「悩む=答えが出ない前提で考えるフリをする、考える=答えが出る前提で組み立てる」 @smoothfoxxx

【問題解決】『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』安宅和人

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」
イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、リアル書店でチェックして、「面白そう」と購入した1冊

その時点では、著者である安宅和人さんの「東大⇒マッキンゼー⇒Yahoo!」というプロフィールしか見ていなかったのですが、実はこの本、はてブでホッテントリ入りしたこのエントリーが元になっているのだそう

圧倒的に生産性の高い人(サイエンティスト)の研究スタイル – ニューロサイエンスとマーケティングの間 – Being between Neuroscience and Marketing 圧倒的に生産性の高い人(サイエンティスト)の研究スタイル - ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Being between Neuroscience and Marketing

まとめ記事ではない個人のエントリーではてブ2600超というのは、只事ではありませぬ

そんな人気記事の書籍化だけあって、さすがに本書自体も非常に濃厚

ブクマされた方は当然としても、「問題解決」に興味のある方なら、必読と言わざるを得ません!

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【目次】

はじめに 優れた知的生産に共通すること

■序章 この本の考え方―脱「犬の道」

■第1章 イシュードリブン―「解く」前に「見極める」

■第2章 仮説ドリブン(1)―イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる

■第3章 仮説ドリブン(2)―ストーリーを絵コンテにする

■第4章 アウトプットドリブン―実際の分析を進める

■第5章 メッセージドリブン―「伝えるもの」をまとめる

おわりに 「毎日の小さな成功」からはじめよう

【ポイント】

■1.との違い

僕の考えるこの2つの違いは、次のようなものだ

「悩む」=「答えが出ない」という前提のもとに、「考えるフリ」をすること
「考える」=「答えが出る」という前提のもとに、建設的に考えを組み立てること
この2つ、似た顔をしているが実はまったく違うものだ

■2.根性に逃げない

労働時間なんてどうでもいい
価値のあるアウトプットが生まれればいいのだ
たとえ1日に5分しか働いていなくても、合意した以上のアウトプットをスケジュールどおりに、あるいはそれより前に生み出せていれば何の問題もない
「一所懸命にやっています」「昨日も徹夜でした」といった頑張り方は「バリューのある仕事」を求める世界では不要だ
最悪なのは、残業や休日出勤を重ねるものの「この程度のアウトプットなら、規定時間だけ働けばよいのでは」と周囲に思われてしまうパターンだ

■3.表層的な論理思考に陥らない

論理だけに寄りかかり、短絡的・表層的な思考をする人間は危険だ

世の中には「ロジカル・シンキング」「フレームワーク思考」などの問題解決のツールが出回っているが、間題というものは、残念ながらこれらだけでは決して解決しない

問題に立ち向かう際には、それぞれの情報について、複合的な意味合いを考え抜く必要がある
それらをしっかりつかむためには、他人からの話だけではなく、自ら現場に出向くなりして一次情報をつかむ必要がある
そして、さらに難しいのは、そうしてつかんだ情報を「自分なりに感じる」ことなのだが、この重要性について多くの本ではほとんど触れられていない

■4.イシューを見極める

問題はまず「解く」ものと考えがちだが、まずすべきは本当に解くべき問題、すなわちイシューを「見極める」ことだ
ただ、これは人間の本能に反したアプローチでもある
詳細がまったくわからない段階で「最終的に何を伝えようとするのかを明確に表現せよ」と言われたら、きちんとものを考える人であればあるほど生理的に不愉快になるだろう
よって、「やっているうちに見えてくるさ」と成り行きまかせが横行するが、(多くの人が経験しているとおり)これこそがムダが多く生産性の低いアプローチだ
あるいは「やらなくてもわかっている」とイシューを見極めるステップを飛ばすことも同じように失敗のもとだ

■5.具体的な仮説を立てる

日本の会社では、「〇〇さん、新しい会計基準についてちよっと調べておいて」といった仕事の振り方をしているのを目にする
だが、これではいったい何をどこまで、どのようなレべルで調べればよいのかがさっぱりわからない
ここで仮説が登場する

「新しい会計基準下では、わが社の利益が大きく下がる可能性があるのではないか」(中略)

このくらいのレべルまで仮説を立てて仕事を与えられれば、仕事を振られた人も自分が何をどこまで調ぺるべきなのかが明確になる
答えを出すべきイシューを仮説を含めて明確にすることで、ムダな作業が大きく減る
つまり生産性が上がるのだ

