2020/03/03 07:00
© NEWSポストセブン 提供 石垣島の東大志望の高校生に受験ノウハウを指導。高校生1人に東大生3人がつく豪華さ
東京大学に『東大フロンティア・ランナーズ(UTFR)』というサークルがある。彼らは「非進学校から東大に合格した」現役東大生だ。そんなUTFRのメンバー11名をインタビューした本『非進学校出身東大生が高校時代にしてたこと』(小学館・太田あや著)が発売された。東大受験に対応する授業や指導体制が整っておらず、情報も少なく、周囲に競い合う仲間やライバルもいない。そんなハンデを彼らはいかに乗り越え、合格を果たしたのか。高校時代の過ごし方や、使っていた参考書など、その秘密が詳しく語られている一冊だ。
2月中旬、夏を思わせる暑さの沖縄・石垣島にUTFRのメンバーはいた。東大志望の高校生への学習支援や、中高生などに大学生活や研究内容を紹介する講演会を行うことが目的だ。UTFR2代目代表の神田直樹さんはこう話す。
「石垣島の高校生は、自分たちの高校時代ととても似ている環境にあると感じています。そんな彼らが、東大だけではなく、もっと気軽に大学を目指せる雰囲気をつくりたい」
UTFRには現在50名ほどが所属。初代代表は大野康晴さん。彼が友人と2017年に非進学校出身者だけのサークルとして立ち上げた。
「開成や灘などの進学校出身者とは全然違う環境で、さまざまな経験をして東大に合格したことをもっと生かす活動がしたいと思ったのです」(大野さん)
石垣島の中高校生への支援は、2019年9月にスタート。前出の神田さんが、通信制高校から独学で東大合格を成し遂げた経験を石垣島在住の知人に話したところ、より多くの人に聞いてもらいたいと依頼を受け、イベントを行ったことがきっかけだ。
取材した日は石垣島にある塾を借りて、UTFRのメンバー8名が島の東大志望の高校生5名に勉強法や東大の過去問の解き方などを指導していた。沖縄県立八重山高校に通う高2の男子生徒は言う。
「東大を目指したい思いはありましたが、周りは本気にしてくれませんでした。そんなときUTFRのメンバーが来島して、ぼくの気持ちを受け入れてくれた。嬉しかったです」
島には大学がないため、大学生と会うことはなく、仕事も農業、漁業、観光業などが中心。自分には何が向いているのか、どんなことがやりたいのかを考え、進路を決めていくことが難しい環境にある。
UTFRの活動を支援している高志塾の舘田真由美さんは言う。
「石垣島にいると、大学はとりあえずいまの実力で入れるところを目指す、という考えが主流です。UTFRとの出会いは、石垣島の子供たちに刺激を与えてくれています」
何十年も東大合格者が出ていない石垣島の高校。前出の神田さんは「指導している中に高校2年生が2名います。来年の春には結果を出したいし、出せると思う」ときっぱり。
「東大志望の高校生たちとは、毎日のようにメールや電話で勉強の進捗などのやりとりをしています。学習習慣が身につき、東大に向けて努力を始めている彼らの変化を感じるからこそ、可能性を感じています。ぼくたちも本気で彼らと向き合い、支援を行っていきます」(神田さん)
石垣島という大学受験には不利な環境から東大合格者を出すことで、日本全国どの地域からでも東大を目指すことができるという証に。それが非進学校出身である彼らUTFRの大きな夢なのだ。
※女性セブン2020年3月12日号