために必要な事業者だ。

これによって、ユーザーに楽曲という価値提供をするだけでなく、広告モデルとして収益が上がっていることを説明できる。

このように、自社のビジネスモデルを成立させるために多様なステークホルダーと協力関係にある場合、それらを事業者の段に記載する。

(3)(1)と資本関係にある主体
(1)に資本を提供しているとか、株式を完全に取得しているような主体があれば、それも事業者としてカウントするべきだろう。

その親会社のブランドや資本力によって、対象事業が成長しているということがあるかもしれない。
また、資本を提供してもらっていることを表現することで、ビジネスの優位性が説明しやすい場合もある。
ビジモ図解は、そのビジネスが経済合理的か?
を見るものだからだ。

ここまで事業者の対象はどこまでを指すのか、という考え方について説明してきた。
しかし、第3章と同様、そこからどう主体を絞り込んでいくのか?
という点が重要になってくる。

2.事業者をどのように絞り込むべきか?
事業者を絞り込むときに、以下のような観点で考えるといいだろう。

(1)その事業者は中段の左右の主体と関係があるか?
(2)対象となる事業において、その事業者のメリットはあるか?

それぞれ解説していく。

(1)その事業者は中段の左右の主体と関係があるか?
対象の事業が運営されるために必要不可欠な価値を提供しているか、ということが重要な観点である。
経営資源を提供しているとか、特定の製品やサービスを提供しているなど、それによって対象事業が成立しているかどうか、ということだ。

ただし、ここで考えるべきは、その図解で伝えたい内容に即した事業者であるか?
という点だ。サービスや商品に関わるすべての事業者を記載しようとすると、無限に事業者のリストが出てきてしまうだろう。

たとえばモノを作る場合もデザインや製造を外部委託する場合があると思うが、そうした一般的な業務委託の関係者をすべて図解に載せると、図解で伝えたい内容がかえって伝わりづらくなってしまうこともある。

では、その図解で伝えたい内容に即している、とは何か。
それについてまず考えるべきは、特に中段の左右の主体に関わる事業者であるかどうかということだ。

「Spotify」の例でいうと、同社は音楽配信をするためにアーティストから楽曲を提供してもらう必要があり、また収益を上げるために広告を打ち出す必要がある。

そのため、下段の右に広告主が存在していて、広告を出稿してもらう代わりに広告費をもらうという関係性を図示している。
また、レーベルには契約料を支払い、レーベルに所蔵するアーティストから曲を配信してもらうということを実現している。

これによって、「Spotify」がなぜ経済合理性を確保しているのかを説明することができる。

ビジモ図解は、情報をシンプルに伝えるフォーマットである。
そのビジネスモデルに関して網羅的に情報を掲載することは難しい。

そのため、そのビジネスモデルで特に重要な点、特徴について説明するのに必要な情報に絞り込む必要がある。
第2章で解説したように、ビジモ図解は中段の左右の主体が重要なので、下段はそれに関わる主体を選択するといいだろう。

(2)対象となる事業において、その事業者のメリットはあるか?
事業者というのは経営資源やサービスの一部をそのビジネスモデルに提供している主体だというのはこれまで述べたとおり。
事業者は基本的に営利企業が多い。
まったく自分に利益がないにも関わらず、そのビジネスモデルに協力しているとは考えづらい。

そこで、そのビジモ図解において、明確にメリットが説明できるか?
どのような価値交換が行われているのか?
を説明できる事業者を選択するといいだろう。

ビジネスモデルは価値の交換で成立する
経営資源を供給してもらう場合は、何かをこちらも提供しているはずだ。
それはお金やモノの場合もあるし、情報の場合もある。

そのビジネスモデルでどうしてその主体が協力してくれているのか?
ということを説明できないと、それはビジネスモデルとは言えない。
何より、経済合理性を説明するというビジモ図解の趣旨にも反してしまう。
関係者同士がどのような価値を交換しているかを明記できる主体を選び、記載しよう。

ここまでで、ビジモ図解についての基本的な作り方を解説してきた。
これまでの内容を理解していれば、一定のクオリティのビジモ図解は作成できるようになっていると思う。

ただ、自分では納得できるクオリティの図解が作れたとしても、思ったとおりには人に伝わらないとか、もっとメッセージを明確にしたいという表現の問題が出てくるだろう。
ビジモ図解はコミュニケーションツールであるため、より伝わる表現にすることも大事である。

そこで、次の章からは応用編として、ビジモ図解をさらに効果的に活用するために、より相手に伝わる表現にする方法を解説していく。

第4章のまとめ

●事業者を選ぶときには「(1)その事業を運営している主体」「(2)(1)と協業している主体」「(3)(1)と資本関係にある主体」の観点で考えるとよい
●事業者を絞り込むときには、「(1)その事業者は中段の左右の主体と関係があるか?」「(2)その事業者のメリットはあるか?」という観点で考えるとよい
●すべての関係者を記載しようとせず、その事業を特徴づける要素をもっているか、ということを意識して主体を選ぼう

