「謝罪会見をさせてくれなかった」
「会見したら連帯責任で全員クビにする」振り込め詐欺グループの忘年会などへの〝闇営業〟で、所属していた吉本興業から契約を解消された雨上がり決死隊の宮迫博之(49)と、謹慎処分を受けているロンドンブーツ1号2号の田村亮(47)が、吉本の意向を無視して緊急会見したことから波紋が広がっている。
2人は、吉本に対しては「育ててくれて感謝しかない」と言いつつも、今回の騒動では「不信感を深めた」そうで、会見では騒動が発覚して以来の動きについて、吉本の顧問弁護士や岡本昭彦社長(52)とのやりとりなどを時系列で語った。
会見は5時間半にも及ぶものだったが、その中身は謝罪という以上に吉本の理不尽な対応を訴えるものになっていた。しかも「こんなことしたいわけではない…」と言っていることからも、意図的なものだったことは明らか。最初から吉本を〝告発〟するための意を決した会見だったのだろう。
それだけに、この会見にはさすがの吉本も慌てたはずだ。言い方は悪いが吉本からしたら「飼い犬に手を噛まれた」ようなものだったとも言えなくもないが、結果的に会社を揺るがす〝お家騒動〟に発展してしまった。
今回の会見で一瞬、昨年の日本大学アメフト部の宮川泰介選手による会見を思い出した。通常では選手が矢面に立ち、会見を開くなんてことはあり得ないことだった。ところが、宮川選手は実名で堂々と記者会見を開き、真実を語ったのである。その後、日本体操協会でも東京五輪の有力選手の1人だった、2016年リオデジャネイロ五輪体操女子代表の宮川紗江選手が協会幹部からパワハラを受けたと告発会見を行っている。
今回の宮迫と亮の会見を見ていたら、もしかしたら、この時の会見が〝見本〟になったんじゃないか…なんて思ったりもした。
吉本興業は「ミニ北朝鮮」
それにしても岡本社長は、2人を前に「テープは回してないだろうな」と確認したらしい。が、会見で2人は、岡本社長とのやりとりを「テープ以上」に生々しく語ってしまったわけだから、これ以上のものはないだろう。
この記者会見についてはすでに語り尽くされているので、ここでは割愛するが、吉本というのは芸人も含め「ファミリー」というけれども、2人の話を聞く限りまるで〝ミニ北朝鮮〟といった感じである。
しかも「俺には、クビにする力がある」とか「在京5社、在阪5社のテレビ局は株主」なんて言い方は、所属芸人にとってはパワハラ以上の〝究極の圧力〟だろう。
22日朝の日本テレビ系「スッキリ」で、MCを務めるお笑いコンビ「極楽とんぼ」の加藤浩次(50)は、会社の一連の対応を批判した上で取締役ほか経営陣の刷新を要求。「経営陣が辞めないのなら僕は会社を辞める」とまで断言した。
さらに、その批判の矛先は大﨑洋会長(65)を擁護した松本人志(55)にまで及んでいた。テレビの生番組で、ここまで言うのだから、加藤もそれなりの覚悟を持っていたに違いない。
そういった中、宮迫と亮との会見を受ける形で岡本社長も会見を行った。しかし、この問題は加藤の発言でも分かるように「吉本」対「芸人」という構図になっており、最終的にどちらが世論を味方に出来るかの展開になっていたのだが…。
それが何と、岡本社長は開口一番「宮迫博之君と田村亮君にああいう会見をさせてしまったことに対して、2人に非常に辛い思いをさせてしまい申し訳なく思っています」とした上で、「(契約解消などの)処分の撤回を行いまして、改めて彼らがミーティングの席に立ってもらえるなら、ミーティングさせていただき、戻ってきてもらえるならば、全力でサポートしていきたい」と語り始めたのだ。
この釈明には唖然呆然である。
しかも岡本社長は「俺にはお前ら全員をクビにする力がある」と発言したことについては「和ませようと思った」などと説明し、今回の騒動については「力不足だった」「反省する」と言うだけで、自らの進退については「まだ調査やヒヤリングがある」ことを理由に現時点での辞任は否定した。その上で「今後1年間、減俸50%を続けたい」と表明した。
だとしたら、今回の騒動は一体何だったのか? 理由になっていない。確かにメディアにも責任はあるが、5時間半も会見をして一体、何を言いたかったのか?
ダウンタウンの松本が「芸人ファーストじゃないとダメ」だとか、明石家さんまが「会社の立場もあるだろうけど、芸人のことも考えてほしい。解除するなら、俺が手伝ってやっても」と諭したと言うが、実は、会社のトップが今後の対応や処理を松本とさんまに任せていた…なんてことだったら、もはや大﨑会長も岡本社長も経営者失格である。
行政との共同事業を投げ出せない?
確かに、吉本は恒例化している沖縄での映画祭、さらには大阪市などの行政との共同事業、2025年の大阪万博など、税金を投入した事業が複数進行している。そういった状況の中では大﨑会長と岡本社長が、所属する芸人との〝お家騒動〟で「責任をとって辞めます」なんて言えないのかもしれない。そんなことになったら、それこそ単なるお家騒動が行政と吉本との取引問題にまで発展しかねない。
それはさておき、今回の騒動で「一体、どうするのか?」と言われているのが、生放送で「経営陣が辞めないのなら僕は会社を辞める」と言い切ってしまった加藤である。岡本社長は「話し合う用意がある」と言うのだが、これも、今後の進み方次第では収拾がつかない話になるかもしれない。
それにしても、宮迫も亮も、いくら涙で事情を語って謝罪をしたからと言っても、特殊詐欺グループの宴で闇営業をしたことは紛れもない事実だし、何より、その後、罪悪感もあってか保身のために嘘をついてきたことも確かである。
出席したことについては「(相手が)反社会勢力だとは知らなかった」と言い訳をしたが、例え、そうだとしても「結果責任」は問われる。ワイドショーの芸人やコメンテーターの中には情に流されて擁護する声もあるが、世間ではそういった軽率な行動を「脇が甘い」と言う。「芸人だから」では済まない。
過去にも反社会勢力の催しに出演して歌った歌手が多々いたが、その誰もが「相手を知らなかった」などと言い訳を繰り返してきた。毎度のことである。
したがって、闇営業の問題と吉本の問題を一緒に語るべきではない。もちろん引退を即するほどのことではないが、目に見える形の責任――例えば一定期間の謹慎はすべきだろう。そして、芸を磨いて復帰してくることを望みたい。
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