ニューヨーク近郊で垂直農法「バワリーファーミング」グーグルやアマゾンも…IT業界が支える「都市農業」:AFPBB News

2019年5月12日 14:00 発信地:ニューヨーク/米国 [ 米国 北米 ]





【5月12日 AFP】米ニューヨーク近郊で垂直農法に取り組む「バワリーファーミング(Bowery Farming)」では、従業員らは従来の農機具ではなく、リアルタイムで光と水の状況を監視するタブレット端末を片手に野菜を育てている。

 2015年に設立された同社は、急速な広がりを見せる垂直農法の一翼を担っている。これは管理された人工的な環境下で、年間を通して新鮮な野菜を屋内で栽培する農法だ。地球が人口増加と気候変動に見舞われる今日、一部の人々は、垂直農法が世界の食料需要を満たす重要な鍵になるとしてこの技術に期待を寄せている。

 同社の共同創立者であるアービング・フェイン(Irving Fain)最高責任者(CEO)によると、ニュージャージー州カーニー(Kearny)にある栽培施設では、従来の農場に比べて必要となる資材は少なく、また農薬も不要となっているという。

 バワリーファーミングでは、農業科学の専門家よりもプログラマーの数が上回っている。アルゴリズムを使用することで、一区画当たりの生産性が従来の農場に比べて約100倍となり、水の使用量も95%削減できた。フェイン氏は、バワリーを始める以前は、大企業のロイヤルティープログラムのデータ解析を提供する会社を経営していた。

■電気代も削減

 垂直農法はこれまで、日本やその他いつくかの国での取り組みは見られたが、近年の技術的飛躍を受けて、米国でもようやく広がり始めた。

 鍵となったのはLED電球だった。LEDの導入で、事業者は電力コストを大幅に削減できるようになったのだ。バワリーではこれに加え、機械と人工知能を多用してコストの削減を図っている。

 同社はまた、米グーグル(Google)の投資部門「グーグル・ベンチャーズ(Google Ventures)」や米配車サービス「ウーバー・テクノロジーズ(Uber Technologies)」のダラ・コスロシャヒ(Dara Khosrowshahi)CEOらから、1億2000万ドル(約133億円)以上の資金提供を受けている。

■アマゾン・ドットコムのジェフ・ベゾス氏も後押し

 他のハイテク企業やその関係者も垂直農法を後押ししている。サンフランシスコで垂直農法に取り組むプレンティ(Plenty)は、米インターネット通販大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)のジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)CEO、携帯電話大手のソフトバンク(SoftBank)などから2億ドル(約222億円)の資金を得ている。

 他方で、米垂直農法大手クロップワン(Crop One)とアラブ首長国連邦(UAE)のエミレーツ航空ケータリング(EKFC)は、ドバイ(Dubai)に巨大垂直農法施設を建設するため、総額4000万ドル(約44億円)の合弁企業を創設した。

■世界最大規模

 世界最大の規模で垂直農法に取り組むのは、米ニュージャージー州ニューアーク(Newark)にあるエアロファームズ(AeroFarms)だ。

 2004年に創設された同社はこの分野での先駆者とされている。株式非公開企業で財務情報は公開されていないが、一連の努力を経て、現在では収益を上げるまでになっている。

 ラーメンレストラン・チェーン「モモフク(Momofuku)」の創立者であるデビッド・チャン(David Chang)氏は、エアロファームズに投資する一人だ。

 エアロファームズの共同創立者マーク・オオシマ(Marc Oshima)氏によると、同社は独自の技術を軸に事業を展開し、現在は中国、中東、欧州への進出を間近に控えているのだという。

 かつては製鋼工場だった同社の栽培施設は、天井までの高さが12メートルとかなり高い。この中に所せましと並ぶのは、ケールやルッコラなどの葉物を育てる金属製の栽培装置で、それぞれが12段のラックから構成されている。ここでは、ラックから下に垂れ下がった根への水やりが定期的に行われ、太陽の代わりにLEDが植物に光を届ける。

■採算は

 だが垂直農法を推進する上で、財政面での実行性を見いだすことができるようになるまでには、まだしばらく時間がかかりそうだ。

「垂直農法を大きな規模で展開する企業は利益を生み出すことに苦労している。事業を立ち上げる際に必要となる資金がかさみやすいのだ」とコンサルタント会社アグリテクチャー(Agritecture)のヘンリー・ゴードンスミス(Henry Gordon-Smith)氏は指摘する。

 大規模農業経営では利益を出すのに通常、7年から8年を要するとされるが、より小規模な農場ではその半分で済むと言われている。

 垂直農法の懐疑派はまた、この農法では二酸化炭素の排出量が大きくなることを指摘する──大量の照明と換気が不可欠なためだ。しかしその一方で、使用する水を削減でき、人口集中地域に近い立地や農薬を必要としないなど、そうしたマイナスの部分を相殺してプラスに転じさせるだけの利点がこの農法にはあるとの意見もある。

 ただ最も大きな課題は、限定的な生産物種にあると思われる。少なくとも栄養価の点では問題だ。

 これについて、米プリンストン大学(Princeton University)の植物研究者ポール・ゴティエ(Paul Gauthier)氏は、「サラダだけでは世界の人々の腹を満たすことができない」と指摘しながら、垂直農園はタンパク質をより多く含む作物に着手する必要があると主張している。

 映像前半は1月に撮影したバワリーファーミングの栽培施設。後半は2月に撮影したエアロファームズの栽培施設。(c)AFP/Juliette MICHEL

情報源: 動画:グーグルやアマゾンのベゾス氏も…IT業界が支える「都市農業」 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

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