第5章:図解の表現で避けるべきこと
1章から4章までは、ビジモ図解の作成ルールについて解説してきた。
基本的に、これまでの内容を踏まえれば、図解を作成することはできるだろう。
しかし、忘れてならないのは、図解はコミュニケーションツールであるということ。

そのため、自分で思いどおりの図解ができたと思っても、相手に伝えたいことが伝わらなければ、図解としての役割を果たしたことにはならない。

そこで、本章では、どうしたらより相手に伝わりやすい図解が作れるのか、ということについて解説していこう。

1.なぜわかりづらくなるのか
ビジモ図解は、シンプルに3×3のマス目で事業を表現するツールである。
この図解を用いる利点は、そのシンプルさにある。
つまり、詳細に情報を記載する他のツール群と異なり、情報が限定されているがゆえに、伝えたいメッセージが伝わりやすいのだ。

しかし、これは当然、伝わるように情報を整理している場合に限られる。
いかにビジモ図解といえども、これを使うだけでなんでもシンプルに伝わるというわけではない。
実際に、ワークショップなどでビジモ図解をしてもらうと、ビジモ図解の強みを生かし切れず、情報が伝わりづらい図になってしまうことが多い。

では、なぜこのようなことが起きてしまうのか?

情報が伝わりづらくなるパターンは、以下のようなことが考えられる。

①何を伝えたいのかメッセージがクリアになっていない
②読み手の理解度を考慮していない

それぞれ、どういうことかを説明していこう。

①何を伝えたいのかメッセージがクリアになっていない
ビジモ図解は、コミュニケーションツールである。誰に何のために伝えるのか、ということが重要というのは、第1章で述べたとおりだ。

しかし、往々にして、ビジモ図解を作ることが目的となってしまい、図解を通して何を伝えたいのかを考えることがおろそかになってしまうことがある。

そうすると何が起きるか。
複雑なビジネスについてなんの指針もないまま図解していくと、情報に優先度がないため、たくさんの情報を図の中に入れたくなってしまい、結局何がいいたいのかわからない図になってしまう。
これではビジモ図解の「シンプルでわかりやすい」という強みを生かせず、とても中途半端な図解になってしまうのだ。

②読み手の理解度を考慮していない
メッセージを明確にして情報を絞れたとしても、その図内で使う用語などがわかりづらいことが多々ある。
業界用語や専門用語など、一部の人にしかわからないような表現を多発してしまうのだ。

これによって、図解を見る人がその単語を知らなかったときに、理解が追いつかなくなり、そもそも見てもらえないという事態に陥ってしまう。
これは、伝えたい相手がいることを忘れ、自分の視点だけで図解を整理してしまう場合に生じる問題である。

2.どうしたらわかりやすくなるのか
こうした問題は、誰でも起こりうるものである。そこで、そうした状況に陥らないように、どのように図解を進めていくべきかを解説していく。

(1)その事業について一言で表現してみよう
何を伝えたいのかわからない図になってしまう原因は、主に2つある。

●図解したい事業についての情報が不足している
●図解したい事業についての情報が整理されていない

前者については、そもそも図解にとりかかる段階ではないので、その事業について調べることからはじめる必要がある。

後者については、ビジモ図解を作成するときに、結局その図で何をいいたいのか?
その事業は端的にいうと何なのか?
ということがわかっている必要がある。
それができていないと、図解する際の焦点が定まらないため、よくわからない図になってしまう。

そこで、僕たちが図解をするときに必ず行っていることがある。
それは、その事業の特徴について端的に表現する「一言説明」を作成することだ。

たとえば、「Mobike」というサービス。

「Mobike」を一言で説明すると、「使用マナーによって使用料が変わる自転車シェアリングサービス」

使用マナーに該当する部分は、図の左にある信用スコア。
自転車シェアリングサービスの部分は図の右の部分にある自転車で表現している。
そして、サービスとして収益を生んでいる部分は中央に位置するスマホへの預かり金。

こうして、一言説明をもとに整理していくことで、ビジモ図解に必要な伝えたいメッセージやその優先順序がシンプルに表現できる。

図解を作成する前に、情報を整理できているか確かめるためにも、「その事業は一言で言うと何か?」ということを考えてから図解に取り組んでみよう

(2)素人力をもって図解を作成しよう
何度も繰り返すが、図解はコミュニケーションツールである。
しかし、1の②で説明したとおり、図解を作成していくうちに読み手の存在を忘れてしまい、自分が気持ちがいいと感じる用語で整理するようになってしまうことがある。

そうした事態を避けるために心がけたいのは「素人力」を持つということ。
素人力とは専門的な知識を持ちながら、素人的な視点を持つ力のこと

そもそも知識を持っていないと、図解は作成できない。
でも、コミュニケーションツールとして活用するためには、どういう情報だったら相手が理解に苦しまないかを考える必要がある。
そうしたバランスが重要ということである。