■6.イシューと仮説を言葉で表現するときは「主語」と「動詞」を入れる

言葉はシンプルであるほどよい
そのための単純かつ有効な方法が、「主語と動詞を含む文章で表現する」ことだ
日本語は主語がなくても文章が成立するため、「進めていくうちに皆が違うことを考えていることがわかった」という状況がよく生じる
主語と動詞を入れた文章にするとあいまいさが消え、仮説の精度がぐっと高まる

■7.一次情報に触れる

知らない人に電話でインタビューを申し込むことを英語で「コールドコール」と言うが、これができるようになると生産性は劇的に向上する
あなたがしかるぺき会社なり大学・研究所で働いており、相手に「守秘義務に触れることは一切話す必要はなく、そこで聞いた話は内部的検討にしか使われない」といったことをきちんと伝えれば、大半は門戸が開くものだ
実際、僕自身もこれまで数百件の「コールドコール」をしてきたが、断られた記憶は数えるほどしかない
生産性を上げようと思ったらフットワークは軽いほうがいい

■8.分析とは比較、すなわち比ぺること

たとえば、「ジャイアント馬場はデカい」という表現を聞いて、「これは分析だと思うか?」と周りの人に尋ねてみると、ほとんどの人が「分析だとは思わない」と答える
しかし、図4のように、ジヤイアント馬場の身長を日本人と他国の人の平均身長と比較して見せた場合には、今度はほとんどの人が「これは分析だ」と答える

この差は単純に「比較」の有無だ
「比較」が言葉に信頼を与え、「比較」が論理を成り立たせ、「比較」がイシューに答えを出す
優れた分析は、タテ軸、ヨコ軸の広がり、すなわち「比較」の軸が明確だ
そして、そのそれぞれの軸がイシューに答えを出すことに直結している

【感想】

◆引用部分の量が比較的多いので、この辺で

実は上記で挙げたポイントは、本書における「基本的な考え方」が述べられている序章と第1章から最も多く抜き出されております

これは、私の「理解力の低さ」もさることながら、第2章以降では、なまじ挿入されている図が秀逸な分、こういうテキストベースのエントリーでは取り上げにくかった、ということもありまして(言い訳)

図解本等では「あってもなくても変わらないポンチ図」が横行する中、本書の図は、「さすがマッキンゼー出身者」と思わされるクオリティでしたので、資料作成の参考にもなりそうです

◆さて、タイトルにもある、肝心の「イシュー」について

英語の「issue」ではいくつも定義があるものの、本書における「定義

」では「2つ以上の集団の間で決着のついていない問題」と「根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題」の両方の条件を満たすものなのだそう

これだけだとピンと来ないので、具体的なケースとして「バリューのある仕事」というものを考えてみます

著者の安宅さん曰く、「解の質」と「イシュー度」を縦横の軸にとって、双方が高い右上の領域に属するものである、と

僕の考える「イシュー度」とは「自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ」、そして「解の質」とは「そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い」となる

そして、バリューのある仕事をするためには、この両方が高くなければならない、とのこと

◆そして多くの人が、「解の質」ばかりに関心を持つ傾向にありますが、本当に大切なのは、むしろ「イシュー度」の方です

なぜならば、「イシュー度」の低い仕事は、たとえ「解の質」が高くても、受益者から見たときの価値はゼロに等しいから

確かに「必要性の低い問題に、質の高い解を出してもしょうがない」と考えれば、なるほど当然

そういう意味で、「イシューを見極める」のが大事なのだな、と納得した次第です

◆何だかここまで書いても、結局まだ第1章付近をうろうろしているような状態というのが大変申し訳なく

ただ、大まかなアウトラインについては、冒頭のホッテントリ入りした記事で見事にまとめられていますので、そちらをご覧頂ければ(他力本願)

……まるで本書にも登場する「エレベータテスト」のような手際のよさですしw

と言うか、あの記事にブクマされた皆さんが、その時点でやがて出来上がる本書の完成度まで見越していたのなら、それはそれでスゴイことだと思います

実際、今まで何冊も問題解決系の本を読んでまいりましたが、それらと比べても、本書の「切れ味」は見事だと感じました

テキストから図まで、クオリティの高い1冊!

【問題解決】『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』安宅和人:マインドマップ的読書感想文

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