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UXデザインの正しい品質評価方法
Brandon K. Hill Aug 8, 2017

ユーザーエクスペリエンス (UX) デザインを少しでもかじったことのある人であれば、ヒットするプロダクトやビジネスの成功におけるユーザー体験の重要さが理解できると思う。「これからの企業に不可欠な三種の神器とは」でも説明されている通り、グローバル規模で成功している企業が提供する商品やサービスの裏には、優れたユーザー体験がその成功の秘密として隠されている。

また、「2017年からはユーザー体験こそがマーケティング戦略の主流になる ~UX for Marketing~」でも語られている通り、現在話題になっているスタートアップ企業やユニコーン企業も正しいユーザー体験を通じて多くのユーザー獲得につなげている。

UXにおいて何が優れているのか?

では、そもそもUXにおいて「優れた」とか「正しい」とされる要素は何であろうか?一般的にはユーザー側から見ると、利用していて”心地良い”とか”楽しい”などの要素。そして提供側から考えると”ビジネスの目標を達成する”ことが優れたユーザー体験の一つの目標となる。

UIとUXの評価軸の違い

UXデザインを考える際に、頻繁にユーザーインターフェース(UI)との比較をされる。これはUIがUXに及ぼす影響力が大きく、場合によっては、ごっちゃになるケースが多いからであろう。今一度UIとUXにおけるざっくりとした評価軸の違いを示しておく。

UIのクオリティは、ユーザーが費やした時間量に反比例
UXのクオリティは、ユーザーが費やした時間の濃さに比例
また、優れたUXがもたらす主な価値としては下記が挙げられるであろう。

対ユーザー: 使いやすい
対ビジネス: 売り上げが上がる
対ユーザー+ビジネス: 期待値が合致してる
– ビジネスにおけるユーザーエクスペリエンス (UX) の重要性

優れたデザインが優れたユーザー体験を生み出すとは限らない

UX”デザイン”という単語から、それが一つのデザイン領域であることがわかる。現にここ数年”UXデザイナー”と呼ばれる役職に注目が集まり、多くの企業も採用を急速に進めている。しかし、実はUXデザイナーに求められるスキルやその仕事内容は、見た目を美しくすることが主だった仕事であるデザイナー職とは大きく異なるため、その評価方法がはっきりとされていないケースもある。

結論から言うと、UXデザインの価値はユーザーが決める。下記の写真を見ても分かる通り、いくらデザイナーがこだわりを持ってデザインしたとしても、それがユーザーに受け入れられなければ正しいUXデザインを行なったことにはならない。

優れたユーザー体験とロジックは相反することがある

UXデザインのややこしいところは、それがユーザーの心理に密接しているところであろう。”見た目が美しい = 優れたUX”になるとは限らないし、”目的達成のための時間短縮 = 優れたUX”とも限らない。「ユーザーのストレスを減らし、費やした時間の価値を上げるが最終目標になるのであるが、ときにそれは机上のロジックと相反することもある。

その良い例が、ヒューストン空港における到着ゲートから手荷物受取所エリアまでの設計事例である。

以前より、この空港では手荷物引渡所での待ち時間が長いという苦情を受けていた。スタッフ増員など対応していたにも関わらず、なかなか問題が解消されないという課題を長期間に渡り抱えていた。

そこで、ユーザーのエクスペリエンス改善のために、わざと手荷物引渡所までの距離を延ばし、客に空港内で長い距離を歩かせるようにした。これにより移動距離と時間が伸びたものの、手荷物受取所での待ち時間が短縮されたことで、顧客のストレスが減り、顧客体験が解決したという結果となった。

UXの最終的な役割とは?

では、ユーザー側と企業側の双方向から考えて見た場合のUXの最終的な役割は何になるのであろうか?btraxが提供する「イノベーションブースター」のカリキュラムの一環であるUXデザインセッションでは、下記のように表現される。

The Role of UX
= To Attract Users’ Emotions to Produce Business Results
(ユーザーの心を掴み、ビジネスに繋げる)
理解はできるが、あまりにも簡潔すぎてよくわからない?