自分が専門性が高ければ高いほど、正確性を重視するあまり、こうした「素人力」を発揮することは難しい。
しかし、自分の頭の整理のためではなく、他者に何かを伝えるためにビジモ図解を作成するなら、こうした視点は重要である。

ぜひ、「素人力」を持って図解を作成しよう。

この章では、図解全般についての表現で避けるべきことと、具体的な回避法について解説した。

次の章からは、主体や矢印、補足といった、ビジモ図解の構成要素のそれぞれについて、より具体的な表現のコツについて解説していく。

第5章のまとめ

●ビジモ図解は情報をシンプルに整理するコミュニケーションツールであるため、メッセージを明確にして、情報に優先度をつける必要がある
●そのためには、伝えたい内容をシンプルに一言で表現してみるとよい
●「素人力」を大事にして、相手のリテラシーを考えつつ、どうしたら理解に苦しまずに伝えたいことが伝わるかを考えよう

第6章:ビジネスの特徴を明確に打ち出すコツ
ビジモ図解を作るにあたり、何を主体にするかでクオリティは大きく変わってくる。
何度も言うようだが、特に重要なのは中央の横列、つまり「事業」に何を配置するかだ。
それによってそのビジネスモデルの特徴が表現されるからだ。これまでWho・What・Howに分けて考える方法などを説明してきた。

これで一定のレベルで図解を作成できると思う。
しかし、僕たちが目指すのは「その事業の斬新さや特徴がはっきりと表現されている図解」だ。

この章と次の章では、ビジモ図解の応用編として、事業の特徴をはっきりと表現するための上級者向けのテクニックを紹介する。

1.4つの経営資源を軸に考える
ビジモ図解では何を誰に伝えるかという目的を意識することが大事だ。
その事業の固有の価値は何か、なぜその事業が優れているのか、というような、図解を通して伝えたいことを明確にする必要がある。

しかし、そもそもその事業で伝えるべきことが何なのか整理がつかず、迷ってしまう場合もあるかもしれない。
そんなときには、経営資源を起点にして事業の特徴を考えるとよい。
経営資源は、モノ、カネ、情報、ヒト、という4つにカテゴライズできる。

①モノ‥新たな「コアバリュー」を提供する
これまで見過ごされていた価値を時代背景の変化により「本質的な価値」として再定義した事例

②カネ‥新たな「お金の流れ」を作る
これまでお金にならなかった領域や、お金の流れが滞っていた領域の事例

③情報‥新たな「テクノロジー」を使う
実現が難しかった領域を、情報技術やデータ活用により突破している事例

④ヒト‥新たな「ステークホルダー」を巻き込む
これまでつながりを持たなかった企業や団体を効果的に巻き込んだ事例

自分が図解をする事業は、この4つのカテゴリーのうちどこを強調して説明できるものなのか。それを軸に考えてみると、事業の特徴がおのずと見えてくるだろう。

そして実は、このカテゴリーは「どのような価値をもたらしたか」によって、さらに細分化することができる。
たとえば「④ヒト」は、リソース系、社会課題系、マッチング系の3つのビジネスモデルに分類できる

それぞれ、具体的な事例をもとに解説していこう。

2.各経営資源が生み出す価値
各経営資源が生み出す価値は、以下のA〜Dの4つのモデルに細分化することができる。

A.「モノ」に特徴を持つビジネスモデル

たとえば、時空系の事例としては、「ecbo cloak」という事例があげられる。

「ecbo cloak」は、カフェやショップなどの空きスペースを利用して、荷物を確実に預けることができるサービスだ。
荷物を預けたい人は、預ける場所を探して予約をするだけ。
決済もクレジットカードで事前に済ませることができる。

このサービスにより、これまで遊休資産となっていた店舗の空きスペースを荷物を置く場所として貸し出すことで、店舗側もそこから収益を生み出すことが可能となった。
さらに、「ecbo cloak」のユーザーはついでにお店を利用してくれるため、一石二鳥のサービスである。

この事例では、従来は使われていなかった空間(このケースの場合は店舗)をシェアすることによって、新たな価値を生み出していることを説明したいため、店舗と空きスペースを配置している。

B.「カネ」に特徴を持つビジネスモデル

たとえば、転換系の事例としては、「グローバルモビリティサービス」があげられる。

「グローバルモビリティサービス」は、自動車販売のためのシステム。
車を購入するときは、通常与信審査があり、低所得者層や支払い能力があるにもかかわらず与信枠が薄い人は所有することが難しかった。
しかし、このサービスは遠隔管理ができるIoT機器を車に搭載することで、これまで車を所有できなかった人たちにも車を販売することを実現した。
ローン返済を滞納した場合は、車は遠隔で停止される。

