日常に潜む様々な「ムダ」は人を苛立たせる。デジタル化の波に乗り遅れた「化石」のような幼稚園や学校も、働く保護者に無駄な労力を課す存在のひとつだ。 東京都内のPR会社で働く男性(33)は約2カ月に1度、息子の写真のために仕事を休んでいる。 息子の通う幼稚園では、行事などで撮影した写真が平日の10日間、午前11時まで張り出され、数百枚が長い廊下の両側に広がる。丁寧に見ていかないと見逃すし、首や腰も痛くなるほどだ。 幼稚園までは歩くと30分の距離。体が弱い妻に行かせるわけにもいかず、男性が犠牲になる。おまけに1枚150円で現金をちょうど用意しなければならない。初めてのときは小銭が足りなくて、いらない写真を3枚も買うはめになった。 男性は、仕事の関係でインターネット写真販売サービスの存在を知った。「スナップスナップ」というそのサービスは、スマホで、通勤途中や昼休みなどの隙間時間に写真を見て購入できるし、カード決済なので小銭を用意しなくていい。しかも園側の金銭的負担はなく、写真の値段も同程度だという。 男性は、息子の通う幼稚園でも導入をお願いしたが、聞いてもらえなかった。「デジタルの時代にどうしてこんな労力がかかることを続けているのか、理解できない」 アナログなのは写真だけではない。月謝や給食費、教材費などをそれぞれ費目ごとにぴったりの額を封筒に入れ、子どもに持たせる決まりだ。保護者会で口座引き落としを提案したが、通らなかった。 神奈川県の公立小学校に1年生の息子を通わせている30代後半の会社員の女性も、学校のアナログぶりに悩まされている。 休むときは、連絡帳にその旨を書いて友だちに預けるのだ。子どもが病気になるとただでさえ、病院を予約したり仕事の調整をしたりで朝はあわただしいのに、友だちの登校時間に合わせて連絡帳を預けに行かなければならない。2月に息子がインフルエンザにかかったときもそうだった。しかも、子どもを親にみてもらえたのでたっぷり残業したかったが、連絡帳を友だちの家に取りに行くため午後8時には帰宅した。この現代に「伝書鳩」のようだ。「欠席の連絡を電話で受けるのは学校側が負担だというのは理解できます。でもせめて、メールで受けてもらえないものか」(アエラ編集部)※AERA 2016年4月4日号より抜粋