パーパスモデルの意味と図の見方
PURPOSE MODEL(パーパスモデル)は、特定の事業やプロジェクトにおけるステークホルダーとその役割、個々の目的、そして共通目的を可視化するために考えたツールです。
一社一企業では解決できない複雑で横断的な課題が多い現代において、複数のステークホルダーによる共創がますます必要になっています。
また、経済合理性だけではなく、社会性とのバランスが重要になってきています。
そこで、重要になってくるのが、自組織の目的だけではなく、より広く社会的意義のある目的の設定と共有です。経済合理性を見るものが「ビジネスモデル」だとしたら、社会性を見るのが「パーパスモデル」というイメージです。
どんなときに使える?
・関係する人が同じ方向を向けるような共通の目的を考えるきっかけに
・共創相手と意見が対立したときのコミュニケーションツールとして
・良い事例を分析する際の手法として
・共創に対する理解を得るための説得材料として
図の見方
・真ん中に共通の目的(この解像度が重要!!!)と場がある
・場はフィジカルな空間でも、バーチャルなプラットフォームでもいい
・上がこの場に参加する人、下が目的に対して主体的に関わる人
・色分けは4種類、企業・行政・市民・大学や研究機関・NPO・専門家など
・ステークホルダーの名称とその個別の目的と役割を円上に書く
・真ん中下が運営者などの主体、真ん中上が重要な参加者という書き方
よくある例
ここで、よくある例を見てみましょう。
一色!!自社対相手しか関係者がいない・・・
社会課題解決を掲げている企業のイノベーションのためにつくられた場でも、単なる利害関係ベースの協業を抜けだせていなかったり、一社対一社で横に繋がらないオープンイノベーションがまだまだ多いのです涙。
(各社とっても頑張っておられるのはとっても承知のうえ・・・)
4つの事例のパーパスモデル
ここでは私が実際に行って、これは素晴らしい・・・と思った4つの事例をパーパスモデルとともに紹介します。1.DeCeuvel(アムステルダム)
2.LEO innovation lab(コペンハーゲン)
3.DESCHOOL(アムステルダム)
4.BONUS TRACK(下北沢)1.De Ceuvel
アムステルダムの官民学連携サーキュラーエコノミー実験区(リビングラボ)。
・運河に囲まれたオランダにとって「水」はとても重要であり、気候変動に対する意識、循環型のライフスタイルへの移行は日本よりも一般市民のレベルで高い。・元々は造船所で、船からの油などで水質汚染が起きてしまっていたエリア。
市は再開発を行うにあたって、民間からアイデアを募集した。
他が埋立て案を出す中、建築家チームSpace and matterの「その場にある廃船をオフィスやカフェに活用した計画と大学と連携して植物によって水を濾過するシステムを実験し、サーキュラーエコノミーの実験区にする」アイデアが評価され、実現した。
市は水質改善基準を定め、De Ceuvelはそれに向かって活動している。・De Ceuvelがある北エリアはかつての工業地帯の倉庫跡地などを活用し、アーティストやクリエイターが集まるエリアになっており、周辺にいる人とこの場所の相性も良い。
・研究所を中心としたリビングラボよりも開かれている感じ。
普通に若者の集まる場所になっている。
豊富な居場所と近水空間が豊か。・現在電力の循環や仮想通貨などの実験も行われており、ここで検証したものを市内に広げていく構想もある。
HP: https://deceuvel.nl/en/2.LEO innovation lab
デジタルテクノロジーでヘルスケア分野のイノベーションを加速させるためのラボ。
・大手製薬メーカー「レオファーマ」のイノベーションセンター(組織図上は財団直下)。特に皮膚病に強い。・コペンハーゲン市の中心部に位置する歴史ある建物に入居する(上階にはアップルが入っている一等地で歴史的な建造物をリノベして使っている。)
本社と異なり、デザイナー・エンジニア・マーケター・研究者など様々な専門性を持つメンバーが50-100名ほどいる。・日本だと企業対企業のイノベーションセンターが多いが、彼らは中心に社会課題、開発は専門家とユーザーと行っている。
特にユーザーとの関係を重視しており、2週間に1回自社に患者が訪れ、自身の症状を情報提供するなど共に開発していくようなコミュニケーションが行われている。
=都心にある立地も納得・・・・事業で利益を生み出すことは求められておらず、社会を良くすることで結果的に本体の収益にや未来につながることを行うことをミッションとしている。
・DXの画像診断技術をアプリに入れたオンライン診療システムやスキンケアアプリを開発している。
HP: https://leoinnovationlab.com/3.DESCHOOL
廃校を活用し、クラブカルチャーを中心としたコミュニティからまちづくりを行う複合施設。
・DESCHOOLを運営するチームはこれまでにも同様の方法で、廃郵便局・廃新聞社屋をクラブにして街づくりを行ってきた実績を持つ。
どれも周辺に店舗やホテルができるほど人気だったが開発のため惜しまれながら3-5年でクローズした。
今回も市からこの廃校を5年契約でかなり安く借りているらしい。・ナイトメイヤーとパートナーシップを組んでいる。
彼と共に行政との連携(酒税の優遇・24時間営業許可の取得)を行なっている。
アムステルダムの中でも24時間営業は5つのみ。
ナイトメイヤーは昼の市長とのパイプ役で、税の調整やナイトエコノミーがもたらす経済効果などをデータ化して行政に伝え、経済と文化の発展に貢献している。・クラブの他にカフェ・レストラン・ジム・ギャラリー・アトリエ・オフィス・コワーキングなどがあり、夜しか稼働しないはずのクラブが昼と夜別の顔を持って24時間稼働している。
アーティストが作品を施設内に展示していたり、クラブのオープン中にギャラリーを開いたり入居者とコラボしているのもいい。※悲しきかな、DESCHOOLのクラブが閉店を決めたというニュースが・・・。
当初の契約期間であった5年を延長することができた矢先のの出来事でした。
1日も早い事態の収束と彼らの復活を祈っています。
https://jp.residentadvisor.net/news/73147
HP: https://www.deschoolamsterdam.nl/en/最後に、海外事例ばっかりなので、ひとつ最近感動した日本の事例を紹介します。
4.BONUS TRACK
こだわりを持った個人店を育て、人や街の個性を活かす、線路跡地にできた遊食住一体の新しい商店街。
・小田急縁地下化に伴い、地上にBonus的にできた余白(Track)。
ボーナストラックが、アーティストがやりたいことを表現しやすい部分であるということから、「BONUS TRACK」も余白のような場所として、関わる人がやりたいことに思う存分チャレンジできる“まち”を目指している。・通常の開発はトップダウンでいろんなことが決まってしまうことが多い中、まだ更地の段階から運営に関わるみんなと敷地を歩き、賃料いくらならチャレンジできる!面積はこれくらいは欲しいなど腹を割った話をして、要望を反映した形で計画をしたらしい。
小田急は「支援型開発」と呼んでいるこれ、大企業の理想のあり方では・・・・個性的なお店がこんなに?という面白さも特徴。
鍵となったのは2人の個人。
元greenzの小野さん、下北沢の有名書店B&Bの内沼さんで、彼らがいたからこそ、この個性的でこだわりのあるお店のラインナップができている。
あー建築の話や下北の住民の意識の高さとかまだまだあるけど書ききれない!!
HP: https://bonus-track.net/事例は以上です。