この事例では、これまで自動車販売のターゲットとして捉えられなかった人に対しても自動車販売が可能になったことに、カーローンとそれを支える仕組みが重要であることを説明したいので、左にカーローンを配置している。

C.「情報」に特徴を持つビジネスモデル

たとえば、技術革新系の事例としては、「Amazon Go」があげられる。

「Amazon Go」は、Amazonがはじめたレジなしコンビニ。
これまで買い物客がストレスを感じやすかった「レジの行列」。
会計はお店を出る前にするのが当たり前だったけれど、Amazonはテクノロジーを駆使してレジをなくすシステムを作った。
自動運転技術を応用した仕組みで、どの品物を購入したのかを読み取ることが可能になり、そうすることで買い物客は店内で支払いをしなくてもよくなった。

このように、これまで実現が難しかったことをテクノロジーによって実現したことが重要な場合は、そのテクノロジー(このケースの場合はシステム)が、必要な主体ということになる。

D.「ヒト」に特徴を持つビジネスモデル

たとえば、リソース系の事例としては、「SCOUTER」があげられる。

「SCOUTER」は「友人・知人のネットワーク」を活用した転職エージェント。
転職市場は、一般的には、転職希望者が人材サービスに登録し、そのサービスを運営する会社のエージェントが転職先を紹介するという構造になっている。

しかし、SCOUTER(スカウター)では、サービスに登録するユーザー自身が「エージェント(スカウター)」となる。
求人企業のニーズにマッチする人材を、ユーザーの友人・知人など身近な転職希望者の中からヘッドハンティングし、報酬を得る。

これまで人材紹介のエージェントは人材紹介会社の社員が、本業として行うのが常識だった。
一方、SCOUTERは、「友人・知人を紹介する」という個人のネットワークによってマッチングの確率と質を上げるビジネスモデルになっている。

この事例では、プロではなく個人のスカウターという新しいステークホルダーを巻き込み、人材獲得の枠組みを広げたことが事業の鍵となるため、スカウターと転職希望者が重要な主体となっている。

このように、各経営資源のもたらす価値に着目すると、その事業の特徴をはっきりと表現できる主体が何なのかが、おのずと見えてくるだろう。
さらにその経営資源がもたらす価値を軸にしてビジモ図解のメッセージを考えることができれば、より具体的で明確な図解の構成になり、一貫性のある図解にすることができる。

3. 経営資源を軸に考えることのメリット
経営資源を軸に考えることは、事業の特徴を明確にするだけでなく、もう一つのメリットがある。
それは、「そのビジネスを特徴づける主体のアイコンで迷わなくなる」ということだ。

ビジモ図解で意外につまずきやすいのはアイコンを何にするか、ということだ。
主体のアイコンを考える際はどうしてもその形から考えてしまいがちだが、大切なのはその主体がどの経営資源に分類されるかを表現することだ。

ツールキットには、各経営資源に対応して色分け(ヒト:白、モノ:緑、カネ:黄、情報:青)したアイコンがある(第1章の図)。

はじめから経営資源を意識して図解を作成していれば、どのアイコンを使えばいいのかで迷わなくて済む。

したがって、ビジモ図解をより明確なメッセージ性を持たせて作成したい場合は、経営資源について意識して、かつそれぞれの経営資源のどのような特徴を打ち出したいのかを考えてから図解するようにしよう。

第6章のまとめ

●事業の特徴が何なのか整理がつかず迷ってしまう場合は、モノ、カネ、情報、ヒト、という4つの経営資源を起点にして考えるとよい
●4つの経営資源は、それぞれもたらす価値によって、さらに細分化できる。
各資源のもたらす価値に着目すると、より具体的にメッセージを考えることができる
●ビジモ図解で意外に迷うのがアイコンをどうするか。
それも、最初から経営資源を意識していれば対応するアイコンを選ぶだけなので迷う必要がなくなる

第7章:矢印と補足を使いこなすコツ
1.矢印の使い方
前章では、ビジモ図解で一番重要な主体を考えるときのコツを説明した。
しかし、ビジモ図解は主体だけではなく、矢印と補足も合わせて使うことによって完成する。

主体を並べたあとに重要になるのは、矢印と補足をどのように使うかということだ。
この章ではそれについて解説していこう。

(1)ビジモ図解における矢印とはなにか
ビジモ図解では、ある主体同士の「関係性」を表現するために、矢印を用いる。
なぜ、関係性を重視するのか。
それは、ビジネスの仕組みの基本は、「異なる主体の関係性を作ること」だから
だ。

これまで見てきたビジモ図解はすべて、そのビジネスにおける重要な主体がどのように価値を交換しあうことで事業を成立させているのかを説明している。

重要な主体の選び方と配置の仕方はこれまでの章で説明してきたとおりだが、それぞれの主体がどうしてそのビジネスモデルで重要なのかを説明するにあたって活躍するのが矢印だ。