では、より具体的な評価方法を考えて見る。

UXハニカムを利用した評価手法

今回は、UXデザインの業界でスタンダードとして利用されている評価方法の一つである、UXハニカムを活用してのその評価方法を説明する。このハニカムはUXの価値を6つの異なる評価軸に合わせて評価し、そのクオリティを図っている。

下記のそれぞれの項目に対して5段階評価をし、総合得点でUXの価値を評価することができる。

1. Useful – 役に立つ

提供されるプロダクトやサービスがユーザーの役に立っているか。彼らのニーズを満たしているか。もしそれがユーザーの目的を達成していなければ、ユーザー体験としてはレベルが低い。

2. Desirable – 好ましい

プロダクトの見た目や雰囲気がユーザーにとって好ましいかどうか。ここに評価軸においては”デザイン要素”はなるべく少ない方が優れているとされる。

3. Accessible – アクセスしやすい

体の不自由な方や、異なる制限のあるユーザーにとっても使いやすい体験がデザインされているかどうか。色盲の方でも認識しやすいサインなどもその例の一つ。

4. Credible – 信頼できる

企業やプロダクトが信頼できるものであるかどうか。例えば無名な企業よりも、著名なブランドの製品であれば、最初からユーザーの心理的ハードルが下がり、自ずと利用体験がよくなりがち。

5. Findable – 探しやすい

情報やコンテンツが見つけやすい。短期間でユーザーが求める情報にたどり着ければ、利用している際のストレスが下がる。サイトであればページの構造、駅や公共の建物であれば、目的の場所に辿り着きやすいなど。

6. Usable – 使いやすい

そしてユーザビリティの高さ。利用していて必要以上に複雑で使いにくい場合はユーザー体験の価値が下がってしまう。例えば家電製品であれば、説明書を読まなければ使い方がわからない時点で減点対象になるであろう。

One more thing – そしてもう一つの価値基準

そして、btraxが提唱するUXの評価におけるもう一つの価値基準を紹介する。これはユーザーが気づかないうちに提供されるが、実は大きなメリットとして評価されるべきポイントだと考えている。

Ex. Added Value – 付加価値

優れたプロダクトには必ず主となる価値に加えて、ユーザー体験をアップさせる付加価値が隠されている。

Case Study – Tesla Model S

Teslaのモデル Sを例に考えてみよう。この車両のドアハンドルの部分は走行中やオーナーが離れている際には”引っ込む”仕組みになっている。これはデザイン的にかっこ良いし、空気抵抗を減らす意味合い、そして何より、近づいてきたときに”ぴょこっと”出てくる感動を生み出す。

実はこれには大きな付加価値もある。盗難防止に繋がるということだ。例えば鍵を壊してこの車両を盗もうとしたところで、ドアのとってをつかむことができなければドアをこじ開けることが容易ではなくなる。それだけでも車泥棒のモチベーションを下げる効果があるだろう。

Case Study – August SmartLock

もう一つの例として、btraxのSFオフィスでも利用しているAugust SmartLockの場合を見てみよう。このスマートロックは、スマホを活用してドアの鍵を開けることを主の目的としている。Apple Store史上初めてApple製品以外で店頭ディスプレイされたことでも話題になったプロダクトでもある事から、そのUXの高さが評価されている。

このプロダクトの付加価値は、利用ログにあると思われる。スマホで鍵が開くだけでもかなり利用価値が高いのであるが、その”隠れ機能”がより利用価値をアップさせている。アプリ内で見ることができるUser Activity Logは、複数のユーザーの利用ログが記録され、誰がいつ利用したかがわかるため、ちょっとしたセキュリティー的役割ややタイムカード的役割も果たしてくれる。

これからより高まるUXデザインの価値

プロダクトのサービス化を進める際には、そのプロダクトがユーザーに与える体験、いわゆるユーザーエクスペリエンス (UX)が非常に重要なファクターとなってくる。

そして、世の中で”イノベーション”と考えられている商品/サービスのその多くが、デザイン的プロセスに起因する部分が大きいと考えられる。実にユーザーエクスペリエンスが劣るプロダクトで人々がイノベーションの例として挙げるものはほぼ無いと言っても過言ではない。

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