(2)矢印を使う際のコツ
矢印を使う際のコツは、大きく3つある。

①価値がどのように循環しているかがわかるように表現する
②それぞれの主体の役割を明確に表現する
③それぞれの主体のインセンティブをわかりやすく表現する

順番に説明していく。

①価値がどのように循環しているかがわかるように表現する
ビジネスは、利用者に持続的に価値を提供する必要がある。
持続的であるためには、その価値に対する対価を受けとり、それをまた価値に変えて提供するという「循環する仕組み」が必要だ。
対象事業を説明する際には、その全体の価値の循環がどのように構築され、その流れがどこに帰結するのか。
それを見た人が読み解けるような図解を意識しよう。

たとえば「Spacious」というサービスがある。
Spaciousは、開店時間前のレストランをコワーキングスペースとして提供するサービス。

コワーキングスペース自体はWeWorkをはじめ多くの企業が手がけているけれど、その多くが自前で場所を用意している。
しかも最近は、どこもリノベーションしておしゃれな空間を演出することで差別化を図っているため、コストは上がる一方。

そのような市場環境の中、Spaciousのサービスは、レストランが開店する前の空き時間を活用することで、自前で空間を用意しなくてもコワーキングスペースを運営できるようにしている。

ここでお金の流れに注目する。
ユーザーは毎月利用料をアプリ上で支払う。
そして、それがサービスの売上となる。
そのお金は、コワーキングスペースの運営だけでなく、空間を提供してくれるレストランにも毎月利用料として支払われる。

このように、お金が循環していることがわかるよう、流れを意識して説明することが大切だ。

②それぞれの主体の役割を明確に表現する
ビジモ図解は、主体同士の関係性による価値の交換の流れを説明するものである。
つまり、その流れが読み取れるような表現になっている必要がある。

図解の対象となる事業が価値を生み出すために、どこから経営資源(モノ、カネ、情報、ヒト)を取得して、それをどのように事業価値に変換して利用者に提供しているかが、主体と矢印を見てわかるような図解となることが望ましい。

図解を見ても、主体同士が一体どのような役割を果たしているのか、それぞれの主体がなぜ存在しているのかが明確ではないと、読み手としては疑問が残る図解になってしまう。
その主体を選んだ理由に基づいて、役割を明確に際立たせた図解を作成しよう。

③それぞれの主体のインセンティブをわかりやすく表現する
ビジモ図解は、その事業の経済合理性を説明するものである。
主体同士はそれぞれにその事業に関わることで利益があるから価値を提供しているはず。
それぞれの主体がなぜその事業に関わっているのか、どのように経済合理性を確保しているのかを説明することで、その事業がなぜ持続的に価値を提供できているのかが伝わるだろう。

たとえば、ビジネスモデルを成り立たせるためにある主体からお金や技術を提供する矢印があれば、その主体にとってインセンティブとなる矢印が必ずあるはずだ。

ここでいう「経済合理性」というのは、単にお金だけではない。
ある情報を得ることができたり、自社サービスを提供することで間接的に利益を得るようなもの(広告など)もありえる。

(3)矢印を活用する際の注意
矢印は、主体同士の関係を説明するものだが、細かな説明を詰め込んでしまうと、たくさんの矢印が生まれ、それぞれがごちゃごちゃと並び、結果的にわかりづらい図になってしまう。

矢印を使用する際に意識してほしいことは、以下の3つだ。

①隣り合う主体同士の矢印は2本に抑える
②矢印は隣り合わない主体同士を結び付けないようにする
③入れ子の関係の意味を理解する

順に説明していこう。

①隣り合う主体同士の矢印は2本に抑える
主体同士の矢印が多くなると、それぞれの矢印に文言を付与したときに図が複雑になり、わかりづらくなってしまう。

なるべく端的に、メッセージを絞り込んでから、少ない矢印で関係性を表現できるようにしよう。

②矢印は隣り合わない主体同士を結び付けないようにする
ある主体を飛び越えて矢印を結び付けないようにしよう。
利用者の段と事業者の段は直接面してないが、そこに矢印を結びつけることは可能だ。
しかし、そうした「飛び越える矢印」は、関係性が理解しづらい。
そうした表現になってしまう場合、まず主体選びやその配置を見直すことを優先し、どうしても必要でない限りは控えよう。

③入れ子の関係の意味を理解する
ビジモ図解のワークショップをするときに、多くの人が混乱するポイントである。
入れ子の関係を説明する矢印は、主体同士が包含関係にあるときに使用する。

たとえば、「WAmazing」というサービスがある。WAmazingは、訪日外国人観光客の不便を解消してくれるサービスだ。

訪日者は出発前にアプリをダウンロードしてクレジットカード登録をしておき、日本に到着したら、全国の空港で配布されている無料SIMカードを受け取る。
そのSIMカードをセットしてアプリを使えば、無料通信、タクシー・観光ツアーの予約、決済までがワンストップで利用できるのだ。

アプリの機能はそれだけではない。
SIMカードを通じてWAmazingには旅行の記録が蓄積されていくため、帰りの空港で「おみやげを買い忘れてしまった!」という旅行客には最適なリコメンド広告も届く。

このサービスでは、中心にあるWAmazingというアプリと、SIMカードが従属の矢印で結ばれている。
これが意味することは、SIMカードが主で、それを利用するためにアプリが存在するということ。
あくまでも課題を解決してくれるのはSIMカードであって、それを使えるようにする媒体として、アプリがあることを表現している。

他の矢印との違いを意識して、必要に応じて活用できるようにしよう。

2.補足の使い方

(1)ビジモ図解における補足とは何か
ビジモ図解は3×3のシンプルなルールで、情報を削ぎ落とすことで伝わりやすくするツールである。
しかし、主体の名前や矢印の文言だけでは、その事業の価値を説明するのに不十分な場合がある。
補足は、それを補うために活用する。

たとえば、「Doreming pay」という事例がある。
Doreming payは、働いた分の給料を1日単位で使用できる給与前払いサービス。

仕組みとしては、勤怠管理システムのDoremingによって1日あたりの給与が計算され、従業員のアプリに利用上限額が表示される。
従業員はその金額を上限に店舗で買い物ができ、現金や銀行口座がなくてもスマホさえあれば、給料日を待たずに買い物ができる。

このサービスを成立させるために重要なのが、Doremingという勤怠管理システムだ。
だが、字面だけを見ても、初めて見る人にとっては何を意味しているのかわからないだろう。
そこで、「勤怠管理システム」という補足を入れることで、わかりやすく伝えることができる。

このように、具体的な情報や背景を加えて、よりそのビジモ図解全体を理解しやすくするために、補足を使う。

(2)補足を使う際のコツ

①補足にメッセージを詰め込みすぎない
補足を使うときについついやってしまいがちなことが、その補足する対象についての説明を詳細に記載してしまうことだ。
それによって、一つの補足にいくつものメッセージが含まれ、長文になり、読み手が疲弊してしまう。

そこで、一つの補足には一つのメッセージを含めることを心がけよう。
何を伝えたいのかを明確にして、情報を詰め込みすぎないことが大切だ。

②利用者にはデモグラフィック情報を補足する
利用者に対して補足を入れるときに重要な情報は、デモグラフィック情報だ。
デモグラフィック情報とは、その人がどのような人かを表す人口統計学的な属性で、住んでいる場所や年齢、性別、所得などが含まれる。

こうした情報があると、その事業がどのような人をターゲットとしているのかがわかり、そのターゲットに対してどうしてその事業が広まったのかという理解が深まる。
事業は顧客の課題を解決するものであるため、具体的な利用者像が見えれば、その事業がどのような戦略でそうした利用者にアプローチしたのかが見えてくるだろう。

③事業者には設立のタイミングなどを補足する
事業者に対して補足を入れるときに重要な情報は、設立されたタイミングや、どこで設立されたのかという場所の情報、親会社の情報などだ。

設立されたタイミングはそのときの事業環境でなぜその事業が成立したのかが理解しやすいし、設立された場所はどういう事業環境でどのようなターゲットが想定されたのかがわかりやすい。
親会社については、その事業者のルーツが明確になることと、場合によっては経済合理性の一部を説明することになる。

事業者の強みを把握することや、その事業者が置かれた環境についての解像度を高めることは、なぜその事業が生まれたのか、なぜその事業が成功したのかを深く理解することにつながる。

(3)補足を使う際の注意

補足を使う際に、意識しなければならないことがある。
それは、補足はあくまでも情報を補うものだということだ。補足は情報を気軽に付け足すことができるため、ついつい多用しがちであるが、使いすぎるとビジモ図解の良さであるシンプルさが損なわれてしまう。
情報過多になり、視認性が悪くなって、理解度が下がってしまい、本来のビジモ図解の価値が半減してしまう。

ビジモ図解は複雑な情報を「図で解く」ことでコミュニケーションを円滑にするツール。
伝えたいメッセージは補足の文章ではなく図で表現することを心がけよう。

補足は非常に便利で、網羅的に情報を入れたくなってしまうが、あくまでも必要な情報が何かを意識したうえで、最低限のものにとどめよう。
ビジモ図解の本来のツールとしての強みを意識して図解を作成しないと、目的に叶わない図解が生まれてしまうことになる。

第7章のまとめ

●ビジモ図解は、主体だけでなく矢印と補足も重要である
●ビジネスの仕組みの基本は、「異なる主体の関係性を作ること」であり、矢印は主体同士の関係性を表現するためのもの。
そのビジネスがどうして持続的に価値を提供できるのかを説明するために矢印を用いよう
●補足は情報を付け足す便利な要素ではあるが、使いすぎるとビジモ図解のシンプルさが失われてしまうため、最低限のものにとどめよう

第8章:ビジネスモデル図解を自分のものにする
ここまでの章で、ビジモ図解についてのノウハウを説明してきた。

この章ではまとめとして、ビジモ図解を活用して自分の仕事に生かすために必要なポイントと、ビジモ図解にとどまらない「図解思考」について説明しよう。

1.ビジモ図解の理解の3ステップ

ビジモ図解を自分のものにするまでには、以下の3つのステップがある。

● 認識:たくさんのビジネスモデルを知る
● 学習:ビジモ図解の方法を学ぶ
● 実践:自分の仕事で図解を取り入れる

まずは認識。
いろいろなビジネスモデルを見ることで、自分の知らなかった事業に触れる。
そうすると、自分の中にある常識にとらわれないようになり、思考の幅を広げることができる。

次に学習。
3×3という同じ図解の「型」でビジネスモデルが表現されているのを見ていくことで、ビジモ図解の読み解き方に慣れていく。
構造の似ている点や、異なる点を比較することで、アイデアを広げていくことができる。

最後に実践。
自分で図解をして、自分の仕事上で図解を取り入れることができる段階だ。

ここまで読んでくれた読者のみなさんは学習までは経たはずだ。
いろいろなビジネスモデルがあると認識し、ビジモ図解の構造やルールを学習してきた。
最後のステージは実践だ。

2.ビジモ図解を自分のものにするための3つのコツ

まずは自分の会社のビジネスモデルを図解してみるといいだろう。
ただ、実践してみるとわかるが、いざ自分で図解を作ってみると「この主体はこっちに配置するべきだろうか?
それともこっちだろうか?」
「この主体を加えたいけど、スペースが足りない」と悩むことが出てくる。

ここでは、そんなときに役立つ3つのポイントを紹介しよう。
この3つのポイントは、ビジネスモデルを自分のものにするために必要なものでもある。

A.図解の目的を決めること
繰り返し、何度も説明してきたが、ビジモ図解はコミュニケーションツールである。
そのため、誰に、何のために伝えるか? ということが重要だ。

たとえば、投資家や銀行に対して投資判断を仰ぐためだったり、資金調達が目的だったり、取引先に対しての受注促進が目的だったり、社員に対して新規事業を促進させるためだったり、経営陣に対して稟議を通すために使うこともありうる。
目的と伝える相手によって図解の表現は変わる。
誰に何のために伝えるかをしっかりと考えたうえで、図解を作成しよう。

B.図解はルールを理解して作ること
3×3のルールを前にして、初めて図解を作成する人が口にすることは「もっとマス目が欲しい」ということだ。
しかし、ビジモ図解は、あえて3×3のマス目だけでビジネスモデルを表現することで、構造的にシンプルな表現にせざるを得ないようにしている。
なぜなら、シンプルにする過程で情報を取捨選択する必要に迫られるため、ビジネスモデルにとって重要な情報の優先順位がつけられるからだ。

そうすることで、伝えるべき情報を伝えるべき相手に届けることができる。
そうしたルールの意味を理解した上で、その制約を味方にして図解を作ることを心がけよう。

C.レビューをしあうこと
良い図解は第三者の視点を意識して作られたものである。
ビジネスモデルについて伝えたい内容が多かったり、その事業に対しての想いが強い状態で一人で図解を完成させてしまうと、その内容は独善的で自分にしか理解できない図解になってしまいがちだ。

たとえば専門用語が多いと、相手次第では伝わりづらい図になってしまう。
そうしたことを避けるために、第三者の視点を取り入れ、レビューをしあいながら、わかりづらい点を指摘してもらいつつ、図解を完成させていこう。

この3つのポイントを押さえた上で、まずは自分の会社のビジネスモデルを図解してみてほしい。
図解をしてみることで、意外に自分がその事業についての理解が及んでいないところが見えてきたり、課題が見えてきたり、逆に強みが可視化されたりするだろう。

そうした発見をもとに、他社の事業を図解して、構造の似ているところや違うところから学び、自社の問題を解決したり新しいビジネスモデルを開発してみてほしい。

3.どんなジャンルにも応用できる「図解思考」

(1)図解思考とは何か
そもそも図解とは、物事の「関係性」を解く手段である。
誤解されがちであるが、図解は美しく対象を視覚化するための道具ではない。
情報を構造化して優先度をつけ、何を伝えたいかを明確にする手段である。

図解は、「図で」「解く」と書く。
特に、「解く」というのが大事である。

では、図解は何を解くのか。
それは、関係性である

ビジモ図解も、コミュニケーションツールとして何を伝えたいのかという目的が重要だという話を繰り返ししてきた。
ビジモ図解について、多くの人は綺麗な図のほうに注目しがちである。
しかし、ビジモ図解は、単にビジネスをシンプルなビジュアルで整理することが重要なのではなく、その事業について何を伝えたいのかというメッセージを明確にすることが重要なのである。

では、なんの関係性を解くのか。
ビジモ図解においては、そのビジネスの主体同士の関係性を解くことが重要である。
なぜなら、前章でも説明したとおり、そもそもビジネスとは異なる主体の関係性を作ることであるからだ。

では、主体同士はどのような関係性を作っているか。
それは、価値の交換が成り立つ関係性である。
だからこそビジネスが成り立つのである。

図解の本質がわかったところで、ここからは「図解思考」について説明しよう。

図解思考というのは「ものごとを抽象化して構造を読み解き、相手にわかりやすく伝える一連の思考法」を指す

本書のテーマはビジモ図解だが、図解思考の有効範囲はビジネスモデルだけに止まらない。どんな領域にも応用可能な、普遍的なツールである。

では、具体的にどのようにものごとを図解化していけばいいのか?

(2)図解化のステップ
図解化するまでにはふたつのステップがある。

①まず、情報の並列性を考える
②次に、情報の関係性を考える

どういうことか、順番に説明していく。

①まず、情報の並列性を考える
図解する対象について、たいてい情報はたくさんあり、バラバラとしている。

ビジネスモデルでいえば、顧客の情報、業務の流れの情報、やりとりする人やお金の情報など、多岐にわたる。
そうした複数の情報を、抽象化して、構造化することが、並列性を考えるということである。

抽象化するとは、バラバラと点在している情報について、その共通点を見つけるということ。
その共通事項をまとめていくことで、より大きな概念に整理していく。それが抽象度を上げるということ
だ。

抽象度を上げるときに気をつけることがある。それは、情報が「漏れなくダブりない」状態になるように整理することだ(次の図)。

情報のダブりがあると、整理するときに明確に情報を区切れなくなる。
また、情報の漏れがあると、せっかく整理してもその正確性が失われてしまう。

漏れなくダブりないように情報をまとめることができれば、情報は並列に整理されることになる。
そうした状態になってはじめて、関係性を考えることができる。

②次に、情報の関係性を考える
情報の関係性は、並列にまとめた情報をもとに考える。
それらの情報の関係性がどうなっているのか、ということを考え、それを整理していく。

ここで気をつけることは、図解は複雑に考える必要はないということだ。
基本的には、主体と主体を、その関係性で結ぶだけ。
その主体間の関係性を記述することができれば、図解は完成する。

ビジモ図解も、この2つのステップを経て情報を整理したうえで、作成している。
手を動かして図を作ることよりも、とくに①のステップをしっかりと行うことで、情報がクリアになり、伝えたいメッセージに対してどのように情報を整理すればいいのかが明確になる。

読者のみなさんには、まずビジモ図解の実践を通して、実務でビジモ図解を生かしてもらえたらと思う。
そして、自分でも世の中におもしろいビジネスモデルを生み出してほしい。

ゆくゆくは、ビジモ図解を通して培うことができる「図解思考」を使って、ビジネスモデルに限らず、さまざまなことを図を用いて考られるようになったら、著者としてこれほどうれしいことはない。

第8章のまとめ

●ビジモ図解を自分のものにするためには、「①図解の目的を決める」「②図解はルールを理解して作る」「③レビューをしあうこと」という3つのポイントがある。
図解はコミュニケーションであるため、一人で完結しないことを理解しよう
●図解は対象を視覚化するための道具ではなく、情報を構造化して優先度をつけ、何を伝えたいかを明確にする手段
●ビジモ図解を通して、「図解思考」というツールを使えるようになれば、それはビジネスモデルに限らない強力なツールとなる

本電子書籍は日興フロッギーで連載された「ビジネスモデル図解の作りかた」を改題し、加筆、修正の上、電子書籍化したものです。

[著者]

近藤哲朗
図解総研代表理事。
千葉大学大学院工学研究科修了後、面白法人カヤックに入社。
2014年、株式会社そろそろを創業。
2018年に「ビジネスモデル2.0図鑑」を出版、国内外での発行部数が9万部を超える。
2020年『共通言語の発明』をコンセプトに、ビジュアルシンクタンク「図解総研」を設立し、大手企業・研究機関・行政との図解を通じた共同研究を行う。
2020年4月「ビジネスの仕組みがわかる 図解のつくりかた」を出版。
Twitter @tetsurokondoh(チャーリー)
note https://note.mu/tck

沖山誠
1995年生まれ。
ビジュアルシンクタンク「図解総研」理事。
教養本などの複雑な情報をシンプルに図解し、多くの人がその情報に触れるハードルを下げることで、様々な立場や領域の人が対話できるイベントやワークショップを開催する。
「ビジネスモデル2.0図鑑」「ビジネスの仕組みがわかる 図解のつくりかた」共同著者。
Twitter @kyon_hcj(きょん)
note https://note.com/my_kyon_note

情報源: 『ビジネスの仕組みがわかる 図解のつくりかた』全文公開|図解総研|note

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